自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager 2019」を使用して、ブエルタ・ア・エスパーニャの展開を予想していく企画の第5弾。
使用するチームは「ミッチェルトン・スコット」。エステバン・チャベスの総合とメスゲッツのスプリント勝利を狙いつつ、実際のレースに向けてのコースの下見、展開のプレビューを行っていく。
ただし前回の第6ステージを経て、いよいよチャベスの総合は挽回不可能な位置(7分37秒遅れの総合33位)に。
ミケル・ニエベは5分14秒遅れの総合18位とこちらも厳しくはある。
現時点での総合TOP10は以下の通りである。
現実のレースにおける4強はロペス、ログリッチェ、キンタナ、バルベルデであり、ゲーム上のログリッチェの不振などは少し現実から離れてしまっている。プールスは逆に現実では不調。
ただ現実のレースでもラファル・マイカが意外なほど好調なのでそこはやや反映されているか。ただ、とにかくロペスが絶好調、というのが現状のゲームの状況である。
今回は第7ステージと第8ステージを連続で見ていく。
まずは第7ステージ。
登坂距離4.1km、平均勾配12.3%、最大勾配25%という超凶悪な激坂が最後に登場。
第5ステージから続く山頂フィニッシュ3連戦のオオトリを務めるステージだ。
参考リンク
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第7ステージ オンダ 〜 マス・デ・ラ・コスタ 183.2㎞(山岳)
ステージの前半はバレンシア州の海岸線をなぞるフラットレイアウト。しかし後半から細かな登りが連続し、最後は平均12%、最大25%の強烈な登りが待ち受けている。
スタート直後に山岳賞ジャージを着る総合16位カールフレドリク・ハーゲンを含む25名の逃げが生まれる。
最大で6分台まで許されたこの大集団も、中盤の山岳地帯が始まると少しずつ縮小していく。集団の数は14名ほどにまで絞られ、タイム差も3分台にまで縮まった。
そして残り26km。2級山岳サルト・デル・カバッロの登りの途中で、早くもチャベスが千切れてしまった。
元々ランダムで決まるレース前のコンディションも悪い状態ではあったとはいえ、さすがにこの事態は想定外。
今後も戦力としてすら期待できないかもしれない・・・。リセマラしてでもコンディションの良い状態でスタートするべきだったか。ちょっと申し訳ないことをした。
ただ、この2級山岳を越えた先にある下りと平坦とで、チャベスは再び集団復帰を果たす。
そしてこの区間で逆にプロトンのペースが落ちたのか。登りでは3分を切っていた逃げ集団とのタイム差が逆に開き、4分以上にまで拡大していった。
最初は25名いた逃げ集団も、この2級山岳の登りの途中で先頭は4名にまで絞り込まれていった。
集団内に3名も含めていたカハルラル・セグロスRGAについても、アレックス・アランブルが2級の登り途中で早々に遅れ、そして残る2人、ヨナタン・ラストラとセルヒオ・パルディラも、頂上まで1.5kmを残して遅れ始めた。
しかしこのあと、遅れかけていたパルディラが懸命にラストラを牽引し、2人だけでなんとか先頭4名を追走する。
そして頂上を越えた先の下り区間でなんとか合流。先頭は6名になった。
先頭6名のうち、カハルラル以外の4名は以下の通り。
- ウィリアム・バルタ(CCCチーム)
- ルーベン・ゲレイロ(カチューシャ・アルペシン)
- ステファヌ・ロセット(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- ミケル・ビズカラ(エウスカディ・ムリアス)
そしてこのときにはプロトンとのタイム差も4分以上に広がっており、逃げ切りの可能性が見えてきた。
そしていよいよ、最後の1級マス・デラ・コスタに突入する。
登り始めから10%を超える激坂区間が連続し、容赦なくプロトンの足を削っていく。
しかし、ボーラやアスタナが支配するメイン集団は、意外にもペースは落ち着いており、集団も80名以上を残したまま残り距離を減らしていく。
残り2kmの時点で、逃げとプロトンとのタイム差は2分。
そして、先頭集団では先頭を牽いていたパルディラが脱落し、これを合図にラストラがアタックを仕掛けた。
ゲレイロらは動けず。あっという間にギャップを開いていく、ラストラと逃げ残り3名。
そしてメイン集団の方でも、残り1.5kmでようやく動きが。
この日もまた、ミゲルアンヘル・ロペスが絶好調。先陣を切って抜け出していき、そこに喰らいついていったのはマイカとウィルコ・ケルデルマンだけであった。
しかし、ロペスの攻撃は遅すぎた。
ゲレイロたち3名を追い抜きはしたものの、最後の1人、ラストラについては、わずかあと400m足りずに逃がし切ってしまった。
ヨナタン・ラストラ。26歳のバスク人。
元々はシクロクロスの選手で、国内選手権U23部門で2度優勝している男である。
その後、ロードに転向し、2016年からにこのカハルラルにてプロデビュー。シルキュイ・ドゥ・ゲチョやGPミゲル・インドゥラインなどのパンチャー向けの丘陵レースにて上位に何度か入るものの、今の今までプロ勝利はない。
ブエルタ・ア・エスパーニャには昨年に続く出場。昨年はサイモン・クラークが逃げ切り勝した第5ステージで逃げに乗って、区間8位で終えている。これが最高成績だ。
そんな彼が、ゲームの中とはいえ、大金星を達成。
現実世界でもアンヘル・マドラソやヘスス・エラダなどが涙の勝利を達成していく中で、ゲームの世界でもやはりブエルタはチャンスの多いレースである。
そして、チャベスも切り離し、最後はホーゾンがアシストして運び上げたニエベは、先頭ラストラからは1分11秒遅れ、2位のロペスからは48秒遅れの集団内でフィニッシュし、順位としては16位。
総合成績ではミゲルアンヘル・ロペスが総合2位ラファル・マイカとのタイム差を2分弱にまで広げ独走中。マイカも区間3位に入り、総合3位以下とのタイム差を拡大した。
ニエベは総合18位から14位にジャンプアップ。せめて、総合TOP10には入っておきたいところ。
現実世界では「4強」が際立った走りを見せたこの激坂バトルも、ゲーム中では驚きの逃げ切り勝利と共に、総合勢の動きもそこまで大きくバラバラにならない展開で終わった。
続く第8ステージは、逃げ切りとスプリンターバトルと両方の可能性が考えられる読めないステージ。
今夜行われるこのステージについて、続けて以下で見ていく。
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第8ステージ バルス 〜 イグアラダ 166.9㎞(丘陵)
ブエルタ基準で言えば平坦ステージに分類されてもおかしくないレイアウト。公式サイトでも逃げ切りとなるかスプリンターチームがこれを許さない展開になるか、と予想のつかない展開になることが示唆されていた。
ポイントとなるのは、ゴール前27.5㎞地点に置かれた2級山岳(登坂距離7.7㎞、平均勾配6.7%)。
果たしてスプリンターたちは残れるのか、それとも。
一応逃げにも可能性あるステージということで、この日も18名もの大規模逃げ集団が形成。お馴染みの山岳賞ハーゲンに、前日も終盤まで逃げたゲレイロ、そして現実のレースでは第6ステージで優勝したヘスス・エラダなどが含まれ、なかなか強力な逃げ集団だ。
とはいえ、連日の逃げ切りは許さないのか、あるいはなかなか逃げ切りの決まらないこのゲームにおいてはこの日はまったく逃げ切り向きではなかったのか、残り40kmを切った時点でタイム差は1分を割り、2級山岳プエルト・デ・モントセラートの登りの途中で完全にこれを吸収した。
ゴールまで25kmを残して逃げを完全吸収。それはすなわち、スプリンターたちはすべて引きちぎられてしまったということだ。集団の数は90名。そこに、ピュアスプリンターたちの姿は見受けられなかった。
ミッチェルトン・スコットにとってもそれは同様であった。第2~第4ステージでは2位や3位に入り込んだルカ・メスゲッツも2級山岳で置いていかれてしまった。
となれば、プロトンの中に残った選手の中で最もスプリント力の高い選手――ニック・シュルツで、なんとかステージを狙って行くことにする。
リードアウト役はスガブ・グルマイ。なかなか見られない光景だ。
集団の先頭も決してスプリンター系ではないダニエル・マルティネスが牽き、EFエデュケーション・ファーストはヴァンガーデレンをリードアウトにしてのウランでステージを狙ってくるようだ。(現実世界では悲惨な状況になっているけれど・・・)
集団内のライバルとなりうるのはアレハンドロ・バルベルデ。彼のスプリント能力は72で、シュルツのそれは69。決して、まったく勝てないレベルではない、はず。加速(アクセラレーション)能力は77と69なので、そこは結構な開きがあるけれど・・・。
ただ、さすがにグルマイにリードアウトは厳しかったか。残り1kmを残して足が売り切れ。ここからシュルツが単独で、というのは厳しい。
背後からはポイント賞ジャージを着たバルベルデが上がってきているので、彼の背中に貼り付いてそこから再加速をすることに決める。
そして、そのバルベルデの後ろから番手を上げてきているのが、ドゥクーニンク・クイックステップのフィリップ・ジルベール。
そう、こういった局面において強いのは彼も同様であった。彼のスプリント能力は73。加速力も73とそこはバルベルデには劣るものの、スプリント能力においてはわずかに上回っている。
結局シュルツはゴールにたどり着く前にずるずると失速。次々とスプリンターではない選手たちにも抜かれ、最終的には25位でゴールすることに。全然ダメだ。
そしてジルベールがバルベルデを追い抜き、先頭に。
そのままよくわからないポーズで先着。
ブエルタでは6年ぶり、グランツールという点でも4年ぶりの勝利となった。・・・ゲームでは。
着順TOP10は以下の通り。
軒並みクライマーたちが名を連ねる中で、スプリント力の高いパンチャー系のジルベール、バルベルデ、ゴルカがTOP3。
少し興味深いのが、普段はサム・ベネットのリードアウト役であるジャンピエール・ドリュケール(ボーラ・ハンスグローエ)が生き残り、9位に入っていること。
現実のレースでも、スプリンター勢は軒並み退場したうえでパンチャー系、スプリント力のあるクライマー系が上位に入る展開になるのかどうか。
連日続いた山頂フィニッシュとはまたちょっと違った種類の結末を楽しめる、面白いステージとなりそうだ。
次回は第1週最終日。
もはや恒例となった「アンドラ公国」での短距離山岳ステージ。
しかも終盤には未舗装路も用意された強烈なステージで、もう一度総合での大きな争いを期待できそうである。
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