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ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 コースプレビュー 第1週

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2020年に予定されていながらCovid-19の影響で延期となったオランダ・ユトレヒト開幕。これでこの街は史上初となる「3大グランツールでのグランデパール」を達成することとなる。

平地の国オランダから開幕する今年のブエルタはとてもブエルタらしからぬ「第6ステージまで山岳ステージが登場しない」という平穏な開幕を迎える。

だが、やはりここはブエルタ。その第6ステージからは容赦のない「カンタブリア山脈4連戦」が待ち構えている。第1週から最終週のような熱量が発揮されることになる。

最後に待ち構えているのは2018年以来2回目の登場となる超激坂レス・プラエレス。サイモン・イェーツを勝利に導いたその登りで、同じく2018年以来の出場となるサイモンが復活の狼煙を上げられるか。それともやはり史上初の4連覇を狙うプリモシュ・ログリッチが強さを見せつけるか?

 

白熱の「シーズン最後のグランツール」が幕を開ける。

 

注目選手はこちらから

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目次

 

第2週・3週はこちらから

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第1ステージ ユトレヒト〜ユトレヒト 23.3㎞(チームTT)

Jsports:8/19(金) 25:25~

かつてはブエルタ・ア・エスパーニャ初日ステージの定番だったチームタイムトライアルも、2019年以来3年ぶりの開催となった。グランツールにおけるチームTT自体も3年ぶりである。

その久々のチームタイムトライアルは、これまでのような「顔見せ」で終わることはなさそうだ。レイアウトは完全にフラットだが、距離は23㎞と結構長い。2019年のツール・ド・フランス第2ステージでは27.6㎞で戦われたが、このときは優勝したユンボ・ヴィズマが2位のイネオスに20秒差、ティボー・ピノ率いるグルパマFDJはユンボ・ヴィズマに32秒差、モビスターやUAEチーム・エミレーツ、トレック・セガフレードなどは1分以上のタイム差をつけられてしまっている。

個人タイムトライアルとはまた違ったタイム差のつき方がされるだけに、初日ながら非常に重要なステージの1つとなるだろう。

史上初となる4連覇を狙うプリモシュ・ログリッチはローハン・デニスという強力な相棒と共に出場。リチャル・カラパスもイーサン・ヘイター、ディラン・ファンバーレ、カルロス・ロドリゲスといったTT巧者を伴い、逆にツールに続く総合好成績を狙いたいアンテルマルシェのルイス・メインチェスやナイロ・キンタナ、ベン・オコーナーならはどれだけビハインドを抑えられるかが勝負だ。

 

 

第2ステージ スヘルトーヘンボス〜ユトレヒト 175.1㎞(平坦)

Jsports:8/20(土) 20:05~

第1ステージの舞台となったユトレヒトから南に50㎞。「公爵の森」を意味する名をもつ北ブラバント州州都スヘルトーヘンボスを出発し、マース川、ワール川、レック川といった大きな川を渡りながら北上。最後は再びユトレヒトへと戻ってくるというコースを辿る。

平地の国オランダらしく、途中山岳ポイントもごく小さな4級山岳(登坂距離2.1㎞、平均勾配2.4%)が1つ用意されているだけで、最後の大集団スプリントを阻むものは何1つない。

今のところ最上位クラスのスプリンターはティム・メルリールやパスカル・アッカーマンくらいであり、アルペシン・ドゥクーニンク行きが決まったカーデン・グローヴスや、過去ブエルタで2位の経験はあるヘルベン・タイッセンなど、才能ある若きスプリンターたちのグランツール初勝利の瞬間も十分見ることができそう。今や世界トップクラスのエスケーパー/オールラウンダーのマウヌス・コルトも、元はこのブエルタでのスプリント勝利で名を挙げた男でもあり、未来を担う若き才能の発掘場となることが楽しみだ。

 

 

第3ステージ ブレダ〜ブレダ 193.2㎞(平坦)

Jsports:8/21(日) 19:20~

ディエゴ・ベラスケスの名画『ブレダの開城』で有名な街ブレダを発着する、オランダ3連戦最終日の平坦スプリントステージ。

スタート直後にあるバールレ=ナッサウのこの異様な国旗は何だ?と思ったらここは街中に21箇所ものベルギーの飛び地があり、中にはベルギーの飛び地の中にオランダの飛び地がある二重国境、さらには家の中に国境線が引かれているなどのカオスさで有名な町だった。

いずれにしてもこのオランダ・ベルギー国境線沿いの象徴的な地域は、2015年のエネコ・ツアー(現ベネルクスツアー)で使われたときはドイツ人のアンドレ・グライペルがベルギー人のトム・ボーネンを下して勝利している。同年のツール・ド・フランスで4勝するなど絶好調だったグライペル。今回もやはり、本当に強い男こそが勝利を掴み取る権利を得られそうだ。

 

 

第4ステージ ビトリア=ガステイス〜ラグアルディア 152.5㎞(中級山岳)

Jsports:8/23(火) 22:50~

オランダ3連戦を終え、プロトンはスペインに足を踏み入れる。その序盤戦はスペイン北部バスク地方。そのアラバ県の中で初日ステージが繰り広げられる。

そしてバスク地方だけあってとてもアップダウンの激しいレイアウトとなっており、ラストも登坂距離800m・平均勾配10%という激坂登りフィニッシュとなっている。

 

まさに、ここからブエルタが始まると言ってよい。ジョアン・アルメイダやセルヒオ・イギータ、ペリョ・ビルバオなど、登りスプリントの得意な総合系ライダーたちは早速タイムを奪いに行くかもしれない。もちろんその中には、同じように積極的なタイム獲得を目指すことの多いプリモシュ・ログリッチの名も含まれることとなるだろう。

 

 

第5ステージ イルン~ビルバオ 187.2㎞(中級山岳)

Jsports:8/24(水) 22:50~

バスク2日目は、2020年の(Covid-19の影響で延期となったユトレヒト開幕の代替として)グランデパールの地となったフランス国境の町イルンを出発し、ブエルタで3年ぶりの登場となるビスカヤ県県都ビルバオ(バスク語でビルボ)でフィニッシュする。

途中、5つの山岳ポイントが登場。最後の2級山岳アルト・デ・ビベロ(登坂距離4.6㎞、平均勾配8%)は2回登るが最後の登りはラスト14㎞地点で山頂を迎え、あとはフィニッシュまでひたすら下り坂が続く。

さすがにスプリンターは振り払われることになるだろう。大きな逃げは生まれないとは思うが、場合によっては逃げからのマイヨ・ロホのチャンスはありうる。あとは激坂適性と下りの能力に自信のあるアタッカーにとってのチャンスか。

 

 

第6ステージ ビルバオ~ピコ・ハノへの登り 181.2㎞(山岳)

Jsports:8/25(木) 22:50~

第6ステージにして最初の山岳ステージ。ブエルタ・ア・エスパーニャにしては珍しいくらい遅い登場である。

その最初の決戦の舞台はカンタブリア山中にある村サン・ミゲル・デ・アグアヨに位置する1級ピコ・ハノ山(登坂距離12.6㎞、平均勾配6.55%)。ブエルタ・ア・エスパーニャ初登場のこの山は、最後の4㎞が未舗装路だったところを今回に合わせて舗装したという。

 

だが、この日気を付けるべきはこの山だけではない。

残り35.4㎞地点に位置するもう1つの1級山岳コラーダ・デ・ブレネス(登坂力6.8㎞、平均勾配8.2%)はより凶悪な登り。その頂上にはボーナスタイムポイントも用意されており、総合争いはここから白熱する可能性はある。

 

今大会最初の本格的山頂フィニッシュ。

今年もまたプリモシュ・ログリッチが強さを見せるか。それとも?

 

 

第7ステージ カマルゴ~システィエルナ 190㎞(中級山岳)

Jsports:8/26(金) 22:50~

カンタブリアでの戦いは続く。ただし今度は山頂フィニッシュではなく、道中にカンタブリアの名峰を用意した。1級プエルト・デ・サン・グロリオ(登坂距離22.4㎞、平均勾配5.5%)。ひたすら長く長く続く登りは、スプリンターにとって乗り越えさえすればそのあとはチャンスが待ち受けているが、それをよしとしないチームによる加速は巻き起こりそうなレイアウトでもある。あとは、逃げ切りを狙いたい選手たちの足次第か。

 

勝利する選手のタイプが非常に読みづらいステージである。

 

 

第8ステージ ポラ・デ・ラビアナ~コリャウ・ファンクワーヤ 153.4㎞(山岳)

Jsports:8/27(土) 20:05~

カンタブリア山脈を東から西へと進んでいく4連戦もいよいよ佳境に。アングリアへの出発地点となる町ポラ・デ・ラビアナをスタートするがアングリアには向かわず、そのままアストゥリアスの村イェルネス・イ・タメサへと向かう。そこにはもちろん厳しい登りが待ち構えており、それはブエルタ・ア・エスパーニャ初登場となる1級山岳コリャウ・ファンクワーヤ(登坂距離10.1㎞、平均勾配8.5%)である。

 

第6ステージのフィニッシュよりも明らかに難易度が高く、しかもラスト3㎞は常に10%を超えるような勾配が続き、最大勾配17%のセクションも2つ登場する。ここからが本格的な総合争いの舞台となることだろう。

しかもこの日は序盤から登りが連続しており、蓄積された疲労は、本当に強い者だけをセレクションしていくだろう。

 

 

第9ステージ ビリャビシオサ~レス・プラエレス 171.4㎞(山岳)

Jsports:8/28(日) 19:35~

第1週を決定づけるカンタブリア山脈4連戦の最終日にして第1週の最終日となるのは、2018年のブエルタ・ア・エスパーニャに初登場し、サイモン・イェーツがマイヨ・ロホに向けての大きな一手となる勝利を成し遂げた激坂1級レス・プラエレス(登坂距離3.9㎞、平均勾配12.9%)

 

1級山岳としては短いが、見てわかるように4㎞の登坂の間息つく暇はほとんどない。ひたすら10%を軽く超える激坂区間が続いていく。平均勾配12.9%というプロフィールは、アングリルもゾンコランも凌駕するステータスである。

4年前の第14ステージでまず仕掛けたのはそのとき総合9位であったステフェン・クライスヴァイク。そこにアレハンドロ・バルベルデとエンリク・マスが追撃しクライスヴァイクに追い付くと、少し時間を置いてミゲルアンヘル・ロペスとナイロ・キンタナ、そしてサイモン・イェーツが合流を果たした。

そしてフィニッシュまで2㎞地点で今度はキンタナがアタック。ここにロペスだけが食らいつきしばらくコロンビアンタンデムが開始されるが、これは決まり切らずに先頭は再び8名のままラスト1㎞のアーチをくぐる。

そして残り700m。ここでサイモン・イェーツがアタック。急勾配のコンクリートの激坂を、得意の鋭いアタックでライバルたちを突き放し、自身初のグランツール勝利に向けての大きな一手を打つことに成功した。

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今年はこの2018年以来となるブエルタ・ア・エスパーニャ出場を果たすサイモン・イェーツ。

なかなかうまくいかなかったこの数シーズンの借りを返す鮮烈な勝利を果たすことはできるか。

 

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