今年最初のワールドツアーレース、平坦・個人TT・山頂フィニッシュがバランスよく配置され、グランツール級の豪華なメンバーが揃ったUAEツアー。
その全7日間のレースをそれぞれ、簡単に振り返っていこうと思う。
昨年の全ステージレビューはこちらから
今年の各ステージのコース詳細プレビューなどはこちらから
目次
- 第1ステージ マディナ・ザイード〜マディナ・ザイード 184㎞(平坦)
- 第2ステージ フダリアット島〜アブダビ・ブレイクウォーター 176㎞(平坦)
- 第3ステージ アジュマーン~アジュマーン 9㎞(個人TT)
- 第4ステージ フジャイラ要塞~ジュベル・ジャイス 181㎞(山岳)
- 第5ステージ ラアス・アル・ハイマ・コーニッシュ~アル・マルジャン島 182㎞(平坦)
- 第6ステージ EXPO2020ドバイ~EXPO2020ドバイ 180㎞(平坦)
- 第7ステージ アル・アイン~ジャベル・ハフィート 148㎞(山岳)
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第1ステージ マディナ・ザイード〜マディナ・ザイード 184㎞(平坦)
アブダビ首長国最先端の砂漠の中の街、マディナ・ザイードを発着するド平坦ステージ。5名の逃げが出来上がるが、とくに問題はなく大集団スプリントに。
昨年ツール・ド・フランス4勝のマーク・カヴェンディッシュ、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ2勝のジャスパー・フィリプセン、今年すでに2勝しているディラン・フルーネウェーヘン、サム・ベネット、パスカル・アッカーマンなど、グランツール級の強豪スプリンターたちが集う中での頂上決戦。
その第1幕となるこの日は、まずチーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコのアシスト2枚が残り600mで先頭を奪い取る。フルーネウェーヘンのサウジ・ツアーでの2勝も、ルカ・メズゲッツによる強力なアシストの賜物だったが、この日もしっかりと良ポジションをフルーネウェーヘンのために用意してくれている。
が、その肝心のフルーネウェーヘンがメズゲッツの後輪を失うという失態。メズゲッツと自身の間に、イネオスのエリア・ヴィヴィアーニを入り込ませてしまった。
そしてこのとき、やや後方に位置取っていたUAEチーム・エミレーツとアルペシン・フェニックスだが、このあとそれぞれマキシミリアーノ・リケーゼとクリスティアン・ズバラーリといった名アシストたちの働きによってそれぞれのエースが牽き上げられていく。
そして残り400m。まずはリケーゼがアッカーマンを集団先頭付近にまで引き上げ、その時点で先頭を取ったモルコフとカヴェンディッシュとの間に彼を入り込ませる。
さらに、そのUAEチーム・エミレーツトレインに食らいついていったズバラーリが、さらにこの高速域で先頭付近にまでフィリプセンを押し上げ、同様にアッカーマンとカヴェンディッシュとの間にフィリプセンを入り込ませた。
最強発射台モルコフの番手を奪われてしまったカヴェンディッシュ。だが、これに気付いたのか、単純に前に出るのが早すぎたのか、このあとモルコフは失速。
フィニッシュまで300mと距離を残した状態でアッカーマンは先頭に出されることになり、チャンスはその背後にいるフィリプセンとカヴェンディッシュにもたらされた。
だが、そんな中、左手から、それまで全く姿を現していなかったはずの緑の軍団の姿が。
後方からエースのサム・ベネットを引き連れてボーラ・ハンスグローエのダニー・ファンポッペルが強烈なリードアウトで一気に先頭に。
この出現によって、アッカーマンの左手から飛び出そうとしていたカヴェンディッシュは行く手を遮られ、逆に右手から飛び出そうとしたフィリプセンは、誰もいない空間に向けてスプリントを開始することができた。
それでも、フィリプセンはまだ250mも残していた。
対するベネットの方は、その後もファンポッペルによって残り150mまで牽き上げられ、そこからのスプリントを敢行。
それだけ見れば、ベネットの有利のようにも思えた。
が、フィリプセンはそこからさらにもう一段階加速。
アッカーマンを寄せ付けない完璧なスプリントで、見事今シーズン初勝利を飾って見せた。
チームとして強かったのはバイクエクスチェンジ。アシストとして強かったのはモルコフ、リケーゼ、ズバラーリもそうだが、最強はダニー・ファンポッペルだった。
そして、エースの力量はジャスパー・フィリプセンに軍配が上がった。
昨年ツール・ド・フランスで2位と3位を3回ずつ、そしてブエルタ・ア・エスパーニャで2勝している「最強スプリンター」は、今年こそツール・ド・フランスでの勝利を飾れるか。
第2ステージ フダリアット島〜アブダビ・ブレイクウォーター 176㎞(平坦)
アブダビ首長国の人工島フダリアット・アイランドから、アブダビ中心街アブダビ・ブレイクウォーターまでの、引き続きド平坦のスプリントステージ。
ガスプロム・ルスヴェロの選手だけで構成された3名の逃げは残り36㎞地点で吸収され、集団はジャスパー・フィリプセンがふざけて自転車から足を下ろして走れてしまうくらいのスローペース。
そのまま問題なくこの日も大集団スプリントへと突入した。
第1ステージでは残り500mでミケル・モルコフの番手をパスカル・アッカーマンに奪われたマーク・カヴェンディッシュ。
この第2ステージでも、同様に残り500mで今度はボーラ・ハンスグローエのアシストにモルコフの番手を奪われてしまう。
だが、第1ステージではその後アッカーマンの背中から飛び出そうとしたところでボーラ・ハンスグローエのトレインに行く手を阻まれて勝負権を失ってしまっていたが、同じ轍を踏むわけにはいかないと、この日の彼はかなり早めに自ら勝負を仕掛けることにした。
すなわち、残り280m。
ベネットを引き連れたダニー・ファンポッペルが集団の先頭に飛び出すと、そのベネットの背後からカヴェンディッシュは早くも、誰もいない空間へと飛び出した。
その右手から、ほぼ同じタイミングでスプリントを開始したのがジャスパー・フィリプセン。
同じタイミング、同じ条件で、カヴェンディッシュとフィリプセンの一騎打ちが始まった。
そのカヴェンディッシュとフィリプセンの間に挟まれていたアッカーマンも、少し遅れてスプリントを開始し、2人の番手を取りながらチャンスを窺っていた。
だが、彼はある意味で昨日のカヴェンディッシュと同じ状態。
左カーブに合わせて進路を左へと取っていくカヴェンディッシュとフィリプセンについていった先で、コース左端を突き進むボーラ・ハンスグローエのトレインに阻まれて、勝負権を失ってしまった。
そしてこのボーラ・トレインも、先行して前に躍り出たカヴェンディッシュによって進路を阻まれ、失速せざるをえなかった。
あとは、純粋にカヴェンディッシュとフィリプセンの力比べ。
勝ったのは――。
マーク・カヴェンディッシュ、今季2勝目。
しかも、ツアー・オブ・オマーン以上に豪華な顔ぶれが並ぶ、グランツール級の頂上決戦の中で、強敵フィリプセンを力でねじ伏せた。
昨年のツール・ド・フランス4勝が奇跡ではなく、まだまだ力を残しているのだということを、まざまざと見せつけてくれた。
カヴェンディッシュをツール・ド・フランスに連れていくべきかどうか。
クイックステップにとっては贅沢な悩みである。
第3ステージ アジュマーン~アジュマーン 9㎞(個人TT)
UAE「最小の首長国」アジュマーン首長国を舞台としたド平坦短距離個人タイムトライアル。昨年の13㎞TTでも優勝しており、今年すでに行われている2つの短距離TTでも両方優勝している世界王者フィリッポ・ガンナが絶対有利と思われていたが・・・
序盤出走でトップタイムを記録したシュテファン・ビッセガー。昨年は13㎞平坦TTでガンナに14秒遅れの2位だった彼は、この日、時速55㎞という驚異的なスピードで9㎞を駆け抜けた。
これを打ち破れるとしたら、やはりもうガンナしかいない。誰もが彼の走りに注目していたがーー前半4.5㎞は1秒届かず。そして、フィニッシュ地点ではーーなんと、7秒も差がつく結果に。
シュテファン・ビッセガー。23歳の若きスイス人は、世界王者相手に早速のリベンジを果たしてみせた。
総合争い勢では、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナで総合優勝しているアレクサンドル・ウラソフが思いのほか好タイムを記録し、全体の8位に。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの個人TTでも10位に入っていたりと、山岳一辺倒というよりはオールラウンダー素質のあるクライマーへと成長しつつある。
もちろん、その中でトップクラスの成績を出したのがタデイ・ポガチャルとジョアン・アルメイダ。また、トム・デュムランも彼らを上回る3位と、昨年の東京オリンピック銀メダリストとしての実力は継続できている。あとは登りの問題。
そしてTOP10入りしていないメンバーとしても、アダム・イェーツがポガチャルから11秒遅れの区間12位、ダビ・デラクルスが同18秒遅れの区間18位、ファウスト・マスナダが区間19位と頑張っている。
一方でタイムを落としたのが昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合5位のジーノ・マーダー(ポガチャルから41秒遅れ)やツアー・オブ・オマーン総合優勝のヤン・ヒルト(ポガチャルから43秒遅れ)。
わずか9㎞のTTでこれだけ差をつけられてしまうのは残念。TTが苦手な選手として見た方が良さそうだ。
なお、昨年のオーストラリア国内選手権TT王者で昨年のU23世界選手権個人タイムトライアルでも2位に入っているイネオス・グレナディアーズのルーク・プラップにも注目が集まっていたが、こちらは1分16秒遅れの区間102位。
ただし、これはノーマルバイクを使用して、完全に翌日の山岳ステージでのアシストに専念することを意識していたから。
事実、この翌日、彼は見事な走りを見せてくれた。
第4ステージ フジャイラ要塞~ジュベル・ジャイス 181㎞(山岳)
今大会最初の山頂フィニッシュ、ジュベル・ジャイス。ラアス・アル・ハイマ首長国にある、UAE最大の山である。
登坂自体は全長20㎞と非常に長いが、道幅は広く、勾配も平均5%と緩やかではある。それでもフィニッシュまで残り15㎞を切ると、総合優勝候補タデイ・ポガチャル率いるUAEチーム・エミレーツが、まずはTTスペシャリストのミッケル・ビョーグ、ついで強力な山岳アシストのジョージ・ベネットが牽引を始め、集団は着実に絞り込まれていく。
他チームと比べエース級の選手が圧倒的に多いUAEチームは、そのアシストを贅沢に使用していく。すなわち、残り8.5㎞で、ラファウ・マイカを先行してアタックさせる。一度引き戻されたあと、残り7.1㎞でアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオのレイン・ターラマエがアタックすると、そこにもまた、マイカが反応してついていった。
マイカ、ターラマエ、そしてクリス・ハーパーやジーノ・マーダーなどの強力なクライマーたち6名が抜け出す。
これを追う必要に迫られたのが、この中にライダーを送り込めなかったイネオス・グレナディアーズ。その唯一残ったアシスト、ルーク・プラップが強力に集団を牽き、残り4.3㎞で6名を引き戻した。
残り2.9㎞。ターラマエのアシストを受けて、アンテルマルシェのヤン・ヒルトがアタック。これにポガチャルが反応したことによって、集団は7名に絞り込まれた。ヒルト、ポガチャル、アダム・イェーツ、ウラソフ、バルデ、ビルバオ、そしてアシストとしては唯一の、プラップ。
だが、UAEチームはここでも層の厚さを存分に活かす。ポガチャルは自ら動くことはせず、ライバルたちのアタックに反応して引き戻すことに専念。逆にメイン集団の方はジョアン・アルメイダが先頭を牽き、7名を捕まえにかかる。
結局、残り1.3㎞で集団に吸収。
そこからUAEチームは、先頭アルメイダ、後ろにマイカ、ポガチャルと並び、ライバルに飛び出すことを許さないトレイン体制でフィニッシュまで爆走。
途中プラップの飛び出しによってアルメイダを使い切るが、最後はしっかりとポガチャルのスプリントでイェーツもウラソフも蹴散らしてしまった。
ポガチャルだけでなくUAEチーム・エミレーツ自体が着実に進化を遂げていることをまざまざと見せつけられたステージ。
一方で新鋭オールラウンダーのルーク・プラップが、山岳でもしっかりと強いことを証明してみせたステージでもあった。
プラップのこのUAEツアーでの活躍については以下の記事も参照のこと。
第5ステージ ラアス・アル・ハイマ・コーニッシュ~アル・マルジャン島 182㎞(平坦)
UAE最北東端のラアス・アル・ハイマ首長国の首都をスタートし、最後は珊瑚の形をした人工群島にフィニッシュ。2018年にはマーク・カヴェンディッシュ、昨年はサム・ベネットが勝利した定番スプリントステージ。
最初に4名の逃げが形成されたが、強い横風により集団分裂の危機に瀕したプロトンはペースアップし、残り130㎞地点で吸収。
新たに作られた4名の逃げも残り60㎞の段階で吸収された。
そして、最終的に生まれた逃げはたった一人。
ガスプロム・ルスヴェロのミヒャエル・クークレル。
残り31㎞からたった一人で飛び出したクークレルは、その後も残り3㎞まで粘り切るが、結局は大集団に飲み込まれ、最後は予定通りのスプリント決戦へと突入した。
だが、思ったよりも粘ったクークレルを追って、集団もやや、アシストの力を使いすぎてしまったのか。
残り500mを過ぎた段階で、多くのチームがそのアシストを失い、単独のエースがバラバラに先頭に出てくる状態となっていた。
そんな中、やはり最強のアシストと言えるのはこの男だった。
ボーラ・ハンスグローエの最終発射台、ダニー・ファンポッペル。
昨年は実績だけで言えばサム・ベネット以上の男である彼が、今大会ここまで誰よりも強い牽引を見せていたが、この日も同様であった。
この、多くのアシストが脱落してしまった残り500m時点で、ほぼ唯一エースを従えて先頭を突き進み、集団を縦に長く引き伸ばすこととなった。
イネオス・グレナディアーズのエリア・ヴィヴィアーニもアシストに連れられてはいたものの、それも彼をこの先頭集団にかろうじて食らいつかせることしかできず、先頭まで彼を牽き上げるということは不可能だった。
このまま、完璧なタイミングでベネットを発射できれば、良かったのだが。
その意味で、彼が前に出るのが早すぎた。あと1枚、アシストが残っていれば。
残り450mから先頭に突き出て一気に加速していったファンポッペルは、残り200mで力尽きる。
その時点からスプリントを開始せざるをえなかったベネット。だが、彼にとってこの距離は少し遠すぎた。
そして、このファンポッペルの超加速に食らいついていったのが、第1ステージで勝利しているジャスパー・フィリプセン。
そして彼にとって、残り200mという距離は、勝負するには十分すぎる距離であった。
先行するベネット。だが、やはりその途中で失速していき、後方から加速したフィリプセンによって、いとも簡単に追い抜かれてしまう。
クーイも良い加速を見せていたが、その進路をベネットが阻んだことで失速し、回り込んで最後はベネットを左から追い抜いていくが、フィリプセンに届くことはできなかった。
ライバルであるカヴェンディッシュもこの日はラスト1㎞でメカトラブルで脱落していたこともあり、洋々と2勝目。
今年こそツール・ド・フランス勝利。その目標に向けて、良い滑り出しとなった。
そして大集団スプリントを期待できるステージがあともう1つ、あったのだが・・・。
第6ステージ EXPO2020ドバイ~EXPO2020ドバイ 180㎞(平坦)
ドバイ市中を舞台とした大集団スプリントステージ。
ガスプロム・ルスヴェロの選手3名を含む総勢6名の逃げが形成され、連日と比べても多めの逃げに警戒心をもったプロトンが大きなギャップを許さず、残り100㎞を切った時点ですでに1分台。
問題なくこの日も逃げを吸収し、スプリント決着へと進むはずだった。
しかし、そのあとのタイム差の減少が止まってしまった。
残り20㎞で1分差はまだわかる。
残り10㎞でむしろタイム差が開いて1分23秒になっているのはかなりやばいのでは?
しかし、集団も必死になって追走を開始しようという雰囲気を感じられない。なにしろ、この危機的状況でメイン集団の先頭を牽くのはクーン・ボウマンやファウスト・マスナダなどのクライマー系の選手。
前日までのスプリントステージで、コロナの影響で各チームの人数が少ないゆえか、ラスト1㎞を切ってからのアシストの数が不足気味だったプロトン。
この日も、早めに動いてアシストの足を削りたくないという意思が全チームに働いたのか、どこも全力で前を牽こうとする様子が見られなかった。
そうこうしているうちに、残り8㎞で1分14秒、残り6㎞で1分8秒、そして残り5㎞でようやく1分を切る・・・
TTスペシャリストのヨス・ファンエムデンが前に出てきたのは残り2.3㎞になってから。
そのときまだタイム差は45秒。
追いつけるはずも、なかった。
よって、勝負は先頭5名に委ねられる。
3人も残したガスプロム・ルスヴェロのディミトリ・ストラーコフが集団先頭をひたすらに牽引。
そして残り200mでガスプロムのマティアス・ヴァツェクがスプリントを開始し、これに昨年U23版イル・ロンバルディア覇者のポール・ラペイラが貼り付くがーーわずか19歳のヴァツェクは、しっかりとこれを押さえ込んでプロ初勝利を成し遂げた。
本日(3/2)、UCIから全ロシア・ベラルーシ籍のUCIチームのライセンス剥奪が発表され、その所属選手のレース出場の道が断たれたガスプロム。
この日はある意味、その出来事を前にした最後の輝きの瞬間。スプリントで活躍していたマルチェッリらと共に、この先早い段階で再びチャンスを手にするときが来ることを祈っている。
第7ステージ アル・アイン~ジャベル・ハフィート 148㎞(山岳)
最終ステージはアブダビ・ツアー時代からの定番山頂フィニッシュ、ジャベル・ハフィート。第4ステージのジャベル・ジャイスよりも短いがより厳しい登りで、正真正銘の最終決戦が繰り広げられる。
第4ステージでは終盤まで粘り、この最終日まで4秒差で総合2位を守っていたフィリッポ・ガンナも、登りの開始と同時に早々に脱落。
残り7㎞でトム・デュムランも脱落。第4ステージで早い段階で脱落していた彼は、現時点では今年のジロ・デ・イタリアでの総合争いも、難しいと言わざるをえない状況となっている。
残り5.8㎞からジョージ・ベネットが先頭を牽き始め、いよいよ集団は本格的なセレクションに。ヤン・ヒルトも、ファウスト・マスナダも、ダビ・デラクルスも落ちていき、残り4.2㎞でラファウ・マイカが先頭を牽き始めると今度はロマン・バルデやクリス・ハーパーも脱落し、先頭は残り8名に。
そして残り3.2㎞。総合逆転を狙うアダム・イェーツがアタック。唯一タデイ・ポガチャルだけがここに食らいついていく。
少し遅れて後続集団からペリョ・ビルバオがアタックするが、ここにすぐさまジョアン・アルメイダが反応。
残り2.1㎞で、先頭はポガチャル、アルメイダ、ビルバオ、イェーツの4名に。
残り1㎞。再びアダム・イェーツがアタックし、アルメイダとビルバオは引き離される。
だがポガチャルは離れない。そのまま昨年と同じく、フィニッシュ前の下りでイェーツの前に出て、そのままスプリントで今大会2勝目。
余裕すぎる総合2連覇。直前の新型コロナウィルス陽性のニュースからどうなるか不透明だったが、蓋を開けてみれば・・・と言う感じだった。
フィニッシュ後は苦笑するほかなかったイェーツだが、そのアタックにポガチャル以外の誰もついていけなかった辺り、今年の彼もかなり調子が良いのは確か。
エガン・ベルナルのまさかの大事故で揺れるイネオスだが、今年の彼らの活躍も楽しみである。
最終総合成績は以下の通り。ポガチャルとアダム・イェーツが強かったのは間違いないが、最終ステージで上位に食い込んできたビルバオも好調さを見せつけた。ウラソフは最後の最後で失速したのが残念だった。
ベローナも最終ステージで上位に残っており、エースが少なく苦しいモビスターにとって、貴重な存在となりうる男かもしれない。
だが、総じてUAEチーム・エミレーツの総合力の高さを思い知った1週間であった。かつてはエースの数のイネオス、バランスのとれたユンボ・ヴィズマ、そしてエースだけが強いUAE、という構図だったはずなのだが、イネオス並みにエース級の選手たちを集めたうえで、しっかりと彼らを機能させていた。
このままツール・ド・フランス3連覇も手にしてしまうのか。
盤石の最強、タデイ・ポガチャルのシーズンが始まる。
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