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ツール・ド・フランス・ファム2022 プレビュー

 

いよいよ開幕する、女子版ツール・ド・フランスこと、ツール・ド・フランス・ファム第1回大会。

男子版ツールの最終日シャンゼリゼの日に開幕し、7/31(日)にラ・プランシュ・デ・ベルフィーユでフィニッシュする8日間の本格的ステージレース。

今回はそのツール・ファムの全8ステージの詳細と、注目すべき選手たちを紹介していく。

 

注目された女子版パリ〜ルーベも昨年、今年とも白熱した名レースが展開されており、今回のツール・ファムも十分に期待できるものとなりそうだ。

 

女子ロードレースの今年の注目選手はこちらから

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目次

 

男子ロードレースの振り返りはこちらから

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コースプレビュー

男子ツールの最終日と同じパリ・シャンゼリゼで開幕。そこからまっすぐ東へ進みヴォージュ山脈で週末を戦う全8日間。

中には男子レース並の距離を戦うロングステージも含み全長1,033.6㎞。ピュアスプリンター向きの平坦ステージ有り、パンチャー・アタッカー向けの丘陵ステージ有り、中には未舗装路まで含んでいるという、ツール・ド・フランスの名に恥じないバランスの取れた8日間。

女子ロードレース界の「最強」がここで激突する。

 

第1ステージ パリ〜パリ 81.6㎞(平坦)

1989年以来、実に33年ぶりの開催となった、本格的なステージレースとしての「女子版ツール・ド・フランス」は、世界で最も有名なスプリンターステージ、シャンゼリゼの周回サーキットで開幕する。

1周6.8㎞のコースを12周。男子レースの場合はパリ郊外から長いパレードランが行われるが、女子レースはシャンゼリゼ周回コースのみを使用する。

「女子版ツール・ド・フランス」がシャンゼリゼを使うのは33年ぶりではない。2014年から始まったワンデーレースとしての女子版ツール・ド・フランス、「ラ・クルス by ツール・ド・フランス」は、最初の3回をこのシャンゼリゼで開催した。その栄えある初代女王はマリアンヌ・フォス。第2回は昨年引退したアンナ・ファンデルブレッヘンが逃げ切り独走勝利。そして第3回はこちらも現役バリバリのクロエ・ホスキングが、「スプリンターの世界選手権」を制した。

今年もまた、男子と違って初日ではあるものの、同じくらいの注目度で最初のマイヨ・ジョーヌ決定戦が繰り広げられる。

 

第2ステージ モー〜プロバン 136.4㎞(平坦)

パリの東に位置する町モーを出発し、南東に進んだ先のプロバンまで。山岳ポイントは16.9㎞地点に用意された4級山岳コート・ド・ティジョー(登坂距離1.5㎞、平均勾配4.7%)のみとなっており、オールフラットと形容してもいいようなレイアウトになっている。

よって、第1ステージに続きこの日も大集団スプリントが期待されるだろう。

フィニッシュ地点のプロバンは中世において一大交易拠点として栄え、シャンパーニュの大市の開催都市としても知られる。「中世市場都市プロバン」の名で世界遺産にも登録されている町だ。

13世紀後半に建てられたというフランス最古のホテル(今はレストラン)、オステルリー・ド・ラ・クロワ・ドールも有名である。

「最強のピュアスプリンター」ロレーナ・ウィーべスが第1回女子版ツール・ド・フランスの序盤戦を席巻してしまうか、それとも。

 

第3ステージ ランス〜エペルネー 133.6㎞(丘陵)

パリ東部、シャンパンで有名なシャンパーニュ地方の中心都市ランスからエペルネーまでを突き進む。

ベルギー・アルデンヌ地方から連なる地域でもあり、この日もその特色を継承したアップダウンステージとなっている。

全部で4つの山岳ポイントが用意されているが、勝負所は残り15.8㎞地点に用意された3級コート・ド・ミュティニー(登坂距離900m、平均勾配12.2%)。短くも厳しい分かりやすい激坂である。

 

さらにフィニッシュ前3.2㎞地点には、山岳ポイントではないが男子レースでは今年は廃止されているボーナスタイムポイント(登坂距離1,000m、平均勾配4.6%)が用意されており、総合勢によるアタックが見られる可能性もある。

 

そしてラスト500mは平均勾配8%の結構厳しい登りフィニッシュ。

 

現世界王者のエリーザ・バルサモやジロ・ローザ通算32勝の女王マリアンヌ・フォス、今年のストラーデビアンケ覇者ロッタ・コペッキーなどの登れるスプリンターや、場合によってはアネミエク・ファンフルーテンやエリーザ・ロンゴボルギーニらの総合系による戦いが繰り広げられる可能性はあるだろう。

 

第4ステージ トロア〜バール=シュル=オーブ 126.8㎞(丘陵)

この日もシャンパーニュ地方を舞台とする。前日のマルヌ県の南に位置するオーブ県に赴き、その県庁所在地トロワから東に進路を取って県名の由来となるオーブ川が流れる町バール=シュル=オーブへ。

この日もアップダウンを特徴とするステージだが、最大の特徴は登りと共に用意された「シュマン・ブラン」と呼ばれる未舗装路。フランス語で「白い道」を意味するこのセクションが合計4回登場するこのステージは、当然のことながら「フランス版ストラーデビアンケ」と称されることとなる。

戦いのゴングは残り58.7㎞地点に位置する3級コート・ド・セル=シュル=ウルス(登坂距離1.1㎞、平均勾配8.9%)と、その頂上から始まる全長2.3㎞の第4セクター「シュマン・ブラン・ド・セル」で鳴らされる。そこから60㎞に渡り、フランスのストラーデビアンケが開幕するのである。

 

最大の勝負所は残り37.5㎞地点から始まる第2セクター「シュマン・ブラン・デュ・プラトー・ド・ブル」。全長4.4㎞とこの日最長のグラベル区間は、それ以外の3つと違いやや登り基調の未舗装路という点でも一味違う。残り距離的にも絶妙な具合のため、ここで総合優勝候補が集団を絞りにかかる可能性は十分あるだろう。

ラストは本家ストラーデビアンケのカンポ広場のような登りフィニッシュではない。ラスト9.1㎞地点にボーナスタイムポイント(登坂距離1.7㎞、平均勾配5.1%)とラスト5.1㎞地点に用意された4級コート・デュ・ヴァル・ペルデュ(登坂距離1.8㎞、平均勾配4.1%)を挟みつつも、最後は下りからの平坦フィニッシュだ。

過去ストラーデビアンケで好成績を残しているアネミエク・ファンフルーテン、エリーザ・ロンゴボルギーニ、ロッタ・コペッキーあるいはシャンタル・ブラークなどに注目だ、

 

第5ステージ バール=ル=デュク〜サン=ディエ=デ=ヴォージュ 175.6㎞(平坦)

パリ近郊をいよいよ離れ、ドイツ国境に位置するヴォージュ山脈の麓へと辿り着く、今大会最長ステージ。

山岳ポイントは2つあるがいずれも小さな丘程度のものに過ぎず、この日最大の難所は男子レースに匹敵する長さというだけ。今大会最後の大集団スプリントステージとなるだけに、各チームのスプリンターたちが気合を入れて臨むことになりそうだ。

 

第6ステージ サン=ディエ=デ=ヴォージュ〜ロスハイム 129.2㎞(丘陵)

ヴォージュ山脈を西から東へ横断。ただし山を越えるわけではなく、谷の比較的平坦部分を通過しながらドイツ国境沿いのアルザスワインの町ロスハイムへ。ストラスブールまでわずか25㎞という位置にある。

残り20.2㎞地点で一度フィニッシュラインを越え、そこから残り9.1㎞地点で4級コート・ド・バルシュ(登坂距離2㎞、平均勾配4.4%)に登り、その後もわずかに登ってからフィニッシュへの下りへ。

いずれにせよ決して厳しすぎる登りではないため、スプリンターもある程度は残ってもおかしくはない。フォスやコペッキー、エマセシル・ノースガードはもちろん、今年意外と登れる姿も見せているロレーナ・ウィーべスですらもしかしたら?

あとはこの登りでどれだけライバルチームがペースを作るかによるだろう。

 

第7ステージ セレスタ〜ル・マルクシュタイン 127.1㎞(山岳)

いよいよツール・ド・フランス・ファムも山岳ステージに突入していく。その1日目は、35㎞のアルザス平原を消化した先に3つの1級山岳を用意したハードなレイアウト。

1つ目は残り78.5㎞地点のプチ・バロン(登坂距離9.3㎞、平均勾配8.1%)

 

降りきった後に間髪入れずに訪れる2つ目の1級山岳コル・デュ・プラッツァーヴァーゼル(登坂距離7.1㎞、平均勾配8.3%)は2014年の男子版ツール・ド・フランスの第10ステージにも登場している。

 

いずれもなかなか厳しい山岳が用意されている中、しばしの小休止を入れたうえで残り7.2㎞地点に最後の1級山岳グラン・バロン(登坂距離13.5㎞、平均勾配6.7%)にやってくる。

 

ラスト6㎞は8%前後の勾配が延々と続く本格的なクライマー向け登坂となっており、そこからフィニッシュまでは下り基調の平坦レイアウトではあるが、総合優勝候補たちだけが生き残る結果となるだろう。

まずは総合争いの第一段階。もちろん、翌日はさらに厳しい戦いが待っている。

 

第8ステージ リュール~ラ・スーペル・プランシュ・デ・ベル・フィーユ 123.3㎞(山岳)

ヴォージュ山脈ふもとの町リュールからスタートするツール・ド・フランス・ファム最終ステージは、残り70.8㎞地点の2級コート・デスムリエール(登坂距離2.3㎞、平均勾配8.5%)と残り38.7㎞地点の1級バロン・ダルザス(登坂距離8.7㎞、平均勾配6.9%)を経て、最後に「キングメーカーの山」1級ラ・スーペル・プランシュ・デル・フィーユ(登坂距離7㎞、平均勾配8.3%)にて文字通り頂上決戦を迎える。

 

「スーペル」の名が示す通り、今年の男子ツールでも登場した、未舗装路超激坂区間を含む最も難易度の高いコース。

逃げていたケムナが完全に足を止めてしまったほどの激坂。最後は100m・50mですら逆転劇が巻き起こるほどの超激坂で、第1回女子版ツール・ド・フランスの覇者が決定する。

 

今大会、最大の総合優勝候補はもちろん、直近のジロ・デ・イタリア・ドンナも総合優勝している「女王」アネミエク・ファンフルーテン。

だが、そのファンフルーテンを「激坂」ラ・フレーシュ・ワロンヌで今年打ち破っているのが、ジロ・デ・イタリア・ドンナでも総合2位とほぼ唯一ファンフルーテンに食らいついていたマルタ・カヴァッリ。

今回もその2名による激戦が繰り広げられるのか。それともエリーザ・ロンゴボルギーニやデミ・フォレリングらライバルたちがそこに食い込んでいくのか。

 

歴史に残る最初のツール・ド・フランス・ファム覇者は果たして誰の手に?

 

続いて注目選手を見ていこう。

 

 

注目選手 総合編

各チーム6名ずつの出場で、全24チーム144名が一堂に会する。ワールドチーム14チームに加え、コンチネンタルチームからもシルヴィア・ペルシコ擁するヴァルカー・トラベル&サービスやマヨレイン・ファンテローフ率いるル・コル=ワフー、あるいはクイックステップとも提携しているという注目の育成チームAGインシュランス・NXTGレーシングなど10チームが参戦。

まさに女子ロード界最強の選手たちが集う、文句のない布陣となっている。

その中から、総合優勝候補5名とスプリント優勝候補5名とをそれぞれ紹介していく。

 

なお、女子ロード界全体の注目選手については下記の記事を参照のこと。

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アネミエク・ファンフルーテン(モビスター・チーム)

オランダ、40歳、登坂力152、丘陵303

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今年の主な戦績

  • ジロ・デ・イタリア・ドンナ総合優勝
  • リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝
  • オンループ・ヘットニュースブラッド優勝

 

世界王者もオリンピック金メダルもリエージュ~バストーニュ~リエージュもロンド・ファン・フラーンデレンもすべて制している世界最強の一角。激坂もこなせる世界トップクラスの登坂力だけでなく、昨年の東京オリンピック金メダルを獲得しているTT能力を活かした圧倒的な独走力でライバルたちを突き放し、大きなタイム差をつけることも得意としており、今年のジロ・デ・イタリア・ドンナも同様に独走から圧勝を果たした。

ジロ・デ・イタリア・ドンナとはそもそも何か。かつてはジロ・ローザとも呼ばれていた女子版ジロ・デ・イタリアであるが、女子版ツールのなかったこれまでの歴史においては、女子界最高峰のステージレースであることは疑いようのないレースである。そのレースでファンフルーテンは今年で3回目の総合優勝。しかも今年は2位カヴァッリに1分52秒差、3位マビ・ガルシアに5分56秒差と圧倒的な大差をつけての総合優勝を果たしている。

アンナ・ファンデルブレッヘンが引退してしまった中、ステージレースにおける最強選手であることは間違いがなさそうだ。

とはいえ、同じように最強と思われていたタデイ・ポガチャルが崩れ落ちたのが今年の男子ツール・ド・フランス。

女子ツールでも、同様に意外な展開が待ち受けているかもしれない。

 

マルタ・カヴァッリ(FDJスエズ・フチュロスコープ)

イタリア、24歳、登坂力150、丘陵223

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今年の主な戦績

  • アムステルゴールドレース優勝
  • ラ・フレーシュ・ワロンヌ優勝
  • ジロ・デ・イタリア・ドンナ総合2位

 

7月から新たなスポンサーとして「スエズ」が加わったFDJのエースナンバーはこれまでも実績のあるセシリーウトラップ・ルドヴィグ。だが、今年の実績だけで言えば間違いなくこのマルタ・カヴァッリこそがエースというべきだろう。

何しろ、アムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌのアルデンヌ連覇。そのフレーシュ・ワロンヌでは、ユイの壁でいつも通り圧倒的な力でライバルたちを突き放して先頭を突き進んでいたアネミエク・ファンフルーテンを最後の最後で追い抜き、スプリントで逆に突き放した衝撃の勝ち方を見せた女性である。さらに、直近のジロ・デ・イタリア・ドンナでも、マビ・ガルシアが5分56秒、エリーザ・ロンゴボルギーニが6分45秒、セシリーウトラップ・ルドヴィグについては総合6位だが12分14秒も大差がついている中、このカヴァッリだけは1分52秒とほぼ唯一ファンフルーテンに食らいつく走りをしてみせていた。

何より、そんなカヴァッリとルドヴィグが共にいるというのが非常に心強い。それこそ今年のポガチャルを倒したヨナス・ヴィンゲゴーとプリモシュ・ログリッチのように、この2人がコンビネーションを発揮することで最強ファンフルーテンを打ち倒すことは十分に可能だろう。

さらに、今年のFDJはチームとしても非常に強い。リエージュ~バストーニュ~リエージュではグレース・ブラウンとエヴィタ・ムジッチがカヴァッリと共に奮闘し、最終的にブラウン2位、カヴァッリ6位、ムジッチ20位と素晴らしいチームとしての成績を収めてみせた。その二人も今回出場している。

それもまた、ユンボ・ヴィズマに近いものを感じる。初代ツール・ファム覇者の座は、フランスチームがしっかりと掴み取ることができるか。

 

エリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)

イタリア、31歳、登坂力118、丘陵286

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今年の主な戦績

  • パリ~ルーベ優勝
  • ウィメンズ・ツアー総合優勝
  • ジロ・デ・イタリア・ドンナ総合4位

 

アンナ・ファンデルブレッヘンとアネミエク・ファンフルーテンの頂上決戦の中に果敢に挑みかかっていたイタリアの新世代の女王候補。なかなか勝ちきれないところもあったが、今年はパリ~ルーベで驚異の独走を見せて見事勝利。やはり彼女も「最強」の一角であることを証明してみせた。

ただ、ワンデーレーサーとしての資質の方がステージレーサーとしてのそれよりもやや上回っているのが実情か。今年のジロ・デ・イタリア・ドンナではファンフルーテンから6分45秒遅れ、マルタ・カヴァッリからでも4分53秒差の総合4位で終わっており、今回も総合優勝候補筆頭とは言いづらい状況ではある。チーム力が魅力でもあるトレック・セガフレードとはいえ、盟友エリザベス・ダイグナンが第二子出産のために戦線離脱中であることもロンゴボルギーニにとっては苦しいところ。もちろんエレン・ファンダイクやシリン・ファンローイなどの強い仲間たちはいるが、最も厳しい山岳決戦では一人で戦わざるを得ないことは確かだろう。

果たしてどこまで食らいつけるか。

 

デミ・フォレリング(チーム・SDワークス)

オランダ、26歳、登坂力97、丘陵324

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今年の主な戦績

  • イツリア・ウィメン区間3勝&総合優勝
  • ブラバンツペイル優勝
  • アムステルゴールドレース2位

 

モビスター・チームがアネミエク・ファンフルーテン率いる男子UAEチーム、FDJスエズ・フチュロスコープが強力なダブルエース擁する男子ユンボ・ヴィズマみたいなものだとすれば、伝統とやっぱり高い総合チーム力を有するこのチーム・SDワークスはイネオス・グレナディアーズみたいなものと言えそうだ。実際、実績だけで言えば総合チーム力は今大会出場チームの中で圧倒的に最強である。

それは別の言い方をすれば、強力なメンバーが揃ってはいるものの、エース単体の実力でいえばポガチャルやログリッチ(ヴィンゲゴー)擁するUAEやユンボには一歩劣らないということでもある。このチームのエースはこのフォレリング、その他にもアシュリー・ムールマンも非常に強いが、いずれも単体ではなかなかファンフルーテンやもしかしたらロンゴボルギーニにも届かないかもしれない。

とはいえ、他のライバルたちが出場しているジロ・デ・イタリア・ドンナにはフォレリングもムールマンも出場していない。そしてフォレリングは5月のイツリア・ウィメンで3つあるステージ全勝という圧倒的な形で総合優勝している(カヴァッリも出場していて1分21秒差の総合4位)。

もちろん、ジロ・ドンナやツール・ファムほどの厳しさを持たないレースではあるが、それ以外にも5月のブエルタ・ア・ブルゴス・フェミナス最終ステージの超級山頂フィニッシュで勝利するなど、決して調子が悪いわけではない。ムールマンも6月のウィメンズ・ツアーで総合5位。

男子ツールのイネオスも、ゲラント・トーマスが総合3位と健闘。女子のSDワークスは、これを同じく健闘で終わらせるか、それとも。

 

マビ・ガルシア(UAEチーム・ADQ)

スペイン、38歳、登坂力118、丘陵196

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今年の主な戦績

  • ジロ・デ・イタリア・ドンナ総合3位
  • ラ・フレーシュ・ワロンヌ5位
  • アムステルゴールドレース6位

 

女子界最強スペイン人がUAEの名を背負った殴り込み。ジロ・デ・イタリア・ドンナでは総合3位と、ちょっと勢いが衰えていたように感じていた今シーズンにおいては最高の走りを見せ、この第1回ツール・ファムでも十分に総合表彰台以上の可能性を感じさせる走りをしてみせた。

もちろん、チーム力においてはSDワークスやFDJには敵わず、最終山岳は単独で戦う必要に迫られるだろうが、これまでも単身でファンフルーテンやファンデルブレッヘンに食らいつき続けてきた彼女。ベテランの意地を見せつけてやろう。

 

 

注目選手 スプリント編

ロレーナ・ウィーベス(チームDSM)

オランダ、23歳、丘陵34、スプリント力445

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今年の主な戦績

  • ライドロンドン・クラシック総合優勝
  • ロンド・ファン・ドレンテ優勝
  • ノケレ・コールス優勝

 

これまでも女子ロード界最強のピュアスプリンターであることは疑いようのなかった最強スピードマンだったが、今年はさらに異次元の強さを見せ続けている。女子ではワールドツアークラスのレースであるロンド・ファン・ドレンテやプロシリーズのノケレ・コールスではただ優勝しただけでなく、それぞれ2位のエリーザ・バルサモとロッタ・コペッキーに対して普通にスプリントしたにもかかわらずなぜか1秒差がついてしまうという圧倒的なスプリント力を見せつけた。まさに怪物。

しかもやや登り基調のレースでも、これまでと違って生き残ったり勝負できていたりするなど、弱点と思われていた起伏に対しても克服の兆しがみられてより一層無敵度が増している。

第1回ツール・ファムにて、その爪痕を残せるか。

一方、チームメートのシャーロット・クールも同じ23歳だが、プロ1年目にも関わらずすでにその才能が本物であることを見せつけ続けている。ジロ・デ・イタリア・ドンナでは2位が2回、3位が1回。

今回はさすがにウィーベスのアシストとして出場することになるだろうが、彼女のリードアウトからウィーベスが発射されるとしたらあまりにも驚異的だし、ウィーベスが何かしらの形で勝負ができないタイミングでも、セカンドエースとして申し分のない存在だと言えるだろう。

 

エリーザ・バルサモ(トレック・セガフレード)

イタリア、24歳、丘陵156、スプリント力286

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今年の主な戦績

  • トロフェオ・アルフレッド・ビンダ優勝
  • クラシック・ブルッヘ~デパンヌ優勝
  • ヘント~ウェヴェルヘム優勝

 

ゼッケンNo.1を付けることを許された現世界王者。昨年まではコンチネンタルチームのヴァルカー・トラベル&サービス所属だったためにあまり目立った選手ではなかったが、マッス・ピーダスンのようにというべきか、昨年ロンゴボルギーニのアシストを受けて世界王者を掴み取った瞬間から、そのアルカンシェルに相応しい非常に強い走りを見せ続けている。

今年もすでに8勝。ジロ・デ・イタリア・ドンナでも2勝と、文句のない絶好調ぶり。マリアンヌ・フォスとの直接対決でも2勝1敗と勝ち越している。

ピュアスプリントとなる第1・第2ステージではややウィーベスが実績的に優位かもしれないが、その後の丘陵系のステージではバルサモに軍配が上がる可能性は十分にあるだろう。

総合優勝候補のロンゴボルギーニと共に二つの果実を取りに行く格好ではあるが、それぞれがそれぞれを(昨年の世界選手権のように)アシストできる関係でもあるため、うまくチームとして大きな結果を持ち帰りたいところ。

 

マリアンヌ・フォス(チーム・ユンボ・ヴィズマ)

オランダ、35歳、丘陵259、スプリント力200

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今年の主な戦績

  • ジロ・デ・イタリア・ドンナ区間2勝
  • ヘント~ウェヴェルヘム2位
  • ストラーデビアンケ7位

 

フランスでは女子ロード界のカニバル(エディ・メルクスの愛称)とも呼ばれているらしい生ける伝説。ロードだけでなくマウンテンバイク、トラックレース、シクロクロスでもそれぞれ実績を積み上げており世界王者やオリンピック金メダルはもちろんすべて制覇している。

そして、女子ロード界最高峰のステージレースであった女子版ジロ・デ・イタリアでは計32勝を数え上げており、本当にメルクスに肉薄している状態。今年も途中リタイアしたものの2勝を数え上げており、衰えを感じさせない。

そんな彼女にとって、この新しい勲章たるツール・ファムでのステージ優勝も、どうしたって取らざるをえない勲章。未舗装路を特徴とする第4ステージ含め、週末の山岳ステージ以外はすべて彼女向きのステージとも言え、どれだけ勝利を量産していくかが楽しみである。

 

エマセシル・ノースガード(モビスター・チーム)

デンマーク、23歳、丘陵124、スプリント力239

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今年の主な戦績

  • ル・サミン優勝
  • オンループ・ヘットニュースブラッド2位
  • ライドロンドン・クラシック総合3位

 

昨シーズン大ブレイクした新世代スプリンター最強候補の一角。ただ、今年はやや勢いを減じており、勝利は国内選手権TTを除けばル・サミンでの1勝のみ。直前のジロ・デ・イタリア・ドンナでもステージ3位とステージ7位が1回ずつは、他のライバルたちと比べると物足りない結果なのは確かだ。

とはいえ、今年の男子ツールはデンマークスタートでそのデンマーク人が大活躍したツールでもある。女子ツールではデンマークを走らないものの、その勢いを背負って彼女もまた結果を残したいところ。

 

ロッタ・コペッキー(チーム・SDワークス)

ベルギー、27歳、丘陵219、スプリント力171

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今年の主な戦績

  • ストラーデビアンケ優勝
  • ロンド・ファン・フラーンデレン優勝
  • パリ~ルーベ2位

 

今年はある意味デミ・フォレリング以上にこの最強チームの最強たる所以を背負い続けてきた女性。とくにストラーデビアンケではアネミエク・ファンフルーテンを激坂で突き放すという驚異的かつ感動的なレースを展開。今大会の「フランスのストラーデビアンケ」は本家と違って最後に激坂が用意されているわけではないが、同じように強豪選手たちを蹴散らしていきたいところ。ロンドも勝ってルーベも2位なのだから、優勝候補筆頭は間違いないだろう。

もちろん、ピュアスプリントでも十分に戦える。ジロ・デ・イタリア・ドンナでは区間2位・区間4位・区間6位を1回ずつ。勝ちまでは拾えなくとも、確実に上位には食い込んでいくだろう。

 

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