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サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2022シーズン 1月主要レース振り返り

 

毎月の大小さまざまなレースを簡単に振り返っていく「主要レース振り返り」シリーズ。

今年もシーズン通してやり切ることを目標に頑張っていきます。なかなか中継に映らないレースについても触れていて嬉しいというコメントをもらうことも多いので、結構大変ですが頑張っていきたいと思います。

 

今年も昨年に続き、新型コロナウイルスの影響で1月のレースがほとんどなかったこともあるので、通常の「プロシリーズ以上」という制約を外し、非UCIレースも含めたレース群について触れていこう。

 

参考:過去の「主要レース振り返り」シリーズ

主要レース振り返り(2018年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2019年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2020年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2021年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

 

それではいってみよう。

(表中の年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります)

 

目次

   

参考:昨年の1月~2月「主要レース振り返り」

www.ringsride.work

 

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オーストラリア国内選手権男子エリートロードレース

国内選手権 開催国:オーストラリア 開催期間:1/16(日)

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note.com

 

タフなコースレイアウトで毎年白熱した展開を見せてくれるオーストラリア国内選手権ロードレース。昨年は新型コロナウイルスの影響で2月頭に移動していたが、今年は本来のスケジュールに近い1月のこの時期に。

例年国内唯一のワールドツアーチームとして勢力を誇り、昨年・一昨年とキャメロン・マイヤーが連覇しているチーム・バイクエクスチェンジ・ジャイコだが、今年は欧州に多くの選手を残していることもあり、今回の出場は3名だけ(キャメロン・マイヤー、ルーク・ダーブリッジ、カラム・スコットソン)に。

しかもマイヤーとスコットソンはレース前半で早々にリタイアし、終盤戦においてはダーブリッジ一人で戦う必要に迫られてしまった。

ほか、TTの方で国内王者に輝いたローハン・デニス(ユンボ・ヴィスマ)も、チームメートのクリス・ハーパーを引き上げるために力を使い果たしリタイア。

レースをコントロールしうる有力勢が次々と数を減らす中、散発的なアタックが繰り返されるサバイバルな展開となった。

 

そんな中、とくに積極的な動きを見せていたのが元EFエデュケーション・NIPPOで今年から地元コンチネンタルチームのブリッジレーンに所属することになったジェームス・ウェーラン

残り3周を前にして集団から抜け出し、最終的に逃げていた選手たちをすべて追い抜いて単独で先頭に立った。

 

しかし、他に一緒に逃げる選手がいるのであればまだしも、たった一人で残り30㎞以上を逃げ切るにはやや困難が多かった。

さらに、残り30㎞を切って、今年からイネオス・グレナディアーズ入りを果たした期待の若手ルーク・プラップが、集団から飛び出してハイ・ペースで追走を開始。

昨年の国内選手権エリート個人タイムトライアルでルーク・ダーブリッジをも打ち破った独走力を発揮し、着実にウェーランを追い詰めていくプラップ。

一方のメイン集団では、ルーク・ダーブリッジとチーム右京のベンジャミン・ダイボールが中心となって牽引するが、クリス・ハーパーも消極的でなかなかペースが上がらない。

残り1周(11.6㎞)の段階で先頭ウェーランとダーブリッジらメイン集団とのタイム差は1分40秒。

勝負は先頭の2人に託される形となった。

 

そして残り9㎞。最後のブニンヨン山の登りの途中で、プラップがついにウェーランを捉える。

そして並びかけた次の瞬間にはあっという間にこれを突き放し、単独で先頭に立つこととなった。

 

昨年のこの男子エリートロードレースでは残り50㎞近くから飛び出したがあまりにも早すぎて失速してしまっていたプラップだったが、今年はその反省からか残り30㎞まで集団の中で息を潜めて足を貯めていた。

そして自らが絶対に勝てるタイミングで抜け出し、得意の独走パターンに。

自らの武器を十分に生かし切った走りであった。

 

そして2022年最初の国内選手権ロードレースの勝利はイネオス・グレナディアーズの新人ルーク・プラップの手に。

昨年の個人タイムトライアル勝利に続き、エリート国内王者2冠を早くも達成した。

Embed from Getty Images

 

そしてジェームス・ウェーランも、プラップに突き放されながらも後続に追い付かれることなく2位を死守。

ワールドツアーチームからの「降格」で悔しい思いをしていた彼だが、そこから再び這い上がることを目指し、強い思いを抱いていることを感じさせる走りであった。

 

そして彼のこの思いは、このあとのサントス・フェスティバル・オブ・サイクリング第1ステージにて結果へとつながることとなる。

 

 

クラシカ・コムニタート・バレンシアナ(1.2)

ヨーロッパツアー2クラス 開催国:スペイン 開催期間:1/23(日) 

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例年、ヨーロッパでのレース開幕は、キャンプ地としても採用されているスペイン・マヨルカ島を舞台とした「チャレンジ・マヨルカ」から始まり、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ、ブエルタ・シクリスタ・ア・ムルシア、クラシカ・ドゥ・アルメリア、そしてブエルタ・ア・アンダルシアなどへとつながっていく「スペインキャンペーン」と、南仏マルセイユを舞台としたグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズから始まってエトワール・ド・ベセージュ、ツール・ド・ラ・プロヴァンス、そしてツール・デ・ザルプ=マリティーム・エ・デュ・ヴァールなどへとつながっていく「南フランスキャンペーン」とに大体わかれている。

だが、昨年からこの2クラスのレースが「チャレンジ・マヨルカ」に先立ってスペインキャンペーンの一端として開催されることに。

もちろん、2クラスではあるので、ワールドツアーチームの出場はない。それでも、トタルエナジーズやアルケア・サムシック、EOLOコメタなど、強豪プロチームが計8つも出場し、ニッコロ・ボニファツィオやサッシャ・モドロなどグランツール級の選手たちも集う本格的なレースとなった。

 

レース自体はスプリンター向け。昨年はトタルエナジーズのロレンツォ・マンザンが勝利しているし、長い中断期間の前に開催されていた過去のレースではアレッサンドロ・ペタッキやオスカル・フレイレなどが勝利している。

今回も最終的にはスプリント勝負に。但し、雨上がりの濡れた路面、シーズン初戦といった悪条件が重なり、レース慣れしていないプロトンの中では落車が頻発。

ラスト4㎞を超えた時点で先頭付近で1回目の落車があり、数が削られた隊列の中で、まずはアルケア・サムシックが集団先頭を支配。

さらにこれに被せるようにしてEOLOコメタが先頭を奪い取るが、ラスト1㎞を切ってから再び落車が発生した。

トタルエナジーズのエーススプリンター、ニッコロ・ボニファツィオはこれに巻き込まれて脱落。

混乱した集団の中から飛び出したのは3名。トタルエナジーズのクリス・ローレス、EOLOコメタのジョヴァンニ・ロナルディ、そしてアルケア・サムシックのアモリー・カピオ。

最初並びかけた3名だったが、そこからまずはローレスが脱落。

そしてこれまで幾度となく各レースの上位入賞を果たし続けてきたカピオの勝利がついになるか⁉と思っていたところ――最後の最後で、ロナルディがギリギリで前輪を残し切った。

 

勝ったのはジョヴァンニ・ロナルディ。昨年までバルディアーニCSFに所属していた25歳のスプリンターが、新チームでの初戦でいきなりチャンスを掴み、現地に来ていたチームオーナーのアルベルト・コンタドールに勝利を捧げた。

 

今年のティレーノ~アドリアティコやジロ・デ・イタリアにも出場しそうなEOLOコメタ。そこでの活躍にもぜひ、期待したい。

 

 

サントス・フェスティバル・オブ・サイクリング

非UCIレース 開催国:オーストラリア 開催期間:1/23(日)~1/29(土) 

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昨年に続き、新型コロナウイルスの影響で開催できなくなったツアー・ダウンアンダーの代替レースとして開催された「サントス・フェスティバル・オブ・サイクリング」。

今年も女子レース3日・クリテリウム男女1日・男子レース3日の計7日間の日程で開催された。

昨年のレースについてはこちらから

www.ringsride.work

 

女子レースでは初日に、昨年の国内選手権U23ロード&TTダブル王者のエミリー・ワッツが初日勝利。トラックレースで活躍している選手で、今回は特別チームのナイツ・オブ・サバービアレーシングの一員として参加しているが、通常はロードのチームにはとくに所属していない選手だ。

一方、この初日と第2ステージで区間2位、そして最終日に見事優勝して総合成績においても首位を守り切ったのが今年からバイクエクスチェンジ・ジャイコ入りを果たしているルビー・ローズマン=ガノン。今年の国内選手権ロードレースで4位だったほか、年始の非UCIレース「ベイ・サイクリング・クラシック」で全勝、かつオーストラリア国内選手権クリテリウムでも優勝している実力者であり、今年の女子ロードレースでも注目しておきたい選手の1人である。

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その後、男女クリテリウムが開催。女子の方ではローズマン=ガノンと同じく今年からバイクエクスチェンジ・ジャイコのジョージア・ベイカーが優勝。

そして男子の方では今年のU23国内ロード王者にしてこちらも「ベイ・サイクリング・クラシック」で全勝している若手期待のスプリンター、ブレイク・クイックが勝利。

クイックがこのあとの男子レース本戦の第2ステージにおいても、キャメロン・スコットやニクラス・ホワイトなどの実力者たちを退けて強烈なスプリントで勝利。

ルーク・プラップが昨年まで所属していたインフォーム・TMXメイク所属ということもあり、来年のワールドツアーチーム入りすら期待できるような、注目しておくべき新人の一人である。

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さらに男子レース本戦では初日にジェームス・ウェーランが、後続に1分23秒差の大逃げを決め勝利。

ワールドツアーチーム「降格」や悔しい国内選手権ロードレース2位などを乗り越えながら、見事「リベンジ」を果たしてくれたウェーランの経歴とドラマについては下記記事を参照のこと。

www.ringsride.work

 

序盤のメカトラからの復帰でチームカーのドラフティングを利用したということで総合タイム差から1分剥奪されるペナルティを受けたものの、最終日までその総合タイム差をしっかりと守り切り、総合優勝を果たすこととなった。

非UCIレースのためプロ勝利としてはカウントされないが、彼の「ワールドツアーチーム復帰」に向けた、大きな成果の一つとなったであろう。

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なお、昨年1勝、ウィランガ・ヒルでも大先輩リッチー・ポートに勝たせ、総合でも2位と大健闘したルーク・プラップは、今年は第2ステージで2分近く遅れたこともあり、全く勝負には絡めず。

ただし、最終日ウィランガ・ヒルステージでは、ステージ優勝こそ逃げ集団によって奪われたものの、メイン集団の中でリッチー・ポートの助けを借りながら飛び出し、クリス・ハーパーらを置き去りにして区間8位でフィニッシュした。

「ウィランガの王」リッチー・ポートは、昨年こそ若き才能に後押しされて7回目のウィランガ勝利を掴み取ったが、今年は完全にアシストに回り、プラップを発射させる役割を担った。

 

今年、引退を決めているリッチー・ポート。以下の記事では、そんな彼がプラップ、ブレイク・クイック、そしてこのサントス・フェスティバル・オブ・サイクリングで新人賞を獲ったこれもまた期待のオージー若手マシュー・ディナム(ブリッジレーン所属、22歳)など、若きオージーの才能について語ってくれている。

www.cyclingnews.com

 

 

チャレンジ・マヨルカ(1.1×5)

1クラスワンデー連戦 開催国:スペイン 開催期間:1/26(水)~1/30(日) 

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ヨーロッパロードレースシーンの開幕を告げるスペイン・地中海に浮かぶマヨルカ島でのワンデーレース群。

例年は4つだが、今年は5つ。上記ではステージレースのような記載をしているが、実際にはそれぞれ別々の独立した名称をもつワンデーレースである。

 

その1日目、トロフェオ・カルビアはパンチャー向けの丘陵レースだが、ここではUAEチーム・エミレーツで今年もタデイ・ポガチャルの右腕として活躍する予定のブランドン・マクナルティが65㎞独走勝利。18歳のシアン・エイテブルックスも、早速逃げで活躍した様子で、ワクワクする2022シーズンプロレース初戦となった。

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2日目のトロフェオ・アルクディアはラストこそ平坦スプリントではあるが、フィニッシュ前40㎞地点に2級山岳が用意された一筋縄ではいかないコース。

実際、この登りでUAEチーム・エミレーツがペースアップを図ったことにより、アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオのエース、アレクサンデル・クリストフが脱落。

代わりに、最後の集団スプリントを制したのが、そのチームメートであるビニヤム・ギルマイであった。

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ギルマイのこれまで見せてきた才能と、彼を始めとする「エリトリア人」そしてアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオについて熱を込めた記事はこちらから。

www.ringsride.work

 

3日目のトロフェオ・セッラ・デ・トラムンターナはお馴染みパンチャー向けコース。

過去同じレースで3回勝っているティム・ウェレンスが4回目の勝利。過去は逃げ切りのパターンが多かったが、今回は完全な登りスプリントでアレハンドロ・バルベルデとサイモン・クラークを打ち破るという、絶好調な走りであった(最後はやや、バルベルデに対して斜行気味だったのはちょっと気になるが・・・)。

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過去このレースで勝っているシーズン(2017年~2019年)は非常に絶好調なシーズンだった彼。ここ数年はちょっと元気がなかったが、今年はこの勝利をきっかけに復活し、今度こそアルデンヌ・クラシックで勝利を!

 

4日目のトロフェオ・ポレンサ~ポート・ダンドラッチはラストに登坂距離2.5㎞・平均勾配8.4%の本格的な登りフィニッシュを、今年42歳になるアレハンドロ・バルベルデがまさかの勝利! 本当に今年引退するの?

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最終日はお馴染みスプリンターズレース、トロフェオ・プラヤ・デ・パルマ~パルマ。過去にはマルセル・キッテルやアンドレ・グライペルなども勝利しているトップスプリンターたちの祭典で、今年勝利したのは育成チーム上がりの19歳ネオプロ、アルノー・デライ。お口をあんぐり開けて、気合の入ったいきなりのプロ初勝利!

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正直、完全にノーチェックの新人であった。これはたまたまなのか? それとも新たな才能の誕生の瞬間を見たのか? 2位以下にはフアン・モラノやマイケル・マシューズ、ジャコモ・ニッツォーロなどの錚々たる顔ぶれも並んでおり、この才能は間違いなく本物。

今年最注目選手の1人と言えるだろう。

 

以上、シーズン冒頭から相変わらず豪華な顔ぶれが並んだマヨルカ・チャレンジ。

ここで活躍した選手はシーズンのどこかでまた活躍する傾向も強いので、ぜひ楽しみにしていきたい。

 

 

グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズ(1.1)

ヨーロッパツアー1クラス 開催国:フランス 開催期間:1/30(日) 

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チャレンジ・マヨルカと並び、ヨーロッパロードレースの開幕を告げる「南フランスキャンペーン」のファーストレース。過去、多くのフランス人パンチャーが勝利を掴んでいる、実にフランスらしい丘陵系レースである。

今回も、ラスト40㎞あたりから「純パンチャー」たるディエゴ・ウリッシ(UAEチーム・エミレーツ)が単独で抜け出し、そこにフランス人パンチャーの最高峰の一人ギヨーム・マルタン(コフィディス)が追いついてきて単独先頭に。

ウリッシやそのチームメートであるアレクシス・ブルネルらが集団に引き戻されたあともマルタンは独走を続け、残り10㎞地点で30秒弱を保っていたものの、ラスト6.7㎞でついに吸収。

フランス最初のレースは集団スプリントへと持ち込まれていく。

 

残り5㎞からウリッシ率いるUAEチーム・エミレーツが集団先頭を支配していくが、ラスト1㎞でこれを左からトタルエナジーズ、右からアルケア・サムシックのトレインが挟み込み飲み込んでいく。

先行したのはトタルエナジーズ。アルケアは早々に崩壊していくが、その最後尾につけていたアモリー・カピオはしっかりとマッス・ピーダスン(トレック・セガフレード)の後輪を捉える。

トタルエナジーズのエドヴァルド・ボアッソンハーゲンはアシスト(ジュリアン・シモン?)に率いられて2番手で突き進んでいくが、そのアシストがちょっと早めに離れてしまい、先頭に放り出されてしまう。

そして残り100mで飛び出したピーダスン。その背後からカピオが抜け出し、残り50mでピーダスンの横に並ぶ。そこからの加速では、誰よりも強かった。

 

そしてついに! アモリー・カピオ。これまで幾度となくTOP10リザルトを叩き出し続けていた「間違いなく強い男」が、ようやく、ようやく、ようやくプロ初勝利を掴み取った!

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シーズン初戦、クラシカ・コムニタート・バレンシアナでも相変わらずの「2位」で終わった彼が、ついに掴み取った勝利。

本当におめでとう。そしてこの先も、チームのトップスプリンターの一人として活躍し続けてほしい。

 

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