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2022-2023注目移籍情報まとめ

 

今年もやります。移籍情報まとめ。

ページを開いた際の重さを軽減することを重視して、今年はTwitterのリンクなどは排除。主に文章のみとなります。

 

今年もリチャル・カラパス、アダム・イェーツ、ウィルコ・ケルデルマン、ディラン・ファンバーレ、アレクサンデル・クリストフ、ティム・ウェレンス、ボブ・ユンゲルス、ディラン・トゥーンス、ティム・メルリール、フェルナンド・ガビリアなど続々と注目選手の移籍情報が解禁されつつある中、2023シーズンに向けた最新情報を整理していこう。

 

2023シーズンからの一部チームのカテゴリ変更も反映。

(都度更新予定。最新更新:10/22。現時点で20チーム66名紹介)

※年齢表記はすべて2023/12/31時点のものとなります。

 

過去の移籍情報

2021-2022注目移籍情報まとめ - りんぐすらいど

2020-2021注目移籍情報まとめ - りんぐすらいど

2019-2020注目移籍情報まとめ - りんぐすらいど

 

目次

 

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AG2Rシトロエン・チーム(フランス)

 

 

アルペシン・ドゥクーニンク(ベルギー)

2023シーズンからワールドツアーチームに昇格。

 

セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、29歳)

元:チームDSM(WT)

2020年にツール・ド・フランスで終盤アタックからの逃げ切り勝利を2回。2019年のマッス・ピーダスン世界選手権優勝に次ぐ「一家に一台デンマーク」時代の勢いを形成していった立役者の1人であり、彼の活躍も間違いなく2022年のデンマーク・グランデパールの盛り上がりを後押しした。

そんな彼が、ついにDSMを去ることに。行き先はアルペシン。彼にとっては良い移籍となるだろうが、DSMは相変わらず人材流出が激しい・・・。

引き続き2020年ツールでも見せたレイトアタックが強みになるだろう。2021年のミラノ~サンレモでも、残り1.5㎞で集団から飛び出した――そのときは、ジャスパー・ストゥイヴェンのための最高のアシストになってしまったけれど。

www.ringsride.work

 

クエンティン・ヘルマンス(ベルギー、28歳)

元:アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(WT)

「シクロクロッサーのロードレースでの大暴れ」の黎明期をワウト・ファンアールトと共に2018年に創出していた男。当時のツール・ド・ワロニーで区間1勝・総合2位・ポイント賞&新人賞獲得など。

その後はファンアールトやファンデルプール、ピドコックといった選手たちと比較すると目立たない姿を見せていたが、2021年にはワールドツアー入りしたアンテルマルシェの一員として、ジロ・デ・イタリアやフレーシュ・ワロンヌでも活躍。シーズンオフのシクロクロスでもワールドカップで1勝するなど、キャリアハイとも言える成績を叩き出していた。

その勢いを継承して2022シーズンではリエージュ~バストーニュ~リエージュのフィニッシュでのスプリントでワウト・ファンアールトを差し2位。ベルギー・ツアーでも区間1勝の総合3位と、上り調子を見せている。

そのタイミングでの、アルペシン移籍。アンテルマルシェにとっては打撃だが、ビニヤム・ギルマイという似た脚質の強豪がいる中、新たな活躍の場を求める彼の心境は良く分かる。

そしてこの移籍は、シクロクロスの勢力図にも大きな影響が。これまで強力なチームメートがおらず単騎で戦わざるをえなかったファンデルプールが、ヘルマンスという世界トップクラスの盟友と共に、昨年は苦しかったシクロシーズンで再び息を吹き返すか。

 

カーデン・グローヴス(オーストラリア、25歳)

元:チーム・バイクエクスチェンジ・ジャイコ(WT)

元SEGレーシング、2019年途中からミッチェルトン・スコット(現チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)に移籍し、同年のツール・ド・ラヴニールでは区間2位を記録。そして実質的なプロ1年目となるヘラルドサン・ツアーでは区間2勝といきなりの大活躍を見せていた。

その後は少しだけ空白期間が生まれるが、2022シーズンでは再び力を取り戻し、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャでワールドツアー初勝利。ポイント賞も獲得。さらにツアー・オブ・ターキーでも1勝するなど、世界のトップクラスのスプリンターとして着実に成長を積み重ねてきている。

そんな、バイクエクスチェンジの次代を担う至宝と思われていた人物が・・・まさかのアルペシン移籍。アルペシンにとってはティム・メルリールを失う中でのベストな補強であり、グローヴスにとってもフルーネウェーヘン&マシューズがいるチームを離れ、ツールは無理でもジロやブエルタでチャンスをもらえそうなアルペシンへの移籍は大きなものとなるだろう。だがそれでいいのかバイクエクスチェンジ。。

アルペシンの今年の移籍は、かなり本気度を感じさせる。

 

ロッベ・ハイス(ベルギー、26歳)

元:スポートフラーンデレン・バロワーズ(PT)

2018年のプロデビュー以来5年間をスポートフラーンデレンで過ごす。そのままプロチームのままキャリアを終える選手も多い中、彼は2021シーズンにベルギー・ツアーで初勝利を遂げて一躍その名を売る。しかも、それは単なる勝利ではない。レムコ・エヴェネプールとのスプリント勝負での勝利である――もちろん、逃げに乗っていた彼とタルタレット・アイソレックスのジャンニ・マルシャンとが、集団から飛び出してきたレムコ・エヴェネプールと合流した後に、ほぼ完全に彼に前を牽かせたうえでのごっつぁんゴールではあるが・・・エヴェネプールほどの選手相手であればむしろ最も正しい勝ち方であり、その勝利への冷静な判断力は十分に評価されるべき素質である。

そして2022シーズンはヘント~ウェヴェルヘムでの15位。その他ベルギークラシックでの上位をいくつかもぎ取っており、アルペシンのクラシック班へと招き入れられた。さらなる活躍につなげることはできるか?

 

 

アスタナ・カザフスタンチーム(カザフスタン)

ルイスレオン・サンチェス(スペイン、40歳)

元:バーレーン・ヴィクトリアス(WT)

2022シーズンのヴィンツェンツォ・ニバリ、ミゲルアンヘル・ロペスに続き、またこの選手も「出戻り」させたアスタナ。やっぱりプレミアテック社の離脱と旧政権の復活の影響がここにもあるのか。

とはいえ、1年契約。すでに40歳であり、ニバリ同様、引退への花道感もありそう。2015年ブエルタ・ア・エスパーニャでのファビオ・アル大逆転総合優勝の最大の立役者の一人でもあり、残り10㎞からのレイトアタックの現役最高峰の名手でもあった魅力的なる男、LLサンチェス。

そのキャリア終盤戦、まだまだ華々しい走りを見せてもらいたいところ。

 

 

バーレーン・ヴィクトリアス(バーレーン)

キャメロン・スコット(オーストラリア、25歳)

元:ACAプロレーシング・サンシャインコースト(CT)

オーストラリアのコンチネンタルチーム、ACAプロレーシング・サンシャインコーストに5年間所属。オーストラリアン・サイクリングアカデミーという名前だった2018年にはジャパンカップにも来ている。2000年にはUniSAオーストラリアのメンバーとしてツアー・ダウンアンダーにも参戦しているので、名前を聞いたことがある人もいるはず。

プロ勝利はツアー・オブ・チンハイレイクでの1勝のみ。このときはルカ・パシオーニやエドゥアルド・グロスらにスプリントで勝利している。バーレーンでもスプリンタートレインの一角としての活躍が期待されそうだ。

 

アンドレア・パスクアロン(イタリア、35歳)

元:アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(WT)

典型的な登れるスプリンターといった感じの選手。アンテルマルシェがワールドツアーチームになる前から所属(2017年以降)しており、勝利に届かないことはあっても上位にはかなり入り込んでおり、チームの中ではUCIポイント獲得量では常に上位につけていた。2018年にはドローメ・クラシックやグランプリ・ド・ドナン、ブラバンツペイルといったHCクラスレースのTOP10リザルトを連発し、ワールドツアーのエシュボルン~フランクフルトでも4位。ツール・ド・ルクセンブルクでは区間2勝&総合優勝&ポイント賞を獲得し、同年のツール・ド・フランスでもシャンゼリゼ含む6回のシングルリザルトを叩き出した。結果、この年はUCIポイントも1,000ポイント近く獲得しており、世界ランキングでもおそらく50位前後にはつけていたのではないか。

そんな「点取り屋」がバーレーン・ヴィクトリアスに。ただ、総合か逃げ屋に重点を置いている印象のあるバーレーン・ヴィクトリアスに向いたタイプの選手かというと未知数。役割的にはフィル・バウハウスのように、コンスタントに勝利を狙いに行くマイナースプリンターといったところだろうが、果たして。スコットの獲得と共に、スプリンター面での強化をチームが狙っている可能性はある。

逃げに積極的載っていく新たなパスクアロンというのも見てみたくはある。

 

ニキアス・アルント(ドイツ、31歳)

元:チームDSM(WT)

2016年のジロ・デ・イタリアで降格処分となったジャコモ・ニッツォーロに代わり「優勝」を果たした男。その後は登れるスプリンターとしての適性と共にマイケル・マシューズの良き発射台として活躍しうる可能性を見せた瞬間もあったが、その後はスプリンターとしてはそこまで目立たない存在に・・・と思っていたら次第に「逃げ屋」としての才能を見せつけ、2019年のブエルタ・ア・エスパーニャでは逃げ集団の中では圧倒的なスプリント力を見せつけて2度目のグランツール勝利。2017年にもツール・ド・フランスであと一歩というところまで迫っていた(このときはラウンドアバウトを利用して逃げ集団の中からエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが抜け出しそのまま独走勝利。アルントはこのボアッソンハーゲンに唯一食らいついた男だったが届かず2位となっていた)。

2021年はジロ・デ・イタリアで3回逃げに乗り3位・3位・4位と上位に入り込み続けたアルント。スプリンターの強化という意味では上のスコットソンとパスクアロンに近いところがあるが、彼の場合はどちらかというと実にバーレーン・ヴィクトリアスらしい「逃げ屋」の強化と見て良いだろう。

 

セルジオ・トゥ(台湾、26歳)

元:サイクリングチーム・フリウリASD(CT)

ランプレ・メリダ時代から所属し続けてきたフェン・チュンカイが2023シーズンに宇都宮ブリッツェンに移籍することに従い、入れ替わりで新たに加入が決まった台湾人ライダー。このあたりはやはりメリダ枠なのだろうか?

とはいえ、この選手、実績こそないが、ミッケル・ビョーグやカスパー・ピーダスンなどの実力者たちが軒並み揃っていたチーム・ジャイアント・カステリや、エキッポ・ケルンファルマ、さらには昨年は、ジョヴァンニ・アレオッティやジョナタン・ミランなどを輩出したサイクリングチーム・フリウリASDに所属するなど、ヨーロッパの第一線級の環境で過ごしてきており、経験だけ見ればアジア人ライダーとしては十分期待できる存在と言えるかもしれない。

あとはそれがただ所属していただけなのか、これからもそうなるのかどうか。

 

 

ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)

ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、31歳)

元:AG2Rシトロエン・チーム(WT)

2022年のツール・ド・フランスで、国内選手権以外では3年ぶりの勝利を果たすとともに総合12位でフィニッシュし、オールラウンダーとしての才能を復活させたユンゲルス。そのままAG2Rで総合エースの1人として活躍していくのかな・・・と思っていたらボーラ・ハンスグローエへの移籍が決定。

良いチームではあるけれど、エースが渋滞しているチームでもあるため、そのポジションにユンゲルスが入ることは難しそう。逆に、彼にとっては余計なプレッシャーを感じずに過ごせる場所なのかもしれない。

実際、その独走力はサム・ベネットやヨルディ・メーウス、ダニー・ファンポッペルといったチームのエーススプリンターたちにとっては非常に頼りになるものであろうし、北のクラシックではニルス・ポリッツと共にエースを張れる可能性がある。

そして、強い総合系チームには必ずいる「登れるTTスペシャリスト」としての活躍が、期待できるかもしれない。

ボーラ・ハンスグローエがいつまでも「5位」止まりではなく、その上にいくために、重要なピースとなれるか。

 

ニコ・デンツ(ドイツ、29歳)

元:チームDSM(WT)

2015年のプロデビューから5年間にわたりAG2Rに所属。2020年には母国チームのサンウェブに所属しつつ、2022年にはツール・ド・スイス第6ステージの超級山岳山頂フィニッシュで逃げ切り、3名の小集団スプリントを制した。2020年のオコロ・スロベンスカでの勝利も(ヤニック・シュタイムレやジャンピエール・ドリュケールなどの中々スプリント力を持つ選手たちを相手取っての)小集団スプリントを制するなど、逃げ力と土壇場でのスプリント力が武器である。

ボーラでも引き続き、平坦から山岳までの万能アシストぶりを発揮しつつ、積極的に逃げに乗りたい。

 

フロリアン・リポウィッツ(ドイツ、23歳)

元:チロルKTMサイクリングチーム(CT)

トビアス・バイヤー(現アルペシン・ドゥクーニンク)やサミュエーレ・リーヴィ(現エオーロ・コメタ)などを輩出しているオーストリア・チロル地方のコンチネンタルチームから、新たな才能がボーラ・ハンスグローエに。

ロードレーサーとしての成績は2021年のジロ・チクリスティコ・デッラ・ヴァッレ・ダオスタ総合5位、ツール・ド・ラヴニール総合14位など、実力はあるが特筆すべきものはない。ただ、彼の最も特徴的な経歴は、彼が元バイアスロン(射撃とクロスカントリースキーの複合競技)の選手だったということだ。

bikenewsmag.com

 

これまでもボーラ・ハンスグローエは独特の経歴者の獲得を行ってきたイメージがあるが、今回は経歴に加えて若さも含めており、実際クライマーとしての実力は期待してもよさそうなものがある。

このあたり、ボーラというチームが、急成長する中で決してネームバリューや成績だけで選手獲得を進めるのではなく、しっかりとドイツの若手の才能を発掘することを使命にしている感があった非常に好感が持てる。これまでのバウハウス、アッカーマン、ブッフマンなどのように。

 

 

コフィディス(フランス)

ヨナタン・ラストラ(スペイン、30歳)

元:カハルラル・セグロスRGA(PT)

ブエルタ・ア・エスパーニャでの逃げでお馴染みの選手。だが、スペインのステージレースなどでは結構しっかりとリザルトを残しており、2021シーズンにはヴォルタ・アン・アルガルヴェやブエルタ・ア・アンダルシアの山岳ステージででTOP10リザルトを量産している、実力派クライマーである。

今回コフィディスへの移籍ということで、主にヘスス・エラダやヨン・イサギレらのスペイン勢のアシストとして活躍することになりそうだ。これまではプロチームの中でひたすら一人で少しでもポイントを稼ぐためにもがいていた彼が、チームの中での役割をどんなふうに果たすことができるのか、ちょっと楽しみである。

 

アクセル・マリオ(フランス、25歳)

元:チームUナント・アトランティーク(CT)

元所属チームはチームUCナント・アトランティークとも。1909年創設とかなり歴史のあるチームで、2021年まではアマチュア(DN1クラス)チームであった。過去にはヴァロンタン・マデュアスやロレンツォ・マンザンなどが輩出されている。

このマリオも2022シーズンにツール・ド・リムザンやツール・ド・ランの登りを含むステージで結果を出し、総合でも上位入り。これが認められてコフィディス入りを果たす。2023年は25歳になるシーズンということで、ここ最近の兆候から言えば決して若くはないが、まだまだ結果を出すには遅すぎない。期待したいところ。

 

 

EFエデュケーション・イージーポスト(アメリカ)

ジェフェルソンアレクサンデル・セペダ(エクアドル、25歳)

元:ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ(PT)

エガン・ベルナルを輩出した名伯楽ジャンニ・サヴィオが見出した南米の才能の一人。とはいえ、ベルナル以後はソーサがイマイチ伸び切らないのとアルケアに移籍したミゲル・フローリスも今のところ大人しいのを見ると、あまりその指標も絶対視できないけれど。

このセペダは2021年のツアー・オブ・ジ・アルプスで総合4位と大活躍したことで注目を集めた。それこそ、直後のジロ・デ・イタリアで区間1勝くらいするかも、と。

だがこのジロでは大失敗。あまり逃げにも乗れず途中リタイア。その後は若手の登竜門ツール・ド・サヴォワ・モンブランで総合優勝、2022年のジロ・ディ・シチリアで総合2位になったりはするも、期待ほどの活躍はまだ見せられていない状況だ。

その中でのEF移籍。EFは同じく若手の才能マライン・ファンデンベルフやベン・ヒーリーなども2022シーズンで獲得しているが、今のところ大きな結果は出せてはいない。

もちろん、若き才能が覚醒するまでに、昔は2~3年かかるのが当たり前だった。焦らず、EFを信じて見守っていきたい。

なお、従兄にカハルラル・セグロスRGAに所属するジェフェルソンアルベイロ・セペダという選手がいるため、名前だけだと割と紛らわしい。

 

リチャル・カラパス(エクアドル、30歳)

元:イネオス・グレナディアーズ(WT)

2019年ジロ・デ・イタリア総合優勝者にして2021年東京オリンピックロードレース優勝者。その実績だけでなく、ほかにも2020年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位、2021年ツール・ド・フランス総合3位、2022年ジロ・デ・イタリア総合2位と、常にグランツールの頂点に近い存在であり続けてきた実力者。

いつか、エガン・ベルナルとダブルエースを組んで、ポガチャルやユンボ・ヴィズマを打ち倒してほしいと願っていた。だから今回のこの移籍発表は非常に残念ではあるが、同時に納得いく部分もある。カラパスというキャラクターは、決してイネオスにフィットしているわけではなかっただろうなという思いも確かにあり、そしてイネオスは若き才能が次々と出てきており、いつまでもカラパスが中心に居続けられるチームでないことも確かだろう。

では、EFで活躍できるのか?というとちょっと疑問が残るのも確かである。モビスター、イネオス、EFというその進路は、ミケル・ランダをもやや彷彿とさせ、このままずるずると微妙な状況に追いやられていかないか、ちょっと不安感もある。

あるいは、東京オリンピックや(結果には繋がらなかったが)2021年のリエージュ~バストーニュ~リエージュで見せたように、終盤での鋭いアタックも特徴的な男ではあるため、総合エースというよりもEFのような自由な攻撃が許されるチームの方が性に合っているのかもしれない。

 

ミケルフローリヒ・ホノレ(デンマーク、26歳)

元:クイックステップ・アルファヴィニル(WT)

2018年のトレーニー時代から一貫して所属し続け育ててもらってきたクイックステップをついに離れ、ミケル・ヴァルグレンが育成チームへと一時異動した後釜としてEFへ。

2020年ジロ・デ・イタリアあたりから覚醒してきたパンチャー的脚質は、2021年のブルターニュ・クラシックでジュリアン・アラフィリップと共に先頭集団に入り込み3位、同年のクラシカ・サンセバスティアンでも抜け出したパウレスやモホリッチらと同じ集団で3位、2022シーズンもグランプリ・シクリスト・ド・ケベックで6位と、安定して高いパフォーマンスを発揮している。

だが、勝ちきるところまでなかなかいけない。勝利したイツリア・バスクカントリーも、ヨセフ・チェルニーとの逃げ切りワンツーフィニッシュであり、エースとしての華々しい活躍と勝利という印象がまだ、ない。

それをこのEFで掴めるか。チャンスは十分にある。そして「再生工場」のEF。ヴァルグレンにも3年ぶりの勝利をもたらしたこのチームで、新たな覚醒の時を迎えられるか。

 

 

グルパマFDJ(フランス)

 

 

 

イネオス・グレナディアーズ(イギリス)

レオ・ヘイター(イギリス、22歳)

元:ハーゲンスバーマン・アクセオン(CT)

2022年のジロ・デ・イタリア・ジョヴァンニ(U23版ジロ・デ・イタリア、ベイビー・ジロとも)総合優勝者。2021年はフアン・アユソー、2020年はトム・ピドコック、2018年はアレクサンドル・ウラソフと、ツール・ド・ラヴニールと並ぶ若手の登竜門となるこのレースの覇者である時点でその才能は折り紙付き。それだけでなく、2021年のU23版リエージュ~バストーニュ~リエージュも制しており、さらにジュニア時代にはトラック欧州選手権でチームパーシュート優勝・インディヴィジュアルパーシュート3位などの成績をもち、2021年・2022年国内選手権U23個人タイムトライアルも制しているなど、TT能力も高い素質をもつ。まさにオールラウンドの実力の高さを感じさせる、2020年代に適した才能の持ち主である。

このイギリスの至宝を手に入れたのは、兄のイーサン・ヘイターが所属するイネオス・グレナディアーズ。よりパンチャー的な(あるいはワウト・ファンアールト的な)素質をもつ兄に比して、こちらはよりグランツール向きな未来を期待されることになりそうだ。

 

コナー・スウィフト(イギリス、28歳)

元:チーム・アルケア・サムシック(PT)

イネオス・グレナディアーズ所属のベン・スウィフトの従兄弟。2022年シーズンも一緒に英国代表として世界選手権にも出場しており、その縁もあってイネオス入り。

最も得意とするのは・・・おそらく、北のクラシック。2021シーズンは「ブルターニュのパリ~ルーベ」とも呼ばれる過酷な未舗装路レースのトロ・ブロ・レオンで実力派ルーラー・スプリンターたちとの小集団スプリントを制する。2022シーズンも同じくトロ・ブロ・レオンで3位。とにかくサバイバル能力が高く、2022シーズンも大ブレイクしたイネオスのクラシック班の補強として期待されることだろう。

 

テイメン・アレンスマン(オランダ、24歳)

元:チームDSM(WT)

かねてからの噂通り、ようやく現実のものとなったイネオス入り。元SEGレーシングアカデミーで2018年のツール・ド・ラヴニール総合2位。DSMでの最初の2年間はそこまで目立たなかったものの、2022シーズンはツアー・オブ・ジ・アルプスでロマン・バルデを総合優勝させたうえで自らも3位。さらにTT能力の高さもずば抜けており、ジロ・デ・イタリアの最終日TTでは2位に入り込んだ。ツール・ド・ポローニュのTTでは優勝している。

そしてブエルタ・ア・エスパーニャでのシエラ・ネバダ山頂フィニッシュでの優勝。第20ステージでも最終盤にメイン集団から単独で飛び出し、あわやリチャル・カラパスを捕まえての2勝目の可能性すらあった。この働きによって最終的に総合6位。一気に飛躍した。

登れて、独走力もある正真正銘のオールラウンダー。タレント揃いのイネオス・グレナディアーズにおいてエースを任される可能性は低そうだが、アシストとしては実に有能な存在であり、個人的にはミハウ・クフィアトコフスキの後継者にすらなりうるのではないかと期待している。

なおクフィアトコフスキはアシストだが超高給取り。まあ、クラシックでも勝つし元世界王者というブランドもついているからではあるが、アレンスマンもそんな存在を目指してほしいところ。

 

ジョシュア・ターリング(イギリス、19歳)

元:フランダースカラー・ガルー(Junior)

ジュニア世代最強のTTスペシャリスト。2021年の世界選手権でも17歳で2位に入り込み、2022年の世界選手権ではその雪辱を晴らし見事優勝。ジュニアTT世界王者となる。

その他のレースでも、世代の中ではずば抜けたタイムトライアル能力を持ち、トラックレースの国内選手権ではすでにエリートカテゴリで出場し、2022年のポイントレースおよびチームパーシュートで優勝している。

そんな次代の才能をイネオスがしっかりと獲得。3年契約。レムコ・エヴェネプール以来、一般化しつつある「U23カテゴリを省略してのトップカテゴリ入り」のまた新たな例となった。身長194㎝・体重88㎏(Pro Cycling Stats 2022/10/9時点)という恵まれた体格を生かしたパワースタイルでTT・平坦牽引・クラシックで活躍されることが期待されるが、今後のイネオスの教育の中できっと普通に山も登れるようになるんだろうなあ・・・。

一部では次のフィリッポ・ガンナと早くも期待される存在。果たしてどうなるか。

 

マイケル・レナード(カナダ、19歳)

元:チーム・フランコ・バッレリーニ(Junior)

「謎の18歳の獲得」として話題になった男。元トラックレーサーらしいが、カナダということもあってその経歴は割と謎に包まれている。だが似たような経歴で獲得したマグナス・シェフィールドが、2022年のプロ初年度でいきなり大活躍をしているのを見るに、イネオスの見る目は間違いないため、期待はできるだろう。こちらも過去でいえばカルロス・ロドリゲス、そして上のジョシュア・ターリングと同様に、U23カテゴリを飛ばしての獲得。

「若い頃はクリス・フルームに憧れていて、現在はカルロス・ロドリゲスを尊敬している。今年本当にブレイクした彼と同じ道を辿れることをとても嬉しい」と述べるレナード。彼は将来のグランツールライダーとして大きく期待されているようだ。

www.cyclingnews.com

 

 

アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(ベルギー)

マイク・テウニッセン(オランダ、31歳)

元:ユンボ・ヴィズマ(WT)

2019年にパリ~ルーベ7位。同年はサイクラシックス・ハンブルクで6位、ビンクバンク・ツアーで総合6位、そしてツール・ド・フランス初日に衝撃の勝利を果たしてマイヨ・ジョーヌを着用するなど、大ブレイクした年でもあった。

www.ringsride.work

 

そのままワウト・ファンアールトの右腕として、北のクラシックで活躍してくれるだろう、と期待していたのだが・・・その後は怪我や病気にも苦しみなかなか結果を出せず。

そんなこんなしているうちに2021年のネイサン・ファンフーイドンク、2022年のティシュ・ベノート&クリストフ・ラポルトといった北のクラシック班の補強が進み、テウニッセンはあえなく二軍落ちとなってしまっていた。

ゆえに、この移籍は仕方ないものとなるだろう。逆に、アンテルマルシェで再び彼の間違いのない才能を復活させてくれるはずだ。何しろ、アンテルマルシェ躍進の出発点となったタコ・ファンデルホールンだって、元々はユンボ・ヴィズマにいたのだから・・・。

 

ルイ・コスタ(ポルトガル、37歳)

元:UAEチーム・エミレーツ(WT)

2013年世界王者は、ランプレ・メリダ時代から足掛け9年間所属していたUAEチーム・エミレーツをついに去ることに。アンテルマルシェには単年契約。超トップスター選手たちの明確な戦略に基づいた体制を急激に構築しつつあるコスタにとって居場所がなくなってきたがゆえの移籍というのが現実的なところだろう。

とはいえ、アンテルマルシェもルイス・メインチェスを復活させたりと、コスタにとって利益をもたらしてくれる可能性が十分にあるチーム。単年契約の末に2024年にどういう運命が待ち受けているか分からないが、8/6時点ですでに2年以上遠ざかっている勝利を引き戻すなど、復活のシーズンを過ごしたいところだ。

脚質的にはパンチャーに近く、登りスプリント気味のフィニッシュレイアウトで強いタイプだ。

 

リリアン・カルメジャーヌ(フランス、31歳)

元:AG2Rシトロエン・チーム(WT)

チーム・ディレクトエネルジー(現・トタルエナジーズ)所属の2016年にブエルタ・ア・エスパーニャ、2017年にツール・ド・フランスを逃げ切り勝利し、トマ・ヴォクレールの後継者と称された男。その後の躍進も十分に期待されたのだが・・・。

2020年以降はほぼ完全なる沈黙が続く。総合争いから昔のようなアタッカーチームへと回帰する姿勢を見せたAG2Rシトロエン・チームに招かれるも、その中心となりうるはずの彼は全く存在感を示せなかった。

だが、そこは「再生工場」ぶりを発揮しまくっているアンテルマルシェ。きっと、彼の本来の強さを復活させてくれるはずだ。

 

ディオン・スミス(ニュージーランド、30歳)

元:チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ(WT)

スプリント寄りのパンチャーといった選手で、プロ唯一の勝利は2020年のコッパ・サバティーニでアレクサンドル・リアブシェンコやアンドレア・パスクアロン、ジャコポ・モスカといった「いかにも」な選手たちのスプリント勝利。

2022シーズンもペル・センプレ・アルフレッドでマルク・ヒルシに敗れての2位、クラシカ・サンセバスティアン前哨戦のプルエバ・ビリャフランカでサイモン・イェーツとのワンツーといった成績。

スプリンター、ルーラー、クライマーを大事にする傾向のあるバイクエクスチェンジではイマイチ活躍の機会が少なかった印象なので、より自由にチャンスをもらえそうなアンテルマルシェへの移籍は十分にあり。

なお、2020年に開催されなかったジャパンカップを自転車ロードレースシミュレーションゲームで再現する企画において(いかにもありそうな感じで)勝利した選手ということで、個人的には結構思い入れがある。

youtu.be

 

 

ユンボ・ヴィズマ(オランダ)

ディラン・ファンバーレ(オランダ、31歳)

元:イネオス・グレナディアーズ(WT)

また凄まじいビッグネームを、しかもビッグチームからビッグチームが奪い取った。イネオスがこの立場になるのはかなり珍しい気がする。これも時代の変化か。

言うまでもなく世界最高峰のクラシックライダー。2022年のパリ~ルーベ制覇はもちろん、その前年にも同じく逃げ切りでドワースドール・フラーンデレンを制している。さらに2022年はロンド・ファン・フラーンデレンでも最終盤でアタックして抜け出して、マチュー・ファンデルプールとタデイ・ポガチャルの最強コンビに捕まえられながらも最後まで生き残り、最後はファンデルプールの策に嵌ったポガチャルを追い抜いて2位に食い込んだ。さらに2021年の世界選手権ロードレースでも終盤アタックで2位。

とにかく、最終盤まで生き残り積極的に動くことのできる存在であり、2022年もかなり高レベルにまで達していたユンボ・ヴィズマのワウト・ファンアールト班にとってはこの上ない(本当に本当にこの上ない)補強であるといえる。ティシュ・ベノートも強かったが、そのさらに上位互換と言ってよい。

ファンバーレにとってはイネオスでクラシックエースを張れるところを、逆にファンアールトのアシストになりかねない移籍ではあったが、母国チームでもあるということで、高いモチベーションで臨めるかもしれない。実際、彼は2011年から2013年まで、ユンボ・ヴィズマの前身チーム「ラボバンク」の育成チームに所属しており、これはある種の「出戻り」とも言える。

 

ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、31歳)

元:ボーラ・ハンスグローエ(WT)

こちらもオランダのビッグネームがユンボ・ヴィズマに。彼も元ユンボ・ヴィズマ(当時はベルキンもしくはロットNLの名)であり、育成チームから数えて7年所属したチームに7年ぶりの出戻りとなる。

ただ、当時とは全くチームの状況は変わっているだろう。当時はまだ逃げとかが中心の中堅下位チームであり、総合系の彼はそこまで居場所がなく、トム・デュムランのアシストとしてサンウェブへと移籍していった経緯がある。そこから総合エースとしての才能も磨いていきジロ・デ・イタリア総合3位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合4位、ツール・ド・フランス総合5位と実力も発揮した中で、今回の「最強チーム」へと変貌したユンボ・ヴィズマへの移籍。総合エースとしての立場は(とくにグランツールにおいては)かなり難しいかもしれないが・・・プリモシュ・ログリッチ、そしてヨナス・ヴィンゲゴーを支える、最高峰のスーパーアシストとして頼れる存在になることは間違いないだろう。

2025年までの3年契約ということで、チームとしてもかなり本気のお出迎えである。

 

アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、25歳)

元:グルパマFDJ(WT)

2021年のジロ・デ・イタリア第6ステージで大逃げに乗り、その後3日間マリア・ローザを着た男。最終的にも総合14位と、将来のグランツールエースとして十分に期待できる戦績を残した。

そして2022年。今度は正真正銘のエースとしてジロに乗り込む。とはいえチームは完全にアルノー・デマール体制であり、ほとんどアシストは得られないまま総合成績では35位と結果を残せなかったが、第19ステージでは区間4位と、グランツールでの勝利が目前にまで迫った。

そんな中の、このユンボ・ヴィズマ入り。チームとしては実に強力なアシストの獲得。本人としてはエースの座を現実的には諦めることになるだろうが――最強チームのアシストとしての誇りと、そして、2022年ツールのクリストフ・ラポルトのように、このチームに来たからこそのチャンスを獲得できる可能性は十分にあるはずだ。

 

ヤン・トラトニク(スロベニア、33歳)

元:バーレーン・ヴィクトリアス(WT)

国内選手権TTを4度制しているTTスペシャリスト。2020年のジロ・デ・イタリアでは丘陵ステージでベン・オコーナーを振り払って逃げ切り勝利。その平坦も登りもこなせる機関車能力はバーレーン・ヴィクトリアスの活躍を確実に支えてきた。

そんな有能なアシストの獲得はユンボ・ヴィズマにとっても実に心強いもの。トニー・マルティン離脱の穴は決して埋め切れてはいないが、この男の存在はその大きな可能性となるだろう。

しかしこれだけ魅力的な選手が増えてくると、本当にツール・ド・フランスメンバー争いの予想がつかないレベルである。

 

トーマス・グローグ(イギリス、22歳)

元:トリニティ・レーシング(CT)

そして若手の才能もしっかりと獲得していく。すでにツール・ド・ラヴニール総合2位のヨハンネス・スタウネ=ミッテ(ノルウェー、21歳)はユンボ・ヴィズマ・ディヴェロップメントチーム所属で有り、2024年からのユンボ入りが確定している(総合首位シアン・エイテブルックスは現ボーラ・ハンスグローエ所属)。2021年の総合4位ハイス・レームライズもその時点でユンボ・ヴィズマ所属。2020年の総合優勝者トビアス・フォスも言わずもがなユンボ・ヴィズマ入りしており最前線で活躍している。

そして2022年のラヴニール組の中からは、スタウネ=ミッテだけでなく、このステージ1勝を果たしているグローグも獲得することが決まった。トム・ピドコックも所属していたトリニティ・レーシング所属で、2021年はU23版ジロ・デ・イタリア(ベイビー・ジロ)で総合4位、ロンド・デ・リザールでは総合3位となっている(総合優勝はレームライズ、総合4位にスタウネ=ミッテ)。

2022年のツール・ド・ラヴニールでは最終的にはリタイアしてしまったものの、この男も間違いなく次代の有力選手の一人。8/1からユンボ・ヴィズマのトレーニーとなっているため、2022シーズンの後半でも活躍する可能性はあるかも。とりあえず、9/4から始まるツアー・オブ・ブリテンにも出場するようなので、注目だ。

なお、ほかにも2022年ラヴニール総合9位のロー・ファンベーレ(オランダ、21歳)も同じく2023年からユンボ・ヴィズマ入りである。

(10/9追記)ちなみに、このグローグ、ピドコックやベン・ターナーと同じトリニティ・レーシング所属と言うことで、2021年の冬にはイネオス・グレナディアーズのトレーニングキャンプにも参加していたようだ。ユンボ・ヴィズマはそのうえでその契約をイネオスから奪い取った。このあたり、ユンボ・ヴィズマの強い意志と、明確な勢力圏の変化が起きていることを感じられる事実だ。

note.com

 

 

モビスター・チーム(スペイン)

イバン・ロメオ(スペイン、20歳)

元ハーゲンスバーマン・アクセオン(CT)

残留争いに巻き込まれ、長らく移籍市場の開放を遅らせていたスペイン唯一のワールドツアーチームが最初に発表したメンバーはスペインの若き才能。プロレースでの実績こそないがハーゲンスバーマン・アクセオン出身というだけでその才能は保証されているだろう。2021年以前はMMRサイクリングアカデミー(サミュエル・サンチェス後援のジュニア向け育成チーム?)で過ごし、国内選手権のジュニア部門でロードレース&TTを共に制している。アユソー、カルロス・ロドリゲス級になるかはまだ分からないが、十分に期待できる存在ではあるだろう。

movistarteam.com

あとはモビスターがどこまでこれを育てられるか。これまでも色々と期待の若手を獲得してきたが、今のところ育成の面で大きな成果を出しているとは言い難い。アユソーもロドリゲスも他チーム・・・スペインの才能を、しっかりと自国のチームで育て上げられるかどうかは今後のモビスターにとっても重要な課題となるだろう。

 

ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、29歳)

元:EFエデュケーション・イージーポスト(WT)

テイオ・ゲイガンハートとニールソン・パウレスと共に2016年のツアー・オブ・カリフォルニアの新人賞TOP3を独占したハーゲンスバーマン・アクセオン出身選手。その後しばらくは期待されていたほどの結果を出せずにいたが、2020年にジロ・デ・イタリアで区間1勝&山岳賞獲得で再びその名を轟かせることに成功した。

今シーズンはモンヴァントゥー・デニヴレ・チャレンジ優勝やクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合9位などの安定した成績と、リザルトに残らないところでも、山岳ステージの要所要所でしっかりとその姿を見せ続ける走りとで、キャリア最高のシーズンを過ごしたと言える。

クライマーとしてかなり信頼できる心技体を手に入れつつあるこの男の獲得は、いよいよ単独エースでのグランツール制覇を目指しうる状態になりつつあるエンリク・マスにとっては、この上なく安心できるアシストになりうるだろう。2022シーズンのブエルタ・ア・エスパーニャにおけるカルロス・ベローナも素晴らしいアシストをしてくれたが、そこにこのゲレイロやランカウイで復活の兆しを見せつつあるイバン・ソーサなどが加わることで、大きな結果を得ることができるかもしれない。

かつての強力なアシスト陣を失ってしまっているモビスターが、再びグランツール制覇の栄光を掴み取れるか。その鍵を握りうる選手である。

 

フェルナンド・ガビリア(コロンビア、29歳)

元:UAEチーム・エミレーツ(WT)

2017年~2018年は疑いなき世界最強スプリンターの一人として君臨していたコロンビアの英雄も、2019年ジロ・デ・イタリアでの落車以来、歯車が嚙み合わない時期を長らく過ごし続けている。

それでも上位には入り込み続けており、極端に力が失われたという印象はそこまでない。しかし、勝てない。2022シーズンはツアー・オブ・オマーンでの2勝のみ、その前年は1勝のみ。元々スプリンターに活躍の機会が少ないUAEチーム・エミレーツの中でも存在感を示し切れず、結局はパスカル・アッカーマンに追い出されるような形で去らざるを得なくなった。

モビスターで再起を図ることはできるか? イバン・ガルシアも思うような活躍をしきれていないこのチームは、決して復活の良き舞台とは言い難いのは確かだ。

それでも、ガビリアが華々しく活躍するその同時期に苦しみの底に沈んでいた同世代のカレブ・ユアンはその後、「復活」を成し遂げている。ガビリアも決して不可能ではないはずだ。個人的にはとても好きな選手。まだまだ、応援し続けたい。

 

 

スーダル・クイックステップ(ベルギー)

ロット・スーダルについていたスポンサーのSoudal(シーリング・コーキング材メーカー)が新たにタイトルスポンサーに付いて名称変更。

 

ティム・メルリール(ベルギー、31歳)

元:アルペシン・ドゥクーニンク(WT)

ワウト・ファンアールトやクエンティン・ヘルマンスらと同じシクロクロッサーではあったが、シクロクロスではそこまで大きな成績を残すことなく、むしろロードレースでこそ真価を発揮した。2019年にはファンアールトやジルベール、イヴ・ランパールトらを蹴散らして先着し、ベルギー王者に輝く。2021年シーズンはいずれも初出場のジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの両方で、初日スプリントステージを制するなど、世界トップクラスのスプリント力を発揮してくれた。

だが、チームメートのジャスパー・フィリプセンと比べると、大舞台での勝利は総数としては多くはない。1クラスやプロシリーズが中心。ツールもジロも、不運もありつつも途中リタイアしているなど、スタミナ面では課題が残るか?

いずれにせよクイックステップの最高のスプリントトレイン体制を手に入れることで、間違いなく化ける素質を持つであろう。ツールでのエースはファビオ・ヤコブセンとの間でどうなるかは不明だが、2022年のツールでヤコブセンが(チーム全体が不調だったのはあるが)期待されていた結果を出せなかっただけに、2023シーズンどうなっていくかはまだまだ不明だ。

多くの外部からの優秀なスプリンターが2年で離れていくことで有名なクイックステップだが、メルリールはベルギー人ということで、必ずしもその法則には当てはまらないかもしれない?

 

ヤン・ヒルト(チェコ、32歳)

元:アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(WT)

元CCCのプロコンチネンタルチーム時代にジロ・デ・イタリアで活躍しその名を馳せたクライマー。その後はアスタナで強力なアシストとして活躍し、アンテルマルシェ移籍後も、2021シーズンはルイス・メインチェスのブエルタ・ア・エスパーニャでの総合を助け(のちにメインチェスはリタイアするが)、2022シーズンについてはツアー・オブ・オマーン総合優勝&ジロ・デ・イタリア区間1勝&総合6位と、自身がエースとして活躍できる状況を再び作ってきた。

そのタイミングでの、クイックステップ移籍。たとえば同じプロコンチネンタルチーム出身のファウスト・マスナダのように、アシストとしても活躍してくれると同時に、自身のチャンスも十分に与えられる、そんな理想的なチームだけに、さらなる活躍を見ていくことが期待できそう。

 

カスパー・ピーダスン(デンマーク、27歳)

元:チームDSM(WT)

また良い選手を獲得している。ファウスト・マスナダやフロリアン・セネシャル、マッティア・カッタネオ、そしてヨセフ・チェルニーやマウロ・シュミットなど、決してトップライダーではないが確かな実力をもった選手たちを(おそらくそこまで高くないお金で)獲得しつつ、それをチームの莫大な勝利数に貢献させることに長けているクイックステップ人材部の本領発揮とも言える獲得だ。

輝かしい成績があるわけではない。勝利は2017年のツアー・オブ・デンマークでの1勝と、2020年のパリ~ツールの2勝のみ。2022シーズンもTOP10リザルトはない。

だがデンマーク人らしいタフさと独走力、そしてスプリント力も持ち合わせており、クイックステップが「覚醒」させる素材としては申し分がない。

そもそも、今や世界最強のリードアウターであるミケル・モルコフも、2018年にクイックステップ入りするまでは決して目立った選手ではなかった。すでにキャリア終盤に差し掛かっているモルコフの「後継者」として、このピーダスンが新たな「世界最強」へと進化していく、これは布石なのかもしれない。

 

 

チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ(オーストラリア)

エディ・ダンバー(アイルランド、27歳)

元:イネオス・グレナディアーズ(WT)

パンチャー的脚質を持ちつつもより登りへの適性を持ち、2019年にはツール・ド・ヨークシャー総合3位、2020年にはUAEツアー総合11位、2021年にはツール・ド・スイス総合12位、そして2022年にはセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリとツール・ド・ハンガリーで総合優勝するなどの成績を重ねてきている。

実力はある。個人的には好きなタイプの選手である。が、長時間平坦でも山岳でも牽けるアシスト力や、勝つべきレースで確実に勝つ決定力という点では、イネオスの求める高いレベルにはやや達しきれていないところがあったかもしれない。イーサン・ヘイターと脚質が近い割に、その一段下の期待値になってしまうというとちょっと冷たい言い方になるけれど・・・。その意味で、オウェイン・ドゥールと似たイメージはあり、彼が2022年に移籍した以上、このダンバーの移籍も仕方なかったかもしれない。

逆に、その移籍先がバイクエクスチェンジであれば、その才能を存分に発揮できるような気がしている。中堅チームにとっては十分に頼れる決定力を持っており、バイクエクスチェンジにとっては嬉しいポイントゲッターとなってくれるだろう。

さらに言えばそれなりに登れるその足は、今やニック・シュルツがサイモン・イェーツの第一アシストと化しつつあるクライマー不足のバイクエクスチェンジにとっては、決定的に必要な存在だったと言えそうだ。

 

クリス・ハーパー(オーストラリア、29歳)

元:ユンボ・ヴィズマ(WT)

2019年のツアー・オブ・ジャパン総合優勝者。その後も2020年UAEツアー総合4位など頑張りはするが、セップ・クスやヨナス・ヴィンゲゴー、トビアス・フォスといった若手の才能が次から次へと台頭していくユンボ・ヴィズマの中では、2軍レースでのアシスト以上の立場を確保するのはなかなか難しかった。

その意味で、母国チームへの移籍は彼にとっては大きなチャンス。実力は十分にあり、サイモン・イェーツの右腕としてはもちろん、本来その位置を期待されていたはずのルーカス・ハミルトンがなかなかくすぶっている間に、サブレースでのエースを任せてもらえる可能性は十分にありそうだ。

とにかく、タレントがいなさすぎてサイモン・イェーツが過労死するレベルだったバイクエクスチェンジにとって、あまりにも有難い補強。うまく復活してほしい。個人的にはハミルトンももう一度その才能を輝かせてほしいけれど。

 

フィリッポ・ザナ(イタリア、24歳)

元:バルディアーニCSF・ファイザネ(PT)

バルディアーニCSF・ファイザネでプロデビューした2020年から毎年ジロ・デ・イタリアに出場しており、2021年はツール・ド・ラヴニールでトビアスハラン・ヨハンネセン、カルロス・ロドリゲスに続く総合3位。イタリアの次代を担う注目の若手クライマーの行く先は一旦、バイクエクスチェンジと決まった。

とはいえ、正直なところやや不安はある。2020年のU23版ジロ・デ・イタリア総合3位のケヴィン・コレオーニもバイクエクスチェンジでデビューしたが、そこから2年、今のところ目立った成績を出せてはいない。ダンバーやハーパーの獲得は嬉しいが、このザナがしっかりと育ってくれる環境をこのチームが用意してくれるか、慎重に見たいところ。

とはいえ、ザナは2022シーズンもアドリアティカ・イオニカ・レースで総合優勝するなど、コレオーニと比べても即戦力として活躍しうる存在。ジロ3回出場の経験も合わせ、早速エースアシスト級の活躍を見せてくれるかも。

 

ブレイク・クイック(オーストラリア、23歳)

元:トリニティ・レーシング(CT)

2018年には時代の寵児ルーク・プラップとタッグを組んだマディソン種目で世界選手権ジュニア部門で優勝。トラック出身の才能は当然ロードでも生かされ、2022年のU23国内ロード王者に輝いている。2021年までプラップが所属していたインフォームTMXメークの一員として年始のベイ・サイクリング・クラシックで全2ステージを両方とも制し、サントス・フェスティバル・オブ・サイクリングでも第2ステージとクリテリウムを制するなど、非UCIレースでは無類の強さを発揮している。

さらにトリニティ・レーシング(かつてトム・ピドコックも所属していたイギリスのコンチネンタルチーム)にシーズン途中で移籍してからは、アークティックレース・オブ・ノルウェーでも第2ステージで区間4位など、トップカテゴリでも実力を発揮。

今回、カーデン・グローヴスを放出してしまうという痛手を負ったバイクエクスチェンジにとって、新たなグローヴス、あるいは新たなカレブ・ユアンとも言うべき才能であり、しっかりと育てていきたい。

プロ初年度から成績を叩き出しうる、期待の逸材である。

 

ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、31歳)

元:ボーラ・ハンスグローエ(WT)

2017年、チームがワールドツアーに昇格して最初のグランツールとなったジロ・デ・イタリア。サガンもマイカも出場しておらず、ほぼプロコンチネンタルチームに近い陣容で期待はされていなかったはずだが――まさかの、初日勝利。しかも本来はサム・ベネットのリードアウトを務めるはずが、思いのほか飛び出し過ぎてしまい、集団もこれをすぐに捉えようとしなかったためにギャップが生まれて、そこからのチャンスを一気に掴み取ることとなった。

まさに僥倖。しかし、その後のチームの大きな成長を思えば、十分に必然とも思えるサプライズであった。

そしてペストルベルガー自身も、その後強さを見せ続けていった。あのジロ初日で見せたアグレッシブさと独走力はその後のクラシックレースなどでも頻繁に見られ、2021年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは17.3㎞を独走して逃げ切り勝利も果たしている。

本来の実力に対してリザルトはまだそこまで数がないものの、よりステージ勝利重視に傾きつつあるバイクエクスチェンジにおいて、その特性がより発揮される可能性はあるだろう。

また、平坦牽引力に定評のあるバイクエクスチェンジにとって、その強みをさらに補強することになるだろう。

 

 

チーム・アルケア・サムシック(フランス)

2023シーズンからワールドツアーチームに昇格。

 

クレモン・シャンプッサン(フランス、25歳)

元:AG2Rシトロエン・チーム(WT)

2018年ツール・ド・ラブニール総合5位&2019年ツール・ド・ラブニール総合4位。2019年にはU23版イル・ロンバルディアで2位になるほかAG2Rのトレーニーとして参戦したグラン・ピエモンテでいきなりの9位。

フランスの期待の若手クライマーとして注目を集め、プロ2年目となる2021年のブエルタ・ア・エスパーニャでは第20ステージで「誰もが想像しなかったタイミングでの飛び出し」で一気に勝利を掻っ攫った。

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まさに、ピエール・ラトゥールの再来とも言うべき才能の持ち主に大注目していたし、AG2Rとしても絶対に手放さないんじゃないか、と思っていたが・・・。

そのラトゥールをすでにトタルエナジーズに手放しているAG2Rは、その路線を捨てることなく、今回もアルケアに放出。もちろんアルケアがこの才能に目をつけ大金を出して何が何でも掴みたかったという意図はあるだろう。ナイロ・キンタナやワレン・バルギルが揃う良いチームなのは間違いないし、ワールドツアーチーム化の可能性もある。2022年で復活の兆しを見せているナイロ・キンタナとのダブルエースでツール総合TOP10入りを目指していくのは彼にとっても悪くないだろう。

とりもなおさず、まずはツールでの区間勝利が目の前の目標だ。

 

イェンセ・ビエルマンス(ベルギー、28歳)

元:イスラエル・プレミアテック(WT)

2014年はジャイアント・シマノ(現チームDSM)の育成チーム所属でマクシミリアン・シャフマンやラース・ファンデルハールの同期。翌年から2年間のSEGレーシングを経て2017年からチーム・カチューシャ・アルペシンでプロデビュー。

2019年にはジロ・デ・イタリアの集団スプリントで8位に入り込むが、それ以外で大きな成果を残すことはなく、主にアシストとして力を発揮することとなっていた。

それでも2022シーズンはマリーランド・サイクリング・クラシックで7位に入るなど、丘陵系のレースで何度か上位に入り込む姿を見せ、キャリア最高のシーズンを過ごすことに成功。

その勢いに乗じ、降格の決まったイスラエルを脱し、ワールドツアーチームに昇格したアルケア・サムシックに拾われることに。

急速に強化を進める必要のあるアルケアは飛躍の舞台としてはちょうどいい。ユーゴ・オフステテールやダニエル・マクレーなどのライバルも多いが、シーズン序盤の活躍次第ではエースの座もないわけではないだろう。

 

ダヴィド・デッケル(オランダ、25歳)

元:ユンボ・ヴィズマ(WT)

ツール・ド・フランス4勝、ロンド・ファン・フラーンデレンでも2位の経験をもつエリック・デッケルの息子であり、2021シーズンのユンボ・ヴィズマデビュー初年度いきなりのUAEツアー区間2位×2&ポイント賞など、行く末の恐ろしさを感じさせる走りをして見せた。

www.ringsride.work

 

しかしその後は、思ったほどには伸び切らなかった。2022シーズンにおいては、「同期」オラフ・クーイの急成長に完全に喰われてしまった印象。

シーズン終盤にはDNSやDNFも頻発し、早速の壁にぶつかっている様子がありありと見受けられる。

そんな中でのアルケアへの移籍。これは彼にとっても、復活のチャンスになるだろう。デビューからいきなり右肩上がりで成長し続けられる選手は決して多くはない。むしろ、今年のブエルタ・ア・エスパーニャで勝利したカーデン・グローヴスのように、デビュー早々の活躍から大きく期待されながらも停滞期間を挟み、そこから再び栄光を掴むようなパターンの方が多い気がする。

ここからがデッケルにとっての本当の戦い。グローヴスに続く、鮮烈な復活劇を見せてほしい。アルケアもライバルが多いので、油断はしていられないぞ。

 

クリスティアン・ロドリゲス(スペイン、28歳)

元:トタルエナジーズ(PT)

元カハルラルで2020年にトタルエナジーズ入り。2021シーズンはツール・ド・ルワンダ総合優勝、ルート・ドクシタニーではジュリオ・チッコーネらを下し総合4位、モンヴァントゥー・デニヴレ・チャレンジで5位、そしてツール・ド・フランスでチーム最高位の総合46位と、急成長を遂げていた。

密かに期待しながら見つめていた2022シーズンは年初こそブエルタ・ア・アンダルシア総合2位とキャリア最高の成績を遂げたものの、そこからはイツリア・バスクカントリー山岳賞などはありながらも前年ほどの活躍は見せられず。それでも安定感はばっちりであり、このたびワールドツアー昇格を果たしたアルケア・サムシックの「補強組」として選ばれた。

チームが真のワールドツアーチームらしい陣容を揃える前に、しっかりと存在感を示し2年後・3年後にもエース格を確保できるように活躍できるか、重要なチーム1年目を迎えることとなる。エンリク・マスやフアン・アユソーら、スペインが盛り上がりを見せつつある今、しっかりとその波に乗っていけるか。

 

 

チームDSM(オランダ)

パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、32歳)

元:イスラエル・プレミアテック(WT)

ひたすら若手の有望株を捕まえては育てる印象のあったDSMだが、このベヴィンと次のファンフッケという、一度名を馳せながらその後いまいちぱっとしない中で中堅になりつつある選手たちを獲得するという、ちょっとした方針転換を感じさせる。ロマン・バルデやジョン・デゲンコルプの獲得に近い方向性だろうか。

とはいえ、ベヴィンについては「ぱっとしない」という表現はちょっとかわいそうかもしれない。2019年のツアー・ダウンアンダーでの総合優勝目前というあの大盛り上がりは以後ないものの、得意の登りスプリントでしっかりとポイントを稼いでおり、2022シーズンもツアー・オブ・ターキーでジェイ・ヴァインを下してステージ優勝と総合優勝を決めている。さらにツール・ド・ロマンディではイーサン・ヘイターを下してのスプリント勝利だからかなり凄い。

ただ、DSMで彼のような勝ち方がフィットするかというと、あまりイメージが湧かない。妙にトレインにこだわるところのある印象のDSMだが、ベヴィンについては型に嵌らず自由に動いてステージ勝利を狙ってほしいところ。

あとは、そろそろTTでの優勝も・・・いつも惜しいんだよなぁ。

 

ハーム・ファンフッケ(ベルギー、26歳)

元:ロット・スーダル(WT)

2020年のシーズン冒頭のブエルタ・ア・アンダルシアで突然ステージレーサーとして頭角を現した男。さらにその年のジロ・デ・イタリアの第1週を終えた時点で総合7位に残るという成果を残し、一気に注目を集めることとなった。

だが、その後は正直、肥大化した期待に応えるだけの走りはできずにここまできた。だが、ステージレーサーとして最も脂が乗ってくる時期はこれから。DSMならばプレッシャーも決して多くなく、これまでも不意に意外な選手がステージレースで好成績を残すことも多いチーム。一発屋で終わらず、もう一度輝くことができるか。期待しているぞ!

 

マシュー・ディナム(オーストラリア、23歳)

元:ブリッジレーン(CT)

元クロスカントリー・マウンテンバイクライダーであり、2022シーズンはエリート国内王者にも輝いている。

ロードレースの分野でも2022年のツール・ド・ラヴニールでトラブルに見舞われながらも最終的には総合11位、世界選手権U23ロードレースでも7位に入り込んでおり、マウンテンバイカーとしてアドバンテージのある登坂能力はグランツールにも丘陵系ワンデーレースにも可能性を持ちうるだろう。

www.team-dsm.com

 

ショーン・フリン(イギリス、23歳)

元:チューダー・プロサイクリングチーム(CT)

SEGレーシング、そしてチューダー・プロサイクリングチーム(旧スイスレーシングアカデミー)を遍歴。その脚質は多彩で、シクロクロスとクロスカントリー・マウンテンバイクで共に国内王者に輝いており、荒地での走りはお手の物。U23版ジロ・デ・イタリアでの集団スプリントでも上位に顔を出しており、パンチャー・クライマーたちの中でのスプリント力にも可能性がありそうだ。

DSMのヘッドコーチ、ルディ・ケムナは次のように述べる。「丘を乗り越え、優れたスプリントが可能な非常にオールラウンドな才能の持ち主だ」と。

 

アレックス・エドモンドソン(オーストラリア、30歳)

元:チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ(WT)

2016年のオリカ・バイクエクスチェンジでのプロデビュー以来一貫して母国チームを支え続けてきた。その平坦巡航能力とスプリントトレインでの加速力は、チームの好成績を支えると共に彼自身にもまた、ときおり集団スプリントでの先頭付近のリザルトをもたらしていた。

その役割はおそらくDSMでも変わらないだろう。強い選手が揃いながらもなかなか勝ちきれないDSMのエーススプリンターおよびトレイン。若手の多いそのトレインに、2022年加入のジョン・デゲンコルプと共に、経験と実力とをプレゼントしてほしい。

 

 

トレック・セガフレード(アメリカ)

ナトナエル・テスファション(エリトリア、24歳)

元:ドローンホッパー・アンドロージジョカトリ(PT)

ディメンションデータ(あるいはNTTプロサイクリングチーム)の育成チームに所属していてその後は現在のアンドローニジョカトリで2年を過ごしていたエリトリア人ライダー。2021シーズンもジロ・デ・イタリアの丘陵系逃げ切りステージで区間8位に入るなど、その名はそれとなく知られていた。

そんな彼が2022シーズンは再びジロで区間8位になったほか、2020年以来2回目となるツール・ド・ルワンダ総合優勝、アドリアティカ・イオニカ・レース区間1勝&総合2位など着実に成績を積み上げ、キャリア最高の成績でシーズンを終えることに成功。そして、ついにワールドツアーチームから声を掛けられることに。

パンチャー~クライマー系の中ではスプリント力が高い方でもあるため、逃げ切り小集団での勝利などもより狙っていけるだろう。まだまだ成長が期待できる存在だ。ギルマイに続け!

 

 

UAEチーム・エミレーツ(アラブ首長国連邦)

ティム・ウェレンス(ベルギー、32歳)

元:ロット・スーダル(WT)

ロット・べリソル時代にプロデビューし、その後実に11年間に渡り所属し続けていたロット・スーダルを離脱することに。驚きの移籍である。

山岳のアシストというよりは、アルデンヌ・クラシックや1週間のステージレースでの総合やステージ優勝を狙うタイプであり、既存のUAEメンバーでいうとディエゴ・ウリッシやアレッサンドロ・コーヴィ、マッテオ・トレンティンらに近いタイプ。ポガチャルが目立ちすぎているけど、2022年シーズンはコーヴィが結構活躍していたりと、このあたりのメンバーも重要な働きをしているため、その部分への補強と言えるだろう。

個人的にはぜひアルデンヌでの勝利を実現させてほしいが、ポガチャルがやる気のうちはどうしても競合してしまうのが悩ましいところ。

 

フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、30歳)

元:ボーラ・ハンスグローエ(WT)

かつてはラファウ・マイカと並びボーラの総合エースの一角を担っていたが、年々強力な総合系ライダーが集まりつつあるボーラにおける居場所は少しずつ無くなっていった? 登りスプリントもいけるパンチャータイプクライマーだが、結果自体はなかなか出せずにいた。

逆に、この辺りの経験をもつ地味な強さは、UAEにとっては割と重要。それこそマイカ同様に、ポガチャルのアシストとして驚くべきフィットをする可能性はある。ジョージ・ベネットやマルク・ソレルなどもいるが、必ずしもきらびやかな選手だけが活躍するのがアシストという役割ではない。

もちろん、UAEとしてはポガチャル部隊だけでなく、ジョアン・アルメイダを中心としたもう1部隊、グランツール主力チームを作っていきたいと考えているだろうし、その点での補強としてはばっちりだ。

 

ドメン・ノヴァク(スロベニア、28歳)

元:バーレーン・ヴィクトリアス(WT)

2017年のプロデビュー以来一貫してバーレーン・チームに所属し続けていた男が、最強のスロベニア人のもとに。勝利は2019年の国内選手権ロードレースのみだが、2022シーズンはジロ・デ・イタリアで山岳ステージ区間2位と総合31位、そしてツアー・オブ・スロベニア総合3位(1位ポガチャル、2位マイカ。そこから2分以上離されているが)と自身のキャリアハイの成績を叩き出している。

一軍入りは難しいかもしれないが、同じスロベニア人ということで精神的にもポガチャルの支えにもなりうるかもしれない。いずれにせよ今は彼にとっての成長期であり、これまでの実績には関わらない活躍を今後期待することはできそうだ。

 

アダム・イェーツ(イギリス、31歳)

元:イネオス・グレナディアーズ(WT)

オリカ・グリーンエッジ時代からサイモン・イェーツと共にオージーチームで成長し続けてきた男が、2021年にイネオス入りしたときも大きな驚きであった。だが、英国のエース候補としては、これが正しい姿なのかもしれない――と思っていたら、まさかの2年でUAEに。

確かに、オージーチーム時代にグランツールライダーとしては諦めざるを得ないかもしれないと思っていた中でイネオスに入ってブエルタ総合4位、ツール総合9位など、一定の躍進を見せたようにも感じられたが、それでも期待されていたほどではなかったのかもしれない。

UAEへ行くということは、イネオス以上にエースとしての可能性は微妙になるかもしれない。しかし「ポガチャル組」のエース級アシストたちが皆、生き生きとその実力を存分に発揮している姿を見るに、その立ち位置こそが本当の意味でアダムを輝かせてくれるのかもしれない。

2023年は「挑戦者」となるポガチャルを、支える存在となりうるか。もちろん、ジョアン・アルメイダとグランツールエースの座を競う存在になる可能性もまだまだ十分にあるだろう。

 

シュールト・バックス(オランダ、27歳)

元:アルペシン・ドゥクーニンク(PT)

元ラボバンク育成チーム出身でその後はオランダ籍のコンチネンタルチームを転々としていたが、2021年のオランダ国内選手権ロードレースで2位に入る活躍を見せたこともあり、2022シーズンのアルペシン・ドゥクーニンクで遅咲きのプロデビュー。

そしてそのチャンスをしっかりとモノにした。ツール・ド・ルクセンブルクで区間2位とTT5位で総合4位、コッパ・アゴスティーニではアレハンドロ・バルベルデやダヴィデ・フォルモロら錚々たるメンバーの中での小集団スプリントを制して大金星。さらにはツール・ド・ランカウイでも区間1勝を成し遂げて飛躍のシーズンを終えた。

この成績をもって、見事に世界最強チームの一角、UAEにスカウトされることに。こういうタイプが花開くのはどちらかというとクイックステップかな・・と思わないことはないが、UAEがより厚みを増していく上、このあたりの実力ある「遅れてきた新人」をどう生かしていくか、注目したいところ。

 

 

ロット・ディスティニー(ベルギー)

スーダル社がメインスポンサーから外れる代わりに、ベルギーの通信プロバイダ/クラウド事業会社Dstnyがセカンドスポンサーとして就任。

2023シーズンからのUCIプロチームへの降格が決定。

 

ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、36歳)

元:グルパマFDJ(WT)

アルノー・デマールの右腕。その最終発射台として彼のジロ・デ・イタリア通算8勝も支え続けていた男が、まさかの移籍。移籍先はロット・ディスティニーということで、エースというよりは今度はカレブ・ユアンの最終発射台への就任が確実視されている。

デマールにとっては間違いなく痛手。2022年のジロ・デ・イタリアで活躍したラモン・シンケルダムもどうなるか分からない中、2023シーズンは育成チームからの大量昇格を進めているようだが、果たしてFDJとデマール組の行く末は。

そして、この獲得を行うロット・ディスティニーも思惑も不明。2022年のツールにはユアンの右腕だったジャスパー・デブイストもロジャー・クルーゲも連れていかなかった意図とは? ルディガー・ゼーリッヒも2022年に獲得したばかりの中、ロット・ディスティニーがどんな戦略を思い描いているのかはっきりとしない。

もちろん、カレブ・ユアンだけでなく、新たに台頭しつつある若き才能アルノー・デライの存在が、念頭に置かれているのかもしれないが。

 

アリエン・リヴィンズ(ベルギー、29歳)

マティス・パースヘンス(ベルギー、27歳)

元:ビンゴール・パウェルス・ソーセスWB(PT)

共にベルギーの中堅プロチームの一軍メンバーであり、ロンド・ファン・フラーンデレンやリエージュ~バストーニュ~リエージュなどのトップレースへの出場経験は豊富。

ただ、プロ勝利は一度もなく、各種レースでのトップリザルトも多くはない。ワールドツアーでエースを張れる存在ではなく、脇を固めるアシストの1人となるだろう。

プロチーム降格の危機にも瀕しているロット・ディスティニー。その苦しさをある種感じさせる移籍情報とも言える。

 

パスカル・エーンクホーン(オランダ、26歳)

元:ユンボ・ヴィズマ(WT)

こちらもエースというよりはアシスト選手の獲得。グランツールの中継でもよくそのヘルメットに書かれたPASCALの名前が映し出されていたように、集団先頭を牽引する重要な平坦アシストの一人であった。

そんな彼も、デニスが入りファンバーレが入りトラトニクまで入るユンボ・ヴィズマ軍団の中から、残念ながら放出されることとなった。もちろん、ロット・ディスティニーにとっては、心強い存在となることだろう。

ただ彼は彼で、過去にはセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリで2勝、2021年にはベルギーのワンデーレースで1勝しているほか、ツール・ド・ワロニーやツアー・オブ・ブリテンでも上位に食い込む姿を見せていたりする。

小さなレースであれば、重要なポイントゲッターになる可能性もある。この移籍が、彼の新しい可能性を引き出すチャンスとなれば幸い。

 

ミラン・メンテン(ベルギー、26歳)

元:ビンゴール・パウェルス・ソーセスWB(PT)

リヴィンズ、パースヘンスに続きこちらもビンゴールから獲得。まるでプロチーム降格の準備をしているかのような獲得に一抹の不安を覚えるが・・・。

ミラン・メンテンはツール・ド・ワロニーやツアー・オブ・オマーン、エトワール・ド・ベセージュ、クロ・レースなど、ワールドツアーチームも出場する各種1クラス・ProシリーズのレースでTOP10を多く記録している。2022シーズンの10/9時点でのスプリントランキングでは117位、パンチャーランキングでは141位。リヴィンズとパースヘンスよりも、チームにポイントをもたらす存在とはなってくれるだろう。

あとは、勝利を得られるかどうか。これまでの勝利経験は、2021年のクロ・レースでの1勝のみ。

 

 

イスラエル・プレミアテック(イスラエル)

2023シーズンからのUCIプロチームへの降格が決定。

 

ディラン・トゥーンス(ベルギー、31歳)

元:バーレーン・ヴィクトリアス(WT)

2017年のラ・フレーシュ・ワロンヌで3位に入り、新時代の激坂ハンターとして注目を集めたトゥーンス。

www.ringsride.work

 

その後、ツール・ド・フランスではラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユを含む2勝。2022シーズンはラ・フレーシュ・ワロンヌでアレハンドロ・バルベルデを真っ向勝負で打ち破りついに優勝するなど、「2年ごとに活躍する」ジンクスも打ち破り大飛躍を遂げている。

そんなトゥーンスが、突如8/5付けで(つまりシーズン途中で)イスラエル・プレミアテックに移籍。この後のブエルタ・ア・エスパーニャも秋のイタリアン・クラシックも、イスラエルのジャージを身に纏って参戦するという。

元々2023シーズンからイスラエルに行くことは決まっていて、そのうえでイスラエルのオーナーのシルヴァン・アダムス氏が気を利かせてくれたらしいが、移籍が決まった選手がそのあと冷遇されるパターンも時折あるので、移籍元が同意しているのであれば良いことの方が多いかも?

いずれにせよこれで、イスラエルはマイケル・ウッズやヤコブ・フルサンと共に超強力なパンチャー系ライダーがそろい踏みすることに。

まあ、似たようなことをやって盛大に爆死した2019年のディメンションデータという例もあるので、やや不安は過る。

 

 

トタルエナジーズ(フランス)

ジェイソン・テッソン(フランス、25歳)

元:サンミッシェル・オーベル93(CT)

コンチネンタルチームの「サンミッシェル・オーベル93」所属だったジェイソン・テッソン。だが、2022シーズンはプロシリーズのダンケルク4日間やブークル・ドゥ・ラ・マイエンヌなどでワールドツアーの選手たちを押しのけて勝利。ダンケルク4日間ではポイント賞も獲得するなど、コンチネンタルチームとは思えない活躍を成し遂げてきている。

ゆえに文句なしのプロ昇格。しかも即戦力ですぐさまトタルエナジーズのエースにもなりうる。何しろUCIランキングで8/7時点でエドヴァルド・ボアッソンハーゲンやロレンツォ・マンザン、クリス・ローレスよりは上位につけているからね・・。

今後さらなる躍進が期待できる、注目の選手の1人だ。

 

ステフ・クラス(ベルギー、27歳)

元:ロット・スーダル(WT)

2017年のツール・ド・ラヴニールで総合5位。期待され翌年からチーム・カチューシャ・アルペシンでプロデビューを果たし、チーム解散後は2020年からロット・スーダルで走っている。

2018年のアークティックレース・オブ・ノルウェーで総合7位。2021年のブエルタ・ア・エスパーニャでは総合20位。2022年のツール・ド・ロマンディでは総合11位。その他、2022年の1クラスのパンチャー向けワンデーレースでは4位や5位などを何度か・・・それなりに力があるのは分かるが、なかなか結果を出せていない微妙な立ち位置の存在であり、ワールドツアーチームの選手としてはやや力不足と判断されても仕方ないところである。

一方で、トタルエナジーズとしてはちょうどいい存在。しっかりと1クラスやプロシリーズでUCIポイントを稼ぎつつ、本人としてもプロ初勝利を目指していきたい。まだまだ躍進の可能性は十分に残っている!

 

 

Uno-X・プロサイクリングチーム(ノルウェー)

アレクサンデル・クリストフ(ノルウェー、36歳)

元:アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(WT)

2022シーズンもUAEチーム・エミレーツから単年契約で「ほぼプロチームの」アンテルマルシェに移籍したことで話題を集めたクリストフ。だがシュヘルデプライスでは残り10㎞を切ったところから始まる1,700mのブロックストラートから単独で飛び出し、本人として初となる「逃げ切り勝利」を果たすなど、久々に彼の強さを取り戻したかのような走りを披露。実際、8/6時点で3勝を挙げているが、3勝以上挙げるシーズンは2019年以来3年ぶりとなる。

その勢いで2023シーズンはUno-Xに。今度こそ正真正銘プロチームへの移籍とはなるが、成長著しい(もしかしたらワールドツアーチーム入りも視野にいれていそうな)母国チームへの移籍というのはむしろ誉れとも言うべきだろう。北のクラシックで好成績を出しているラスムス・ティレルらとタッグを組みつつチームに勝利をもたらすのを目指すほか、いよいよ迎えるキャリア終盤における「後進の育成」にも挑みたい。

何しろ今回は何と3年契約。キャリアをこのチームで終えるイメージも持っているような気もする。

 

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