年始から20日間、1日別の記事を書いた日を除けば毎日、2021年シーズンのUCIワールドツアーチーム全19チームのプレビュー記事を書いてきた。
AG2R Citroën Team 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Astana - Premier Tech 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Bahrain - Victorious 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
BORA - hansgrohe 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Cofidis,Solutions Crédits 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Deceuninck - Quick Step 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
EF Education - Nippo 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Groupama - FDJ 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
INEOS Grenadiers 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Intermarché Wanty Gobert 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Israel Start-Up Nation 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Lotto Soudal 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Movistar Team 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team BikeExchange 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team DSM 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Jumbo-Visma 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Qhubeka ASSOS 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Trek - Segafredo 2021年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
その中で各チームの2020年シーズンの獲得UCIポイントの集計も行っていたのだが、すべて終わった今の段階でそれを集計し、各テーマごとにまとめてみた。
2021シーズンが本格開幕する前に、今年の各チームの「通信簿」を見てみることで、これから1年間のレースシーンをある程度見通してみることもできるかもしれない。
UCIポイントというのはあくまでも一つの指標に過ぎないし、2020年シーズンは新型コロナウイルスの影響で例年以上にその信憑性が薄いかもしれないが、あくまで参考として見ていただければ幸い。
目次
↓昨年の記事↓
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合計編
まずは単純に、各チームの全選手の獲得UCIポイントの合計でランキングしてみた。
一番左の赤色や青色の数字・マークは何を意味しているかというと、「2020年UCIワールドツアーチームランキング」すなわち、2020年ロースターの段階での獲得UCIポイントの合計によるランキング順位である。
そこから「順位が上がる」ことが何を意味しているかといえば、2020-2021移籍市場においてUCIポイントの合計値が相対的に改善した、すなわち「移籍市場において成功した」ことを意味する。
一方、その順位を下げているチームは2020-2021移籍市場において「失敗した」「弱体化」したチームということができる。
そう見てみると「成功した」チーム(補強が叶えられたチーム)とは
- イスラエル・スタートアップネーション(19位→14位)
- グルパマFDJ(9位→6位)*1
- イネオス・グレナディアーズ(4位→2位)
- チーム・バイクエクスチェンジ(11位→9位)
- モビスター・チーム(15位→13位)
一方で「失敗した」チーム(大きな戦力の流出のあったチーム)とは
- チームDSM(5位→10位)
- EFエデュケーション・NIPPO(10位→15位)
- チーム・ユンボ・ヴィズマ(1位→4位)
- ロット・スーダル(14位→17位)
一方で、単純な合計だけでは、たとえば人数の差や、平均年齢の差というものが考慮されていないがゆえの順位付けということもありうる。
そこで、合計値÷人数(平均獲得ポイント)と合計値÷平均年齢の2パターンで改めてランキングしてみた。
人数で割って平均値で出したときに順位が下がったのはイネオス、EF。EFは先ほどの合計値でのランキングでも5位分下がっているのもあるため、今年の「弱体化」がかなり深刻なものであることがよくわかる。
一方、「平均年齢」で割ったときのランキングというのは、すなわち今年合計UCIポイントで順位が低い理由はあくまでも若手の選手たちを大量獲得しているからであり、「ポテンシャル」においては非常に高いチームである、ということを示している。
たとえば昨年、この指標で一気に「6位分」順位を上げたチーム・サンウェブは、2020年実際に大きな飛躍を遂げることになった。
その意味で、平均年齢で割ったランキングで今年上昇しているのは旧サンウェブのDSMと、もう1つ、このDSMに匹敵するほどの平均年齢(26.6歳)を誇り、一気に「若手チーム」化したロット・スーダルである。
ロット・スーダルは人数で割った場合も順位を上げており、彼らは今年、意外な爆発を見せてくれるチームとなる可能性がありそうだ。
参考までに、全チームの平均年齢ランキングも掲載しておく。
北のクラシック編
続いて、北のクラシックにおけるチームランキングも集計してみる。
基本的には以下の記事を作成するにあたって使用したデータをもとに、2021年のロースターに合わせて修正した。
2021年の各チームの「北のクラシック力」を比較してみよう。
2021年も相変わらずドゥクーニンクが最強。
クリストフにトレンティンが加わったUAEが1つ順位を上げて2位に躍り出ている。
ここで注目すべきは2020年ロースターから4ランクアップしたキュベカ・アソス(旧NTTプロサイクリング)。ただこれは、昨年ロンド・ファン・フラーンデレン6位のディミトリ・クレイスの存在が大きそうで、彼のその走りが「まぐれ」だったとしたら今年そこまでは期待できないだろう。逆にそれが彼の大きな飛躍の第一歩だったとしたら、CCCから移籍してきたルーカス・ヴィシニオウスキーらと共に、ぜひこのチームに本当に北のクラシックでの大きな成績をもたらしてあげてほしい。
逆に驚きの結果となったのがボーラ・ハンスグローエの6ランクダウンだが、これはドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌ5位のジャンピエール・ドリュケールが抜けたことが大きいようだ。
とはいえ、昨年はスケジュールの都合上、ペテル・サガンが北のクラシックに出られなかったことや、今年新加入のニルス・ポリッツが昨年はまったく振るわなかったことを考えると、そのあたりが本来の力でもって北のクラシックを席巻することが期待できる2021シーズンにおいては、問題なく上位に上り詰めることができそうである。
そういったポイントもあるため、あくまでも参考程度で見ていただければ幸い。
アルデンヌ「系」クラシック編
北のクラシックに続き、今度はアルデンヌ「系」クラシックについてのチームランキングを出していく。
アルデンヌ・クラシックといえばアムステルゴールドレース、ラ・フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュの3つを指すことが多いが、このブログではその他のパンチャー・クライマー向けのワンデーレースを含めアルデンヌ「系」としている。
具体的にはストラーデ・ビアンケ、クラシカ・サンセバスティアン、イル・ロンバルディアも含めた6レースで2年前なんかは集計している。
しかし北のクラシックと比べ各レースの出場選手層の幅が広く、とくに今年は上記6つのレースのうち2つ(アムステルゴールドレース、クラシカ・サンセバスティアン)が中止になったこともあり、たとえばリエージュ~バストーニュ~リエージュにしか出場していないプリモシュ・ログリッチがリエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝の500点だけで個人ランキング3位に入るなどあまりにもバランスが悪かったため、集計はしたもののお蔵入りとなっていた。
それでもチームについてはある程度参考になるデータは集められたので、こちらも北のクラシック編同様、「新チーム体制」でのランキングを出してみる。
北のクラシックと比べると昨年ロースターでの順位からの変動が激しいアルデンヌ・クラシック。
その筆頭とも言うべきがやはり個人ランキング1位(800ポイント)のマルク・ヒルシを放出したDSM(3位→14位)と獲得したUAE(5位→1位)。
その他にもマイケル・ウッズ(435ポイント)を獲得したイスラエル・スタートアップネーション(9位→4位)と放出したEFエデュケーション・NIPPO(6位→11位)。
イネオスも昨年70ポイントを獲得したダニエル・マルティネスと130ポイントを獲得したリッチー・ポートが加入しているために順位を4つ上げているが、このチームは昨年はあまりポイントを獲らなかったローレンス・デプルスやアダム・イェーツ、トム・ピドコックもアルデンヌ系クラシックへの適性が高いので、今年のイネオスは本気でアルデンヌ、強そう。
ロット・スーダルは昨年も今年もどっちも最下位。本来であればフィリップ・ジルベールやティム・ウェレンスなど、強い選手が揃っているはずのチームなので、来年はなんとか復活を目指したいところである。
グランツール編
最後に、3大グランツールで獲得したUCIポイントで比較してみる。
元にしたデータは下記の記事で使用しているものである。
こちらも「新チーム体制」に変換したあとの、合計獲得UCIポイントを3大グランツール分すべて統合してランキングしてみた。
なお、注意点として、グランツールの中で得られるすべてのUCIポイントを合計したものであるため、総合だけでなく各ステージ優勝や総合リーダージャージを何日間着用していたかのポイント、山岳賞やポイント賞ランキングでのポイントなどもすべて含まれている。
こうやってみると、やはりイネオス・グレナディアーズは強い。
ジロ制覇・ブエルタ総合2位なのだから当たり前だが、それ以外にも、総合が狙えなくともステージ優勝を積極的に獲りにいった結果でもある。
アンテルマルシェはそもそも元々のサーカス・ワンティゴベールが昨年はどのグランツールにも出場できていなかったのだから、移籍で獲得した選手たちの持っているポイントでしか稼げないという点で正確な数値ではないことに注意。
なお、総合成績だけで集計したランキングは以下の通り。
なんだかんだ、モビスター、強い。そしてツール制覇したUAEも、やはり「ポガチャル1強チーム」であることには注意が必要だ。
各チームの得意分野の総まとめ
最後の最後に。
各チームの「北のクラシック」「アルデンヌ系クラシック」「グランツール総合」ランキングを元に、それぞれの順位に応じて以下のルールで5段階での点数を割り振る。
- 上位3チームを5
- 次の4チームを4
- 次の5チームを3
- 次の4チームを2
- 最後の3チームを1
それらを一覧にして表にまとめたのが以下のランキングだ。
各チームの「得意分野」が一目瞭然になるだろう。
たとえばユンボやUAEはすべての分野において高い実績を誇るが、「北クラ偏重」のドゥクーニンク、「アルデンヌ偏重」のアスタナ、そして「GT総合偏重」のイネオスやモビスターといった構図が分かりやすく浮き出てくる。
また、バーレーン・ヴィクトリアスやイスラエル・スタートアップネーションが北のクラシックが弱点であり、AG2Rシトロエン・チームはグランツール総合成績が弱点である、ということも。
そしてバイクエクスチェンジはあらゆる分野においてかなり危機的な状況であるということだが、ここは今年のサイモン・イェーツやルーカス・ハミルトンのグランツール総合における成績やマイケル・マシューズのクラシックにおける成績に期待したいところ。
いかがだったろうか。
個人的にデータを集計してみたいという欲望から作っているものにはなるが、せっかく作ったのだから公開してみたいということで記事を書いている。
そもそも恣意的に選んだデータを使用しているために違和感のある部分もあるが、何かより納得のいくデータを集めていくうえでのアドバイスなどいただけると幸い。
そして、皆さんにとって、2021シーズンを展望するうえでの何かしらの参考になれば、なお幸いだ。
今年も1年、どうぞよろしくお願いいたします。
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*1:これはどちらかというと合計人数を2人増やしたことによる影響が大きいかもしれない。