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UCIロード世界選手権2021「フランドル」個人タイムトライアルプレビュー

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今年もまた、「世界最強」を巡る戦いが幕を開ける。

今年の舞台は自転車ロードレースの聖地「フランドル」。

北のクラシックに代表されるような石畳の急坂が連続するわけではないものの、非常にバランスの取れた、あらゆる選手に可能性のある魅力的なコースが用意された。

果たして今年、頂点に立つのは一体誰か。

 

今回はこのUCIロード世界選手権2021「フランドル」の、男子・女子エリート&男子U23の「個人タイムトライアル」に関して、そのコースおよび注目選手たちを確認していこうと思う。

「世界最速」の称号を懸けた戦いが始まる。

 

 

目次

   

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9/19(日) 男子エリート個人タイムトライアル

クノック=ヘイスト~ブルッヘ 43.3㎞(総獲得標高78m)

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ベルギー北西部、北海沿いの町クノック=ヘイストから南下してウェスト=フランデレン州州都ブルッヘ(ブルージュ)へと至る長距離個人タイムトライアル。

総獲得標高はわずか78m。海沿いゆえに風の影響はあるかもしれないが、基本的には重量級の純粋TTスペシャリスト向けコースと言ってよいだろう。

中間計測地点は13.8㎞地点と33.3㎞地点とにそれぞれ設けられている。

 

今年1年間の実績から見ると優勝候補は以下の通りである。

(独自ルールで集計した今シーズンの実績)

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累計TTポイントでいうと先日フィリッポ・ガンナを破って2年連続の欧州TT王者に輝いたばかりのキュングが抜けて強い。今年こそついに、悲願の世界王者になれるか。

同国のビッセガーも今年一気に躍進したものの、どちらかというとパンチャー的な脚質をもつ彼は「長距離・平坦」という属性は最も強いタイプではない(短距離・丘陵の方が得意)。ヨーロッパ選手権でも4位だが、こちらも22㎞と比較的短かった。

 

ディフェンディングチャンピオンのガンナも、今年はオリンピックのトラックレースへの照準を合わせていたこともあり、実力をすべて出し切れた実績値ではないかもしれない。「長距離・平坦」はもちろん大得意レイアウトのため、キュングへの対抗馬としては随一だろう。

 

3番目の対抗馬として挙げられるのがカスパー・アスグリーンとワウト・ファンアールト。とくにファンアールトは「長距離」カテゴリで最もポイントを獲っている。ロードでも優勝候補の最右翼ゆえに、まさかのロード・TT2冠も期待できるかも・・・?

 

最も未知数なのはレムコ・エヴェネプール。

2019年の世界選手権ではガンナを46秒上回っての2位(優勝はローハン・デニス)。2020年~2021年序盤のガンナは手を付けられない強さでTT8連勝などを成し遂げていたが、そんな彼を2020年冒頭のブエルタ・ア・サンフアンTTで打ち破ったのもエヴェネプールだった。

すなわち、絶好調のガンナを唯一倒しうるポテンシャルを秘めている男と言えるのがこのエヴェネプール。もちろん、2020年イル・ロンバルディアでの悲劇的な事故以降、彼の本調子は取り戻せずに来ていたが、今年のポストノルド・デンマークルント2勝&総合優勝、ドライフェンクルス・オーベレルエイセ、ブリュッセル・サイクリング・クラシックと連勝したあたりからルフェーブルGMにも「昨年のイル・ロンバルディア直前のコンディションが戻りつつある」と太鼓判を押されたエヴェネプール。ヨーロッパ選手権TTではガンナに7秒遅れの3位でロードレースでもある意味最も強い走りを見せての2位。

すべての調子をこの世界選手権に持ってくることができれば、彼もまたファンアールトと並んでロード・TT2冠を狙いうる筆頭候補となる。

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紛うことなき世界最速決定戦。

誰が勝つかわからないこの頂上決戦から今年の世界選手権は幕を開ける。

 

 

9/20(月) 男子U23個人タイムトライアル

クノック=ヘイスト~ブルッヘ 30.3㎞(総獲得標高54m)

f:id:SuzuTamaki:20210917220738p:plain男子エリートとほぼ同じコースを辿りつつ、バウデウェイン運河沿いのルートを削った全長30.3㎞。中間計測地点は13.8㎞地点と20.8㎞地点。

U23個人タイムトライアルはここ3年(昨年は開催されなかったため2017~2019年)ミッケル・ビョーグ(現UAEチーム・エミレーツ)によって席巻されてきたものの、今年は当然不在。上位勢も軒並みU23範囲内には入っていないため、完全な新人同士の対決となる。

 

優勝候補は以下の通り。

ヨハン・プリース=パイタスン(デンマーク、22歳)

  • ヨーロッパ選手権U23個人TT優勝/22.4㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ2位/5㎞
  • レトワール・ドル(ネイションズカップの1つ)初日TT3位/9.6㎞

ソーレン・ヴァーレンショルドゥ(ノルウェー、21歳)

  • ヨーロッパ選手権U23個人TT2位/22.4㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ4位/5㎞
  • コルセ・ドゥ・ラ・ペ(ネイションズカップの1つ)初日プロローグ優勝/3.4㎞
  • オーストラリア国内選手権「エリート」個人TT2位/50.22㎞

ダーン・ホール(オランダ、22歳)

  • ヨーロッパ選手権U23個人TT3位/22.4㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ4位/5㎞
  • ベイビー・ジロ第4ステージ個人TT7位/25.4㎞

ミック・ファンダイケ(オランダ、22歳)

  • オランダ国内選手権U23個人優勝/29.6㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ3位/5㎞
  • フランダース・トゥモロー・ツアー第3ステージ個人TT優勝/12.7㎞

フィリッポ・バロンチーニ(イタリア、21歳)

  • ヨーロッパ選手権U23個人TT7位/22.4㎞
  • イタリア国内選手権U23個人TT優勝/19㎞
  • ベイビー・ジロ第4ステージ個人TT優勝/25.4㎞

ベン・ヒーリー(アイルランド、21歳)

  • ベイビー・ジロ第4ステージ個人TT2位/25.4㎞
  • (2020年)アイルランド国内選手権U23個人TT優勝/22.4㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ10位/5㎞

ルーク・プラップ(オーストラリア、21歳)

  • オーストラリア国内選手権「エリート」個人TT優勝/37.5㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ8位/5㎞

ミシェル・ヘスマン(ドイツ、20歳)

  • ヨーロッパ選手権U23個人TT4位/22.4㎞
  • ツール・ド・ラヴニール初日プロローグ7位/5㎞
  • ドイツ国内選手権U23個人TT優勝/30.5㎞

ラウル・ガルシアピエルナ(スペイン、20歳)

  • ヨーロッパ選手権U23個人TT6位/22.4㎞
  • スペイン国内選手権「エリート」個人TT4位/32.1㎞

 

なおプラップは来年からイネオス、ヘスマンとファンダイケは来年からユンボ・ヴィスマ、ホールとバロンチーニは来年からトレック・セガフレード。

プリース=パイタスンとヴァーレンショルドゥはUno-Xプロサイクリングチーム、ガルシアピエルナはエキッポ・ケルンファルマとそれぞれプロチームに所属。

ヒーリーは現トリニティ・レーシングで来期はまだ未定だが、ほぼ確実にワールドツアーから声がかかりそうな気もしており、相変わらず有力チームによる「青田買い」が進行していることが良く分かる。

 

 

9/20(月) 女子エリート個人タイムトライアル

クノック=ヘイスト~ブルッヘ 30.3㎞(総獲得標高54m)

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コースは男子U23と全く同じ。

男子エリート同様、今年の実績を表にしてみた。

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直近のヨーロッパ選手権も堂々優勝してみせたローセルが頭1つ抜けている。

もちろん、東京オリンピック金メダリストのファンフルーテンも最大の優勝候補の1人。オリンピック後もクラシカ・サンセバスティアン優勝、ツアー・オブ・ノルウェー&チャレンジ・ラ・ブエルタ総合優勝とかなり絶好調である。

また、今年のヨーロッパ選手権2位、昨年の世界選手権3位のエレン・ファンダイク、今年のヨーロッパ選手権3位、昨年の世界選手権4位のリサ・ブレナウアーも当然第3軸として注目すべき存在である。

上記の表ではカヴァッリやラブーも上位に来ているが、彼女らは山岳TTであったジロ・ローザのTTでポイントを稼いでいるのであまり参考にならないだろう。

 

もちろん本来は昨年の世界王者アンナ・ファンデルブレッヘンに注目したいところなのだが、彼女はここ最近の不調が理由でTTは不参加を決めた。

また、2019年世界王者の若き才能クロエ・ダイガードは、オリンピックTTで7位、トラックレースで銅メダルを獲得して以降はレースを走っておらず、今回も不出場の様子。

 

今年の世界最速女子選手の座は、上記のローセル/ファンフルーテン/ファンダイク/ブレナウアーあるいは今年のヨーロッパ選手権4位・2019年世界選手権5位のリサ・クラインやオリンピック5位、昨年の世界選手権6位、2019年世界選手権4位の「46歳」ネーベンあたりで奪い合うことになりそうだ。

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