灼熱と歴史に満たされたアンダルシアを巡る。
ブエルタらしからぬ平坦ステージの多さが特徴的だった第1週に比べ、この第2週は激坂や平坦基調だけれど一筋縄ではいかないレイアウトなど、実にブエルタらしいテイストが差し込まれてきている。
ただ、総合争いの重要な舞台となるほどの難易度のステージは1週目に比べても少ないかもしれない。その分、逃げ切りなど、ドラマチックな展開を楽しめるかも。
今年は例年以上に総合もスプリントも混戦状態になることが予想されている。
果たして2週目を終えたとき、どんな風景が広がっているのか・・・。
第1週の振り返りはこちらから
目次
- 第10ステージ ロケタス・デ・マル〜リンコン・デ・ラ・ビクトリア 189㎞(丘陵)
- 第11ステージ アンテケラ〜バルデペーニャス・デ・ハエン 133.6㎞(丘陵)
- 第12ステージ ハエン〜コルドバ 175㎞(丘陵)
- 第13ステージ ベルメス~ビリャヌエバ・デ・ラ・セレナ 203.7㎞(平坦)
- 第14ステージ ドン・ベニト~ピコ・ビリュエルカス 165.7㎞(山岳)
- 第15ステージ ナバルモラル・デ・ラ・マタ~エル・バラコ 197.5㎞(山岳)
スポンサーリンク
第10ステージ ロケタス・デ・マル〜リンコン・デ・ラ・ビクトリア 189㎞(丘陵)
ラスト15.8㎞地点の2級山岳が勝敗を分ける
今大会最南端、アンダルシアの南岸を駆け抜けるオールフラットステージ・・・と思いきや、最後の最後、残り15.8㎞地点に2級山岳を用意する、これぞブエルタといったレイアウト。
ステージカテゴリが平坦ではなく丘陵なのはブエルタにしては大人しいかな。
2級山岳のプロフィールは登坂距離10.9㎞・平均勾配4.9%。ただし前半の緩やかな部分を除くラスト5㎞の平均勾配は8%を超えるとも言われ、なかなかの難易度。
登れるスプリンターはもちろん、パンチャーでも越えられるかはやや判断が分かれるところで、予想が難しい。逃げ切りもなくはない。
休息日明けは何が起こるかわからないだけに、油断はできない。
第11ステージ アンテケラ〜バルデペーニャス・デ・ハエン 133.6㎞(丘陵)
ラスト1㎞に最大勾配30%の超激坂!
海岸を離れ、アンダルシアの内陸の丘陵地帯を突き進んでいく。
プロトンの最大の敵は起伏以上にアンダルシアの熱線。今年のツールは暑さがあまり話題にならなかった分、このブエルタでは厳しい戦いが待っていそうだ。
そしてこのステージの最大の目玉は、ラスト1㎞に訪れる。
その前のラスト20㎞からは登坂距離8.5㎞・平均勾配4.8%の2級山岳を登り、その山頂から8㎞の位置にあるフィニッシュライン。その1㎞手前から突如始まる登りは最大勾配がなんと30%!
過去3回ブエルタには登場しており、2010年にはイゴール・アントン、2011年にはホアキン・ロドリゲス、2013年にはダニエル・モレノ・・・いずれも、激坂ハンターとして名を馳せたクライマーたちであり、そのラインナップからも、この日の勝利がどういう足の持ち主に許されるかがなんとなく理解できるはずだ。
第12ステージ ハエン〜コルドバ 175㎞(丘陵)
「14%峠」という名の2級山岳を越えて誰が生き残る?
かつてこの地にあったイスラム王朝の首都として栄え、世界遺産にも登録されているアンダルシア州の都市コルドバにフィニッシュ。
2011年にはペテル・サガン、2014年にはジョン・デゲンコルプを勝者として迎え入れているこの都市だが、今回は一度コルドバを通過した後、フィニッシュ前44.3㎞地点に3級山岳アルト・デ・サンジェロニモ(登坂距離13㎞、平均勾配3.3%)、さらにもう一度コルドバを通過したあとに残り17.2㎞地点に2級山岳アルト・デル・14%(登坂距離7.2㎞、平均勾配5.6%)が用意されている。
とくに後者の2級山岳はその独特な名前の通り、最大勾配14%区間を有する厳しい登り。とくに頂上まで残り3㎞あたりに最も厳しい登りが登場するとのこと。
この登りの頂上からフィニッシュまでの17㎞の下りと平坦。
ここで勝利を掴むのは逃げ屋か、あるいは10年前や7年前のような登れるスプリンターたちか。
第13ステージ ベルメス~ビリャヌエバ・デ・ラ・セレナ 203.7㎞(平坦)
今大会最長ステージで繰り広げられる5回目の集団スプリント
今大会最長ステージはコルドバ県の町ベルメスから北上しエストレマドゥーラ州へ。アンダルシアを抜けるものの、灼熱の気候は変わらず。200㎞を超える長距離の中で、単純なスプリントで決着できないくらいにプロトンは体力を奪われるかもしれない。
この日のスタート地点・フィニッシュ地点ともに、ブエルタ・ア・エスパーニャでは初登場。ゆえにデータはないが、とりあえず集団スプリントになることは間違いないだろう。
あとはフィニッシュ前11.2㎞地点に存在するスプリントポイント&「ボーナスタイムポイント」。逃げがすべて捕まえられていてもおかしくないこの位置で、総合勢による争いが巻き起こる可能性は十分にある。
第14ステージ ドン・ベニト~ピコ・ビリュエルカス 165.7㎞(山岳)
2つの激坂登坂がどんなドラマを演出するか
エストレマドゥーラ州をさらに北上していく。
第2週の週末に相応しい厳しい山岳2連戦の1つ目。この日は、2つの1級山岳がプロトンを苦しめる。
1つ目はレース中盤、残り68.2㎞地点に位置する1級山岳アルト・コラード・デ・バレステロス。
その手前の3級山岳を登り終えたあと、わずかな平坦区間を経て突然目の前に現れる「壁」は、コンクリートで舗装された狭く鋭い激坂で、登坂距離2.8㎞の平均勾配がなんと14%超!
逃げにとっても集団にとっても、この日最初の大きな試練となることだろう。
とはいえそこからは長い下りと平坦に近いアップダウン地帯。
この激坂で巻き起こった分裂がそのまま最後まで維持されるかどうかは微妙なところ。
総合勢がこの場所で抜け出せば大きな大逆転のチャンスにはなるだろうが、そう簡単にはいかない気もする。
また、離れ離れになったアシストを待つために集団がスローペースになりうることは、逃げの集団にとってはチャンスとなることだろう。
ラストは登坂距離14.5㎞、平均勾配6.2%の1級ピコ・ビリュエルカス(登坂距離14.5㎞、平均勾配6.2%)。
常に厳しい勾配というわけではないが、終盤にかけて徐々に勾配は増していき、ラスト1㎞、とくに放棄された軍事施設へと向かう頂上直前では最大勾配15%の区間もある難関ゾーンへと突入していく。
一瞬の爆発力よりも中盤の激坂区間を生き残りつつこの最後の登りも常にエースを護り続けられる十分なチーム力が試される登坂レイアウト。
今回のユンボ・ヴィスマはややログリッチが終盤に1人になる姿が目立つため、彼にとってここは正念場となるかもしれない。
また、逃げにとっても決して楽なステージではないが前述の通りチャンスもある。
総合争いから脱落してしまった有力勢など、実力者であれば逃げ切れる可能性もあるステージ。総合における逆転もありうる。
個人的にはロマン・バルデやファビオ・アルの復活勝利に期待したいところ。
第15ステージ ナバルモラル・デ・ラ・マタ~エル・バラコ 197.5㎞(山岳)
劇的な逃げ切りの可能性もある山岳ステージ
エストレマドゥーラ州の街ナバルモラル・デ・ラ・マタからマドリード近郊のエル・バラコまで。
4つの山岳ポイントを超える第2週の最後に相応しい難関ステージで、勝負所はフィニッシュ前38.4㎞地点に用意された1級山岳プエルト・デ・ミハレス(登坂距離20.4㎞、平均勾配5.4%)と、フィニッシュ前5.4㎞地点に用意された3級山岳プエルト・サン・フアン・デ・ナバ(登坂距離8.6㎞、平均勾配3.8%)。
最初のプエルト・デ・ミハレスは今大会最長の登坂。
とはいえ、その山頂からフィニッシュまでも40㎞弱残っている。
その勾配は比較的緩やかであり、ここから抜け出して総合逆転を目指す――というのも難しいだろう。
そして最後の3級山岳の難易度もそこまででなくラストは下りフィニッシュのため、この日総合争いが勃発する可能性はあまりないかもしれない。
ゆえに、一番可能性がありそうなのは逃げ切り勝利。
第14ステージと比べてもある程度登る力があればチャンスがありそうなので、ブルゴスBHやエウスカルテル・エウスカディなど、UCIプロチームの選手たちにも頑張ってほしい。
たとえばアルペシン・フェニックスのジェイ・ヴァインや、カハルラル・セグロスRGAのジョナタン・ラストラ、エウスカルテル・エウスカディのアントニオ・ソトなど・・・。
スポンサーリンク