りんぐすらいど

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Intermarché Wanty Gobert 2021年シーズンチームガイド

 

読み:アンテルマルシェ・ワンティゴベール

国籍:ベルギー

略号:IWG

創設年:2009年

GM:ジャン=フランソワ・ブラール(ベルギー)

使用機材:キューブ(ドイツ)

2020年UCIチームランキング:20位

(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります) 

 

【参考:過去のシーズンチームガイド】 

Wanty - Groupe Gobert 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

目次

 

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2021年ロースター

※2020年獲得UCIポイント順

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昨年までサーカス・ワンティゴベールと呼ばれていたチーム(それ以前はワンティ・グループゴベールなど)。ベルギーらしく北のクラシックやアルデンヌ・クラシック系に強い丘陵系のルーラー・パンチャーたちを揃え、1クラスやProクラスを中心に活躍。UCIヨーロッパツアーランキング首位に立つことも何度かあり、プロコンチネンタルチーム(現UCIプロチーム)の中では強豪チームの1つに数えられる存在であった。

ギヨーム・マルタンが所属していたこともあり、ツール・ド・フランスにも何度か出場。そのときは積極的な逃げで活躍したり、2019年にはクサンドロ・ムーリッセが存在感を示していたりもした。

 

そんな「ワンティ」が、チーム解散が決まったCCCチームのワールドツアーライセンスを引き継ぎ、突如としてワールドツアーチームに昇格。

チームの格としては不思議ではないものの、果たしてシーズン当初から計画していたかというとそうではないだろう。グランツールなどでも耐えられるようにこれまでチームにほとんどいなかったクライマー系の選手を集めようと必死で選手をかき集めたのだろうが、すでに市場は閉鎖しかかっており、手に入れられたのはNTTとCCCというワールドツアー下位チームと、UCIプロチームから。結果、CCCチームがワールドツアー化したときと同じく、ほぼ半分プロチームレベルのものとなってしまった。

しかも、元々このチームにいた選手の中でもポイントの稼ぎ頭のムーリッセやデュポンも離れたことで・・・今年、その走りに期待するのはさすがに酷だと思われる。

 

それでも、楽しみな部分も多い。元々地味に強く好きだったパスクアロンがどこまでワールドツアーで戦えるか、かつてはトレックやユンボで活躍していたダニー・ファンポッペルがワールドツアー返り咲きで本来の活躍を取り戻せるか、CCCから移籍となったヤン・ヒルトやNTTからのルイ・メインチェスなどがエースクライマーとしてチームに貢献できるか。

そしてラヴニールでも活躍していたツィマーマンやエヴァンスたちが、若手代表として他のチームを驚かせるような走りができるか。

 

最終的な結果には期待しないが、それでもその「走り」は楽しみにしておきたい。

 

 

注目選手

ダニー・ファンポッペル(オランダ、28歳)

脚質:スプリンター

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2020年の主な戦績    

  • ホーイクセ・ペイル優勝
  • クラシカ・ドゥ・アルメリア4位
  • ミラノ~トリノ5位
  • ブリュッセル・サイクリング・クラシック11位
  • UCI世界ランキング98位

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2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージ。残り12㎞地点でパンクしながらも集団復帰を果たし、わずか22歳でワールドツアー初勝利を成し遂げた。

そのときは新世代スプリンターの誕生にワクワクしたものだったが、翌年からのチーム・スカイでの2年間は、このチームにおけるピュアスプリンターたちが常にそうであるようになかなか目立つ活躍はできず、2018年からチーム・ロットNLユンボへ。

2019年からユンボ・ヴィズマに名前の変わるこのチームはオランダ籍ということもあり、ここからまた彼の活躍が期待できると思ったがーー同じオランダのディラン・フルーネウェーヘンがより大きな活躍を見せる中、数回の勝利とステージ上位を重ねるだけのファンポッペルは決して目立つことなく、このチームでもまた、2年の契約期間が終わるとともに放出された。

そして、2020年からは現チームへ。ワールドツアーチームからUCIプロチームへの、事実上の「降格」であった。

 

しかし、彼は決してここで終わるようなタイプではないと信じている。今も、確かに勝ちに繋がることは少ないながらも、たとえばミラノ〜トリノではデマール、ユアン、ファンアールト、サガンといった世界トップクラスのスプリンターたちに次いでの5位。ビンクバンクツアーでもアッカーマン、ピーダスン、フィリプセンに次いでの4位など、トップオブザトップではないものの、そこに次ぐレベルの中では先頭を取れるだけの実力を持っている。チャンスさえあれば、まだまだ彼は「復活」できる。

その意味で、ライバルの多いトップチームや、チャンスの少ない総合重視チームよりも、今のこのワンティのようなチームの方が彼にはチャンスが多いだろう。それがワールドツアーに昇格したのだから、今年は本当に重要である。

彼がこのまま終わる男ではないことを、証明してみせてほしい。できればジロかブエルタで、もう1勝。

 

 

アンドレア・パスクアロン(イタリア、33歳)

脚質:パンチャー

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2020年の主な戦績  

  • ビンクバンク・ツアー総合15位
  • コッパ・サバティーニ2位
  • パリ~ニース区間3位
  • メモリアル・マルコ・パンターニ5位

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いかにもイタリアのスプリンターらしいというか、パンチャータイプスプリンターという表現に最も相応しいというか、決してピュアスプリンターではなく、多少の登りをものともせず乗り越え、そのセレクションのかかった集団で先頭を取ることに長けている男。

丘陵クラシックに向いているという感じでもないのでディエゴ・ウリッシのようなピュアパンチャーではないながら、その分北のクラシック適性はもっていて、2020年もヘント〜ウェヴェルヘム20位、ロンド・ファン・フラーンデレン24位といった具合だ。過去にはツール・ド・ルクセンブルク総合優勝経験あり。

あくまでもUCIプロチーム感の強い選手なので、ワールドツアーの舞台でどこまで活躍できるかは未知数。しかしこのチームの顔であり、ムーリッセやデュポンが去る中で、その存在価値は非常に高くなっている。

ぜひともここは、ワールドツアーレースで存在感を示してほしいところ。狙いどころはビンクバンクツアーや、ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌ、あるいはアムステルゴールドレースなど。

もちろん、これまで通り1クラスやProクラスでは「勝利」を重ねていってほしい。新規ワールドツアーチームに求められるのは、細かくても沢山の勝利数を積み重ねられるかどうか。そのためにはスプリンターがいかに頑張るかが重要だ。

ファンポッペルとともに、2人でまずは10勝はほしい。

 

 

ヤン・ヒルト(チェコ、30歳)

脚質:クライマー

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元々はワールドツアー化する前のCCC(当時はCCCスプランディ・ポルコウィチェ)に所属し、招待された2017年のジロ・デ・イタリアで、第3週目でも総合上位勢の選手たちに食らいつく優れた走りを披露し、最終的には総合11位としっかりとその名を売ることに成功した。

ジロでのその活躍はプロコンチネンタルチームの選手にとっては出世の大きなチャンスとなる。案の定、アスタナ・プロチームの目に留まり、翌年からはこのチームの山岳アシストとして採用され、実際に2018年にはビルバオやツェイツらと共にジロとブエルタのミゲルアンヘル・ロペス親衛隊として活躍。彼の総合3位×2の立役者となった。

そうして培った経験と実力で、ワールドツアー昇格を果たしていた古巣に復帰。そこで総合エースとして活躍する未来を目指し――まさかの、チーム解散。

新たにそのワールドツアーライセンスを引き継いだこのワンティで、もう1度総合エースとして走るチャンスをしっかりとモノにしたい。

 

2020年は混乱の中決して良い成績を出すことはできていなかったが、アスタナ最終年となる2019年シーズンはツール・ド・スイス総合5位やツアー・オブ・アルプス総合7位、UAEツアー総合12位など悪くない成績。

ワンティでの総合エースとしてのライバルはルイ・メインチェスかこのあと紹介する若手クライマーたちだろうが、負けないよう頑張ってほしい。 

 

 

その他注目選手

ゲオルグ・ツィマーマン(ドイツ、24歳)

脚質:クライマー

2019年のツール・ド・ラヴニール総合5位。東京オリンピックテストイベントにも来ており、13位でフィニッシュしている。

2020年はCCCチームでプロデビューを果たしており、ステージレースとアルデンヌ・クラシックを中心に出場。最後はブエルタ・ア・エスパーニャにも出場し、最終的な総合順位は21位。ネオプロでこの成績はなかなかのものである。

マルセル・マイセンとパスカル・アッカーマンが鎬を削ったドイツ国内選手権ロードレースで4位など、混戦の中のスプリント力もそれなりにありそう。いずれにせよ、その才覚がどのようなものか判明するのはこれから。今年は注目のシーズンだ。

 

クエンティン・ヘルマンス(ベルギー、26歳)

脚質:パンチャー

シクロクロスにおいては常に先頭の方で活躍しており、10本の指には入る現役トップ選手の一人。実はロードレースでも結果を出しており、2018年のツール・ド・ワロニーで区間1勝・総合2位・ポイント賞&新人賞獲得。ちょうどワウト・ファンアールトやマチュー・ファンデルポールがロードでも活躍し始めている頃で、彼らと並んで「シクロクロス選手本当にやばいな」と思わせるのに十分な活躍をしてみせてくれていた。

そんな彼が、2021年はワールドツアーチームの一員に。同僚のコルネ・ファンケッセルも同様にシクロクロストップ選手の一人で、これで現役シクロトップ選手は彼らとファンアールト、ピドコックの4名がロードのワールドツアーチームに所属することに。

そしてヘルマンスは、Pro Cycling Stats の記載を信じると、今年は今のところ「ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ」「イツリア・バスクカントリー」「アムステルゴールドレース」「フレーシュ・ワロンヌ」「リエージュ~バストーニュ~リエージュ」そして「ジロ・デ・イタリア」への出場を予定しているという。

今年はマチュー・ファンデルポールもツール・ド・フランスへの出場を明言しているし、ピドコックももしかしたら可能性がある。ファンアールトは言わずもがな。

今年はグランツールにおいてシクロクロッサーたちが大暴れする年になるかも?

 

アレクサンダー・エヴァンス(オーストラリア、24歳)

脚質:クライマー

ツィマーマンと同じく2019年のツール・ド・ラヴニールで活躍した選手。こっちは総合21位と総合ではそこまででもなかったが、第8ステージの「コル・ドゥ・ラ・ローズ(2020年のツール・ド・フランスでミゲルアンヘル・ロペスが優勝した第17ステージ最後の登り)登坂一本勝負」にてステージ優勝を果たしている。

エヴァンスという名前のオーストラリア人ということでどうしても2011年ツール・ド・フランス覇者を想起してしまうが、血縁関係などはなし。ただ、その名前の迫力からついつい期待してしまう。

ワンティにてプロデビューを果たした2020年シーズンは全くといっていいほど結果を出せてはいない。果たして今年、覚醒するか、それともこのまま沈黙してしまうか?

 

 

総評

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新規ワールドツアーチームの常として、グランツールやモニュメントでの大きな勝利は望むべくもない。ワールドツアークラスのレースでは健闘をしてもらいつつ、1クラスやProクラスを中心に、スプリントや逃げ切りでちまちまと勝利数を重ねていくことが大事だ。

CCCチームがワールドツアー初年度で掲げた目標は「年間20勝」。結果としてそれはまったく果たせなかったわけだが、このチームもそういった目標目指して戦略を立てていってほしいところ。 

 

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