りんぐすらいど

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INEOS Grenadiers 2021年シーズンチームガイド

 

読み:イネオス・グレナディアーズ

国籍:イギリス

略号:IGD

創設年:2009年

GM:デイブ・ブレイルスフォード(イギリス)

使用機材:ピナレロ(イタリア)

2020年UCIチームランキング:4位

(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります) 

 

【参考:過去のシーズンチームガイド】 

Team Sky 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Team Sky 2019シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Team Ineos 2020シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

目次

 

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2021年ロースター

※2020年獲得UCIポイント順

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2020年はこの「最強」チームが瓦解した年であった。

と、同時に、このチームの新たな可能性も見いだせた年でもあった。

まずは、昨年ツール覇者エガン・ベルナルのまさかの失速。そしてジロ・デ・イタリアでも、ゲラント・トーマスが序盤でリタイアし、クリス・フルームも最後まで本調子を取り戻すことができないまま、チームを去ることとなった。

 

一方、エースを失ったツール・ド・フランスでは、第3週にリチャル・カラパスやミハウ・クフィアトコフスキが積極的な逃げに乗り、ステージ1勝を持ち帰る。

さらにジロ・デ・イタリアではトーマスの代わりにエースを担うこととなったテイオ・ゲイガンハートが週を重ねるごとに総合順位を上げ、最終的にまさかの総合優勝を勝ち取ることとなった。

さらにはこのジロで、フィリッポ・ガンナやジョナタン・ナルバエスらもステージ優勝を手に入れ、全21ステージ中3分の1にあたる7勝をこのイネオス単体で稼ぎ出した。

ブエルタ・ア・エスパーニャでもリチャル・カラパスがプリモシュ・ログリッチを脅かす走りを見せて総合2位。「外様」がなかなかこのチームで結果を出すのは難しいところもあるかと思うが、ツールでのクフィアトコフスキを勝利に導いたときといい、1年目からこのジロ覇者はうまくチームにフィットできているように感じる。

 

よって、2021年は、2010年代とはまた違った主役たちがこのチームの中心で活躍することになりそうだ。新加入のアダム・イェーツ、ダニエル・マルティネス、トム・ピドコック、ローレンス・デプルスたちも、これまでのイネオスにはなかったDNAを持ち込んでよりチームを変革していきそうだ。

「ツール最強」という2010年代のこのチームのテーマはついに崩れ去ったわけだが、スポンサーも変わり、主役級の選手たちも入れ替わる中で、この変化は決して悪いものではないはずだ。 

 

 

注目選手

エガン・ベルナル(コロンビア、24歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績    

  • ルート・ドクシタニー総合優勝
  • ツール・ド・ラン総合2位
  • ツアー・コロンビア2.1総合4位
  • UCI世界ランキング101位

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昨年の鮮烈なるツール勝利は、時代がついに変わったことを感じさせ、2010年代がクリス・フルームの時代であるとすれば、2020年代はエガン・ベルナルの時代となるだろう、と感じさせた。

しかし蓋を開けてみれば、それは逆に混沌の時代の始まりを意味していたのかもしれない。しかも彼に代わってツールを制したのが、彼の翌年にラヴニールを制した男であるという点で(そして昨年彼が樹立したツール最年少総合優勝記録をさらに塗り替えたという事実によって)、現代のトップライダーたちの「入れ替わりのスピードの速さ」を強烈に実感させることとなった。

だが、早くもベルナルが「終わった」と思うのはもちろん早すぎる。むしろ、この常に真摯な男、若くして若さを感じさせない男、かと思えば突如として異様なアグレッシブさを見せる男(ただ、それはクリス・フルームにも確かにあった)。

そんな彼が再び総合優勝候補として活躍してくれることを、引き続き楽しみにしたいと思う。

 

ただ、心配なのは彼の背中の状態。左右の足の長さの違いに起因するという脊柱側弯症は手術して治るという類のものではなく、長いリハビリと回復期間が必要になるという。

昨年末のニュースでは痛みを感じることなくバイクに乗ることができていると述べていた彼だが、完全な回復はそうすぐに期待できるものでもないだろう。

それでも彼は、来年のツール・ド・フランスに焦点を合わせていると断言した。

www.cyclingnews.com

 

それはどんな形になるか、まだわからない。

それでも、彼がまた、余計な重圧を背負うことなく、伸び伸びと「挑戦」してくれることを、期待している。

 

 

リチャル・カラパス(エクアドル、28歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績    

  • ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位
  • ツール・ド・フランス総合13位
  • ブエルタ・ア・ブルゴス総合6位
  • ツール・ド・ポローニュ区間1勝
  • イル・ロンバルディア13位
  • UCI世界ランキング11位

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2018年のパリ~ニース。そのクイーンステージとなる第7ステージで、残り2.5㎞の地点でマルク・ソレルが集団から遅れ始めていた。

集団の先頭ではサイモン・イェーツが飛び出し、決定的なアタックを繰り出しており、これを追いかけるボーラ・ハンスグローエのフェリックス・グロスチャートナーが、強烈な加速で集団を牽引していた。

ソレルは新人賞のライバルであるサム・オーメンの背後につけていたのだが、そのオーメンが集団から千切れた中で一緒に離れてしまったのである。

 

この危機を救ったのが、当時モビスター2年目、まだそこまで目立った活躍は見せられていなかったエクアドル人、マルク・ソレルだった。彼の牽引によってソレルは集団に引き戻され、最終的にサイモン・イェーツから46秒遅れの区間8位でフィニッシュした。

翌日の第8ステージは、誰もが知るソレルの大逆転劇。かのアルベルト・コンタドールですら成し遂げられなかった最終日エズ峠での大逆転を成功させてパリ~ニース総合優勝というキャリア最大の勝利を手に入れたソレルだったが、サイモン・イェーツとの最終的な総合タイム差はわずか4秒。

すなわち、あのときのカラパスのアシストがなければ彼はきっとこの栄光を手に入れることができなかった。

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ここからカラパスの快進撃が始まった。同年のジロ・デ・イタリアでは、エクアドル人として初めてのグランツール区間優勝。

さらにクリス・フルームによる世紀の大逆転劇の裏で、ミゲルアンヘル・ロペスと新人賞を巡る争いを繰り広げ、最終的には惜しくも敗れるものの、総合4位に。

そして2019年のジロ・デ・イタリアでは、プリモシュ・ログリッチとヴィンツェンツォ・ニバリが互いに牽制する中で飛び出してマリア・ローザを獲得。

そのままそれを最終日まで守り続け、世界最高峰の栄誉を掴み取った。

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だが、その実力が永続的なものなのか、その期待をもって最強チーム・イネオスに加入して、その実力を本当に発揮しきれるのか。

正直、不安があった。ミケル・ランダの例などを見ていても、すでに他のワールドツアーチームで活躍していた選手がこのイネオスに入ってきて、同じように活躍できるイメージがあまりなかった。

 

しかし、カラパスは真摯に、奢らず、淡々とその強さを発揮していった。

ツール・ド・フランスでは第3週、エースのエガン・ベルナルがリタイアしたのちに、アグレッシブな逃げを続け、失敗しても翌日もまた逃げ、そして最終的には、ミハウ・クフィアトコフスキの勝利をもたらした。

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そして正真正銘のエースとして挑んだブエルタ・ア・エスパーニャ。

ここでも彼は、圧し潰されることなく、むしろ果敢に最強のライダー、プリモシュ・ログリッチに挑み続けた。

もう、1年前のジロで彼を侮っていたログリッチとは違う。全力で、カラパスがアタックすれば負けじとアタックを繰り出し、最後は得意のスプリント力でカラパスを斥ける。

圧倒的に強く、敵わない様子を見せつけるログリッチに対し、しかしカラパスは最後まで諦めなかった。

そして迎えた最後の総合決戦、第17ステージ。

残り3㎞で、カラパスが最後のアタックを繰り出すと、そこまで必死に食らいつき続けていたログリッチが、ついに離れ、遠くなっていった。

 

このとき、カラパスとログリッチとのタイム差は45秒。それは決して小さくない、遥か高い壁のようなタイム差だった。

しかしカラパスは、最後の激坂区間を越えて少し緩やかになったフィニッシュまでの道のりを、重いギアをひたすら踏み続け加速していった。

 

その勢いは、あと一歩のところまで、迫っていた。

彼が颯爽と追い抜いていった「逃げ残り」の黄色いジャージを身に着けたオランダ人アシストが、後続のプリモシュ・ログリッチのもとに舞い降りて手助けさえしなければ、最後の最後にバーチャルで縮めていった「18秒」を、さらに縮めることができていたかもしれなかった。

 

最終的には敗北。しかし、この敗北は、彼がこのチーム・イネオスにおいて、間違いなくベルナルやトーマスと並ぶ総合エースとして認められた瞬間でもあった。

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「外様」とも言うべき存在に思えたリチャル・カラパスが、この1年で一気にチームに溶け込み、クフィアトコフスキと肩を抱きながらツールでフィニッシュを迎え、そしてブエルタではチームメートのアシストを受けながら総合2位を手に入れたこと。

それは、ある意味で、ゲイガンハートの総合優勝以上に、心に来る結果であった。

 

彼を代表する、これまでのイネオスとはまた違った存在たちが、これからのこのチームを支えていくことになるだろう。

そんな確信を得た瞬間であった。 

 

 

テイオ・ゲイガンハート(イギリス、26歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績    

  • ジロ・デ・イタリア区間2勝、総合優勝
  • ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合3位
  • UCI世界ランキング17位

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その名を初めて意識したのは、初開催の2017年ハンマー・リンブルフ。最後のハンマー・チェイスで、着順を確定する4人目のライダーとしてフィニッシュに飛び込んできた。

先にフィニッシュしていたスカイの先輩たちは皆振り返る中、ただ1人勝利を確信してガッツポーズを繰り出す若きゲイガンハート(当時はゲオゲガンハートと呼ばれていた)の姿が印象的であった。

2019年にはツアー・オブ・アルプスで区間2勝。総合優勝のパヴェル・シヴァコフに続き総合2位。ツール・ド・ポローニュでも同じくシヴァコフを総合優勝させながら、自らも総合5位に入る成績を叩き出した。

そしてその年のブエルタ・ア・エスパーニャでは、トラブルが続き本来のスケジュール通りのロースターを用意できなかったイネオスが、ワウト・プールスとダビ・デラクルスと並ぶエース候補として、ゲイガンハートを用意した。

彼にとってはそのときがチャンスだった。フルーム、トーマスに続く英国人総合エースとして台頭すべき、最大のチャンス。

しかし彼はそれを活かせなかった。序盤からタイムを失い、早々に総合争いから脱落。それでも諦めることなく、第15ステージ以降、平坦ステージの第19・21ステージを除く5ステージで連日逃げに乗るアグレッシブさを発揮するも、勝利にはあと一歩、届かなかった。

 

このとき、彼はこのチームの総合エースとして台頭するチャンスを失った、そんな風に見えてもいた。

実際に2020年シーズンも、 初戦のバレンシア1周こそ総合3位につけるものの、その後のルート・ドクシタニー、ツール・ド・ラン、ティレーノ~アドリアティコなどでは振るわない結果に。得意のワンデーレースであるイル・ロンバルディア、ジロ・デッレミリアもリタイアに終わった。

その状態で挑んだジロ・デ・イタリア。当然、彼はエースのゲラント・トーマスを助ける立場であり、初日のTT含め決して本気では走っておらず、第3ステージのエトナ終了時点で3分12秒遅れの総合24位であった。

 

だが、この日、ゲラント・トーマスがレースを去る。

イネオスにとっては、ツールに続く、エースの喪失。

翌日以降、アシストたちによる連日の逃げと、ステージ勝利に向けた動きが加速する。

そんな中、形上セカンドエースとして推挙されたゲイガンハートは、過度なプレッシャーを背負うこともなく、比較的自由に、思い通りの走りを許される結果となった。

 

そして始まる快進撃。第1週最終日のロッカラーゾの終盤でアタックを繰り出したゲイガンハートはその日区間6位でフィニッシュし、総合順位も2分41秒遅れの総合17位にまで浮上した。

それでもまだ、彼はビハインドを背負った挑戦者であった。もしかしたら総合TOP10には入るかもしれないが、それまでだろう、と多くの人が思っていたであろう。

 

だが、第2週の最終日。ピアンカヴァッロの登りで、ジェイ・ヒンドレーの強烈な牽引によって加速した先頭集団からマリア・ローザのホアン・アルメイダが脱落したとき、先頭に残っていたのはヒンドレーとウィルコ・ケルデルマンと、そしてこのゲイガンハートだけだった。

最後は得意のスプリントでサンウェブの二人を斥け、初のグランツール優勝。

そして総合成績は4位にまで登り詰めた。

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あとはもう、力を見せつけるだけであった。

世界最強のTTスペシャリストの1人、ローハン・デニスの山岳での強力なアシストにも助けられ、アルメイダ、ケルデルマンを次々と打ち倒していく。

最後は自らのTT能力の高さによってヒンドレーを圧倒すると、一度もレース中着ることのなかったマリア・ローザを身に着け、ミラノの表彰台の頂点に立った。

 

もちろん、この栄光はあくまでも、トーマス、クライスヴァイク、サイモン・イェーツといった強豪選手たちが落車や新型コロナウイルスの影響でレースを去り、ヤコブ・フルサンも重要なアシストを序盤から失う中孤軍奮闘を余儀なくされた、という特殊な状況下で手に入れたものであることは理解しないといけない。

彼が今、トーマス、ベルナル、カラパスらに並ぶチームのグランツール総合優勝候補の筆頭である、という評価を下すのはまだ早いとも言える。

 

しかし間違いなく言えるのは、彼が常に攻撃的な姿勢を忘れずに、2019年のブエルタ・ア・エスパーニャから挑戦し続けた男ということだ。

2020年のこの栄光をむしろ過度に背負うことなく、これからも常に挑戦者であり続ける精神を持ち続けることができれば、彼は再び、いや何度でも、同じような栄光を手に入れることができるだろう。

 

テイオ・ゲイガンハート。永遠の挑戦者。その熱い走りで、2020年代の新しいイネオスの中心を走り続けてほしい。

 

 

ダニエル・マルティネス(コロンビア、25歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績    

  • クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝
  • ツール・ド・フランス区間1勝
  • ツアー・コロンビア総合2位
  • ツール・ド・フランス総合28位
  • ラ・フレーシュ・ワロンヌ13位
  • UCI世界ランキング34位

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2018年のツアー・オブ・カリフォルニア。この年のこのレースは、エガン・ベルナルによる初のワールドツアー総合優勝ということで注目を集めたレースであった。

しかしこのとき、もう1人のコロンビア人がひっそりとその才能を開花させていた。第2ステージのジブラルタルロード山頂フィニッシュで、優勝者ベルナルから30秒遅れの区間5位。

第4ステージの34.7km個人TTではベルナルを上回る区間10位。

これらの成績をもって、最終的に彼は総合3位。

ダニエルフェリペ・マルティネス。ラヴニール総合優勝という輝かしい経歴を経てデビューしたベルナルと比べてやや地味ではあったが、そんな選手の育成に定評のあるチームEFエデュケーション・ファーストで、彼はその才覚を少しずつ花開かせていった。

 

そして2020年。彼の実力はさらなる高みに到達した。すなわち、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝。そして、ツール・ド・フランス第13ステージにおける、ボーラ・ハンスグローエの2人のトップクライマーを相手取り全くそれを寄せ付けない走りで果たした勝利。

ごっつい髭面の強面の上に掲げられた、可愛らしいハートのガッツポーズ。

今年彼はツールでもブエルタでも総合での結果を残せなかったが、毎年着実に成長していく彼が、このイネオスでもさらなる高みへと遥か遥か登っていくであろうことは間違いない。

 

 

その他注目の選手

フィリッポ・ガンナ(イタリア、25歳)

脚質:TTスペシャリスト

あれよあれよという間に世界の頂点に登りつめた天性のTTスペシャリスト。ジロ・デ・イタリアでも山岳エスケープ含め驚異のステージ4勝。TTステージは圧巻の全勝であった。

その強さの秘訣は193cm・82kgという恵まれた体格。しかし一方で、それは最近の流行である風洞実験によって最適なTTポジションを獲得する、というのには向いていない体型であるとも、元ツール覇者ブラッドリー・ウィギンスは語っている。

それでも世界最強でいられるのは、それだけ彼の出力が圧倒的であるからだ、とも。

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こうなると、やはり気になるのは、2年前の世界選手権でガンナを打ち破り、2020年は怪我によりジロも世界選手権も出られずにおわったレムコ・エヴェネプールとの一騎打ち。

彼はまさにその小さな体ゆえに出し切れない出力を、圧倒的な柔軟性をもって実現した完璧なTTポジションでカバーするという、ガンナの対極に位置する戦術でもって世界の頂点に一番近いところに存在する。

そんな彼とガンナの直接対決が見られるのは、今年のオリンピックか、世界選手権か。

山岳やスプリントだけではない、もう1つの「頂上決戦」で注目すべきは、この対決だ。

 

ローレンス・デプルス(ベルギー、26歳)

脚質:クライマー

クイックステップ時代は正直、あまり印象はなかったのだが、2019年のユンボ・ヴィズマ1年目のUAEツアーで突如として才能を発揮。プリモシュ・ログリッチの総合優勝を支える完璧なアシストを見せた(それこそ昨年のセップ・クスのような走りであった)。

当然、同じ年のジロ・デ・イタリアでは総合優勝を狙うログリッチにとっては最高のアシストになるだろうと期待されていたが、残念ながら序盤でリタイア。

しかしツール・ド・フランスでは再び圧倒的な強さを誇り、ジョージ・ベネットと共にステフェン・クライスヴァイクの総合3位表彰台の立役者となった。

 

だから2020年も、彼のアシストがユンボを支えると信じていた。実際に年初に早くも発表されたユンボのツールメンバーの中に、確かに彼の名が刻まれていた。

 

しかし、年初のUAEツアーでいきなり第2ステージをDNSした後は、パッタリと音沙汰がなくなる。

以下の記事では股関節の怪我が原因という表現だが、UAEツアーからの超長期離脱がそれだけで説明がつくのか不明だし、そもそもまったく情報がなかったことが不気味である。

www.cyclingnews.com

 

シーズン終盤にはベルギー選手権とフレーシュ・ワロンヌ、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに出場するも、いずれもリタイアか100番台のフィニッシュで全く振るわず。そのときの心境やいかに、という思いだが、上記の記事では「ユンボでの最後のレースでログリッチの勝利を見届けられてよかった」とのコメント。

 

ただ、いずれにせよ、噂がそのまま真実となりイネオスが獲得した以上、彼が何かしらの病気や怪我で本来の力を出せていなかった、という事情ではないと思われるのがせめてもの救い。

本人も上記記事でグランツールではアシストをこなしつつ、得意とするアルデンヌ・クラシックで自分のために走りたいとコメント。

3年前、僕たちをワクワクさせてくれたあの走りをもう一度、イネオスのジャージで見せてほしい。

 

トム・ピドコック(イギリス、22歳)

脚質:パンチャー

2017年のベルゲン世界選手権個人タイムトライアルでジュニア王者に輝く。すでに前年のシクロクロス世界選手権でジュニア王者のタイトルを獲得していた彼は、U23の1年目となる翌年に、早速シクロクロスでヨーロッパ王者と世界王者のタイトルを獲得。

2020年にはエリートのシクロクロス世界選手権でマチュー・ファンデルポールに次ぐ2位を記録し、今シーズンはついに、そのマチューを真正面から打ち破った。

www.ringsride.work

 

ロードレースでは2019年のツール・ド・ラヴニールでチームメートのイーサン・ヘイターと共に平坦中心の前半戦を席巻。後半の山岳ステージが始まるところで落車リタイアしてしまったため、山岳における彼の実力を見ることができないまま、なんとなくスプリント力の高いパンチャータイプかな、という印象だった。

しかし2020年。U23版ジロ・デ・イタリアことベイビー・ジロにおいて、3つある山頂フィニッシュすべてで勝利。総合2位に2分25秒差、総合3位には5分54秒差をつけるという圧倒的な総合優勝を果たした。

あれ、山岳走れるじゃん。

 

シクロクロス最強ライダーの一角だけに、U23版パリ〜ルーベは優勝経験あり。しかしその小柄な体格ではエリートのルーベでも同じような成績を出せるかは疑問を持っており、むしろアルデンヌ・クラシックに興味を持っているともコメント(上記記事内に該当のインタビューのリンク有り)。

そしてその最終的な目標はやはりツール・ド・フランスであるとも。

彼の将来はワウト・ファンアールトか、レムコ・エヴェネプールか。

 

ただ、イネオスへの正式加入は3/1から。

それまでは現チーム(トリニティ ・レーシング)に所属し、慣れ親しんだ機材やスタッフたちと共に、「シクロクロス・エリート世界王者」に向けて全力を尽くし、後腐れなくロードレース最強チームでのキャリアをスタートさせたい。

 

イーサン・ヘイター(イギリス、23歳)

脚質:スプリンター

2019年ツール・ド・ラヴニールでトム・ピドコックと共にイギリスチームで走り、丘陵を越えた先の小集団スプリントで勝利。ピドコックとのワンツーフィニッシュを飾った。

同年のベイビー・ジロでも2勝しているが、1勝目は3㎞という(スプリンター向きの)超短距離個人TT(プロローグ)。2勝目はゲオルグ・ツィマーマンとの一騎打ちで勝利しており、5秒遅れの3位がアレクシー・ブルネルなので、おそらく山岳系のステージ。

よって、純粋なスプリンターというよりはパンチャータイプに近く、イネオスの選手でいうとベン・スウィフトに近いタイプかと思われる。あるいはオウェイン・ドゥール。

 

つまり、イネオスでは重宝されるタイプのスプリンター。山岳アシストもこなしうる脚質ともいえ、ピドコックを山岳でアシストする姿なんかが見れたら結構胸が熱い。

2020年はすでにジロ・デッラペンニーノで優勝するなど、早くも実績を出しており、ピドコックに負けない注目すべき人材である。

イネオスには「2年目のジンクス」がある。今年、最も爆発する選手はもしかしたら彼かもしれない。

 

 

総評

 

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「最強」イネオスは瓦解したのか?

否、と言わざるをえないのが2020年のジロとブエルタでの活躍と、そして新たな選手たちの獲得である。

今回触れなかったリッチー・ポートやアダム・イェーツももちろん、チームに多大なる貢献を果たしてくれるだろう。2020年ツール総合3位のポートは、グランツールをエースとして走るかどうかはまだ不透明だが、アシストに回ったときは恐るべき力を発揮することは間違いないだろう。

そしてアダム・イェーツもグランツールのエースはもしかしたら怪しいかもしれないが、2019年リエージュ~バストーニュ~リエージュ4位のそのアルデンヌ・クラシック適性が、ローレンス・デプルスやトム・ピドコックらと共に発揮され、クラシックにおけるイネオスの復権を支えることになるだろう。

 

すなわち、2021年は、このチームが今までよりもより強く、そして幅広く活躍しうる年になるということだ。

2020年代のイネオスは、2010年代とは違った形で最強であり続けることになるだろう。

 

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