読み:グルパマ・エフデジ
国籍:フランス
略号:GFC
創設年:1997年
GM:マルク・マディオ(フランス)
使用機材:ラピエール(フランス)
2020年UCIチームランキング:9位
(以下記事における年齢表記はすべて2021年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Groupama - FDJ 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Groupama - FDJ 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
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2021年ロースター
※2020年獲得UCIポイント順。
このチームも大きな変化はなし。マルク・サローは1クラス~Proクラスレベルのスプリントには強く北のクラシックでも優秀な実力の持ち主だけにやや勿体ないが、実力派クライマーのヴァルテルやバディラッティの補強は悪くない。
そして、育成チームから3名の選手が昇格。この育成チームは2019年創設のまだ若いチームではあるが、昨年昇格したアレクシス・ブルネルはいきなりエトワール・ド・ベセージュで区間1勝&総合3位&新人賞、ケヴィン・ゲニッツはボブ・ユンゲルスを打ち破ってのルクセンブルクロード王者に輝くなど、いきなり即戦力級の活躍を見せている。
そして今年昇格の3名のうちジェイク・スチュアートはすでに昨年の途中から正式加入しており、さらにツール・ド・リムザン総合2位という、やはりいきなり結果を出している。
スチュアート以外の2人も、やはりいきなりの「成果」を出してくれるのだろうか。実に楽しみなチームである。
注目選手
アルノー・デマール(フランス、30歳)
脚質:スプリンター
2020年の主な戦績
- ジロ・デ・イタリア区間4賞・ポイント賞
- フランス国内選手権ロードレース優勝
- ヨーロッパ選手ロードレース2位
- ツール・ド・ワロニー総合優勝
- ツール・ポワトゥ・シャラントゥ総合優勝
- ミラノ~トリノ優勝
- 年間14勝
- UCI世界ランキング9位
実績で言えば間違いなく2020年最強のスプリンターである。
ブエルタ・ア・ブルゴスで2位を2回続けたときは「今年は調子がいいな」くらいだったが、続くミラノ〜トリノでカレブ・ユアンらを打ち破り勝利したときから「今年はもしかしてマリア・チクラミーノいけるかもしれない」と思うようになった。
さらにツール・ド・ワロニーでは区間2勝と総合優勝。フランス国内選手権ではフィニッシュ前の登りでジュリアン・アラフィリップのアタックに食らいつき、自身3度目のタイトルを獲得した。
そんな中挑んだ、ジロ・デ・イタリア。
それでもまさか、2018年以来誰も達成できていなかった「グランツール4勝」を実現するほどの圧倒ぶりになるとは、さすがに思いもよらなかった。
しかも、登りスプリントでは、マイケル・マシューズやファビオ・フェリーネといったピュアパンチャーたちを退けての勝利。
まさに無双。神がかった強さを誇っていた。
とはいえ。
とはいえ、それでもまだ、こう言ってしまう人はいるだろう。「カレブ・ユアンも、サム・ベネットも、パスカル・アッカーマンもいないジロでの『最強』でしょう?」と。
ゆえに、彼と彼のチームメートたちが「最強」を証明するためには、今年のツール・ド・フランスでの勝利が必須となる。
昨年までの2年間はティボー・ピノのためのツールだったが、そろそろまた、主役の座をデマールに譲っても良いのではないだろうか。
文句なしの「フランス最強のスプリンター」となったデマールと、彼の右腕たち――コノヴァロヴァス、シンケルダム、スコットソン、そしてグアルニエーリ――が全員総出でツールに乗り込み、今度こそ「最強」であることを示して見せようじゃないか。
シュテファン・キュング(スイス、28歳)
脚質:TTスペシャリスト
2020年の主な戦績
- ヨーロッパ選手権個人タイムトライアル優勝
- スイス国内選手権個人タイムトライアル優勝
- 世界選手権個人タイムトライアル3位
- スイス国内選手権ロードレース優勝
- ビンクバンクツアー総合3位
- ヘント~ウェヴェルヘム5位
年を重ねるごとに右肩上がりに成績を伸ばし続ける「成長するTTスペシャリスト」。これまで16位→7位→4位と段階を踏んでステップアップしてきたヨーロッパ選手権ではついに頂点を獲得。
さらにこれまでなかなか一桁台に入れず、一昨年にはなんとか10位でTOP10に入り込んだ世界選手権では、今年一気に飛躍しての表彰台。
「世界王者」の座はそれでもまだ険しい壁の向こうかもしれないが、彼ならばきっと到達できる、そんな気がしてくる。
さらに言えば今年はオリンピックもまた、大きな目標の1つとなるだろう。前回のリオ・オリンピックの覇者は同じスイスの伝説ファビアン・カンチェラーラ。彼はその後継者になれるか。
TTと並んで彼の目標となるのは北のクラシック。今年はオンループ・ヘットニュースブラッドで9位、ドリダーフス・ブルッヘ・デパンヌで8位、ヘント~ウェヴェルヘムで5位など、彼のキャリア史上最も北のクラシックで成功したシーズンと言えるだろう。
それでもまだ、ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベはTOP10に届いていない。2019年のパリ~ルーベは11位で、あと一歩ではあった。
あとは――雨さえ降れば。過去にも、悪天候の中で逃げ切り勝利を果たしたことが多く、2019年の世界選手権ロードレースではリタイア者続出の悪コンディションの中で3位表彰台をゲットしている。
フランドルで、あるいはルーベで、誰もがげんなりする冷たい雨が降りしきることになれば、その栄光は彼の目の前にやってくることだろう。
ティボー・ピノ(フランス、31歳)
脚質:クライマー
2020年の主な戦績
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合2位
- パリ~ニース総合5位
- ルート・ドクシタニー総合4位
- ツール・ド・フランス総合29位
- UCI世界ランキング44位
2012年、初出場のツール・ド・フランスでいきなりのステージ優勝。2014年、まだ新人賞の対象だった頃にツール・ド・フランスの総合表彰台。
若くしてあまりに大きな成果を出し続けてきたこの天才は、ベルナール・イノー以来のツール・ド・フランス覇者を渇望する自転車大国の大きすぎる期待の渦に飲み込まれ、やがて勢いを失っていく。
それでも、ややメンタルが不安定な彼を親身に支え、あえてツール・ド・フランスに出さない「修業時代」を経てジロ・デ・イタリア総合4位やブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝、あるいはイル・ロンバルディア優勝などの成果を重ねてきた。
そして2019年。ツールマレー山頂フィニッシュを制し、総合優勝すらも掴みかける勢いでもって、再び全フランスを沸かせる走りを見せた。
しかし、運命は再び彼を苛み、苦しめた。2年連続の、失望。昨年はそれでも完走し、ブエルタ・ア・エスパーニャにも出場したが、それも早期にリタイアし、2年前のように沈黙した。
だからこそ、と思う。彼は再びツールを捨ててもいいんじゃないか、と。
ジロ・デ・イタリア、あるいはブエルタ・ア・エスパーニャに集中し、ある意味気楽に走らせるべきである、と。むしろグランツールではなく、1週間のステージレースやクライマー向けクラシックに重点を置かせてもいい。
とにかく、戦略もなくひたすら純粋に勝利を追い求める彼の気持ちい走りが存分に発揮される瞬間を見たい。そして、全身から喜びを表現するそのガッツポーズを。
そんな風に思いながら、しかし期待はせず、見守っていよう。
ダヴィ・ゴデュ(フランス、25歳)
脚質:クライマー
2020年の主な戦績
- ブエルタ・ア・エスパーニャ区間2位、総合8位
- UAEツアー総合4位
- ツール・ド・ラ・プロヴァンス総合10位
- UCI世界ランキング62位
2019年のツール・ド・フランスにおけるティボー・ピノの輝かしい成績を支え続けたのは間違いなくこの男だった。あのツール・マレーでも、残り7.3kmから4.1kmまで先頭で牽引を続け、モレマ、バルベルデ、プールス、ポート、そしてエンリク・マスといった実力者たちを次々と脱落させていった。
そして、同じ2019年のUAEツアーでプリモシュ・ログリッチ、アレハンドロ・バルベルデに次ぐ総合3位。彼がただの1アシストではなく、ピノに次ぐチーム2番目のエースとして相応しい実力を持っていることを示すレースでもあった。
しかしそれでも、2020年はまだ、グランツールでのエースを任される予定はなかった。あくまでもピノのアシストとして参戦したはずのブエルタ・ア・エスパーニャで――そのピノが、早々にリタイア。
思いがけずお鉢が回ってきたエースの座を、彼は見事にモノにした。ステージ2勝と、総合8位。プリモシュ・ログリッチ、テイオ・ゲイガンハートと、若き才能が花開いた2020年において、このゴデュもまた、そんな花開いた才能の1つであった。
だから、今年こそ、明確にエースとしてどこまで走れるかを見てみたい。それこそブエルタのような、ある程度若手にチャンスのあるレースでよい。ピノのアシストという役割から最初から解き放たれ、焦点を当てて準備してきたシーズンの集大成として、持てるすべての力をそこにぶつけてみてほしい。
なお、彼の武器はもう1つあって、2017年ラ・フレーシュ・ワロンヌ9位や2019年リエージュ~バストーニュ~リエージュ6位、2017年と2019年のミラノ~トリノ5位といった、クライマー向けワンデーレースへの適性の高さである。
彼もまた、ツール・ド・ラヴニール覇者。ベルナルだとかポガチャルだとかの「後輩」たちにはまだまだ負けない。メガネの奥の大人しそうな表情からは想像つかないような熱い魂を持つこの男は、今年も昨年以上に暴れまわることだろう。
その他注目の選手
ヴァランタン・マデュアス(フランス、25歳)
脚質:パンチャー
2019年パリ~ニース総合11位。同年のジロ・デ・イタリア総合13位。
ときにゴデュ以上の成績を叩き出すこともある彼は、チーム3番目のエースクライマー候補と言えるだろう。今はまだピノたちのアシストの座に留まっているが、近いうちにさらなる結果を出す男になると確信している。
そして彼はまた、アルデンヌ・クラシックも得意としている。ゴデュよりはやや丘陵系に寄っている彼の脚質はフレーシュ・ワロンヌやリエージュ~バストーニュ~リエージュよりはアムステルゴールドレースのようなレースに向いており、2019年は8位。
同じ年にはクラシカ・ドゥ・ラルディシュやドローメ・クラシックといったやはりパンチャー向けワンデーレースでそれぞれ2位。2020年にはパリ~ツールで4位に入った。そんな脚質なので、ロンド・ファン・フラーンデレンでも11位と、意外な好成績を誇っている。
今後はクラシカ・サンセバスティアンなども視野に入れていくことになるだろう。モニュメントを獲ったりグランツール総合優勝したりといった大きすぎる成果までは期待しないが、ワンデーやステージ優勝を中心に着実に成績を積み重ねていける選手だ。
アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、23歳)
脚質:クライマー
ロードレース界ではまだまだ珍しいハンガリーの選手。その実力は本物で、2019年にはツール・ド・ラヴニール区間1勝、2020年のジロ・デ・イタリアではセストリエーレのステージで区間9位、総合でも23位と、ネオプロとは思えない成績を叩き出している。新型コロナウイルスの影響で母国ハンガリーでのジロ開幕を迎えることはできなかったが、代わりにツアー・オブ・ハンガリーでは見事、総合優勝。故郷に錦を飾った。
そのポテンシャルゆえに、グルパマFDJでは一気に成長していく可能性を秘めている。それこそ、純粋なクライマーとしての能力ならばすぐにマデュアスあたりを抜いて、モラールやライヒェンバッハにも負けない登坂力でチーム3番手の位置に到達することも十分ありえる。
いつか決して遠くない未来に、実現されなかったハンガリー開幕のチャンスがまたやってくるだろう。そのときにはより強くなって、表彰台も狙えるほどの走りができれば幸いだ。そのために、今年はまずは修行の1年となるだろう。
ジェイク・スチュアート(イギリス、22歳)
脚質:パンチャー
育成チーム所属の昨年、昨年から始まった特例ルールを利用してトップチームの一員として参戦したツール・ド・リムザンで、区間2位を2回、そして総合2位。その即戦力級の実力を買われ、シーズン途中での正式加入を果たした。
チームにとっては珍しいイギリス人だが、その脚質はどちらかというとベルギー人ちっくかもしれない。リムザンでは丘陵系のレイアウトでジャスパー・フィリプセンに次ぐ区間2位など、少なくともピュアスプリンターとは言えなさそう。
U23版のヘント~ウェヴェルヘム2位、ロンド・ファン・フラーンデレン3位といった成績からもその脚質が伺えるし、実際に昨年のエリートのヘント~ウェヴェルヘムでも35位。半数近くがリタイアする過酷なレースとなった昨年のヘント~ウェヴェルヘムで、ネオプロ0.5年目の彼によるその成績は数字以上の凄さを放っている。
よって、今年は、グランツールなどで活躍するというよりは、小さなベルギー系のレースでの活躍と、ビッグクラシックでのシュテファン・キュングのアシストなどが期待できるかもしれない。すなわち、昨年までのマルク・サローのような役割だ。
たとえばル・サミンとかトロ・ブロ・レオンとか、パリ~カマンベールとか・・・そういったレースでのプロ初勝利も、十分に期待ができそうだ。
総評
色々書いたけれど、結局2021年も、決して派手な成果は出すことのないシーズンになるんじゃないかとも思っている。
ツール・ド・フランスでは区間1勝くらい。その他のグランツールでも総合4位から6位くらいで、モニュメントでも表彰台は取れないくらいの結果。
勝利数自体は積み上げるかもしれないけれど、1クラスやProクラスが中心。そんな、ちょっと地味な成績で今年も終わってしまうかもしれない。
だが、それがいい。決して最強山岳アシストが揃うチームでも、最強リードアウターたちが集まるチームでもない。
だけど、なんだか不思議な結束力を見せて、それなりに勝利を掴んで、互いに喜び合う。そんな1年を今年もまた見ることができればそれで幸せである。
そんな中で、必ずしも勝ちはしないけれど上位に来るような活躍を、若手の選手たちが見せてくれるのは楽しみだ。特別取り上げはしなかったが、昨年のブエルタでゴデュを支えたブルーノ・アルミライルや、アレクシス・ブルネル、ラース・ファンデンベルフなど。
数十年の歴史の重みにも耐えられるような伝説的な選手はあまり出ないかもしれないけれど、見ごたえある走りを見せる彼らの活躍を今年も楽しみにしている。
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