りんぐすらいど

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パリ~ルーベ2021(男女) 注目選手プレビュー

 

いよいよこの週末に開催される、およそ2年半ぶりの男子パリ~ルーベ。そして、初開催となる女子パリ~ルーベ。

前回のコースプレビューに続き、今回はそれぞれの注目選手計10名を紹介していく。

個人的に注目したい選手という意味なので、勝つかどうかは別だが、その活躍に期待していきたい選手たちだ。

※年齢はすべて2021/12/31時点のものとなります。

※身長・体重データは2021/10/2時点でのPro Cycling Stats内のデータを参照しています。

 

コースプレビューはこちらから

www.ringsride.work

 

目次

  

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ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)

ドイツ、27歳、192㎝、80㎏

前回大会(2019年大会)2位。その際に優勝者フィリップ・ジルベールからは、10年以内に必ず勝利するとも讃えられた。

その巨体は石畳との相性抜群な典型的ルーラーのようにも思えるが、実際には起伏にも強いパンチャータイプの特性も持つ。今年のツール・ド・フランス第12ステージでは、ラスト14.3㎞に用意されたカテゴリのついていない登りで、前年のU23版イル・ロンバルディアを制したパンチャーのハリー・スウェニーのアタックに食らいつく。

そして残り12㎞の勾配の厳しい区間で強烈なアタックを繰り出し、スウェニーとイマノル・エルビティを突き放し、独走を開始。あとはその巨体を生かした独走力で見事、ツール・ド・フランス初優勝を果たした。

Embed from Getty Images

 

先日の世界選手権ロードレースでも、残り95㎞地点でレムコ・エヴェネプールらを含む11名の逃げ集団を作り出すきっかけとなったのは彼のアタックだった。

そんな、今年の調子の良さと過去の実績を踏まえ、今回はこの「将来のルーベ覇者」のいきなりの栄光を予想していきたい。

もちろん、気になるのは2018年覇者ペテル・サガンとの「同居」である。マチェイ・ボドナルやダニエル・オス、ユライ・サガンなどの「サガン組」も一緒になった今回の体制の中でどれだけの走りを許されるか。

逆に言えば、この「黄金コンビ」が許される最初にして最後の一大チャンス。誰もがサガンを警戒する中で、2年前同様に、集団の中からするっと抜け出すという勝ちパターンを作るには最も適したシーズンであることは間違いない。

2年前は残り71.5㎞地点のティヨワ~サール=エ=ロジエール。今年も早めの攻撃はありうるか。

ただし、スプリント力がないわけではないが得意な選手と比較するとやはり賭けにはなってしまうので、できるだけヴェロドローム勝負にはしたくない。やるなら独走だ。「黄金の14㎞」でサガンと二人で先頭に残っていたら滅茶苦茶熱いんだけど・・・。

 

 

イヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ)

ベルギー、30歳、180㎝、75㎏

2019年大会3位。フィリップ・ジルベールと共に黄金の14㎞を走り、最終的には彼の勝利に貢献。

2017年のドワースドール・フラーンデレンでそのジルベールのアシストによってワールドツアー初勝利。その後はブエルタ・ア・エスパーニャでの勝利や、翌年のドワースドール・フラーンデレンでの今度は自らの力での勝利、そしてジルベールの後を継ぐかのようなベルギーロード王者に。

今やチームのクラシックエースとして信頼される存在に。まさに「ジルベールの後継者」である彼が、今度こそ自らの勝利のために走り、その栄光を掴んでほしい。

Embed from Getty Images

 

とはいえ、彼もやはりスプリントは絶対の自信を持つことはできない。2020シーズンはオンループ・ヘットニュースブラッドでジャスパー・ストゥイヴェンに最後スプリントで敗れ、同年のドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌでは、その失敗に学んで独走に持ち込んで勝利を掴んだ。

チームメートにはスプリント力に自信のある(ゆえに世界選手権ロードレースでも後方待機でアラフィリップが捕まったあとのスプリント要員として控えていた)フロリアン・セネシャルがいるし、今年のロンド・ファン・フラーンデレン覇者カスパー・アスグリーンや今年のオンループ・ヘットニュースブラッドでスプリント勝利したダヴィデ・バッレリーニなどもいる。

彼らのいずれかと共に終盤まで残り、そこから抜け出しての勝利を狙いたいところ。

 

 

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)

ベルギー、27歳、190㎝、78㎏

2年前のルーベではアランベールでパンク。その後もチームメートとの連携がうまくいかず、自らも単独落車するアクシデントなども重なり、ボロボロ。

それでも終盤で先頭集団に残る実力はさすがだったが、そこまでの過程で体力を使いすぎていた結果、最後は失速。

フィニッシュ後は倒れ込み、涙する場面も。あまりにも辛いワールドツアーデビューシーズンとなった。

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そこから2年半。長すぎたリベンジへの期間を経て、今や彼は世界最強の存在として再びこのルーベに挑む。2年前7位でフィニッシュしたマイク・テウニッセンや今年のヘント~ウェヴェルヘムでファンアールトの勝利を強力にサポートしたネイサン・ファンフーイドンクなど、チームメートにも恵まれている。

気になるのは、先日の世界選手権ロードレースが完全にガス欠状態だったこと。ツール・ド・フランス、オリンピック、そしてツアー・オブ・ブリテンでの4勝など、あまりにも激しく輝きすぎたシーズンの疲れが無視できないものとなっていたのは間違いない。

そんな中、このルーベでどこまで実力を発揮できるか・・・。ヴェロドロームにさえ入ってしまえば、その勝利はほぼ確実なのだが。

 

 

ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)

オランダ、29歳、187㎝、78㎏

キャノンデール時代の2016年にロンド・ファン・フラーンデレン7位、その翌年には4位。その後チーム・スカイに入ったのは少し意外だったが、今年のドワースドール・フラーンデレンでは見事な独走逃げ切り勝利。残り53㎞地点からのアタック一発で決めた勝利だった。

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トム・ピドコックのブラバンツペイル勝利などと合わせ、新たな時代のイネオスを象徴する勝利の1つであった。

そして、先日の世界選手権ロードレースでも、サバイバルな展開の終盤まで残り続け、最後は追走集団内スプリントを制しての2位。

実績も調子も抜群。チームとしても、3位にまで登り詰めながらついにその頂点には立てないまま昨年末引退してしまったイアン・スタナードの意志を受け継ぐ勝利を掴み取りたいところ。その最大のチャンスが目の前にやってきている。

もちろん、世界選手権ロードレースのベケストラートでも良い走りをしていたミハウ・クフィアトコフスキも重要なダブルエースの一角となるだろう。

 

 

コナー・スウィフト(アルケア・サムシック)

イギリス、26歳、190㎝、75㎏

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もちろん、完全な期待枠である。勝利まではさすがに想像はしていなくて、どれだけの好走を見せられるかに期待したいといったところ。なお、パリ~ルーベは今回初出場である。

今年は「プティ・パリ~ルーベ」と呼ばれるブルターニュの未舗装路レース「トロ=ブロ=レオン」で勝利。そのほか、8月末のブルターニュ・クラシックでは抜け出したブノワ・コヌフロワとジュリアン・アラフィリップとミケルフローリヒ・ホノレの3名を追走集団から抜け出して単独で追いかけ、もしかしたら追いつくかも?とすら思わせるアグレッシブな走りを見せてくれた(最終的には5位)。

今年着実に急成長中の期待の存在。直近の世界選手権ロードレースでは途中リタイアと残念な結果ではあったが、今大会TOP10に入れれば素晴らしい。

 

 

マリアンヌ・フォス(ユンボ・ヴィスマ)

オランダ、34歳、168㎝、58㎏

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言わずと知れた生ける伝説。世界選手権ロードレース3勝、女子版ジロ・デ・イタリア区間30勝、フレーシュ・ワロンヌ5勝。

スプリント力においてもトップスプリンターたちに引けを取らず、ヴェロドローム勝負になっても問題なし。石畳についても、ロンド・ファン・フラーンデレン優勝経験も持ち、今年のヘント~ウェヴェルヘムでも優勝している。そもそも、シクロクロスでも7回世界王者を経験している彼女は、女子版パリ~ルーベ覇者に最も相応しい存在であることは間違いない。

世界選手権ロードレースではあまりにも悔しい結末となってしまった。その借りを返せるか。

チームメートは今年のル・サミン8位、ドワースドール・ヘットハヘラント7位、ミックスドリレーのメンバーでもあったアンナ・ヘンダーソンや、ツアー・オブ・ノルウェーで逃げ切り勝利し、世界選手権TTでも5位のリエンヌ・マーカスなどがいるものの、今年新創設のチームだけに万全とは言い難いのが気になるところ。

 

 

アネミエク・ファンフルーテン(モビスター・チーム)

オランダ、39歳、168㎝、62㎏

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フォス、ファンデルブレッヘンと並び、世界最強3大女子ライダーの一角。ファンデルブレッヘンは先日の世界選手権で引退となり、このルーベではすでにチームカーのハンドルを握る役割となっているため、このファンフルーテンとフォスが2大巨頭となる。

もちろん、その活躍の場は山岳・丘陵ステージが中心。とはいえ、ロンド・ファン・フラーンデレン2勝にストラーデビアンケ2勝の実績は、石畳への適性も十分に想像できる。そもそも、個々人の実力差がより大きい女子レースにおいては、彼女やフォスのような存在はレースのジャンルを問わずに力を発揮する場面も多い。

その本領発揮はやはり、独走逃げ切り勝利。一度抜け出したら誰も手を付けられないその独走力を、ライバルたちがいかに抑え込むかが鍵となる。

 

そして、彼女がその点で警戒されている中、モビスターとしてのもう1人の優勝候補がエマセシル・ノースガード。今年急成長中のスプリンターだが、タフな展開にも強いスプリンターであり、ファンフルーテンがアグレッシブな走りで集団をかき回しながら、その集団内にノースガードが身をひそめることができていれば、最後のヴェロドローム勝負でチームとして優位に立つことができるだろう。

 

 

エリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)

イタリア、30歳、170㎝、59㎏

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フォス、ファンフルーテン、ファンデルブレッヘンの3強に最も食い込みうる存在がこのロンゴボルギーニだ。ファンデルブレッヘン引退後は彼女が新たな3傑の1人となるだろう。

彼女も得意とするのは独走逃げ切り勝利。そして、ファンフルーテンの独走に食らいつくことのできるほぼ唯一の存在ですらある。

今シーズン前半はストラーデビアンケ2位、トロフェオ・アルフレッド・ビンダ優勝、ロンド・ファン・フラーンデレン4位、フレーシュ・ワロンヌ&リエージュ~バストーニュ~リエージュ3位など好調だったが、女子版ジロ・デ・イタリアなどではやや不調に。それでも後半にかけてまた復調してきており、先日の世界選手権ロードレースでは、最後の最後でフォスを出し抜く最高のリードアウトを見せ、エリザ・バルサモの世界王者を最大限にアシストした。

ある意味で、世界選手権で最も強かったのは彼女かもしれない。

 

そして、何よりもチームが強い。今年のTT世界王者のエレン・ファンダイクも絶好調で、昨年ロンゴボルギーニとの見事な連携で女子版ツール・ド・フランスで勝利したエリザベス・ダイグナンは今年はやや調子がイマイチではあるものの強いのは間違いない。Cyclingnewsのインタビューでも、高い意欲を示している。

今回のパリ~ルーベ・ファムにおいてはもしかしたらSDワークス以上のチーム力を持っているといえそうなトレック・セガフレード。

女子版パリ~ルーベ初代女王を輩出できるか。

 

 

ロッタ・コペッキー(リヴ・レーシング)

ベルギー、26歳、170㎝、66㎏

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ベルギー最強の女子ライダーといえば当然彼女だ。今年、2年連続となる国内ロード王者に輝く。TT王者に関しては3年連続だ。

ほかにもル・サミン優勝、ヘント~ウェヴェルヘム2位。ロンド・ファン・フラーンデレンに関しても昨年3位になっており、今年の東京オリンピックロードレースでも4位と好調だった。

上記3傑に比べるとやや影が薄い印象はあるものの、今年のコペッキーはキャリア最大のコンディションでここまで来れているのは間違いない。ルーベはもはやベルギーといってもいいロケーション。その初代女王を、外国人に渡すわけにはいかない。

チームメートではカナダのアリソン・ジャクソンなどが調子が良さそうだが、石畳レースにどこまで適性があるかは未知数。ややチーム力では不安が残るかもしれない。

なお、そんなコペッキーは来年はSDワークス入り。さらに無敵度が増してしまうSDワークスである・・・。

 

 

リサ・ブレナウアー(セラティツィット・WNTプロサイクリング)

ドイツ、33歳、168㎝、63㎏

ドイツの誇る重機関車。元TT世界王者で、国内選手権でも今年4回目のTT王者に(ロードでも4回目)。世界選手権ミックスドリレー・チームタイムトライアルではトニー・マルティンらと共にアルカンシェルを掴み取った。

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北のクラシックでも今年、ヘント~ウェヴェルヘム3位にロンド・ファン・フラーンデレン2位。TT能力は高いが独走タイプという感じではなく、むしろ(トラック仕込みの)スプリント力も非常に高く、キルステン・ワイルドの発射台として活躍する場面も多かった。

言ってしまえば2015年のジョン・デゲンコルプのようなタイプである。サバイバルな展開で生き残り、最後のスプリントでしっかりと差す。

男子パリ~ルーベの初代王者も実はドイツ人。女子でもその歴史をたどるか?

 

 

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