無事、GCNでの放映も決まった、「北のクラシック開幕戦」オンループ・ヘットニュースブラッド。
過去にも数々のドラマを生み出してきたこの名レースを、開幕直前徹底プレビュー。
「Jsports初放映」が決定した1週間後のストラーデビアンケ、そしてもちろん、今年のロンド・ファン・フラーンデレンも占うこの重要な一戦を見逃すな!
目次
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レースとコース、「見所」について
初開催は1945年。当時すでに人気を博していた「モニュメント」ロンド・ファン・フラーンデレンへの対抗として開催された経緯がある*1。
例年翌日に開催されるクールネ~ブリュッセル~クールネと合わせ、北のクラシックの開幕を告げる「オープニング・ウィークエンド」と呼ばれている。スプリンター向けのクールネに対し、こちらのオンループ・ヘットニュースブラッドはより北のクラシックらしい、ロンド・ファン・フラーンデレン前哨戦として相応しいレースとなっている。
とくに2018年からは、かつての(それこそ有名な「カンチェラーラ爆発」時代の)ロンド・ファン・フラーンデレンのラスト20㎞を再現。
すなわち、残り17㎞地点からの「カペルミュール」と残り13㎞地点の「ボスベルグ」の再現である。
もちろん時期や距離の違いから本家ロンドと同じような展開になるわけではないものの、それでも白熱したレースが2018年以降も毎年開催されている。
以下、ここ数年のレースを振り返りつつ、「見所」を紹介していくことにしよう。
見所① 残り70㎞「レケルベルク」
2020年のレースにおいて決定的な分裂が出来上がったポイントである。
その前段階として、残り90㎞地点の「ハーフーク」「レベルグ」でジャスパー・ストゥイヴェンとティシュ・ベノートが積極的に動いて集団が分裂。
この段階でイネオス・グレナディアーズが後方に取り残される。
その中で迎えたこの残り70㎞地点。
レケルベルグの急坂を乗り越えたあとの狭い道でフレデリック・フリソン、ヨナス・ルッチ、セーアンクラーウ・アナスン、ティム・デクレルク、イヴ・ランパールト、マッテオ・トレンティン、マイク・テウニッセン、そしてジャスパー・ストゥイヴェンの精鋭集団が抜け出すことになる。
結局、このグループが最後まで生き残ってストゥイヴェンが競り勝つわけだが、まさか残り90㎞や70㎞といった距離で動きが巻き起こるとは。
今年も残り100㎞を切ってからは常に油断ができなさそうだ。
↓2020年のレースの詳細はこちら↓
見所② 残り43㎞「モレンベルク」
2019年のレースはここで17名の精鋭集団が抜け出した。
その中に2名の選手を入り込ませているチームはドゥクーニンク、ロット、アスタナ、バーレーン、ボーラ、ユンボの6チーム。
さらに残り29㎞地点でこの中のティシュ・ベノートが落車し、これが原因で集団が分裂。
先頭に残ったのはティム・ウェレンス、アレクセイ・ルツェンコ、ディラン・トゥーンス、ダニエル・オス、グレッグ・ファンアーフェルマート、そしてゼネク・スティバルの6名だけだった。
実績で言えばファンアーフェルマートが抜けていたものの、それぞれエース級の選手を後方に残している他の5名に対し、当時CCCチームに所属していたファンアーフェルマートは17名の時点で1人きりになっており、この先頭集団で唯一自ら動かざるを得ない立場に立たされていた。
結果、最後の最後でスティバルに敗れることに。チーム力の差が如実に出た結果となった。
今年もドゥクーニンク・クイックステップが圧倒的なチーム力を発揮するのか、それとも。
↓2019年のレースの詳細はこちら↓
見所③ 残り17㎞「カペルミュール」
最後は当然、この象徴的な登り「カペルミュール」。
その威力はやはり絶大で、このコースが採用された初年度の2018年は、ここで決定的な動きが巻き起こった。
カペルミュールを経て先頭に残ったのは11名。
グレッグ・ファンアーヴェルマートやゼネク・スティバル、ワウト・ファンアールトなどの実力者たちが揃っていたものの、その中にアスタナ・プロチームがなんと3名も紛れ込ませていた。
ミケル・ヴァルグレン、オスカル・ガット、アレクセイ・ルツェンコ。いずれも間違いなく強い選手たちではあるが、セップ・ファンマルクやオリバー・ナーセンらも含んだこの精鋭集団の中では決して優勝候補とはいえない。
だがそんな彼らが、絶妙なチームワークを駆使して、この精鋭集団の中でヴァルグレンによる勝利を掴んだ。
決して「最強」が勝つわけではない、というロードレースの面白さを象徴した、今でも個人的にとくに好きなレースの1つである。
↓2020年のレースの詳細はこちら↓
と、言うことで、年々「勝負所」が後ろ倒しになっていることがよく分かるだろう。
今年もどこで勝負が始まるのか、予想がつかない。
そんな中、注目すべき選手たちを以下、紹介していこう。
注目選手
※年齢はすべて2021/12/31時点での表記とします。
イヴ・ランパールト(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ベルギー、30歳
昨年は惜しくもジャスパー・ストゥイヴェンにスプリントで敗れての2位。そこからの反省か、シーズン最終戦ドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌでは、数の有利を活かして残り7㎞で飛び出したランパールト。
そのまま、スプリントで負ける心配のない独走逃げ切りで勝利を掴んだ。
昨年はその北のクラシックにおける安定性から、当ブログ独自に算出した「北のクラシックランキング」で堂々たる1位。
このレース自体の過去のリザルトも昨年2位だけでなく一昨年7位など、安定している。
不安材料としては今シーズンここまでのリザルトが微妙だということ。
とはいえ、彼にとって本番はこのレースから。まずは、チーム力も活かしつつ、最初の結果を叩き出していこう。
そして今年こそはルーベ制覇を!
フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ)
フランス、28歳
ドゥクーニンク・クイックステップから2人目。実際、彼らがこのレースにおいてTOP10に2~3名は確実に入れてくるだろうというのを見越してのことだ。
そしてこの選手は何と言っても、今年唯一走っているクラシカ・ドゥ・アルメリアで2位という勢いを重視したい。
昨年も10位と悪くない。そして昨年は、ヘント~ウェヴェルヘムでも2位、ブルターニュ・クラシックでも3位など各種クラシックレースで実績を残しており、先述した北のクラシックランキングでも5位に入り込む安定した実力を誇っている。
彼はさらなる成長を遂げ、確実に結果を出していくに違いない。期待を込めて、注目選手に挙げておく。
グレッグ・ファンアーヴェルマート(AG2Rシトロエン・チーム)
ベルギー、36歳
すでに過去このレースで2勝しており、2年前を含む2位が2回。昨年はチームメートのマッテオ・トレンティンが勝ち逃げ集団に入り込んだことで勝負権を失ったが、このレースにおける安定感の高さは魅力的である。
今年のレースにおいても、初戦のエトワール・ド・ベセージュのサバイバル展開となった第3ステージで4位。逃げ切り勝利したフィリッポ・ガンナ以下が集団スプリントとなった第4ステージでも実質3位。そしてツール・デ・アルプ=マリティーム・エ・デュ・ヴァール第1ステージの登りスプリントでも、一流クライマーたちに混じっての2位と、かなりコンディションはよさそう。
チームメートにはこれまたこのレースでの安定感があるオリバー・ナーセンがいるものの、彼は今シーズンここまでそんなに調子が良くはないので、その部分を考慮して今回はGVAの方を推していきたい。
マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)
デンマーク、26歳
もちろん本来であれば、昨年優勝者のジャスパー・ストゥイヴェンを推すべきだろう。昨年だけでなく、過去の実績から見ても彼はこのレースとの相性が良い。
とはいえ、ピーダスンもまた、昨年1年間を経て急成長を遂げた勢いのある男だ。ツール・ド・ポローニュやビンクバンクツアーではパスカル・アッカーマンを下してスプリント勝利。パリ・シャンゼリゼでも2位。北のクラシックでもヘント~ウェヴェルヘムでも優勝するなどとくにスプリント展開になったときは他の優勝候補よりも抜きんでた勝率を誇ることになるだろう。
不安要素としては昨年のビンクバンクツアー最終日の「カペルミュール3連続」ステージでの大失速。ここで総合リーダージャージを失うことになる。そのこともあって昨年のロンド・ファン・フラーンデレンでは優勝候補ではないと踏み、実際に59位という散々な結果になった。ヘント~ウェヴェルヘムやドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌのようなスプリンター系クラシックには強くともロンド・ファン・フラーンデレンやE3サクソバンク・クラシック、そしてこのオンループのような丘陵系北のクラシックには弱い――そう見るのが自然だろう。
だが、それでも推したいと思うのは、今年のエトワール・ド・ベセージュ第1ステージの「登りスプリント」で、彼が3位に入り込んでいたこと。
調子は決して悪くないはず。そしてストゥイヴェンがこのオンループが今年初レースであることを考慮すると、このピーダスンを推すのは決して間違った選択肢ではない、はず・・・。
なお、クールネ~ブリュッセル~クールネではより確度の高い優勝候補となるだろう。
ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)
ドイツ、27歳
2019年のパリ~ルーベ2位。フィリップ・ジルベールに「いつかパリ~ルーベを勝つ男」と認められた彼だが、昨年は新型コロナウイルス騒動の中で全くといっていいほどリザルトを残せなかった。
そんな彼がボーラ・ハンスグローエに移ってからの初戦となった今年のエトワール・ド・ベセージュ。第3ステージの大混戦の中でもたった一人で生き残り、積極的な動きを見せた中で最終的には総合3位。オンループ自体の実績はないものの、その勢いを推したい。
ペテル・サガンが新型コロナウイルス陽性の結果離脱している今だからこそ、存在感をチームに示すチャンス。逃すわけにはいかない。
オラフ・クーイ(チーム・ユンボ・ヴィズマ)
オランダ、20歳
❌ 1 July 2021
— Team Jumbo-Visma Academy (@TJVacademy) February 18, 2021
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本来であれば7/1からの合流を予定していた期待のネオプロ、オラフ・クーイ。しかし本来このレースのエースを務める予定だったマイク・テウニッセンが負傷により参戦できないその代役として、急遽即時正式加入が決まりオンループ出場となった。
エースの代役のためゼッケンNo.も1。その役割も・・・?
もちろん、あくまでも彼はネオプロ。決して、そのリザルトを期待してはいけないとは思う。
だが、同じように期待しながらもまさかいきなりなんてことは、と思っていたダヴィド・デッケルがUAEツアーでまさかの敢闘をしており、同じようにこのクーイも、いきなりのオンループTOP10リザルト、なんてことも・・・。
注目しておいて損はない選手だ。
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*1:このオンループ・ヘットニュースブラッドの元々の名称は「オンループ・ヘットフォルク」。ロンド・ファン・フラーンデレンを主宰していたヘットニュースブラッド紙のライバルであったヘットフォルク紙が主催するレースであったが、のちにこのヘットフォルク紙が休刊。2009年からはヘットニュースブラッド紙が主催することになり、現在の名称となった。かつて対抗したライバルに乗っ取られるというのはなかなかの皮肉である。