りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2021シーズン 6月主要レース振り返り

 

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、そしてツール・ド・スイス。あるいはツアー・オブ・スロベニアに、(今回取り上げてはいないものの)ルート・ドクシタニーと、代表的なツール前哨戦が並ぶ6月前半のレースたちを振り返る。

果たして、今年のツールに向けて、どの選手が万全なのか?

そしてそんな中、ジロで悔しいリタイアを喫したあの若き才能もまた大暴れしていて・・・?

 

目次

   

参考:過去の「主要レース振り返り」シリーズ

主要レース振り返り(2018年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2019年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2020年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

主要レース振り返り(2021年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

  

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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス 開催期間:5/30(日)~6/6(日)

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レースレポートはこちらから

「ツール前哨戦」として名高い、フランス南東部ドーフィネ地方を舞台にした1週間のステージレース。しかし今年は、昨年のツール総合優勝者タデイ・ポガチャルも、総合2位プリモシュ・ログリッチも欠場。

代わりに、昨年のツール総合3位リッチー・ポートが総合優勝。イネオス・グレナディアーズは、ポートに2018年ツール覇者で今年もツール・ド・ロマンディを制しているゲラント・トーマス、昨年のジロ覇者のテイオ・ゲイガンハートを揃えたトリプルエース体制で挑み、第5ステージはミハウ・クフィアトコフスキとポートのアシストを受けてトーマスが奇襲により勝利を掴むなどトーマスシフトで動いていたように見えたが、その後の山岳でポートの調子の良さが見えるとすぐさまエース交代。TTでもタイムを稼いでいたポートがそのまま総合優勝を飾ることとなった。

Embed from Getty Images

 

この、「誰もがエース」という強みを生かしたイネオスの戦略。普通なら船頭多くして・・・と上手くいかないことが多そうなこの戦略が、イネオスであればツール本番でも上手くいってしまいそうで不思議だ。

本番ではここに、スイスを勝ったカラパスが加わる。相変わらず・・・というよりは例年以上に、今年のイネオスのチーム力は抜きん出ているかもしれない。

 

もう1つ驚くべきが、バーレーン・ヴィクトリアスのウクライナ人クライマー、パドゥンのまさかの2連勝。ジロでも驚きの活躍を見せたバーレーンだが、まさかこんな逸材が眠っていたとは。

今回、ツールには(無理をさせないという判断で?)最終的には選ばれることのなかったパデュンだが、ブエルタ・ア・エスパーニャなどでの、さらなる覚醒に期待したい。

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ドワースドール・ヘットハヘラント(1.Pro)

UCIプロシリーズ 開催国:ベルギー 開催期間:6/5(日)

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全長177㎞のコースの約4分の1、合計41㎞の未舗装路が用意されたタフコースだ。ラストは城砦に登るフィニッシュで、ある程度の登坂力もかね揃えた総合力のあるクラシックライダーに有利なワンデーレースである。

ラスト50㎞を前にしてイヴ・ランパールトがアタック。集団は分裂。やがてランパールトを含む8名の精鋭集団ができあがる。

昨年優勝のヨナス・リッカールトや、先日の○○で勝利したコナー・スウィフトなど実力者揃い。残り30㎞を前にして先頭8名とメイン集団のタイム差は1分以上に開く。ダヴィデ・バッレリーニを含む3名の追走集団が形成されているが、これも30秒以上開いており、先頭とのタイム差を縮めることはできない。

残り15㎞を切って、先頭8名と、追走も全て吸収したメイン集団とのタイム差は30秒程度に。

先頭ではアンテルマルシェ・ワンティゴベールのファンポッペル兄弟が共に乗っており、兄のボーイが弟のために全力で牽引。

その甲斐あってボーイを失った先頭7名は一団となって最後の街中の石畳の登りへ。

ここで前に出たのが、元NTTプロサイクリングのティレルであった。

力強い踏み込みで少しずつ後続とのギャップを開いていくティレル。

ダニー・ファンポッペルも全力でもがきながらこれを追いかけるも、結局届くことはなかった。

ラスムス・ティレル。4年前の国内選手権以来となるプロ2勝目。今年のル・サミンで2位に入るなど実力は確かにある男が、ようやく掴んだ勝利であった。

 

 

ツール・ド・スイス(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スイス 開催期間:6/6(日)~6/13(日)

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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネと並ぶツール前哨戦。

かつては第4のグランツールと呼ばれることすらある、由緒正しいステージレースだ。

 

初日のTTはローハン・デニスを打ち破って、ヨーロッパ王者のキュングが勝利。

今年のツール・ド・フランスに向けた、非常に頼もしい勝利である。

なお、2位には同じスイス人で今年の実績だけでいうとキュング以上のものを叩き出しているシュテファン・ビッセガーが4秒差で入り込む。

第4ステージでは逃げ切り勝利を果たしており、彼もまたツールでの活躍が楽しみになる。

 

もう1つの個人TTは標高差600mの1級山岳を登って降りる本格的な山岳TT。

ここでジュリアン・アラフィリップやトム・デュムランらを破って勝利したのがリゴベルト・ウラン。

2017年ツールで総合2位に輝いたものの、さすがにそろそろ引退も近づきつつある印象の強い彼だがここにきてまた期待させてくれる走りを披露してみせた。

 

だがそれ以上に楽しみな走りを見せたのがリチャル・カラパス。

2019年ジロ・デ・イタリア覇者にして、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでは最後の最後までプリモシュ・ログリッチを追い詰めた。

イネオス・グレナディアーズのエース格の1つであることは間違いなく、大会最初の山頂フィニッシュとなった第5ステージで快勝したあと、山岳TTでも区間4位と好走を見せた。

 

17秒差で迎えた最終日クイーンステージ。

超級ゴッタルド峠のラスト2㎞地点でウランが果敢にアタックを繰り出していくが、カラパスはしっかりとこれに食らいつき続け、総合優勝を果たした。

これで、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのリッチー・ポートに続き、イネオス・グレナディアーズが前哨戦完全制覇。

さらにツール・ド・ロマンディ覇者ゲラント・トーマスと、完璧な布陣でこの「挑戦者」たちはツールに向かうこととなる。

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そしてもう1人。今年ツール・ド・フランス初挑戦となるマチュー・ファンデルプールが、第2・第3ステージを連覇。

こちらもまた、ツールに向けて、万全のコンディションを整えつつあるようだ。
 

 

バロワーズ・ベルギー・ツアー(2.Pro)

UCIプロシリーズ 開催国:ベルギー 開催期間:6/9(水)~6/13(日)

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ジロでは8ヶ月ぶりのレース復帰を成し遂げ、誰もが驚く強い走りをしてみせてくれた第1週のレムコ・エヴェネプールだったが、休息日明けのストラーデビアンケから大きく崩れ、最後は失意の途中リタイアとなってしまった。

さぞ、傷ついていることだろう。それは落車による体の痛み以上に・・・と思ったら、このベルギー・ツアーでいきなり第1ステージから大逃げ(勝ったのはこのエヴェネプールの猛牽引にほぼツキイチでついていって最後にスプリントでこれを破ったヒス)、個人TTとなる第2ステージでは相変わらずの強さを発揮して軽々と優勝。そのまま総合優勝を果たしてしまった。

昨年もこのベルギー・ツアーは勝ってるし、彼の才能から言えば何も不思議ではない勝利だが、あのジロの苦境を思えばあまりにも驚くべきことだし、そしてどこか安心してしまう思いもある。

まだきっと万全ではないだろうが、少しずつその強さを取り戻していき、再びグランツールの地で輝く彼の姿が見たい。

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そしてもう1つ驚くべきが、最終日のマーク・カヴェンディッシュの勝利。

そこまで2つの平坦ステージはユアンが勝利し調子の良さを見せつけていたが、最終日はこの「2010年代のレジェンド」が鮮烈なる勝利。

それも、これまでのようないわば「格下」での勝利ではなく、ユアンはもちろんメルリール、アッカーマン、フルーネウェーヘンらをすべて薙ぎ倒しての勝利である。

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勝利後の彼のその興奮からも、今回の勝利がいかに大きなものであったのかが実によく伝わってくる。

「初めてモルコフと共に走ったけれど彼のリードアウトは凄い。彼と共にならば誰でも勝つことができるよ」なんて謙虚な言葉を述べていたカヴェンディッシュ。

昨年のシーズン末期に涙を流していた彼の、この笑顔を見れただけでも、大きな価値のある勝利だったと思う。

 

と、思ったら、なんとサム・ベネットが膝の怪我の影響でツール欠場が決まり、カヴェンディッシュがまさかのツール出場が決定!!

このベルギー・ツアーの勢いでぜひとも、感動の勝利を! 

 

 

ツアー・オブ・スロベニア(2.Pro)

UCIプロシリーズ 開催国:スロベニア 開催期間:6/9(水)~6/13(日)

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当たり前だけどポガチャルが圧倒的すぎるほどに強かった。というよりは、彼を支えるUAEチーム・エミレーツが大人気ないほどに最強メンバーを揃えてきていて本気の体制だった。

結果的にポガチャルに次ぐ総合2位がディエゴ・ウリッシで、総合4位がラファウ・マイカという、ひどい総合リザルトになってしまった。

 

個人的には、今年ポガチャルのために移籍してきたマイカの本調子が戻りつつあることが嬉しい。年初のUAEツアーなどでは早々に遅れ、最後までポガチャルの側にいられたのはダヴィデ・フォルモロくらいだった。

そんなマイカが本来の(自らグランツール総合を狙えるくらいの)実力を取り戻し、かつイツリア・バスクカントリーで覚醒しつつあったブランドン・マクナルティが揃って、本格的に今年のUAEチーム・エミレーツは、最強の男に最強のチームを用意することができる状態でツールに乗り込んできそうだ。

 

ただ、そんなUAE軍団による総合表彰台独占を阻止したアスタナ・プレミアテックのマッテオ・ソブレロ(24歳イタリア人)にも注目すべきだろう。

昨年までディメンションデータ〜NTTプロサイクリングに籍を置いていた彼が、今年からアスタナに。スポンサー危機に直面していたアスタナのかろうじての獲得の1人といった印象だった彼が、ジロ最終日TTの4位でまずは存在感を示し、そしてこのスロベニアで登りの強さも見せつけた。

彼は今後さらに可能性を広げていくかもしれない。注目していくべき選手だ。

 

 

ラ・クルスbyツール・ド・フランス(1.WWT)

ウィメンズ・ワールドツアー 開催国:フランス 開催期間:6/26(土)

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「女子版ツール・ド・フランス」ともいうべきラ・クルス。

その年の男子レースの象徴的なコースをピックアップしワンデーレース形式で開催され、過去にはイゾアールやル・グラン・ボルナンなどが舞台になることも。

 

昨年は男子レースの開幕地ニースで。今年も、男子レースの開幕地であるブルターニュ半島の先端ブレストで、男子レース開幕前の時間に開催された。

男子レースでもこの初日ステージ最大の注目ポイントとなるフォス・オ・ルー(登坂距離3㎞、平均勾配5.7%)をフィニッシュ地点に設け、男子レースの展開を予想する上でも重要なレースとなった。

しかも女子レースではこのフォス・オ・ルーを含む周回コースを3周させるため、女子レースだけこの登りを3回登るという特別仕様になった。

ワンデーレースということもあり、男子レース以上にサバイバルな展開が期待された。

 

序盤から激しいアタック合戦が繰り広げられ、なかなか決定的な逃げが生まれないまま残り距離が消化されていく。

1回目のフォス・オ・ルーの登りでルシンダ・ブラント(トレック・セガフレード)による攻撃で11名の先頭集団が形成。だがこれは2回目のフォス・オ・ルーでのアンナ・ファンデルブレッヘン(SDワークス)のペースアップで吸収される。

さらに残り2週(28㎞)でルス・ウィンダー(トレック・セガフレード)ナイアム・フィッシャーブラック(SDワークス)を含む10名の先頭集団が形作られるが、最後から2番目のフォス・オ・ルーでセシリーウトラップ・ルドヴィグ(FDJヌーベルアキテーヌ)とファンデルブレッヘン、マリアンヌ・フォス(ユンボ・ヴィスマ)カタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム)らが集団で一気にペースアップし、タイム差は40秒近くまで縮められる。

タイム差は残り5㎞でわずか14秒。そして最後の3㎞の激坂が始まる前に、ついに逃げはすべて吸収された。

 

登りの序盤の激坂区間ではニエウィアドマがペースアップ。しかし集団を破壊するまでは至らず、8名が抜け出す形で小集団スプリントに。

残り500mでファンデルブレッヘンがアタックを仕掛け、フォスやリアヌ・リッパート(チームDSM)らが反応する。これは、フォレリングのためのアシストの意味合いが強い。

その後フォスが最初にスプリントを開始するも、先ほどの反応ですでに足を失っていたフォスはいつもの破壊力を十分に発揮できず、その後ろから、デミ・フォレリング(SDワークス)がこれを追い抜いて先頭でフィニッシュに突入した。

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リエージュ~バストーニュ~リエージュに次ぐ、世界王者ファンデルブレッヘンによるアシストで勝利したフォレリング。

すでに今年引退を決めているファンデルブレッヘンからの「世代交代」は着実に進んでいるのか。フォレリング、これからも注目し続けていくべき選手だ。

 

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