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2020年シーズンを振り返る⑦  UCIワールドツアー全チーム 勝利数ランキング(19位〜10位)

 

「2020年シーズンを振り返る」企画のトリを飾るのは、こちらも毎年恒例「UCIワールドツアー全チーム 勝利数ランキング」。今年もUCIワールドツアー全19チームを、「勝利数」という観点でランキングしていきます。

※勝利数が同数の場合、2位の数で比較して順位付けしております。

 

今回は19位から10位までの下位10チーム。

勝利数だけでなく獲得UCIポイントでランキングされる「UCIチームランキング」も併記。勝利数とチームランキングとは相関関係にないことも多く、その理由なども考えてみると面白いかも。

また、集計している2017年からの勝利数(および勝利数ランキングでの順位)の変遷も併記しているので、それらと比較したうえでの「今年のこのチームの総評」としても参考になるだろう。

 

目次

 

↓9位~1位はこちらから↓

www.ringsride.work

 

【参考:過去の「振り返る」シリーズ】

2016年シーズンを振り返る カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

2017年シーズンを振り返る カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

2018年シーズンを振り返る カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

2019年シーズンを振り返る カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど

 

【参考:過去の「全チーム勝利数ランキング」シリーズ】

2017年シーズンを振り返る④ チーム勝利数ランキング(前編) - りんぐすらいど

2017年シーズンを振り返る⑤ チーム勝利数ランキング(後編) - りんぐすらいど

2018年シーズンを振り返る④ チーム勝利数ランキング(前編) - りんぐすらいど

2018年シーズンを振り返る⑤ チーム勝利数ランキング(後編) - りんぐすらいど

2019年シーズンUCIワールドツアー全チーム 勝利数ランキング(18位〜10位)

2019年シーズンUCIワールドツアー全チーム 勝利数ランキング(9位〜1位)

 

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第19位 モビスター・チーム 2勝

UCIチームランキング:18位(昨年7位)

2019年 21勝(10位)

2018年 27勝(8位)

2017年 31勝(5位)

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  • マルク・ソレル 2勝

 

年々順調にランキングを落とし、今年は見事に最下位。UCIチームランキングでも、ワールドツアーチーム最下位ではないものの、アルペシン・フェニックス(12位)とアルケア・サムシック(14位)の2チームに抜かれてのこの順位。控えめに言ってやばい。

弱体化は予想されていた。キンタナ、ランダ、カラパスといったエース級のみならず、アマドール、アナコナ、フェルナンデス、ベンナーティといった強力なアシストたちも失った。そしてこれまでのモビスターにはないような、若手中心の新加入選手をかき集め、チーム全体が若返った。そして2019年準拠のUCIポイント合計でランキングしたときには、ワールドツアー全19チーム中最下位であったのだ。

参考:‪https://www.ringsride.work/entry/20WTteamRank

 

一方、新加入エースとして期待されたエンリク・マスの不調も、この惨状の原因ではあるだろう。

もちろんツール総合5位、ブエルタ総合5位は素晴らしい結果ではある。だが、2018年ブエルタ総合2位の彼に求められているのは、決してそのレベルではなかったはずだ。

「目の上のたんこぶ」が抜けてついにエースの座を手に入れられるはずだった元パリ〜ニース覇者マルク・ソレルも、チームに唯一の勝利をもたらしてはくれたものの、ツール総合21位、ブエルタ総合18位は恥ずべき結果だったと言わざるを得ない。

そんなだから、チームの新たなエースとして再びコロンビア人のミゲルアンヘル・ロペスがやってきてしまう。果たして、このチーム・スペインは、ここ数年のギクシャクした状態を脱し、復活できるのか。

 

 

第18位 コフィディス・ソルシオンクレディ 2勝

UCIチームランキング:19位(昨年21位)

2019年 20勝

2018年 21勝

2017年 13勝

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  • アンソニー・ペレス 1勝
  • アッティリオ・ヴィヴィアーニ  1勝

 

昨年11勝のエリア・ヴィヴィアーニを獲得してこの成績はやばい。せっかくイタリアブランドのデローザバイクを駆って勝利を得るチャンスだったのに、むしろネガティブキャンペーンにしかならなかった。トレインとの相性など、考えなければならないことは多い。

今シーズンが全くの大失敗だった、というわけではない。とくに新加入のギヨーム・マルタンは、ツール・ド・フランスの前半戦で常に積極的な走りを見せて総合上位に名を連ねていた。ブエルタ・ア・エスパーニャでは山岳賞を獲得し、彼にとっては成功のシーズンだったと言える。

一方で昨年は成功のシーズンを飾れたヘスス・エラダが今年はまったく振るわなかったりと、やはりマルタンとブエルタで彼を支えたチームの走り以外では満足できないシーズンを過ごしたコフィディス。

来年の新規加入選手も良いスプリンターや逃げ屋、あるいはマルタンのアシスト役としての元ラヴニール覇者フェルナンデスなどはいるものの・・・大きく躍進できる要素をあまり見つけられていないのが現状だ。

 

  

第17位 AG2Rラモンディアル 5勝

UCIチームランキング:15位(昨年13位)

2019年 14勝(13位)

2018年 15勝(13位)

2017年 16勝(16位)

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  • ブノワ・コヌフロワ 3勝
  • ナンス・ピータース 1勝
  • ドリアン・ゴドン 1勝

 

年初のシーズンチームガイドで「現状、バルデあってのこのチーム」と書いたが、そのバルデが見事撃沈。元々は今年はジロとオリンピックを狙うと言っていたが、新型コロナウイルスの影響でそれも大きく崩れ、結局ツールに。前半戦はギヨーム・マルタン同様に調子が良く期待が高まったが、中盤の落車であえなくリタイア。

そもそも来期はもう1人の総合エース、ラトゥールと共にチームを飛び出す。このチームにも大きな変化が訪れることに。

だが、悪い話ばかりではない。今回勝利数を稼いでいる3名はいずれも今後のこのチームを背負っていきうるフランスの若き才能たちばかりである。

パンチャー系レースではもはや世界トップクラスの実力を持つ元U23世界王者のコヌフロワに、昨年のジロ区間1勝に続き今年もツールで区間1勝した「コストパフォーマンスの良い男」ピータース、そして石畳から丘陵まで、クラシックならなんでもござれなゴドン。

来期はもちろんファンアーヴェルマートやユンゲルスらスター選手が多く入ってくるが、一方でカルメジャーヌやサロー、そしてネオプロたち若きフランス人のさらなる活躍はまだまだ期待できるだろう。

 

 

第16位 NTTプロサイクリング 8勝

UCIチームランキング:21位(昨年22位)

2019年 7勝(16位)

2018年 7勝(16位)

2017年 25勝(9位)

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  • ジャコモ・ニッツォーロ 3勝
  • マキシミリアン・ワルシャイド 2勝
  • ベン・オコーナー 2勝(移籍)
  • ライアン・ギボンズ 1勝(移籍)

 

「ワールドツアーチーム万年最下位」は今年は避けられた(最下位はイスラエル・スタートアップネーション)。むしろ今年限りのビャルヌ・リース監督の参画がもたらしたのかわからないが、年初から調子が良かった・・・と思ったけど蓋を開けてみれば例年と変わらないくらいだった。

勝利数の割にチームランキングが低いのは例年通り最もポイントを稼げるステージレース総合がウィークポイントなのと、今年は特に小さなレースやワンデーレースが中止されることが多く、最も稼げるポイントが薄くなってしまった。

あとはニッツォーロが非常に調子が良かっただけに、ツール・ド・フランスでの早期リタイアが痛い・・・。

来年は長らくチーム消滅の危機に瀕していたが、本当にギリギリで存続決定。

ニッツォーロやワルシャイドの契約継続は勝ち取ったが、かなり多くの有力選手が流出してしまった。

まだUCIの正式な審査結果が出ているわけではないため、最悪、ワールドツアーチームとしての存続も確定していない中、来期についてはとにかく「やれるだけやる」しかないのが辛いところである。

 

 

第15位 CCCチーム 9勝

UCIチームランキング:16位(昨年20位)

2019年:6勝(17位)

2018年:23勝(11位)※BMCレーシング

2017年:48勝(3位)※BMCレーシング

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  • ヨセフ・チェルニー 3勝
  • ヤコブ・マレツコ 3勝
  • アッティラ・バルター 2勝
  • カミル・グラデク 1勝

 

スポンサー問題で揺れた2019年度。新スポンサー、CCCの下、まずは20勝、を目指しつつ6勝で終わった。

そして2020年。新たにマッテオ・トレンティンやイルヌル・ザッカリンなどを獲得し強化。今度こそ躍進を・・・と思っていた中で、新型コロナウイルスの影響を大きく受けてついにチーム消滅。ワールドツアーライセンスは、サーカス・ワンティゴベールの手に渡ることとなった。

 

9勝といえば聞こえはいいが、そのうちの5勝分は1クラスのツール・ド・ハンガリーの勝利によるもの。さらに2勝は国内選手権だ。

最後の最後にジロ・デ・イタリアでチェルニーが見事な逃げ切り勝利を果たしてくれたおかげでなんとか格好はついたが、2007年から続く名門チームの終焉としては実に寂しいものではあった。

 

このチームで最後まで活躍し続けてきた選手、スタッフたちが、新天地にてまた活躍し続けられることを願う。

 

 

第14位 トレック・セガフレード 9勝

UCIチームランキング:8位(昨年11位)

2019年:11勝(14位)

2018年:20勝(12位)

2017年:18勝(12位)

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  • マッズ・ピーダスン 3勝
  • リッチー・ポート 2勝(移籍)
  • マッテオ・モスケッティ 2勝
  • ジャスパー・ストゥイヴェン 1勝
  • ジュリアン・ベルナール 1勝

 

勝ち方は非常に派手で印象的。ピーダスンは世界王者になって花ひらいたというか、今年は年初のダウンアンダーでの強力な平坦牽引からツール・ド・ポローニュでのアッカーマン倒し、さらにはツール・ド・フランスでもシャンゼリゼ2位など好成績を残し、ヘント〜ウェヴェルヘム優勝など北のクラシックまで卒なくこなした。

ポートは2度目のダウンアンダー総合優勝に、もちろんツール・ド・フランス総合3位。

モスケッティも年初に2度立て続けにアッカーマンを倒したし、ストゥイヴェンも念願のワールドツアー級北のクラシックを制覇。ベルナールもプロ初勝利である。

そのため、勝利数の割にはそこそこのUCIランキングではある。が、例年、こんな感じで、印象に残る割には勝利数もランキングも中堅どころといった感じだ(UCIランキングは2017年には5位にまで上り詰めているが)。

ただ、勝利数が経営に直結するわけではない以上、このこなし方がむしろ最も適切なのかもしれない。トレック社もセガフレード社もこのコロナ下でも揺らぐことなくスポンサーを続け、強固な財政体制といったイメージを受ける。

一方、このチームの新たな顔となったヴィンツェンツォ・ニバリ始め、イタリア班はひどく苦しんだ1年となった。イル・ロンバルディアではニバリ、モレマ、チッコーネという最強トリオを最終盤まで残したにも関わらず、見事に4位〜6位独占というあまりにもな結果。いい選手が揃っているはずなのに、イタリア勢の勝利はなかった。

今年のトレーニーで来年正式加入となる若手ティベリなど、下からの突き上げに期待したいところ。

 

 

第13位 バーレーン・マクラーレン 9勝

UCIチームランキング:13位(昨年14位)

2019年:16勝(12位)

2018年:26勝(9位)

2017年:11勝(17位)

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  • フィル・バウハウス 3勝
  • ペリョ・ビルバオ 1勝
  • ソンニ・コルブレッリ 1勝
  • ダミアーノ・カルーゾ 1勝
  • イバン・ガルシア 1勝(移籍)
  • ディラン・トゥーンス 1勝
  • ヤン・トラトニク 1勝

 

これまでこのチームは中東オイルマネーのイメージがある割にも不思議というか中途半端なイメージもあったが、今回のマクラーレン社の撤退など、結局はオイルマネーだけに頼っても健全な育成はできないんだなと思い知る。それはアスタナもそうだけど、国の予算自体があったとしても、結局はそれをどこに投入するか、ということなのだろう。

ただ、やっぱり個人的にはそんなに嫌いになれないチーム。今年はツール・ド・フランスでとても大きな成績を出したとは言い難いが、ビルバオやカルーゾによる強力なアシストは非常に見応えがあった。

来期はほとんど入れ替えなしだが、唯一の新加入ジャック・ヘイグがまた、エースにもアシストにも使える人材で、地味だけど強いこのチームの山岳チームがより強化される。

頂点に立つイメージはなかなか持てないが、これからもその存在感を示していってほしい。

 

 

第12位 イスラエル・スタートアップネーション 10勝

UCIチームランキング:22位(昨年19位)

2019年:29勝

2018年:15勝

2017年:8勝※1クラス以上のみ

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  • ルディ・バルビエ 2勝
  • ダニエル・マーティン 1勝
  • アレックス・ドーセット 1勝
  • ユーゴ・ホフステッド 1勝
  • ミッヘル・レイム 1勝(来期未定)
  • マティアス・ブランドル 1勝
  • ノーマン・ヴァフトラ 1勝
  • オマール・ゴールドシュタイン 1章
  • ガイ・サギフ 1勝

 

2019年はプロコンチネンタルチームの中でも随一の成績を誇っていたこのチームも、やはりワールドツアーの壁は高く、今年はUCIチームランキングでワールドツアー中最下位に。あのNTTを超えた。

9勝のうち4勝が国内選手権でもあり、勝っているメンバーもまだまだ「UCIプロチーム的な」選手たちばかり。そんな中、来期、マイケル・ウッズやダリル・インピー、そしてクリストファー・フルームたちが入ってくる中で、どう変化していくのか。

一方でスター選手たちを入れながらも、ブランドルやドーセットなど今年しっかりと頑張った選手たちの契約もちゃんと継続しているあたりに好感が持てる。イスラエル人二人もしっかりと残り、チームの哲学を守っているのは重要だ。

 

 

第11位 ロット・スーダル 12勝

UCIチームランキング:17位(昨年10位)

2019年:23勝(10位)

2018年:25勝(10位)

2017年:25勝(9位)

 

    • カレブ・ユアン 7勝
    • ティム・ウェレンス 2勝
    • ジョン・デゲンコルプ 1勝
    • サンデル・アルメ 1勝(来期未定)
    • マシュー・ホームズ 1勝

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ここも非常に安定した成績を出し続けているチームだ。スポンサーもまた、安定している。勝利数がガクッと下がったのはレース数自体が減っているからで、大きな問題ではないだろう。

とくにユアンは昨年に引き続き稼ぎ頭になってくれている。近年移籍したスプリンターがうまくいかないことも多い印象がある中で、ユアンのこの移籍は本当に彼にとって大きなプラスになったと断言できる。今年のツールでのスプリントも「異様」なくらいの強さで、チームとしてはドゥクーニンク・クイックステップに敗れながらも、スプリンターの「個人」としての強さでは、今年もユアンが最強だったと言えなくもない。

一方で昨年まで7勝→7勝→5勝とスプリンターでもないのに勝利数を稼ぎ続けてくれていたウェレンスが失速。その原因はシーズン再開直後の怪我。それでも最後の最後にブエルタで大きすぎる帳尻合わせをしてくれたので、やはりこの男は純粋に強い。

「遅れてきた新人」系のホームズが勝利以外でも積極的な走りを見せてくれたり、ベテランデゲンコルプがしっかり勝ってくれたりと、見所はたくさん。ジルベールが目立てなかったのは残念だ。

来年抜ける選手も新たに加入する選手も多いが、いずれも目玉というほどではない。だがそんな地味な選手たちが活躍することも多いこのチームの来年の動きも見逃せないだろう。

 

 

第10位 アスタナ・プロチーム 15勝

UCIチームランキング:7位(昨年5位)

2019年:37勝(4位)

2018年:30勝(7位)

2017年:18勝(12位)

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  • ヤコブ・フルサン 4勝
  • アレクサンドル・ウラソフ 3勝
  • ミゲルアンヘル・ロペス 2勝(移籍)
  • ルイスレオン・サンチェス 2勝
  • ヨン・イサギレ 1勝
  • ゴルカ・イサギレ 1勝
  • アレクセイ・ルツェンコ 1勝
  • ファビオ・フェリーネ 1勝

 

カザフの強豪チームの、緩やかなる衰退。財政難にも苦しみ続け、来期ついに、大事に育ててきたはずのミゲルアンヘル・ロペスを失う。一時はルツェンコすら去るという噂もあった。

そもそも今年は結構辛かった。チームの要となる山岳アシスト勢が軒並み離脱し、勝利を挙げたのは有力選手たちばかりなのは、果たして良いことなのか悪いことなのか。

幸いにもこの重要な選手たちの多くがチームに残ることを選択してくれているので、大崩れはしないと思うが・・・

今年大躍進を遂げたウラソフ、そしてそれを支えたハロルド・テハダのさらなる成長に期待する。

ウラソフ、チーム抜けないよね?

 

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