りんぐすらいど

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Team Total Direct Energie 2020年シーズンチームガイド

 

読み:チーム・トタル・ディレクトエネルジー

国籍:フランス

略号:TDE

創設年:2000年

GM:ジャン=ルネ・ベルノードー(フランス)

使用機材:ウィリエール・トリエスティーナ(イタリア)

2019年UCIチームランキング:16位

(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります) 

 

参考 

Direct Energie 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Direct Energie 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2020年ロースター

※2019年獲得UCIポイント順。

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(実質的な)連覇中だったワンティ・グループゴベールを倒し、見事2019年プロコンチネンタルチームランキング1位を獲得したトタル・ディレクトエネルジー。2020年はすべてのワールドツアーレースへの優先出場権を獲得+出場義務はなしという、ワールドツアーチームよりも優遇された権利を獲得する。早速その権利を行使し、ジロ・デ・イタリアやクリテリウム・ドゥ・ドーフィネへの出場を辞退した。なんと贅沢な!

もちろんこれはチームのGMであるジャン=ルネ・ベルノードーにとっても実に嬉しい成果である。が、同時に、「レースを退屈なものにするだけの『TOP10』とか『UCIポイント』とかの言葉を使いたくはなかったが、今年の私は使わざるをえなかった*1」と述べているように、それは決して彼が望んだチームの形ではなかった。

 

「アラフィリップはただ勝てる強い選手というだけでなく、レースを予測不可能なものにし、コントロールできないものにしてみせた。それは私を感動させ、自分のチームの選手たちもそうなってほしいと強く思った。アラフィリップとピノは、我々のスポーツに高貴なものを取り戻してくれた。我々はそれを2度と消してしまわないようにしなくてはならない*2

 

事実、2019年のディレクトエネルジーは、決してポイントやランキングのためだけに走っていたわけではなかったように思う。ドワースドール・フラーンデレンでマチュー・ファンデルポールに敗れて心底悔しがるテュルギの姿や、ツアー・オブ・オマーンで残り100mで捕まえられるまで執念で逃げ続けたグルリエの姿などに、かつてのトマ・ヴォクレールなどにも通じる熱い「ヴァンデ魂」を感じた。

悔しい思いをした選手ももちろんいる。テルプストラもカルメジャーヌも、2019年の獲得UCIポイントの高さにも関わらず、決して成功できなかったシーズンだと感じていることだろう。彼らが2020年に再び輝き、チームを大いに盛り上げることを期待している。

 

世界一強いプロコンチネンタルチーム(今年の言い方でいえばUCIプロチーム)というだけでなく、世界で一番熱いチームへ。

その信条が実現するかどうか、我々も見守っていくこととしよう。

 

 

注目選手

ニキ・テルプストラ(オランダ、36歳)

脚質:ルーラー

Embed from Getty Images

パリ〜ルーベとロンド・ファン・フラーンデレンの覇者。2019年はディレクトエネルジーを引っ張っていく存在として期待されていたが、ロンド・ファン・フラーンデレンでまさかの落車。北のクラシックランキング[リンク]ではチームメートのプティやテュルギにも敗れる始末で、結局、年間未勝利となってしまった。パリ〜ツールでは悔しい2年連続2位。

ただ、たとえ勝てなくとも、その走り方が後輩たちに与える影響は大きいはずだ。実際、このチームのクラシック班は今年、例年以上に飛躍したようにも見える。2019年プロコンチネンタルチームランキング1位の鍵はやはりこのテルプストラの存在が握っていたと言っても過言ではないだろう。

2020年も同様にチームを引っ張りつつ、やはり彼自身の勝ちも見てみたい。

 

 

アントニー・テュルギ(フランス、26歳)

脚質:スプリンター

Embed from Getty Images

2019年最も飛躍した選手の1人であり、今後が楽しみな選手の1人。

最も目立ったのはおそらくドワースドール・フラーンデレン。最後のスプリントでマチュー・ファンデルポールに敗れて2位となったものの、そのときの悔しがり方は実に印象的であった。そこには、ワールドツアーレースで2位に入り250ポイントものUCIポイントを獲得できた喜びなど一切なかった。ただ勝利だけを狙っていた男の顔だった。

とはいえ、勝利もきっちりと集めている。シーズン初頭、パンチャーたちの祭典であるGPシクリスト・ラ・マルセイエーズ、同じくアップダウンが鍵を握るシーズン終盤のパリ〜ショニーで勝利。

その他、ダンケルク4日間レースやツール・ド・ルクセンブルクで総合4位と新人賞を獲得。クラシックに強いスプリンター/パンチャーとして、2020年もチームの中心人物として活躍することだろう。

また、さいたまクリテリウムにも参戦。結構イケメンなので、みんな応援してほしい。

 

 

リリアン・カルメジャーヌ(フランス、28歳)

脚質:クライマー

Embed from Getty Images

2016年にブエルタ・ア・エスパーニャ、そして2017年にツール・ド・フランスを逃げ切り勝利し、トマ・ヴォクレールの後継者として一躍注目を集めた男。しかし、2019年はイマイチ振るわずに終わった。

決して弱かったわけではない。アークティックレース・オブ・ノルウェー総合4位、ツール・ド・リムザン総合2位、グランプリ・ド・ワロニー5位、トロ・ブロ・レオン5位など・・・ただし、勝利はクラシック・ドゥ・ラルディシュのみ。ツール・ド・フランスでも、積極的に逃げには乗るが、それが最終的に上位でフィニッシュすることすらなく終わってしまっている。

このまま一時の輝きで終わってしまうのか? そんなことはない、という走りを今年、見せてほしい。

 

 

その他注目選手

ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、27歳)

脚質:スプリンター

元々はバーレーン・メリダ発足時に、そのエーススプリンターとして期待されていた男。しかしそこではまったく結果を出せず、ソンニ・コルブレッリに完全にお株を奪われてしまった。

そして失意のプロコン落ち・・・と思われていたが、年初のラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴでステージ3勝&総合優勝を成し遂げ、存在感を示した。

さらには、ツール・ド・フランスでも、トップスプリンターたちに混じって上位争いを繰り広げる。最終日シャンゼリゼでは3位にまで登り詰めた。

まだ今年で27歳の若手であることは間違いなく、これからの飛躍も十分に見込める男だ。

 

 

ロレンツォ・マンザン(フランス、26歳)

脚質:スプリンター

昨年はコカールのいたヴィタルコンセプトに所属しており、ボニファツィオが3勝したラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴで彼もステージ2勝、総合2位となった。マダガスカル島東のインド洋上に位置するフランス海外県レユニオンの出身であり、アフリカは彼のルーツの1つでもあるといえ、感慨深い成績だったことだろう。

元々はFDJに所属しており、2017年のブエルタ・ア・エスパーニャではマドリードでわずかの差で敗れての2位。まだ若く、有望な選手だった。

にも関わらずのプロコンチネンタル行きは実に残念だっただけに、昨年の活躍は喜ばしいものであった。2020年もボニファツィオと共にチームを引っ張っていってほしい。

 

 

ファビアン・グルリエ(フランス、26歳)

脚質:クライマー

ヴァンデ県で生まれ育ち、ディレクトエネルジーの育成アマチーム・ヴァンデUから昇格する形でプロデビューを果たした生粋のヴァンデっ子。その走りも、チームの象徴とも言えるトマ・ヴォクレールにインスパイアされたのか、積極的な逃げを信条とするもので、パリ〜ニース、ツール・ド・フランスなど大型のレースでもアグレッシブな走りを見せる。

そんな彼に注目したのが、昨年のツアー・オブ・オマーン第5ステージでの執念のエスケープであった。

www.ringsride.work

 

最終的にはわずか100m届かずにプロ初勝利を手放してしまったグルリエ。その後のシーズンは正直まったくと言っていいほど結果を出せず、失意のままに終えることとなったが、この新シーズンでそこをどれだけ持ち直すことができるか。

密かに期待している選手の1人。今年は、彼の覚醒の年だ。・・・と信じたい。

 

 

総評

UCIプロチーム筆頭という位置づけながら、決して派手ではないメンツが揃うディレクトエネルジー。紹介した選手たち以外にも、

 

冒頭に挙げたベルノードーGMの言葉に従い、熱い走りを期待していきたい。

 

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