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獲得UCIポイントで見る ツール・ド・フランス2020 全チームランキング&レビュー(22位~12位)

 

3週間の激戦を終え、それぞれのチームは果たしてどんな活躍をしていったのか。課題は何だったのか。

昨年に引き続き、「ツール・ド・フランス期間中に獲得したUCIポイント」を集計して、各チームをランク付けしてみた。

そのチームの活躍ぶりを客観的に示す一つの基準となるだろう。

また、それに合わせて各チームへの簡単なレビューも添える。

果たして、2020年のツール・ド・フランスで、最も活躍したチームはどこか?

 

今回は、22位から12位までの11チームを確認していく。

 

 

↓11~1位まではこちら↓

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↓全21ステージの詳細な振り返りはこちらから↓

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2020 第1週(前編) - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2020 第1週(後編) - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2020 第2週 - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2020 第3週 - りんぐすらいど

 

↓昨年のランキングはこちらから↓

獲得UCIポイントで見る ツール・ド・フランス2019 全チームランキング&レビュー(22位~12位) - りんぐすらいど

獲得UCIポイントで見る ツール・ド・フランス2019 全チームランキング&レビュー(11位~1位) - りんぐすらいど

 

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第22位(昨年21位) トタル・ディレクトエネルジー 25pt.

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逃げ一覧

  • ファビアン・グルリエ(第1・8ステージ)
  • ジェローム・クザン(第3・8ステージ)
  • マチュー・ブルゴドー(第4・12ステージ)
  • ロメン・シカール(第13・16ステージ)
  • ニッコロ・ボニファツィオ(第15ステージ)

 

昨年のプロコンチネンタルチーム(現UCIプロチーム)ランキングトップに立って今年すべてのワールドツアーレースへの出場権を手に入れたチームにも関わらず、最も重要なこのツール・ド・フランスでは全く結果を残すことができなかった。

とくに昨年は3位や5位に入ってUCIポイントを稼いだニッコロ・ボニファツィオが、今年は完全に沈没してしまったのが痛い。第3ステージでかろうじて10位に入ったくらいで、あとはTOP10に入ることはできないままパリに辿り着いてしまった。今年はパリ~ニースでも勝っていただけに、可能性は十分にあったように思えていたのだが・・・。

一方でこのチームのツールにおける重要な関心ごとの1つは逃げである。生粋の逃げ職人クザンは今年も第3ステージで勇気ある独走を遂げ、人生4度目のツール敢闘賞を手に入れる。

そして昨年も3ステージで逃げたシカールは今年も2ステージで逃げに乗り、総合でもそれなりの位置に。元ラヴニール王者はなんだかんだで息が長い。

来年はAG2Rからピエール・ラトゥールとアレクサンドル・ジェニエスという実力者2人を獲得。さすがに今年よりももっとずっと大きな成果を残してくれる、はず・・・。

 

 

第21位(昨年-位) イスラエル・スタートアップネーション 35pt.

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逃げ一覧

  • ニルス・ポリッツ(第4・12ステージ)
  • ダニエル・マーティン(第13・17ステージ)
  • クリスツ・ニーランズ(第4ステージ)
  • ベン・ヘルマンス(第8ステージ)

 

今年のワールドツアー最下位はこのチーム。プロコンチネンタル上がりであるということと、昨年最下位のカチューシャのエッセンスを継承しているという両面において納得の結果ではある。

もちろん、マーティンのこの成績には満足はできない。ただこれは、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで負った仙骨骨折の影響がどうしてもあるだろう。それでも懸命に重要なステージで逃げには乗ったが、届かなかった。

逆に活躍したのが、プロデビューからずっとコフィディス・ソルシオンクレディで走ってきたフランスの新星スプリンター、オフステテール。昨年もシュヘルデプライス4位やエシュボルン・フランクフルト5位など着実に強さを示してきた彼が、イスラエル入りした今年、スプリンターの数も多いこのチームの中でもしっかりと存在感を示し、最も重要なツールにおいてはグライペルを差し置いてエースとしての走りをしっかりと見せつけてくれた。

上記の表にある第3ステージ4位のほかに、第7ステージ7位、第11ステージ8位、そして最終日パリ・シャンゼリゼでも8位。トップスプリンターたちが集まるこの世界最高の舞台で、堂々たる結果である。

今年で26歳。まだまだこれからの年齢でもあり、さらなる活躍に期待だ。ブエルタ・ア・エスパーニャとかなら勝利も十分にありうると思う。

一方で少し残念だったのがポリッツ。昨年は6ステージで逃げに乗ったタフネスライダーだが、今年は2ステージに留まり、そこまで目立つことができなかった。

来年はボーラ・ハンスグローエ。本来であれば山も登れてスプリントも強い「決め球」を持つ逃げ屋になりうる男だけに、走り方をもっと習熟させれば結果はついてくるだろう。

 

 

第20位(昨年18位) NTTプロサイクリング 75pt.

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逃げ一覧

  • ミヒャエル・ゴグル(第2・15ステージ)
  • エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(第6ステージ)
  • マキシミリアン・ヴァルシャイド(第12ステージ)

 

イタリア国内選手権・ヨーロッパ選手権と連覇し、その実力・勢いともに最高潮だったジャコモ・ニッツォーロ。サム・ベネットとカレブ・ユアンの2強体制と思われていた今年のツールに第3極として存在感を示し、1勝どころか2勝・3勝と重ねられる可能性すらあると期待されていたニッツォーロ。実際、第3ステージでは3位に入り込み、期待を抱かせたものの、初日の落車による影響か、下腿の痛みで序盤でリタイアを決めた。

合わせて総合エース予定だったポッツォヴィーヴォもリタイアし、チームとしては散々な状態に。ボアッソンハーゲンが急遽エースに切り替わったことで、本来であればフィニッシュにとらわれない自由な逃げからの勝利を得意とする彼(昨年は3ステージで逃げに乗る)が、どこか狭苦しい走りを強いられていたようにも思える。

来年はセカンドスポンサーの離脱で経済的に苦しく、ポッツォヴィーヴォもニッツォーロも手放す可能性があるとも言われているNTT。果たして、どうなってしまうのか。

なお、そんな中面白い走りを見せていたのがゴグル。第15ステージの超激坂では斜めに蛇行しながら走る姿を見せていたにも関わらず直後に先頭集団に復帰し、下りでこれを突き放して独走する姿も見せていた。

アムステルゴールドレースやストラーデビアンケで活躍するパンチャータイプの選手ながら、パリ~ルーベやル・サミンを走ることもある割と謎脚質。グランツール出場経験も豊富なタフな万能型選手は、今後もチームにとってはジョーカーとして活躍を期待できる選手になるだろう。

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第19位(昨年19位) CCCチーム 140pt.

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逃げ一覧

  • シモン・ゲシュケ(第13・15・16・18ステージ)
  • グレッグ・ファンアーヴェルマート(第6・19・21ステージ)
  • ミヒャエル・シェアー(第1・2ステージ)
  • マッテオ・トレンティン(第16・19ステージ)
  • イルヌル・ザカリン(第8ステージ)

 

今年消滅することがほぼ決まりかけているこのチーム。何かしらの結果を持ち帰らなければ、という思いと共に、チームが可能な最強のメンバーを揃えてきた。

その思いは選手にもしっかりと伝わっており、とくにトレンティンが中間スプリントポイントの獲得に熱心に動く。ボーラ・ハンスグローエ主導で荒れた展開となったステージではフィニッシュでも上位に入ろうとする姿を見せ、最終的にはサガンと24ポイント差のポイント賞3位。届かなかったが、良い走りをしてくれた。そんな彼を常に支え続けていたファンアーヴェルマートと共に。

来期はそれぞれ新天地での活躍となる。ファンアーヴェルマートはシェアーを引き連れてAG2Rに。トレンティンはUAEに。これからもサイクルロードレース界の中心で活躍すること間違いなしの彼らの行く末を楽しみにしておきたい。

一方、ステージ優勝も十分狙える実力ながら、第11ステージでの落車骨折により翌日にリタイアとなったザカリン。痛みが激しかっただろうに翌日の出走までは敢行したあたり、本人もこのまま帰るわけには・・・!という強い思いがあったのだろう。あまりにも切ない終わり方。

来期のチームもまだ決まっていないザカリン。一体、どうなる?

 

 

第18位(昨年15位) アルケア・サムシック 165pt.

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逃げ一覧

  • ワレン・バルギル(第9・13・16ステージ)
  • ケヴィン・ルダノワ(第15ステージ)
  • ウィネル・アナコナ(第16ステージ)
  • コナー・スウィフト(第21ステージ)

 

ナイロ・キンタナ、どうしてしまったのか。今年2月のフランスの2つのステージレースでは共に総合優勝、パリ~ニース総合6位、ツール・ド・ラン総合3位と、モビスター時代以上の安定感をもってツールに乗り込んでこれていたように思っていた。

実際に、前半戦は、ずば抜けた走りはないもののしっかりとトップライダーたちについていき、第14ステージ終了時点で総合5位。表彰台までは届かないまでも、総合TOP5は十分に狙え、このチームにとっては大きな成果を持ち帰ることができるだろう・・・そんな風に、思っていた。

しかしグラン・コロンビエを舞台とした第15ステージで大きく後退。さらにラ・ローズを舞台としたクイーンステージの第17ステージではさらなる失墜。最終的には総合17位という、初のグランツールである2012年ブエルタ以来の最悪な成績となってしまった。

何が原因だったのか。第17ステージ前夜に突如としてフランス憲兵がアルケアのホテルに乗り込むという事態もあり、異例のその捜査がパフォーマンスに悪影響を及ぼした可能性もあるが、第15ステージの失速はそれ以前の話でもあり・・・。キンタナの今後の復活は果たして、あるのか。

一方で、そのアシストとしての走りになるかと思われていたバルギルが健闘。逃げにも積極的に乗り、昨年の総合10位には届かなかったものの、本来はエースとしては考えていなかった中での総合14位は十分に凄い。

来年のツール体制には間違いなく影響を与えそうな、そんな結果だ。

 

 

第17位(昨年8位) グルパマFDJ 165pt.

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逃げ一覧

  • セバスティアン・ライヒェンバッハ(第9・16・18ステージ)
  • シュテファン・キュング(第10・11ステージ)
  • ダヴィ・ゴデュ(第9ステージ)
  • マチュー・ラダニュ(第10ステージ)
  • ヴァランタン・マデュアス(第13ステージ)
  • ルディ・モラール(第18ステージ)

 

ティボー・ピノ、まさかの結末。全ての元凶はおそらく、第1ステージ残り3㎞地点でのあの落車。しかしある意味で、位置取りが悪かった。本当に勝つ選手は、あのような位置にはいるべきではなかった。

それでも、最後まで走り続けたのは、第20ステージでの地元の歓声に応えるためだったか。一度は挫折したツール総合の道を、前年のあまりにも悔しいリタイアのあとの傷心を乗り越えて、2度も挑戦してくれた。その走りに敬意を示すとともに、来年は本当に彼が望むシーズンを過ごしてほしいと思う。

あとは、それを継承する時代のライダーたちだ。昨年はそれこそ今年のセップ・クス並みの完璧なアシストを見せてくれたダヴィ・ゴデュが、その実力を示すこともできないままにリタイア。

「3番目の男」として大きな期待を寄せているマデュアスも、決して悪くない走りを見せてくれていたものの(上記の第13ステージ4位のほかに、第17ステージでは15位)、期待以上のものではなかった。

一方でベテランのライヒェンバッハがややかつての最盛期の力を取り戻しているかのような走り? 最終的な総合順位は昨年(17位)よりも下ではあるが、逃げでその姿を目立たせる頻度は多かった(スイスナショナルジャージだったからというのはあるだろうが)。

ただ、いずれにせよ、来年も同じ総合オンリー体制で来るかは正直、微妙。デマールは今年調子いいし、また違った走り方を来年はしてくれるような気がする。総合はツール以外での活躍に注目、か。

 

 

第16位(昨年-位) B&Bホテルス・ヴィタルコンセプト 185pt.

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逃げ一覧

  • カンタン・パシェ(第4・8・12・16ステージ)
  • ピエール・ロラン(第13・15・16ステージ)
  • シリル・ゴチエ(第1ステージ)
  • ケヴィン・レザ(第18ステージ)

 

チーム結成以来、初のツール・ド・フランス出場。ブライアン・コカールにとっては4年ぶり、ピエール・ロランにとっては2年ぶりとなるツール出場だ。

そういった実力者たちが揃うがゆえに、初出場ながら十分すぎる成果を残した。3つ出場したUCIプロチームの中では最高の成績だ。コカールは7ステージでTOP10入り。ロランもここ数年で最もコンディションの良いツールを過ごしていたように思う。

だが、そんな中、ある意味で最も注目すべきがパシェの存在。今年28歳のフランス人は、これまでワールドツアーチーム経験はなし。クライマーではあるものの、どちらかというと標高のそこまで高くない丘陵系のレースで成績を残しているパンチャー寄りのクライマー。

そんな彼が、今回のツールでは厳しい山岳ステージでも積極的に逃げに乗った。そして勝利には結びつかなくとも、十分にトップクライマーたちと渡り合っていたように思う。

その姿が功を奏したのか、間もなく開幕するイモラ世界選手権でもフランス代表入り。今回のイモラは総獲得標高4,000m超えの厳しいアップダウンステージで、パシェには十分フィットするレイアウトのように思う。

アラフィリップやピーターズといったエースたちを支える強力なアシストとしての活躍を期待する。まだ来年のチームも決まっておらず、ワールドツアー入りの可能性もあるかも?

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第15位(昨年12位) AG2Rラモンディアル 216pt.

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逃げ一覧

  • ブノワ・コヌフロワ(第2・3・8ステージ)
  • ナンズ・ピータース(第8・18ステージ)
  • アレクシー・ヴィエルモ(第4ステージ)
  • オリバー・ナーセン(第19ステージ)


バルデは悪くない走りを見せていた。途中、落車からの脳震盪に起因したリタイアは残念ではあったが、新天地でのさらなる自由な走りに期待している。サンウェブは良いチームだから。

そして、残されたフランス人若手たちの活躍は十分に今後を期待させてくれるものだった。ピーターズの勝利は望外なものだったし、コヌフロワは後半は完全に失速してしまったが、ツールを連日特別賞ジャージで走り続けられたことを心から楽しんでいたようにも思う。

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来年はファンアーヴェルマートも加わり、よりツールにおいては各メンバー自由に走る姿を見せてくれそうだ。元々このチームのそういった走りが好きだったこともあるので、それはそれで結構、楽しみである。

 

 

第14位(昨年6位) ロット・スーダル 305pt.

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逃げ一覧

  • トーマス・デヘント(第7・18ステージ)

 

昨年と比較するとずいぶん厳しい結果のように見えなくもないが、初日からジルベールとデゲンコルプという重要な選手を失ったことを考えればこの結果は十分なものと言える。しかもコースがスプリンター向けではないうえに後半はボーラ・ハンスグローエが混戦に持ち込みたいがゆえに荒れた展開に持ち込んだこともあって、デヘントも含めたアシストたちは皆、ユアンを守りぬくことを優先せざるを得なかったので、逃げに乗ることも厳しかった。

だが、正直な話、ピュアスプリントにおいては今年も結局、ユアンが「最強」だったように思う。他に2勝しているスプリンターはベネットとファンアールトがいるが、ベネットは第10・第21ステージともにミケル・モルコフの力が大きかった面があるし、ファンアールトは荒れた展開では強いが、ピュアスプリントではまだユアンを凌ぐほどでないことは第11ステージを見てもわかる(ただ、サガンの寄せがなければもしかしたらファンアールトが勝っていた可能性はある)。

一方のユアンは、たとえば第3ステージの勝利は、異様な軌道を描く猛烈な加速による勝利で、昨年の第16ステージもそうだが、とにかく個としての強さが圧倒的に抜きんでている。

この勢いはどこまで続くのか。来年もユアンの大暴れには期待できそうだ。

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第13位(昨年20位) コフィディス・ソルシオンクレディ 330pt.

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逃げ一覧

  • ヘスス・エラダ(第6・15・18ステージ)
  • アントニー・ペレス(第2・3ステージ)
  • ニコラ・エデ(第13・18ステージ)
  • ピエールリュック・ペリション(第21ステージ)

 

マルタンの序盤の活躍。後半失速したとはいえ、蓋を開けてみれば総合11位と、昨年の過去最高記録をさらに更新した。もちろん、ワールドツアーである以上、TOP10入りは必達目標の1つだとは思うが、この男が年を重ねるごとに着実に成長しつつあることを示していると言えるだろう。

一方の、ヴィヴィアーニの不調。最終日シャンゼリゼではやや復調気味に感じたところはあるものの、全体的に勝負すらできない姿も目立った。結局は彼も、「クイックステップの呪い」からは逃れられなかったか。

昨年はブエルタでのステージ優勝など活躍していたヘスス・エラダも期待されていたほどの結果は出せず。ワールドツアー1年目としては、決して満足できる結果とはいえないだろう。
 

 

第12位(昨年5位) ボーラ・ハンスグローエ 395pt.

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逃げ一覧

  • レナード・ケムナ(第9・13・16・17ステージ)
  • マキシミリアン・シャフマン(第12・13・21ステージ)
  • ペテル・サガン(第2・19ステージ)
  • ダニエル・オス(第9・16ステージ)
  • ルーカス・ペストルベルガー(第2ステージ)
  • ダヴィデ・フォルモロ(第9ステージ)

 

ペテル・サガン、真正面からの対決でマイヨ・ヴェール獲得を逃す。

2012年のツール・ド・フランス初出場以来、完走したツールでこのポイント賞ジャージを手に入れられずに終わるのは、初めてのことであった。

単純にスプリントでの劣勢が響いた。全体的にステージの前半に中間スプリントポイントが用意されていることも多く、彼が得意とする山岳ステージで逃げてステージ中盤以降のポイントを獲得するというパターンが取れなかったのも痛いだろう。そして、第11ステージでの降格処分。

それでも彼と彼のチームが凄いのが、そこで諦めることなく、挑戦し続けたことである。第12・第14ステージなんかは、チーム一丸となってサム・ベネットを振るい落とす作戦を敢行し、それ自体はうまくいった。

しかしそれでも結局、それらのステージの最後にスプリントで集団の先頭を取ることには失敗してしまう。明らかに、かつての勢いが失われているような印象を覚えた。結果として、2015年以来の、ステージ勝利のないツールである。

この後、彼はジロ・デ・イタリアに向かう予定である。そこでもポイント賞(マリア・チクラミーノ)獲得に意欲を燃やしているとは言われている。

そのことを見据えたうえでの今回の結果であるならばまだよい。初のジロ・デ・イタリアでモチベーションを高めて臨めるのであればそれはそれでよい。

だが、チームが着実に「ドイツ化」「脱サガン化」を進める中、現契約が2021年までであることに色々と不安を覚えはする。

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一方、その「ドイツ化」に向けては、うまくいったところといかなかったところとが同居する。

昨年総合4位のエマヌエル・ブッフマンは今年もクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでの好調もあり大いに期待されていた。しかしそのドーフィネでの落車の影響が残っていたのか、今回は精彩を欠いた走りとなってしまった。

とはいえ、常に好成績を取り続けられるほどツールは甘くはない。切り変えて、次の目標であるブエルタに邁進してほしい。

一方で活躍したのがレナード・ケムナとマキシミリアン・シャフマンという2人のドイツ人だ。シャフマンは直前のイル・ロンバルディアで車に轢かれて鎖骨骨折に見舞われたにも関わらず第13ステージで果敢に逃げに乗り、ケムナはその第13ステージで悔しくも敗れるも、第16ステージで見事リベンジを果たした。

昨年のツールも積極的な山岳エスケープを見せていた24歳の若者が、また一段、確かな成長を果たした。

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チーム・サガンからの脱却と、ブッフマン、シャフマン、ケムナといったドイツ人若手たちの台頭。

来年は同じドイツの才能、ニルス・ポリッツを迎え入れることをすでに決めている。

ボーラはまさに今、転換期を迎えつつある。 

 

 

次回は11位~1位。果たして、今年のツール最強のチームはどこだったのか?

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