りんぐすらいど

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 ツール・ド・フランス2020 全チームスタートリスト&プレビュー

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新型コロナウイルスによる延期を経て、いよいよ開幕する2020年のツール・ド・フランス。
今回は全22チーム176名全員のスタートリストを独断と偏見により判定した脚質を添えて掲載。 

加えて簡単なプレビューも書かせていただきました。

ぜひ、参考にどうぞ。

※年齢はすべて2020/12/31時点のものとなります。

※各国ロードチャンピオンについては表中の国名を太字にしております。

 

 

関連リンク

ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第1週 - りんぐすらいど

ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第2週 - りんぐすらいど

ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第3週 - りんぐすらいど

 

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1~.イネオス・グレナディアーズ(INS)

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若き「新トリプルエース」の活躍に期待

当初予定されていた「ベルナル、トーマス、フルームの歴代ツール覇者揃い踏み」は幻に終わり、それぞれトーマスはジロに、フルームはブエルタに行くことになった。

かと言って今回のイネオスが物足りない面子かといえば全くもってそうではなく、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで絶好調の走りを見せていたカストロビエホ、ここ数年はあまり目立たなかったものの、今年はまた2017年頃の最強ぶりを取り戻しつつあるクウィアトコウスキーなどのアシストが脇を固めつつ、ジロ覇者カラパスにルート・ドクシタニー総合2位&ドーフィネの最終日グラン・コロンビエ山頂フィニッシュステージでもかなり好調な走りを見せていたシヴァコフも揃い、「若手トリプルエース」が完成することに。

平坦では横風職人ルーク・ロウに登りもいけてしまうファンバーレ、さらにはモビスター最強の山岳アシストだったアマドールも加わり、あれ?以前のメンバー以上に隙がない・・・?

そしてこのメンバーで、今年こそベルナルが最強であることを証明してほしい。いや、昨年も間違いなく最強だったのだが、アラフィリップの輝きや、第19ステージでのレース中断などにより、昨年のベルナルの総合優勝にはどこか目立ちきれないものがあったように感じていた。

だからこそ、もう一度、今度こそ完膚なきまでに強さを見せけて鮮烈なる勝利を飾ってほしい。

ラン、ドーフィネと「負けっぱなし」ではいられないはずだ。

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11~.チーム・ユンボ・ヴィズマ(TJV)

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「最強」の世代交代は果たせるか

イネオスからGとフルームが離脱したように、このチームからも、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでの落車の影響により、トリプルエースの一角、クライスヴァイクが離脱することに。

代わってメンバー入りしたのが昨年もツールに出場しているヤンセン。結果として、これまで平坦系の選手が極端に少ない(というかマルティンが2〜3名分の働きをすることが前提だった)体制だったのが少し緩和された。

平坦系の選手の存在は、落車や横風分断などのイレギュラーな事態が発生した際のリカバリーにおいて非常に重要である。イネオスの強さの一端は、登れるアシストが平坦もこなせることが多いことで、昨年のツールのトーマスの落車の際もこのリカバリーが非常に早かった。ユンボにとっては、前哨戦のツール・ド・ランやドーフィネで山岳アシストがやや余り気味だったことも念頭においているのかもしれない。

また、ヤンセンの存在はもしかしたら、ファンアールトによるステージ勝利も本気で狙っていることの表れなのかもしれない。ファンアールトの平坦での負担を減らし、ゴール前の位置どり・ポジション上げの手伝いをするという点で。

いずれにせよ、クライスヴァイクが抜けた後も圧倒的なチーム力を誇っているのがこのチームだ。ジロ覇者デュムランに加え、昨年のツール、ブエルタ、そして先日のランと安定したアシスト力を見せイル・ロンバルディアでも2位と健闘していたベネット、ベテランのヘーシンク、そして、ドーフィネで圧倒的すぎるアシストをしてみせた急成長中のクス。

すでにラン、ドーフィネとイネオスに対して2戦2勝中のユンボ、そしてログリッチ。あとは問題は、この調子の良さが本当に3週目まで続くのか、ということであり・・・。

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21~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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ブッフマンの表彰台とサガンの8枚目のマイヨ・ヴェールの行方

まず驚いたのは、当初予定されていたよりもずっとブッフマンのための体制になっていること。サガンのアシストがオスとペストルベルガーだけである。

一方のブッフマンのアシストは昨年のツアー・オブ・ターキー総合優勝者で昨年ブエルタにおいてマイカを強力にアシストしたグロスチャートナー、今年のシビウ・サイクリングツアー総合優勝者で昨年のドーフィネとツールで競合相手にステージ優勝一歩手前まで行っていたミュールベルガー、そして今年のパリ〜ニース総合優勝者マキシミリアン・シャフマン、さらには先日のドーフィネでもステージ優勝を果たしているケムナと、結構豪華だ。

当のブッフマンもかなり調子が良い。オフシーズンにおいてもエベレスティングで好成績を残すなど好調が期待されていた中で、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも連日上位フィニッシュを果たして第3ステージ終了時点で総合3位。その直後、落車によってリタイアしてしまうが、ツール総合表彰台を十分に狙える走りを見せていたのは間違いなかった。

不幸中の幸いにも骨折はなくこうしてツールのスタートリストに名前を並べることができたブッフマンではあるが、その怪我の影響がどう出るか。

そしてサガンは果たして、8枚目のマイヨ・ヴェールを手に入れることができるのか。

様々な場面で世代交代が進む中、もしかしたらこの部分においても、決してサガンが最有力、とは言えなくなりつつあるのかもしれない。

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31~.AG2Rラモンディアル(ALM)

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チームを去る者と、新たなチームの顔になる者

今年いっぱいでチームを去ることになるロマン・バルデとピエール・ラトゥールのダブルエース・・・だが、彼らの総合成績を狙う布陣、というイメージはあまりない。むしろ、コヌフロワだったりピータースだったりヴァントゥリーニだったりと、逃げやスプリントでのステージ勝利を狙うようなイメージだ。なんだか昔のAG2Rらしくもあり、また来年以降のこのチームの色をすでに反映しているかのように。

その意味で、来年以降このチームを引っ張ることになるだろうコヌフロワやナーセンの活躍にこそ期待したい。もちろん、昨年山岳賞のバルデや昨年ブエルタで果敢な逃げを見せていたラトゥールの、逃げにフォーカスしたときの強さというのも、注目したいところ。

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41~.ドゥクーニンク・クイックステップ

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新・最強候補サム・ベネットと、昨年の感動を再び?

今大会最強スプリンターチームの一角。今季4勝しているサム・ベネットを支えるのが最強発射台のミケル・モルコフと、ゴール前まで彼らを猛烈なスピードで運び上げ他チームを一切寄せ付けないトレインを形成するアスグリーンやユンゲルス。そして道中を黙々と牽き続ける「トラクター」デクレルクである。

もしかしたら発射台の1人になるかもしれなかったスティバルが怪我で欠場となってしまったが、代わりに参画するのが昨年のブエルタで逃げ切り勝利し、つい先日のフランス国内選手権TTで優勝・ヨーロッパ選手権TTでも2位と絶好調のカヴァニャ。アスグリーン・ユンゲルスと共にゴール前のトレイン力を補強してくれる。

そして、昨年全フランスを沸かせた英雄アラフィリップは、今年は昨年のように総合を狙うことはないと明言済み。実際、前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、山岳終盤で遅れる姿が目立った。

一方、ミラノ〜サンレモやフランス国内選手権の走りを見る分には、決して調子は悪くない。たしかに最後の一手で足りない、昨年のような絶好調時よりも少し劣っているように見えるのは確かだが、それでも第2ステージなどステージ優勝をねらえそうなステージは複数ある。

ステージ優勝、あるいは山岳賞を目指して奔放に走る姿を期待したい。そんな彼を支える盟友が、「山のトラクター」ことデヴェナインスである。「二兎」を追うに十分なチーム体制と言えるだろう。

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51~.グルパマFDJ(GFC)

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今年こそ頂点を

今年絶好調中のアルノー・デマールが2年連続でツール出場を諦めているのは、それだけチームが一丸となってこの男に期待しているから。

ピノ。昨年はその期待に応えるだけの走りをしてみせた。しかし最後は涙と共にバイクを降りた男。

今年も、直前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで強さ、好調さを見せつけた。最終ステージはマイヨ・ジョーヌの大きなチャンスを失ってしまう結果にはなるが、ギリギリまでこれを追いかけ続ける執念深さは見せてくれた。今年も、強さをみせてくれそうな気がする。彼向きなコースも多そうだ。

そのために鍵となるのがアシストの存在だ。昨年はゴデュが、それこそ今年のドーフィネのセップ・クスのような強力なアシストを見せてくれていた。

今年のドーフィネではゴデュはいなかったが、ライヒェンバッハが粘りを見せてくれていた。それでも終盤にピノが1人になる場面が多かったので、やはりゴデュがどこまで走れるかが鍵になりそうだ。

ほかにもマデュアスの走りに期待したい。彼もまた、ゴデュに次ぐチームのこれからのエース候補になりうる存在だ。モラールも今年のパリ〜ニース総合7位。本来であれば終盤までピノをアシストできる存在であるはずだ。

エースの力量は問題なし。あとは、チーム力においてイネオス、ユンボにどこまで匹敵するかがこのチームのポイントとなるだろう。

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61~.バーレーン・マクラーレン(TBM)

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安定して強い選手たちが集結

今年、ブエルタ・ア・アンダルシア総合3位、ブエルタ・ア・ブルゴス総合2位と調子が良く、常に集団の上位に残っていられる安定性の高さに定評のある男、ランダ。総合優勝、あるいは表彰台、とまで言うのは難しそうだが、総合TOP5にはしっかり食い込んできそうな状態だ。

もう1人注目したいのはビルバオ。過去にジロ・デ・イタリア総合6位の経験もある彼は、十分にグランツールでも戦える。今年のブエルタ・ア・アンダルシア総合6位。そして直近ではスペインのTT王者にも輝いた。グラン・コロンビエなど高難易度の山岳ステージでも逃げ切り勝利を狙え、山岳賞候補にもなりうる人物だ。

プールスは期待されるほどの走りはまだ見せられてはいないが、彼はもともと安定性の点で難がありグランツール総合争いは難しそう。代わりにそのアシスト力や爆発力は申し分ないため、ランダのアシストや、ビルバオと同じく高難易度山岳ステージでの勝利を期待したい。

逃げに強いのはモホリッチも同様。そして、雨やらなんやらで荒れたステージや登りスプリントでは、コルブレッリの勝利も期待できるだろう。

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71~.EFプロサイクリング(EF1)

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若手コロンビア人たちのステージ勝利はあるか

2017年ツール・ド・フランス総合2位のウランはもちろん、今年のパリ〜ニース総合3位のイギータ、そして先日のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝のマルティネスに大注目。いずれも、総合上位、というよりはステージ優勝に期待したい。

またイギリス人クライマーのカーシーもまた、ツール・ド・フランス初出場での勝利を期待できる男。昨年のツール・ド・スイスでのスタート直後からの100㎞独走勝利は記憶に新しい。

とにかく、間違いなく強い選手たちが揃った実に魅力的なロースターである。

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81~.チーム・アルケア・サムシック(ARK)

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キンタナで目指す総合TOP5

ナイロ・キンタナにそれを支える盟友アナコナと弟ダイェル、ローザ、さらにはしっかりとアシストしてくれる元フランス王者バルギルと揃いに揃ったチーム・キンタナ。

ナイロ自身のコンディションも決して悪くなく、表彰台・・・というのは厳しいかもしれないが、総合TOP5はいけてもおかしくない。UCIプロチームとしては、それでも十分に投資に値する成果と言えるのではないだろうか。

あとは山岳逃げで稼ぐくらいか。ローザ、ブエあたりに期待。

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91~.モビスター・チーム(MOV)

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ひっそりとトリプルエース復活

ソレルがツールを回避してジロに行き、バルベルデとマスだけでツール、ブエルタを戦うという計画が噂されていたが、蓋を開けてみればシーズン当初の予定通りのトリプルエースに。しかし3人とも直近のレースの調子は決して良くなく、下手したら3人とも総合TOP10を失うなんて事態も・・・? 少なくとも一番成績良さそうなのはバルベルデ。

しかしソレルもマスも、決して弱くない。そりゃそうだ。かたやパリ〜ニース総合優勝者でかたやブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位である。弱いわけがない。ただ、なかなか歯車が噛み合わないだけなのだ。

だからこそ今年のツールは、総合争いではなく、ステージ優勝にフォーカスして大暴れする彼らが見たい。マス、ソレルのステージ優勝は十分にありうるはずだ。

そして山岳賞なんかも有望株と言えるだろう。ちゃりよるむさんが予想したバルベルデ山岳賞というのも、あながちロマンではない、はず。

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101~.トレック・セガフレード(TFS)

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ポートは見事な復活勝利を遂げてくれるか

ルート・ドクシタニー総合5位、ツール・ド・ラン総合6位、イル・ロンバルディア4位のモレマがまずは着実に総合TOP10入りを狙いたいところ。

そして、ここ数年ツールでは全然良いところを見せていなかったポートが、今年はドクシタニー総合6位、モン・ヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジ2位、ツール・ド・ランでもステージ5位など少し復調の様子を見せてはいる。少なくとも終盤で集団の先頭付近にいて、果敢にアタックする姿も見せている。

ポートは総合は狙えないかもしれないが、たっぷり遅れてからの逃げでかつての強さを存分に発揮してからのステージ優勝は十分にあり得るし、見てみたい。

そもそもトレックは今年、少なくともコロナによる中断期間前は絶好調だった。その一角たる世界王者ピーダスンは先日のツール・ド・ポローニュにてパスカル・アッカーマンをスプリントで破る大金星を見せた。

かつてジロ・デ・イタリアでのクリス・フルーム大逆転勝利を演出したエリッソンドに昨年のツアー・オブ・ユタでも強さをみせている期待の若手エイなど、注目すべき選手は多数。YouTube実況の方ではストゥイヴェンが見事な勝利を飾ってくれていたので、現実でも頑張ってくれ!

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111~.CCCチーム(CCC)

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まずは1勝。存続危機チームの奇跡は起きるか?

いよいよチーム存続が危うくなりつつあるこのチームだが、今回集まったメンバーは結構豪華。山岳逃げスペシャリストのデマルキに、ツール優勝経験のあるゲシュケ、アスタナの元有能アシストだったヒルトに超級山頂フィニッシュを勝つ素質をもつザカリン。

スプリントではコッホを発射台にしてトレンティンで勝負に出る。トレンティンは昨年のツールでも山岳逃げの経験もあり、ファンアーヴェルマートも登りスプリントだけでなく山のステージでも戦える実績を持っている。

とにかく、何かしら結果を持ち帰る必要がある。まずは1勝。そうでなくとも、積極的な逃げを続けること。

これまで、存続危機に陥ったチームが奇跡を起こすことは多数あった。今回のCCCももしかしたら?

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121~.コフィディス・ソルシオンクレディ(COF)

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ヴィヴィアーニは不調を抜けられるか?そしてマルタンの総合TOP10入りを目指せ

エースを担うべきは昨年までの最強スプリンターの一角、ヴィヴィアーニ。トラックでは相棒も務めるコンソンニと、コフィディス生え抜きのエース、ラポルトの2人が発射台を務める予定で、体制は万全。のはずなのだが、本人の調子が今シーズンここまでイマイチ。チームにフィットできていないのか、いまだに勝利なしである。

それは山岳エースのヘスス・エラダも同様。昨年はモンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジで優勝し、ブエルタ・ア・エスパーニャでもステージ勝利を挙げるなど絶好調だった彼も、今年はここまでのところイマイチ。ツールでも自身の結果にこだわりすぎるときついかもしれない。

一方で、新加入のフランス人エース、マルタンの調子はすこぶる良い。モンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジでも3位、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではなんと総合3位。今年はツール本戦でもついに総合TOP10入りを狙えるかもしれない・・・。

本来のこのチームの得意分野である逃げでの活躍にも注目。

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131~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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ポガチャルの総合表彰台は実現するのか

昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで、ネオプロでありながらいきなりのステージ3勝も総合3位を成し遂げてしまった驚異の新人ポガチャル。プロ2年目で早くも初挑戦となる今回のツール・ド・フランスでも、もはやステージ優勝は「当たり前」、下手したら表彰台にも上がってしまうのではないかと言われている。

直近の成績としてはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合4位。ただし、ログリッチやベルナルがリタイアし、レースをコントロールできるチームが失われた後の混乱の中で獲得した順位でもあり、これだけではなかなか判断できない。また、本人の実力だけでなく、アル、デラクルス、フォルモロといったアシストたちの力が重要になるが、どこまで残れるかはやや不安だ。フォルモロはストラーデビアンケで2位、ドーフィネでもステージ優勝と活躍したが、終盤でポガチャルの近くにいてあげられたという印象はあまりない。

ポガチャルが本当に強さを見せられるかどうか。それはチームメートにかかかってるといってよい。

なお、本来はツール回避ジロ出場予定だったクリストフが、新日程下でガビリアとチェンジ。8年連続ツール出場となる。

ただ、専用の発射台はほぼないと言ってもよく、やや単騎での戦いを強いられるだろう。

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141~.アスタナ・プロチーム(AST)

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ロペスの総合と、期待しかない若手テハダの走りに注目

ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャそれぞれで総合表彰台を経験している「スーパーマン」ロペスがついにツール・ド・フランスに初挑戦!

ただし、コンディションは万全とは言えない。モンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジでも早々に遅れ12位、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネも、トップライダーが去り、残った面子の中での総合5位は、彼が本来期待されていた成績とは程遠い。今更ツールの総合TOP10で喜んではいられないだけに、ツール中の覚醒が待たれる。

一方、注目の若手がネオプロのテハダ。先日のイル・ロンバルディアでも優勝したフルサン、3位のウラソフの次に最後まで残っていたのが彼だった。

グランツールどころかワールドツアーのステージレースですら初となる彼だが、今大会のロペスにとっての重要なアシストになることは間違いない。

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151~.ロット・スーダル(LTS)

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昨年最強スプリンターは今年も最強となれるか

昨年のツール・ド・フランスでシャンゼリゼ含むステージ3勝を記録した「昨年ツール最強の男」。今年もここまで4勝と好成績を残しており、サム・ベネットと並ぶ今大会の2強の一角を担うこととなるだろう。

そしてチーム体制も全力で彼を支えにきている。道中の集団コントロールにデヘント、残り3㎞からのポジション確保に盟友クルーゲ、残り1㎞からのトラブル時でも救い上げてくれるベテランのデゲンコルプ、そして今や最強発射台の一角たるデブイスト。ドゥクーニンクトレインに遜色劣らない完璧な布陣である。

もちろんジルベールがそこに加わる可能性すらあり恐ろしい。総合をハナから捨てて、今年もユアンでツールを獲りに来る。

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161~.ミッチェルトン・スコット(MTS)

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アダム・イェーツ、チーム最後のツール・ド・フランスでの勝利を目指せ

来季イネオスへの移籍という驚きのニュースをもたらしたアダム・イェーツは、すでに今大会総合を狙わないことを明言。そのうえで、あと一歩まで近づきながらも未だ手に入れられていないツール・ド・フランスでのステージ勝利を、なんとかしてその手に掴みたいところ。今年はUAEツアーで圧倒的な強さを見せて総合優勝しているだけに、可能性は十分あると信じたい。直近のドーフィネでの成績はやや不安だけど・・・。

チャベス、ニエベと総合も狙える実力をもった選手たちによる山岳逃げ、インピーやメスゲッツによる登り基調のスプリントや逃げ集団の中でのスプリント勝利にも期待できる、手の多いチーム。

かつて、わずか数秒差で勝利を逃しているバウアーの執念のリベンジにも期待したいところ。

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171~.イスラエル・スタートアップネーション(ISN)

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マーティン、ポリッツ、グライペル・・・移籍選手たちの活躍に注目

来年の豪華な新加入選手たちに注目が集まるイスラエルチームだが、今年の布陣も決して悪くない。エースのマーティンは直近のドーフィネで怪我をしており総合はもしかしたら難しいかもしれないが超級山頂フィニッシュ逃げ切り勝利も狙える男だし、昨年パリ〜ルーベ2位のポリッツは山岳を含んだステージで逃げに乗り最後の小集団スプリントを制することのできる脚質を持つ。

ヘルマンスやネイランズ、そしてイスラエル人として初めてツールに出場することになるニヴといった選手たちは積極的な逃げを見せてくれることだろう。

あとはグライペルがどこまで走れるか。全盛期の走りはもちろん難しいだろうが、誰もが愛するこの男が、このツールで奇跡を見せてくれる姿を皆、待っている。

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181~.チーム・トタル・ディレクトエネルジー(TDE)

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ワールドツアーチームを出し抜いての勝利を目指せ

昨年のプロコンチネンタルチームランキング首位。すなわち(今年の言い方でいえば)最強のUCIプロチームである。

もちろん、そんな彼らが簡単に勝てるほどツール・ド・フランスは甘くない。未勝利のまま終わる可能性の方が正直、高いだろう。それでも今年ルート・ドクシタニー山岳賞のカルメジャーヌが果敢な逃げを見せてくれること、そして今年のサウジ・ツアーとパリ〜ニースで勝利をもぎ取っているボニファツィオが一矢報いること(彼は昨年ツールのシャンゼリゼ3位なのだから!)に期待したい。

世界最高の舞台で、華々しきジャイアントキリングを見せて欲しい。

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191~.NTTプロサイクリング(NTT)

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今年ツール最強のスプリンターはこの男かもしれない

今年のツール・ド・フランスのスプリンターはサム・ベネットとカレブ・ユアンの2強である・・・とずっと思っていた。が、今となってはそこに、第3軸が確実に食い込んできている。その男の名はニッツォーロ。

もちろん、昨年のシーズン後半あたりから妙に調子が良かった。かつてはピュアっピュアかスプリンターというイメージだったが激坂含む登りにも対応できるようになっており、登りを含んだレイアウトの後の混沌としたスプリントでも勝利をもぎ取っている。

だが、最近はそんな「混沌に強い」という注釈付きの強さから、純粋に世界トップクラスの強さであることを証明しつつある。すなわち、イタリア選手権での優勝と、ヨーロッパ選手権での、同じく絶好調たるアルノー・デマールを打ち倒しての勝利によって。

元々ボアッソンハーゲンとワルシャイド、ギボンス含め8人中スプリンターを4名連れてくるというやや独特なロースターを発表していたNTTだったが、この連日のニッツォーロ勝利によって、エースは完全に彼に定められたように思う。あとはギボンスやボアッソンハーゲンは逃げて勝つ選択肢も残っているだろう。

ポッツォヴィーヴォ、クロイツィゲル、ヴァルグレンとタレントは揃っているため、山岳ステージでの逃げ切り勝利にも期待したいところ。

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201~.チーム・サンウェブ(SUN)

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WT最強のチーム力が奇跡を起こせ

マイケル・マシューズの不参加はなかなかに衝撃的だったが、代わりにエースを担うボルも、昨年のツアー・オブ・カリフォルニアで(かなり強い勝ち方で)勝っており、今年もすでにヴォルタ・アン・アルガルヴェで勝っている逸材であり、今回のツール・ド・フランスで1勝くらいしてもおかしくはない。もしそれが実現すればおそらく、SEGレーシング出身者で初のツール勝者が誕生することに。

同じく若手のヒルシにも注目。2年前のU23世界王者で昨年はクラシカ・サンセバスティアンで3位。厳しい山岳ステージでも逃げ切って独走勝利しておかしくない。シクロクロス出身のニューエンハイスも昨年のツアー・オブ・カリフォルニアのイバン・ガルシアが勝ったステージで4位。才能を感じさせる男だ。

何よりこのチームは、パリ〜ニース第6ステージで見せたチーム力の高さが最高の武器。アルント、クラーウアナスンが山岳で見事な連携プレーを見せ、最後にティシュ・ベノートのステージ勝利と総合2位をもたらした。今年のベストレース候補の1日だった。

そんな、「最強」ではないけれど強く、そして繋がりの深いメンバーが、このツールでも驚くべき勝利を見せてくれるのかもしれない。

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211~.B&Bホテルス・ヴィタルコンセプト p/b KTM(BVC)

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4年ぶりにツールに舞い戻ってきたコカールが栄光を掴めるか

2015年のシャンゼリゼで2位に入り込んだ男コカール、2016年以来4年ぶりのツール・ド・フランス出場が実現した。

しかも直近のルート・ドクシタニー1勝に、フランス国内選手権でも、終盤のアラフィリップにアルノー・デマールと共に食らいつき2位。調子はかなり良さそうだ。

そして総合エースを担うのは元ラルプデュエズ覇者ローラン。1クラス以上の勝利はここ3年ない彼だが、「復活」はなるか。一応、2クラスではあるものの、8月頭のツール・ド・サヴォワ・モンブランで区間1勝と総合優勝を果たしている。本当に勝てない選手は、勝って当たり前のレースでも勝てないため、この結果は決して悪い兆候ではない、はず。

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