何でもないと思われていた平坦ステージに吹き荒ぶ強烈な横風と分断。
そしてピレネー2連戦にていよいよ動き出した総合争い。
意外なら脱落者が続出し、いよいよ今大会の総合優勝候補たちの姿が見えてきた。
第2週で今度はその最有力候補が浮き彫りになることだろう。
そこに向け、今週最も良い動きをしていた選手は、アシストは誰なのかを、詳細にチェックしていこう。
目次
- 第6ステージ ル・テイユ〜モン・エグアル 191㎞(丘陵)
- 第7ステージ ミヨー〜ラヴァール 168㎞(平坦)
- 第8ステージ カゼール=シュル=ガロンヌ〜ルダンヴィエル 141㎞(山岳)
- 第9ステージ ポー〜ラランス 153㎞(山岳)
- 第1週を終えての総合成績
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第6ステージ ル・テイユ〜モン・エグアル 191㎞(丘陵)
大会初の逃げ切り勝利
丘陵ステージにカテゴライズされているものの、実質的に大会2度目の山頂フィニッシュ。
とはいえ、最後はカテゴリ山岳はついておらず、直前のボーナスタイム付きの1級山岳が鍵になる変則的なステージ。
逃げ切りが濃厚と思われたこのステージで、スタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられ、最終的に以下の8名の逃げが確定した。
- グレッグ・ファンアーヴェルマート(CCCチーム)
- アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プロチーム)
- ヘスス・エラダ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- ニコラス・ロッシュ(チーム・サンウェブ)
- ニールソン・ポーレス(EFプロサイクリング)
- ダニエル・オス(ボーラ・ハンスグローエ)
- エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(NTTプロサイクリング)
- レミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
残り25㎞を切って、いよいよ本日の勝負所、1級山岳コル・ドゥ・ラ・ルセット(登坂距離11.7km、平均勾配7.3%)に突入。
と同時にカヴァニャがペースアップし、オスとボアッソンハーゲンが脱落。
2分40秒遅れのメイン集団はイネオス・グレナディアーズが懸命に牽いていくが、先頭とのタイム差はなかなか縮まらない。
逃げ切りの可能性が高まった6名の先頭集団からは、残り22.5㎞(山頂まで9.2km)でニールソン・ポーレスがアタック。
2016年のツアー・オブ・カリフォルニアで、当時コンチネンタルチームのアクセオン・ハーゲンス・バーマンに所属しながら総合9位・新人賞1位となっていたアメリカの期待の若手が、この日バースデー・ウィンを獲るべく一気にペースを上げていった。
ここに、ニコラス・ロッシュとアレクセイ・ルツェンコが食らいつき、少し遅れてグレッグ・ファンアーヴェルマートとヘスス・エラダが追撃。
先ほどまで積極的な動きを見せていたレミ・カヴァニャが、3人目の脱落者となってしまう。
ゴールまで残り18㎞、山頂まで残り4.8kmの地点でポーレスがペースアップし、ルツェンコだけがついていく。
さらに山頂まで残り4㎞のバナーを通過する勾配11~13%の激坂区間で、ルツェンコが先頭に出てさらなる加速。ここでポーレスも脱落してしまった。
以後、メイン集団との3分というタイム差が少しも削られることがないまま、「アジア最強の男」が、そのままコル・ドゥ・ラ・ルセットの頂上を一人で通過し、最後のモン・エグアルに向かう緩斜面の13.5㎞を走りぬく。
これまでツール・ド・スイス、パリ~ニース、ティレーノ~アドリアティコ、そしてブエルタ・ア・エスパーニャなどで勝っている「逃げ屋」ルツェンコが、5度目の挑戦にしてついにツール・ド・フランスの勝利を手に入れた。
総合勢は終始イネオスがコントロールしていたものの、攻撃というよりは無理のないペースメイクといった感じで、総合争いはノーコンテスト。
本格的な総合争いは週末のピレネーまでお預けとなった。
第7ステージ ミヨー〜ラヴァール 168㎞(平坦)
風の影響で混乱した中でのスプリント
「世界一高い橋」ミヨー高架橋の麓からスタート。
のどかな田園地帯にそびえたつ美しき人工物という現実離れした風景はぜひJsportsオンデマンド限定の「スタートからの映像(英語コメンタリー)」を見て確認してほしい。
🚩ミヨー➡️ラヴァール🏁
— Tour de France JPN/ツールドフランス公式🇯🇵 (@letour_jpn) September 4, 2020
高さ343mの世界一高い『ミヨー高架橋』や、ゴール地点のラヴァ―ルの街並みをお届け🌁🚁🎥
なんと東京タワーがすっぽり収まる高さです🗼😲
📍第7ステージ - 168km
ツールドフランス2020🇫🇷@LeTour @franceiine #TDF2020 #jspocycle #ツール・ド・フランス pic.twitter.com/gdCfapRDno
ということでこのミヨー高架橋くらいしか道中の見所はなく、最後の集団スプリントまでは無風なステージ・・・と思われていた中で、この地域特有の「オータンの風」による強烈な追い風を背に受けて、ボーラ・ハンスグローエが集団分裂作戦を敢行した。
狙いはもちろん、サム・ベネットに奪われていたマイヨ・ヴェールの奪還。
この狙いは見事成功し、サム・ベネットを始めカレブ・ユアン、ジャコモ・ニッツォーロ、ケース・ボルといった連日ステージ上位に絡んでいるトップスプリンターたちが軒並み決定的なタイム差をつけられて脱落してしまった。
そして、残り110㎞地点の中間スプリントポイントでペテル・サガンが2位通過。
マイヨ・ヴェールの奪還を果たした。
しばらくはボーラ・ハンスグローエが先頭でハイ・ペースを刻み、逃げがなかなか生まれない展開を作っていたが、残り95㎞地点でロット・スーダルのトーマス・デヘントが単独アタック。独走を開始した。
稀代の逃げ屋デヘントではあるものの、このカオスなステージで95㎞を逃げ切るというよりはボーラによるハイペースを乱すという狙いがあったのかもしれない。
しかしこれもボーラのコントロールによって完全に抑え込まれてしまい、残り35㎞地点で吸収。
と同時に、ドゥクーニンク・クイックステップやイネオス・グレナディアーズらが中心となって横風分断作戦が発動。
総合3位のタデイ・ポガチャルや13秒遅れの総合11位バウケ・モレマおよび総合13位のミケル・ランダなどが切り離されてしまう。
この日だけで彼ら総合上位候補の選手たちは1分21秒を失ってしまうことになる。
本来予想されていた面々がほとんどいなくなってしまった40名程度の先頭集団で、最後の集団スプリントが繰り広げられる。
残り500mで集団の先頭を取ったのは、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンを引き連れたミヒャエル・ゴグル。
残り300mを切ってボアッソンハーゲンが発射されると同時に、後方からはジュリアン・アラフィリップが猛烈な勢いでスプリントを開始。
しかしアラフィリップはジャスパー・ストゥイヴェンと接触してバランスを崩し失速。
早すぎた駆け出しで失速しかけていたボアッソンハーゲンを右から抜いていったのは、2日前にも勝利しているワウト・ファンアールト。
第4ステージでは1級山岳の登りで集団牽引をしていたシクロクロッサーが、その多才さを証明するかの如く、今大会最初の「2勝目」を記録する男となった。
もはやトップスプリンターの一員であることに疑いようのなくなったこのファンアールト。
このまま、チームの総合を支えながら大会最強のスプリンターとなってしまうのだろうか。
第8ステージ カゼール=シュル=ガロンヌ〜ルダンヴィエル 141㎞(山岳)
すでにして厳しい山岳が連続し続けている第1週。だがやはり総合争いはここで本格的に開始される。
ピレネー山脈の山岳2ステージ。第1日目は、大会初の超級山岳バレ峠・ピレネーの名峰ペイルスルド峠が登場するステージだ。
逃げ切りの可能性も十分にあり、山岳ポイントも稼げる日ということで、激しいアタック合戦が予想された。
しかし、抜け出した選手たちを引き戻してはアタックという展開ではなく、最初に抜け出した選手たちに次々と追随する選手たちが現れて大きな逃げ集団ができるというパターンとなった。
結果、以下18名の逃げ集団が形成され、一気に10分以上のタイム差も形成。
この先頭集団から逃げ切りが生まれる公算が非常に高くなった。
- イルヌル・ザカリン(CCCチーム)
- ニールソン・ポーレス(EFプロサイクリング)
- ベン・ヘルマンス(イスラエル・スタートアップネイション)
- トムス・スクインシュ(トレック・セガフレード)
- カルロス・ベローナ(モビスター・チーム)
- セーアン・クラーウアナスン(チーム・サンウェブ)
- ブノワ・コヌフロワ(AG2Rラモンディアール)
- ナンズ・ピーターズ(AG2Rラモンディアール)
- ミケル・モルコフ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- カンタン・パシェ(B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
- ケヴィン・レザ(B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
- ファビアン・グルリエ(トタル・ディレクトエネルジー)
- ジェローム・クザン(トタル・ディレクトエネルジー)
残り48㎞。
超級山岳バレ峠(登坂距離11.7km、平均勾配7.7%)に突入。
逃げ集団からは第3ステージで4度目の敢闘賞を手に入れたクザンが独走を続けていたが、これを追走する残りの逃げグループの中からザカリンがアタック。
これにピーターズ、パシェが食らいつき、のちにスクインシュ、ヘルマンス、ポーレス、クラーウアナスン、ベローナも合流。
山岳賞ジャージを着るコヌフロワなど数名の選手たちが脱落していく。
さらにゴールまで残り45.5㎞。山頂まで9.2km。
クザンに追い付いて形成された新たな先頭集団でピータースがアタック。
これにザカリンとパシェが追いつき、やがてパシェも脱落して先頭はピータースとザカリンの2人だけになってしまった。
山頂通過時点で、ザカリンとピータースの先頭集団はメイン集団から10分先行。
45秒遅れで山頂通過を果たした先頭集団にはスクインシュ、ベローナ、ポーレス、クラーウアナスン。
勝負は先頭2人に委ねられる形となったように思えた。
しかし、バレ峠からの下りで、ピーターズがザカリンを突き放す。
2016年ジロの下りで落車している経験をもつザカリンの下りが遅いのか、それともピーターズの下りが圧倒的なのか。
下りで30秒以上突き放されたのちにペイルスルド峠で11秒近くまで引き戻すが、再び突き放されたザカリンは、そのまま失速してステージも4位で終えることになってしまった。
そのまま独走に持ちこんだピーターズが、昨年のジロ・デ・イタリア勝利に続くプロ2勝目を、世界最高の舞台ツール・ド・フランスで飾った。
一方、メイン集団でもバレ峠から動きが。
まずは今年総合優勝候補の一角とされてきたティボー・ピノが、突如として大失速。
第1ステージのゴール前3㎞での落車による腰の痛みが影響しているのか、チームメートたちに囲まれて励まされながら、マイヨ・ジョーヌのアダム・イェーツからは19分遅れでのゴールとなった。
さらに、ユンボ・ヴィズマが集団を牽引。その先頭を牽くのは、前日にスプリントで2勝目を飾ったばかりのワウト・ファンアールト。
集団が一気に絞り込まれる中で超級山岳を通過し、残り20㎞からいよいよ最後の登り、1級山岳ペイルスルド峠(登坂距離9.7km、平均勾配7.8%)へ。
集団の先頭はユンボ・ヴィズマのセカンドエースだったはずのトム・デュムラン。
山頂まで残り5㎞でアタックしたアラフィリップも捕まえて集団をペースアップ。アダム・イェーツらも遅れかける中、山頂まで残り4㎞でタデイ・ポガチャルがアタックを繰り出した!
ポガチャルに反応したログリッチとナイロ・キンタナは一度集団に飲み込まれるが、そこから再びポガチャルがアタック。
そのまま独走を開始して、この日、ログリッチたちから40秒のタイムを奪うことに成功した。
最後にバルデも抜け出して2秒を獲得。
ここまでのステージでタイムを稼いでいるアダム・イェーツとプリモシュ・ログリッチ、ギヨーム・マルタンの総合TOP3に続き、バルデが総合4位。
その下にベルナル、キンタナ、ロペス、ウランが続く形となった。
この日の40秒で昨日の1分12秒を一部取り返したポガチャルはイェーツから48秒遅れの総合9位。
一方でマスもブッフマンもこの日タイムを落とし、総合5位につけていたトム・デュムランも、いよいよ完全にアシストの立場に立つこととなった。
そしていよいよ、第1週最終日。
ピレネー第2戦。凶悪なるマリーブランク決戦である。
第9ステージ ポー〜ラランス 153㎞(山岳)
前日がゴール前11.5㎞地点に山頂が置かれていたのに対し、この日はゴール前18km地点とやや遠い。
その意味で、単純に断面図だけ見ていると、前日以上に総合争いが巻き起こらないステージ・・・と見せかけて、その実態は、このゴール前18㎞地点の「マリーブランク峠」があまりにも凶悪すぎるレイアウトのため、今大会ここまでで最も激しい総合争いが巻き起こることとなった。
そもそも、逃げに乗るためのアタック合戦が熾烈を極めた。次から次へとアタックしては、それを吸収するメイン集団。途中、トーマス・デヘントやジュリアン・アラフィリップも、この攻撃に加わった。
結果、最初の1時間で47㎞を消化して、1級山岳コル・ドゥ・ラ・ウルセル(登坂距離11.1㎞、平均勾配8.8%)への登りに突入することとなった。
一度生まれた逃げの中にも入り込んでいたマルク・ヒルシが、この登りで再度アタックを仕掛ける。ゴールまで残り90㎞。逃げ切るにはあまりにも長い道のりを、2018年U23世界王者の才能豊かなスイス人が独走を開始した。
ヒルシを追走する集団は以下の8名。
- レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)
- ワレン・バルギル(アルケア・サムシック)
- ダヴィデ・フォルモロ(UAEチーム・エミレーツ)
- セバスティアン・ライヒェンバッハ(グルパマFDJ)
- ダヴィ・ゴデュ(グルパマFDJ)
- ダニエル・マルティネス(EFプロサイクリング)
- ジョナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアーズ)
- オマール・フライレ(アスタナ・プロチーム)
だがこの8名の追走集団も、残り40㎞を前にしてユンボ・ヴィズマが強力に牽引するメイン集団によって飲み込まれる。
独り逃げ続けるヒルシはこのメイン集団からなおも4分30秒のタイム差を維持しており、逃げ切りも十分考えられる段階に入り込んでいた。
そして始まる、1級山岳マリーブランク(登坂距離7.7km、平均勾配8.6%)。
まず仕事をしたのが「山岳アシスト」ワウト・ファンアールト。残り25㎞地点の登り口でロベルト・ヘーシンクと交代し、強力に集団を牽引し始める。
とくに登り口の緩斜面は彼の独壇場だった。ライバルたちはアタックを封じられ、集団からはオマール・フライレやルイスレオン・サンチェス、ミハウ・クフィアトコウスキなどが早速遅れ始める。
2㎞に渡って仕事をこなしたファンアールトはここで脱落し、代わって先頭に出てきたのがセップ・クス。勾配もいよいよ厳しくなってきて、ヒルシと集団とのタイム差も一気に2分44秒にまで縮まっていく。
ここで、昨年総合4位のエマヌエル・ブッフマンも脱落してしまう。ダン・マーティンもすでに総合タイムを落としていたが、ここでも遅れていく。
集団はすでに20名ちょっとの人数にまで絞り込まれていた。
そして、平均勾配11%が延々と続く「山頂まで残り4㎞」に突入してく。
いまだアシストを3枚(クス、ベネット、デュムラン)残しているユンボ・ヴィズマに対し、イネオスはカラパスただ1人。ほかに2人以上いるのはポートとモレマのトレックに、バルベルデとマスのモビスター、それにランダとカルーゾのバーレーン、それとヨン・イサギレ&ハロルド・テハダを残しているアスタナくらいである。
ロペスもモレマもキンタナもマルタンも独りぼっち。ウランはイギータがまだ残っているが、今にも集団から切り離されそうな位置にいる。
そしてポガチャルもまた、たった一人であった。
そのポガチャルが、山頂まで残り2㎞。最も勾配が厳しい区間でアタックを繰り出した。
2日前に横風で大きく失ったタイム差を、昨日終盤の果敢な攻撃で多少取り返したポガチャル。この日もまた、大きな動きに出た。
これをトム・デュムランが集団を牽引することで吸収したが、代償はジョージ・ベネットとクスを失う。
ポガチャルを追う追走集団は、デュムラン、ログリッチ、ランダ、キンタナ、カラパス、ベルナル、ウラン、バルデ、ポートの9人だけとなった。
そして山頂まで残り1.7㎞。デュムランが脱落し、ログリッチが自らポガチャルにブリッジを仕掛ける。追いついたベルナルがカウンターアタック。
サイモン・イェーツが遅れ、ミゲルアンヘル・ロペスも遅れる。ログリッチたちの動きに食らいつきかけていたリッチー・ポートも粘り続けた末に遅れていく。
メイン集団はポガチャル、ランダ、ログリッチ、ベルナルの4名に。
これが最終列車となった。ここから遅れた総合勢は皆、この日タイムを(まだそれほど大きくはないながらも)失うこととなる。
あとは、独走を続けるヒルシをどうするか、である。
マリーブランクの山頂にログリッチら4名が辿り着いたとき、そのタイム差はわずか15秒であった。
すぐさま捕まえられるーーそう思っていた中で、ヒルシは下りで粘りを見せる。一時はタイム差を再び30秒近くにまで広げたヒルシだったが、下りきってからの8㎞をなおも逃げ続けることは不可能だった。完全に背中を捉えられたことに気がついた彼は、残り2㎞で戦略的に足を止める。
第2ステージでアラフィリップにあとごくわずかにまで迫ったそのスプリント力を武器に、最後のチャンスを狙うつもりだった。
そして、4名の精鋭集団によるスプリント。圧倒的有利は実績のあるログリッチだった。彼が先頭に立って、牽制状態に入る。
そして残り300mで集団の最後尾で腰を上げたヒルシ。それを確認すると、ログリッチもスプリントを開始した。
そして、先行するポガチャルがヒルシの背中に入った。風を思い切り受けているログリッチと、それを防いでいるポガチャル。
それに気がついたログリッチがポガチャルからそのポジションを奪い取るが、その瞬間にポガチャルはスプリントを開始して、ログリッチもほとんど恩恵を受け取ることができないまま追撃を仕掛けた。
最後はポガチャルがわずかに先行。
第4ステージの登りフィニッシュでは完全に遅れをとったポガチャルが、ついに先輩ログリッチを真正面から打ち破る勝利を果たしてみせた。
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャですでに3勝している彼も、ツールでの勝利は格別だった。
両手を頭に乗せ、「信じられない」といったポーズ。レース後も「どうやって勝ったのか覚えていない」とのコメントを残した彼は、現在44秒遅れの総合7位。
まさかの総合優勝、というのも、まだまだ狙えるので位置にあり、そして勢いは十分だ。
第1週を終えての総合成績
近年類を見ない厳しい山岳ウィークとなった今年のツール・ド・フランス第1週だったが、それでもその状況に各チームが警戒したのか、そこまで激しい総合争いは巻き起こらなかった。
それでも第9ステージを経ていよいよ上位勢がバラバラに。少しずつ「見えて」きた。
まず圧倒的に優位なのはもちろんプリモシュ・ログリッチ。
第8ステージではやや、アグレッシブさに陰りが見えたような様子があったが、第9ステージでは問題なく強さを発揮。むしろ、焦りきらない冷静さを感じさせた。
一方でベルナルはここまで完全に「チャレンジャー」の立場。常に後手を踏む走りを見せてきているが、それでもしっかりと総合2位を射止めているあたり、油断ならない。
イネオスは後半にかけて強くなっていくのはここ近年の習い。とくに、標高が高くなっていく第2週後半からはベルナル、そしてポガチャルの南米組の本領発揮となりそうで、まだまだ怖い。ベルナル自身のコメントからも、悲観的なものは一切ない。
そして健闘しているのが、総合3位マルタンと総合4位のバルデ。第9ステージでもトップ2には遅れを取るものの大崩れはしておらず、このままの位置をシャンゼリゼまでキープする可能性も十分にある。
ここ数年、かつてはそれこそバルデが背負っていた全フランス人の期待というプレッシャーを、ピノが一身に肩代わりしてくれていたおかげで、ようやくバルデもマルタンも、かなり自由に走れているようだ。
ここから先も決して気負うことなく、思いのままの走りを見せて欲しい。
総合7位のポガチャルも、総合10位のミケル・ランダも、この遅れはいずれも第7ステージでの横風による遅れが原因であり、登りで遅れたわけではない。
その意味で調子は間違いなくよく、第2週を終えた時点で表彰台圏内にいる可能性が高いのはログリッチとベルナルとこの2人だろう。
だが、いずれにしてもまだまだ僅差。そして、何が起こるかわからなあ度合いは例年以上。
果たして第2週を終え、マイヨ・ジョーヌを着ているのは誰なのか。
激動の第2週へと続く。
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