おおよそ「定番」から大きく外れた山・山・山の第1週を乗り越え、プロトンは「落ち着きある」第2週へと突入していく。
週の前半は第1週の平坦ステージとはいったい何だったのかと思うくらいのオールフラットステージが続く。
しかし2回目の中央山塊突入を果たす第12ステージあたりから少しずつレイアウトに起伏が増えてきて、いよいよ第13ステージの「超・激坂」ピュイ=マリー、そして第15ステージに「グラン・コロンビエ3回登坂」ステージが待ち受ける。
第1週とは違った意味での厳しさもしっかり兼ね揃えているこの第2週で、マイヨ・ジョーヌ争いも佳境へと突入していく。
各ステージの最後には、自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager 2020」を用いて「予習」したレース動画へのリンクを貼ってある。
出場選手は実際のものとは異なるものの、展開の予習には十分使えるものになっているはずなので、ぜひ参照してほしい。
関連リンク
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第1週 - りんぐすらいど
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第3週 - りんぐすらいど
目次
- 第10ステージ ル・シャトー=ドレロン(オレロン島)〜サン=マルタン=ド=レ(レ島) 168.5㎞(平坦)
- 第11ステージ シャトライヨン=プラージュ〜ポアティエ 167.5㎞(平坦)
- 第12ステージ ショヴィニー〜サラン(コレーズ県) 218㎞(丘陵)
- 第13ステージ シャテル=ギヨン〜ピュイ・マリー(カンタル) 191.5㎞(山岳)
- 第14ステージ クレルモン・フェラン〜リヨン 194㎞(平坦)
- 第15ステージ リヨン〜グラン・コロンビエ 174.5㎞(山岳)
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第10ステージ ル・シャトー=ドレロン(オレロン島)〜サン=マルタン=ド=レ(レ島) 168.5㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:0pt
ようやく平坦らしい平坦ステージが来た。というより平坦すぎて、これはこれでジロ・デ・イタリアに近い感じがしてまたツール・ド・フランスらしくはない。
なんでこんなレイアウトになっているかというと、海沿いを走るから。
というか海沿いというか海の上を2回走るようなステージ。
フランス西部に浮かぶ「オレロン島」から、一度橋を渡って本土に至り、そこからまた橋を渡って「レ島」へと向かうコースとなっている。
いずれも、ツール・ド・フランスが初めて訪れる島である。
海峡を渡る橋は横風に注意。
集団スプリントが期待されるステージではあるものの、終盤での分断による波乱もまた、ツール・ド・フランスにはつきもの。
悪天候に見舞われた場合には特に注意だ。
なおレ島には、ルイ14世時代の有名な建築家ヴォーバンによる星形要塞が完璧な形で残っているという。
ぜひ空撮にてその雄姿を眺めてみたい。
↓第10ステージのYouTube実況はこちらから↓
第11ステージ シャトライヨン=プラージュ〜ポアティエ 167.5㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:1pt
スタート地点は海沿いだが、やがてすぐ内陸へ。
ただ、まだまだ中央山塊の厳しいアップダウンにまでは到達しない。前日に続き、今大会では珍しいピュアスプリントステージである。
おそらくは今大会6回目の集団スプリントとなりそう。とくに登りがあまり得意ではないスプリンターたちにとっては、昨日と今日とでしっかりと勝利およびポイントを稼いでおきたい。
たとえばヴィタルコンセプトのブライアン・コカールなど・・・4年ぶりのツール・ド・フランス。2度、優勝まであとわずかというところにまでたどり着いた彼が、今回のチャンスをしっかりとモノにできるか。
↓第11ステージのYouTube実況はこちらから↓
第12ステージ ショヴィニー〜サラン(コレーズ県) 218㎞(丘陵)
山岳ポイント最大値:9pt
今大会最長ステージ。そしてプロトンは、今大会2度目の中央山塊へ。
山岳ポイントも4つ用意されているが、カテゴリのない登りも無数に配置され、常に登っては下って。
スプリンターたちはとにかく足を残すことに専念せざるを得ず、最後はパンチャーたちによる争いとなるだろう。
翌日のステージに備え総合争い勢がペースを落とすことを選択すれば、大逃げが決まる可能性もあるステージだ。
アワーレコードを制したこともある「逃げ王」イェンス・フォイクトが20年前のツール・ド・フランスで逃げ切り勝利を果たしのもこのサランの街であり、時を越え、再び今世の逃げ王が栄光を掴み取ることができるか。
注意すべきはゴール前29.3km地点から登り始める2級山岳「スック・オ・メイ(登坂距離3.8km、平均勾配7.7%)」。途中10%を超える急勾配区間も存在するこの登りの頂上にはボーナスタイムポイントも設けられ、これを狙った総合勢が逃げ切りを狙いたい選手たちを飲み込む展開もありえるだろう。
フィニッシュ地点もそこまで厳しい勾配ではないものの段階的に登っていく登り勾配スプリント。
もしも逃げが捕まえられてある程度の大きさの集団でゴールした際には、ジュリアン・アラフィリップやペテル・サガンといったパンチャータイプの選手たちによる争いが巻き起こることだろう。
昨今のツール・ド・フランスではこの優勝候補にワウト・ファンアールトの名も並べられることだろう。今年もドーフィネでしっかりと1勝をもぎ取っている彼が、2年連続ドーフィネ~ツール勝利を得られるか。
↓第12ステージのYouTube実況はこちらから↓
第13ステージ シャテル=ギヨン〜ピュイ・マリー(カンタル) 191.5㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:36pt
第1週と比べると落ち着いたレイアウトの多い第2週だが、もちろん総合争いに影響を及ぼすステージはしっかりと登場する。
「カンタル県のピラミッド」とも呼ばれるピュイ・マリー擁するこのステージもその1つだ。序盤から1級・3級・2級と容赦なく登りが連続していく。
山岳賞狙いの選手も含む大規模な逃げ集団が形成される可能性は高いだろう。
そのうえで、総合争いの舞台となり始めるのはゴールまで残り15㎞から登り始める2級山岳「ネロンヌ峠(登坂距離3.8km、平均勾配9.1%)」。
9~10%の厳しい勾配がひたすら続くこの激坂の頂上にはボーナスタイムポイントも設置され、この日の「総合争い」はまず間違いなくこのネロンヌの登りから開始されることだろう。
そしてその頂上から短い平坦区間とごくわずかな下りを経ていよいよ1級「ピュイ=マリー(登坂距離5.4km、平均勾配8.1%)」へ。
もちろん、この登りの最初の3㎞は前座も前座。
本当に重要なのはフィニッシュまで残り2㎞から始まる「平均勾配11~12%」の超・激坂登りフィニッシュ。
なんだかんだ、今年のツール・ド・フランスはここから本格的に始まる、と言っていいかもしれない。
ここで上位に来れる選手だけが、今年の表彰台を狙える選手になりそうだ。
キング・メーカーの山、ピュイ=マリー。
その頂点にて王座を掴み取るのは果たして。
↓第13ステージのYouTube実況はこちらから↓
第14ステージ クレルモン・フェラン〜リヨン 194㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:10pt
この日こそザ・平坦詐欺極まれり、といったところ。
ステージ前半に登坂距離10.2km、平均勾配5.6%の2級山岳。その後も山岳ステージ並みのアップダウンが広がる。
それでもラストが平坦であれば十分に集団スプリントステージだと言えそうだが、この日はゴール前10㎞を切ってから4級山岳が2つ用意されているのだから始末が悪い。最後の山岳ポイントの山頂からフィニッシュまで5㎞もないのだ。
もちろん、いずれも決して厳しすぎる登りではない。かといって、ピュアスプリンターたちが残って大規模な集団スプリントを決めるというイメージもあまりない。
逃げ切りが決まるか、登れるスプリンターやパンチャーが中心となった中規模スプリントが繰り広げられるか。
ガチ平坦の集団スプリントでは勝ち目の薄いスプリンター――たとえばアレクサンドル・クリストフとかエドヴァルド・ボアッソンハーゲンとか――にとってはチャンスと言える日である。
↓第14ステージのYouTube実況はこちらから↓
第15ステージ リヨン〜グラン・コロンビエ 174.5㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:40pt
第1週に比べて少し大人しいように思えてきた第2週。
しかし、この最終日に満を持して凶悪なステージを用意してきた。
名峰グラン・コロンビエーー1999年にツール・ド・ランのコースの一部として組み入れられ、2012年からはツール・ド・フランスにも登場。同年山岳賞を獲ることになるトマ・ヴォクレールがその山頂の先頭通過を果たしていた。
以来、今年で4回目。そして、初めて「山頂フィニッシュ」として使用される。
前半は長い平坦が続く平和なレイアウトではあるものの、コース中盤から一気に3つの登り――1級山岳・1級山岳・そして超級「グラン・コロンビエ(登坂距離17.4km、平均勾配7.1%)」である。
しかも、この日は実質的にグラン・コロンビエを3回登る。
すなわち、グラン・コロンビエと呼ばれる巨大な山を西から中腹まで登る1つ目の1級山岳「セッレ・ドゥ・フロメンテール(11.1km、平均勾配8.1%)」。
さらにグラン・コロンビエ北側の「ビシュ峠(登坂距離16.9km、平均勾配8.9%)」を2つ目の1級山岳として越えていき、プロトンは山の東側へと抜け出る。
そしてグラン・コロンビエの東側に位置する渓谷の街アングルフォールを通過しながら南下して、いよいよもっとも有名で、ツール・ド・フランスに最初の登場した2012年にも使われた「キュロスからの登り」を経てグラン・コロンビエ山頂に至る。
登坂距離17.4㎞、平均勾配7.1%。
その途中にはいくつもの急勾配区間が含まれ、最大12%の区間も2つ登場する。
まさに、伝説の名に恥じない超強力な登り。
ここで、いよいよ今年の「最強候補」が決まる。
今年のツール・ド・ラン最終日の山頂フィニッシュとして使われたときは絶好調のプリモシュ・ログリッチが先頭通過を果たした。
ドーフィネでも強さを見せていたユンボ・ヴィズマとそのエース、ログリッチが、その前評判通りマイヨ・ジョーヌを着てこの山を越えることができるのか。
それとも前年覇者ベルナルがドーフィネの借りを返すのか。
それとも意外なる「3番目の男」がここで勝利を掻っ攫っていくのか。
もちろん、この日を終えてもなお、決着の行方ははっきりとしない。
まだまだ激戦の続く第3週に続く。
↓第15ステージのYouTube実況はこちらから↓
関連リンク
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第1週 - りんぐすらいど
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第3週 - りんぐすらいど
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