新型コロナウイルスによる開催延期を経て、いよいよ世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランスが開幕する。
今回はその第1週の全9ステージのコース全てを詳細にプレビューしていく。
それぞれのコースの特徴、そして勝負所を、過去の類似レースや展開をもとに解説を加えているため、ぜひ参考にしてみてほしい。
また、以前このツール・ド・フランス2020の舞台については、自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager 2020」を用いたシミュレーションを行った際にも一度確認をしている。その際の「ゲーム版の」コースプレビューについては下記を参照のこと。
また、各ステージの解説の最後には、実際にYouTube上で連載したこのゲームの実況プレイ動画へのリンクも貼っておいた。
出場選手などは実際のツール・ド・フランスとやや異なってはいる(イネオスがベルナル、フルーム、ゲラント・トーマスで出場しているなど!)が、レース展開の参考には十分なると思われるので、以下のコースプレビューと合わせぜひ参考にしてほしい。
関連リンク
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第2週 - りんぐすらいど
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第3週 - りんぐすらいど
『サイクリスト』でも記事を書かれているブロガー・ライターのあきさねゆう(@saneyuu)さんをゲストに迎え、PodCast「りんぐすらいどれでぃお」でも全21ステージのプレビューと各ステージの優勝予想について語っています。
目次
- 第1ステージ ニース・モイエ・ペイ〜ニース 156㎞(平坦)
- 第2ステージ ニース・オー・ペイ〜ニース 186㎞(山岳)
- 第3ステージ ニース〜シストロン 198㎞(平坦)
- 第4ステージ シストロン〜オルシエール・メルレット 160.5㎞(山岳)
- 第5ステージ ギャップ〜プリバ 183㎞(平坦)
- 第6ステージ ル・テイユ〜モン・エグアル 191㎞(丘陵)
- 第7ステージ ミヨー〜ラヴァール 168㎞(平坦)
- 第8ステージ カゼール=シュル=ガロンヌ〜ルダンヴィエル 141㎞(山岳)
- 第9ステージ ポー〜ラランス 153㎞(山岳)
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第1ステージ ニース・モイエ・ペイ〜ニース 156㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:4pt
「太陽へ向かうレース」としておなじみのパリ~ニースの終着点にして、第100回記念大会となった2013年のチームTTの舞台でもあったニースを発着する開幕ステージ。
ツールの開幕ラインステージの通例に従って、集団スプリントが見込まれる「平坦」ステージだが、オールフラットでは決してなく、ある意味ニースらしい凹凸が激しいレイアウトとなっている。
3級山岳「コート・ド・リミエ(登坂距離5.8km、平均勾配5.1%)」を擁する周回コースを3周し、最終周回は北方に少し膨らむコースレイアウト。最後はパリ~ニース最終日のフィニッシュ地点でお馴染みの「英国人の遊歩道(プロムナード・デザングレ)」での集団スプリントで決着する。
初日スプリントを制し、今大会最初のマイヨ・ジョーヌを着用するのは一体誰だ?
そして、2つの3級山岳を制し、今大会最初のマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュを着用する逃げ屋は、一体誰だ?
↓第1ステージのYouTube実況はこちらから↓
第2ステージ ニース・オー・ペイ〜ニース 186㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:25pt
「様式美」にこだわってきたはずのツール・ド・フランスは、この2020年のコースレイアウトにおいて、まるで「異端」ブエルタに近い試みを為さんとしてしていた。
すなわち、第2ステージからの、いきなりの本格的な山岳ステージ。
しかしそれも仕方あるまい。何しろ、今年のグランデパールの地をニースに選んでしまったのだから。
ニースを選んだ以上、そのパリ〜ニースにおける最高の見せ場をツールにもたらさないわけにはいかない。
かくして、2020年のツール・ド・フランスは、2日目にしていきなり、総合優勝候補たちが総合上位に名を連ねることになりそうなステージとなった。
2つ登場する1級山岳、その1つ目が、今年のパリ~ニースの(新型コロナウイルスの影響で本来の最終日がキャンセルになった結果)最終日のフィニッシュ地点となった「ラ・コルミアーヌ(登坂距離16.3km、平均勾配6.3%)」。
パリ~ニースにおいては残り4㎞でアタックしたナイロ・キンタナが勝利を掴んだ。
そして続けざまに2つ目の1級山岳「テュリーニ峠(登坂距離14.9km、平均勾配7.4%)」を登る。
2019年パリ~ニースの第7ステージの山頂フィニッシュとなったこの登りでは、今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝者であるダニエル・マルティネスが、ミゲルアンヘル・ロペスやサイモン・イェーツらを振り切って見事な勝利を達成。ヴォーターズGMを発狂させた。
ここまでで、過去2年のパリ~ニースにおけるクイーンステージの山頂フィニッシュを立て続けに登らせるというかなりおなか一杯の構成であるにも関わらず、このステージはさらにその先に、近年のパリ~ニース伝統の「最終日レイアウト」を用意してきている。
すなわち、2級山岳「エズ峠(登坂距離7.8km、平均勾配6.1%)」およびそのエズ峠の中腹にあたる「キャトル・シュマン峠」のセットである。
「キャトル・シュマン峠」には山岳ポイントが設定されていない代わりに、3位通過までに8秒・5秒・2秒のボーナスタイムをもたらすボーナスタイムポイントが設置。
当然、この日のマイヨ・ジョーヌ争いにも大きな影響を及ぼしうるポイントであり、またキャトル・シュマンの下りもステージ争いにおいて重要な意味を持つこと間違いなしのため、クライマー・パンチャー勢による熾烈な争いはこのキャトル・シュマンの頂上付近から始まることになるだろう。
最後のキャトル・シュマンの山頂から「英国人の遊歩道」のフィニッシュ地点まではわずか9㎞。
ジュリアン・アラフィリップやプリモシュ・ログリッチ、ペテル・サガンといったようなダウンヒルスペシャリストたちによる逃げ切りが決まるか、それとも彼らを飲み込んだ総合勢含む小集団によるスプリントを制する者がいるか。
個人的にはこの日、アラフィリップにとって最適なステージという印象が強い。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは苦しそうな姿が目立った彼が、ここで復活を遂げ、昨年に続くマイヨ・ジョーヌ獲得を果たせるか。
↓第2ステージのYouTube実況はこちらから↓
第3ステージ ニース〜シストロン 198㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:7pt
今年のツール・ド・フランスのテーマの1つは「平坦詐欺」である。設定された山岳ポイントは4つだけだが、実際にはかなりの数の登りが用意されている。
とはいえ、最後の4級山岳からフィニッシュまでは40㎞以上残っており、最終的には集団スプリントで決着するのは間違いない。
初日にマイヨ・ジョーヌを着た「最強スプリンター」は、さすがに第2ステージでそれを脱いでいる可能性が高いが、それでも2勝目を飾って勢いを見せつけることができるか。
↓第3ステージのYouTube実況はこちらから↓
第4ステージ シストロン〜オルシエール・メルレット 160.5㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:17pt
2020年のツール・ド・フランスは、第4ステージにて早くも本格的な山頂フィニッシュを迎える。
そこに至るまではそこまで厳しすぎるレイアウトではない。まず注目するべきはスタートから51.5㎞地点に位置する中間スプリントポイント。
この日最後に仕事をする必要のないスプリンターズチームが、マイヨ・ヴェール争いのためにこの中間スプリントポイントに向けてペースを上げ、早速逃げを捕まえてしまう可能性はある。
その後も小さな登りが連続するが、やはり重要なのは最後の1級山岳「オルシエール・メルレット(登坂距離7.1km、平均勾配6.7%)」。
1952年に生まれたスキーリゾートであり、1971年以降4度ツールのフィニッシュ地点に選ばれた登りは、全体を通して6~7%の勾配が続く中難易度の登坂。
決定的な総合優勝争いが巻き起こるほどではないにしても、「誰が勝てないか」は少しずつ明らかになってしまうことだろう。
↓第4ステージのYouTube実況はこちらから↓
第5ステージ ギャップ〜プリバ 183㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:2pt
激動の第4ステージを越えて、定番の「アルプスの麓」からスタートするこの日は久々にゆったりとした落ち着いた展開が期待できるステージ。
逃げ切りが狙えるほど厳しくはなく、山岳ポイントも大して存在しない。逃げ集団もそこまで大きくはならず、何の問題もなく集団スプリントで決着することになるだろう。
終盤は登り基調のように見えるが、勾配は2~4%程度と緩やか。ピュアスプリンターたちの足を止めるほどではない。
今大会3度目の集団スプリントを制するのは一体誰だ?
↓第5ステージのYouTube実況はこちらから↓
第6ステージ ル・テイユ〜モン・エグアル 191㎞(丘陵)
山岳ポイント最大値:14pt
アルデシュ県のル・テイユから出発する前半戦は、小刻みなアップダウンはあるものの基本的には平坦基調。
勝負は中央山塊へと突入するラスト50㎞ほどから始まる。
とくに残り25.2㎞から登り始める1級山岳「コル・ドゥ・ラ・ルセット(登坂距離11.7km、平均勾配7.3%)」は、ツール初登場ながら非常に難易度の高い登りの1つだ。
勝負所になるのは山頂まで5㎞(ゴールまで18km)あたりから始まる11%前後の激坂区間。
2~3㎞に及ぶこの厳しい区間を越えさえすれば、あとはフィニッシュまでは緩やかな登りと下りが残されているのみ。
コル・ドゥ・ラ・ルセットの山頂には今大会2つ目のボーナスタイムポイントも用意されており、この登りで総合勢による熾烈な争いが巻き起こるのはほぼ間違いないと言えるだろう。
↓第6ステージのYouTube実況はこちらから↓
第7ステージ ミヨー〜ラヴァール 168㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:3pt
レースディレクターのクリスティアン・プリュドムが公式ページで「平坦って何だろうね」と書いてしまうような平坦ステージが続く今年のツール・ド・フランス。
それでもまあ、たしかに集団スプリントにほぼ確実になるという意味では平坦ステージではある。基準はもはやブエルタのそれではあるが。
今日が今大会4回目の集団スプリントステージ。果たして、ここまでで2~3勝はしている「最強」がいるのか。それとも昨年のように、「混戦」が続いているのか。
なお、この日の出発地点には「世界一高い橋」であるミヨー高架橋が存在する。
主塔の高さがエッフェル塔や東京タワーより高い343mに達しているという、2004年に開通したフランスの新しい観光名所である。
その雄大なる姿を空撮で見られることが第1週目最大の注目ポイントの1つである。
↓第7ステージのYouTube実況はこちらから↓
第8ステージ カゼール=シュル=ガロンヌ〜ルダンヴィエル 141㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:40pt
すでに第2・第4・第6ステージと総合争いに影響を及ぼす山岳ステージが続いてきている中で、この日も、そしてある意味ではここまでで最大の厳しさを誇る山岳ステージが登場する。
何しろ、今大会初の超級山岳を含むステージである。すでに7ステージを終えてきている1週目プロトンにとって、これはかなり厳しい仕打ちである。
距離が短めなのがせめてもの救いか・・・。
その超級山岳「バレ峠(登坂距離11.7km、平均勾配7.7%)」は残り48.2km地点から登り始める。ところどころ10%を超える急勾配区間を含み、それ以外の部分もほとんどが7~8%という、文句なしに厳しい登りである。
ツール・ド・フランス初登場は2007年。今回で6回目の登場となる。最も新しい登場は2017年で、そのときは逃げていたスティーヴ・カミングスが先頭通過を果たしている。
そのバレ峠からの長い長い下りを終えると、残り21.2㎞地点から1級山岳「ペイルスルド峠(登坂距離9.7km、平均勾配7.8%)」の登りが始まる。
過去何度となくピレネーの激戦の舞台となってきた伝統的な登りで最終セレクションがかけられる。そしてその山頂には今大会3度目のボーナスタイムポイントが。
最後のペイルスルド峠の山頂からフィニッシュまでは11.5㎞の下りと平坦が待ち構える。
山頂フィニッシュではないとはいえ、第1週からハードな山岳ステージが連続した中での、この日のこの登りの数。
もしかしたらここまでの第4・第6ステージなどで強さを見せていた選手も、ここで驚くべき大ブレーキをかけてしまい、総合上位勢が早くもシャッフルする事態も生まれかねない。
そして真に恐るべきは、これでもまだ今大会の第1週が終わらないということだ。
まだまだ厳しい登りのステージは続く。第9ステージへ。
↓第8ステージのYouTube実況はこちらから↓
第9ステージ ポー〜ラランス 153㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:25pt
第1週最終盤のピレネー2連戦の2日目。パッと見、前日と比べるとやや難易度が低く見える・・・というのは気のせい。
まずはコース中盤に待ち構える、1級「ラ・ウルセル峠(登坂距離11.1km、平均勾配8.8%)」および3級「スデ峠(登坂距離3.8km、平均勾配8.5%)」の連続登坂。
いずれも赤と黒の傾斜ばかり・・・すなわち、厳しい勾配がところどころに待ち構える十分に難易度の高い登りである。
そして、この登りとここまでの長い第1週の道程で十分に足を削られたプロトンは、いよいよ残り25.8km地点から「凶悪なるマリーブランク」へと足を踏み入れる。
登坂距離は7.7kmと短め。
しかし、平均勾配8.6%というのは半ば詐欺である。
問題となるのは山頂まで3.5km地点(ゴールまで21.5㎞地点)からの「平均12%」の超激坂区間。
山頂フィニッシュではなく、このマリーブランク峠の山頂からゴールまでは18㎞も残されているとはいえ、この峠で分裂した集団が再び1つになるという事態は考えづらい。
本当に地足のある数名が抜け出しての逃げ切りか小集団スプリント――そういった展開で、激動の第1週は締めくくられることになりそうだ。
果たして、難易度の高い「山岳ツール・ド・フランス第1週」の最終日のポディウムでマイヨ・ジョーヌを着て立っていられるのは誰なのか。
↓第9ステージのYouTube実況はこちらから↓
次回は第2週のコースをプレビューしていこう。
関連リンク
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第2週 - りんぐすらいど
ツール・ド・フランス2020 コースプレビュー 第3週 - りんぐすらいど
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