りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

パリ〜ルーベ2020 (YouTube実況プレイ) コースプレビュー

 

先週末のロンド・ファン・フラーンデレンに続き、「ホーリー・ウィーク」の今週末は「北の地獄」パリ〜ルーベ

ロンドのときと同じく、自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager」を使用してYouTubeで再現実況を行なっていく。

 

今回はコースのプレビュー。

注目すべき9つのセクションを徹底解説。 

 

↓PCM2019でパリ〜ルーベをプレイした動画はこちら↓

youtu.be

 

↓実際の動画はこちらから↓

youtu.be

 

 

スポンサーリンク

 

 

残り151.5km「ブリアストル~ヴィースリー」(★★★★)

第28セクター/全長3km

プロトンが経験する最初のパヴェ「トロワヴィル」(全長900m、★★)の直後にやってくる、いきなりの4つ星パヴェ。まだまだゴールまで距離があるため、パンクなどのトラブルに見舞われたとしても復帰は十分に可能だが、余計な力を使うわけにもいかない。慎重にいきたい。

このセクションには、2018年のパリ~ルーベで心停止によって落車し*1、そのまま帰らぬ人となった若き選手マイケル・ホーラールツを偲ぶモニュメントが建てられている。そして、このセクションの名前自体も「セクター・マイケル・ホーラールツ」と別名がつけられてもいる。

Embed from Getty Images

 

彼が所属していたチーム「フェランダース・ウィレムス」はすでに消滅しているが、そのエースであったワウト・ファンアールトは今年もユンボ・ヴィズマで走る。昨年もその想いを胸に健闘したが、いくつもの不運が重なり、最後は悔しさのあまりヴェロドロームの真ん中で大の字に倒れながら涙を流していた。

今年こそは、その思いの中には、かつてのチームメートへの思いも入り混じっているのかもしれない。

 

 

残り103km「アヴルイ」(★★★★)

第20セクター/全長2.5km

最初の重要地点「アランベール」の直前に登場する難易度の高い長めのパヴェ。

当然、アランベールに向けての位置取り争いも白熱し、2018年はここで、マッテオ・トレンティンとセバスティアン・ラングフェルドという2人の優勝候補が落車リタイアする憂き目に遭った。

マシュー・ヘイマンも何度もここでレースを失ったと告げる、隠れた重要セクションである。

 

 

残り94.5km「トルエー=ド=アランベール」(★★★★★)

第19セクター/全長2.3㎞

ゴールまで100kmを過ぎて、いよいよ本格的なパリ~ルーベが始まる。

全部で3つある5つ星パヴェの1つ目にして、「地獄の入り口」。

それは珍しい、森の中のパヴェでもある。

Embed from Getty Images

 

とはいえ、全選手が警戒するポイントであり、かつゴールまで距離もあることから、ここで勝負を仕掛けようとする優勝候補はほとんどいない。

むしろここでは「脱落しない」ことが重要である。

 

落車、パンク、道が狭いこともあり後方に取り残されてしまうと大きなタイムギャップが生まれ、たとえ先頭に戻ることができたとしても大きく力を使ってしまうことになる。

たとえば2014年には、優勝候補でもあったアレクサンダー・クリストフがパンクし、戦線離脱する羽目になってしまった。

昨年はワウト・ファンアールトがパンク。チームメートのパスカル・エーンクホーンのバイクを借りて走り出すが、その後なかなかチームメートが助けに降りてこなかったり単独落車してしまったりと空回りし、体力を浪費してしまうことになる。それが、終盤の彼のガス欠につながったとも考えられる。

 

 

残り68.5㎞「ティヨワ〜サール=エ=ロジエール」(★★★★)~残り50㎞「オシー〜ベルシー (★★★★)」

第15セクター/全長2.4㎞ ~ 第12セクター/全長2.7㎞

魔の20㎞と言うべきか。この20㎞区間の間のパヴェ・・・だけでなく、むしろ未舗装路地帯も含め、常に勝負所が続く。過去にも何度もここで決定的な逃げが生まれてきた。この先に大会2つ目の5つ星パヴェ「モンサン=ぺヴェル」が控えていることもその要因の1つだろう。

とくに残り58㎞地点の第13セクター「オルシー(★★★)」と「オシー〜ベルシー」との間の舗装路では2012年にトム・ボーネンが、2018年にペテル・サガンがそれぞれアタックし、独走勝利につながった。

昨年も同じポイントでサガンがアタック。そこにイヴ・ランパールト、ワウト・ファンアールト、セップ・ファンマルクといった優勝候補たちが食らいついた。

そして、次のモンサン=ぺヴェルで先行していたフィリップ・ジルベールとニルス・ポリッツーーこの年のワンツーを飾る男たちにサガンら4名が追いついた。

なお、ジルベールとポリッツがアタックしたのはまさにこの残り68.5㎞地点の「ティヨワ〜サール=エ=ロジエール」だった。2018年のツール・ド・フランスで使われたときは大落車が発生したこの4つ星パヴェ区間から、決して油断することはできないだろう。

 

 

残り48km「モンサン=ペヴェル」(★★★★★)

第11セクター/全長3km

およそこの辺りから、実力者による本格的なペースアップと、集団のセレクションがかかってくる。

2013年にはカンチェラーラが集団を一気に絞り込んだ。

2016年はここでヘイマンやボーネンなど最終グループの5人を含む7人が抜け出す形となった。

2018年も優勝候補級の6名が絞り込まれたが、すでに先頭にはサガンが逃げており、追いつくことはなかった。

前述したように昨年も、先行していたジルベールとポリッツにサガンら4名の優勝候補たちが追いついたポイントでもある。

 

また、石畳スペシャリストでも落車を起こしてしまうポイントでもある。

2016年には衝撃のカンチェラーラ落車。すぐ後ろにいたサガンは驚異的なバイクコントロールで落車こそ免れるものの、先行されていた有力集団に追いつくことはできなくなった。

2018年もクリストフとルーク・ロウが落車している。

Embed from Getty Images

 

今年も優勝候補が犠牲になるかもしれない。運命のポイントだ。

 

 

残り38.5km「ポン=ティボ〜エンヌヴラン」(★★★)

第9セクター/全長1.4km

ここも決して難易度の高い区間ではないものの、いよいよ残り距離が短くなってくるため、勝負どころになることもしばしば。

2013年はファンデンベルフやファンマルクといった優勝候補が飛び出し、カンチェラーラが遅れる(のちに追い付いて逆転優勝してしまうが)。

2014年はサガンが飛び出して先頭集団に追い付き、のちに独走に入った。

 

残り30km台という距離は、クラシックにおいてはしばしば決定的な動きが巻き起こる区間でもある。一般的にルーベは次の「カンファナン・ペヴェル」でこそ最終的なセレクションがかかりがちだが、油断しているとこのセクションで、勝者が決定付けられてしまうかもしれない。逆にここで出遅れている選手たちには、逆転の目がなさそうだ。昨年のファンアーヴェルマートのように・・。

 

 

残り19km「カンファナン=ぺヴェル」(★★★★)

第5セクター/全長1.8km

最後の山場である「カルフール・ド・ラルブル」を前にして、それ単体では勝負を決めきれないと判断したスペシャリストたちによる積極的な攻撃が始まる。

2014年はカンチェラーラの執拗なペースアップにより、先行していたボーネングループが捕まえられる。

2016年はここで、最後の5名が形成された。

2017年はファンアーヴェルマートのためにダニエル・オスが強力な牽引を続け、後方に取り残されたトム・ボーネンとの距離を決して縮めることなく、エースの勝利に最大限の貢献をしてみせた。

 

そして、これを抜ければすぐに、最後の関門が待ち構えている。

 

 

残り16.5km「カルフール・ド・ラルブル」(★★★★★)

第4セクター/全長2.1km

ここが最後の勝負所である。2017年はここで、ファンアーヴェルマート、スティバル、ラングフェルドという3名に絞り込まれた。

逆に独走、もしくは小集団がすでに決まっていれば、それは本当に強いメンバーであるため、後方から追いかけてくる集団が追い付くことはかなり難しくなるだろう。

Embed from Getty Images

 

観客の盛り上がりも最高潮。それゆえにトラブルも起こりがち。

たとえば2013年には先頭に2人も送り込んでいたクイックステップの選手が次々と観客との接触に見舞われて脱落している。

どうしても道の端の石畳の少ない区間を走りたくなりがちだが、気をつけないと・・・。

 

 

ルーベの黄金の14㎞

最後の5つ星区間「カルフール・ド・ラルブル」を超えたあとは、もう難易度の高い石畳区間は登場しない。2つ星や1つ星など、石畳とはいえないレベルのものも登場してくる。

ただ、だからといってこの区間が何もないエリアというをけではない。むしろ、この何でもない低難易度パヴェや舗装路区間でこそ、本当に決定的な動きが起こることはよくある。

 

たとえば昨年は、この区間にある2つ星の石畳「グルソン」で抜け出したポリッツにジルベールが食らいついた一方、そこまで常に積極的な動きを見せていたサガンの足が完全にストップしてしまった。

2015年は残り12㎞地点でファンアーヴェルマートとランパールトが抜け出し、ここにベルト・デバッカーが単独でブリッジ。そして、このデバッカーのチームメートであるジョン・デゲンコルプが合流したことによって、彼のこの年2つ目のモニュメント獲得への王手を打つこととなった。

Embed from Getty Images

 

一方で、ヘイマンが勝利を飾った2016年、ファンアーヴェルマートが勝利を飾った2017年なんかは、最後に絞り込まれた集団の中でスプリント勝負に持ち込みたくない選手たちがアタックを仕掛ける場面が頻発したが、いずれも決定的な抜け出しに繋がらなかった、ということもあった。

 

独走で終わることの多いロンドとはまた違った、予想できない白熱した終盤戦を楽しめるこの14㎞こそが、本当の意味での「ルーベ」なのかもしれない。私はここを勝手に「ルーベの黄金の14㎞」と呼んでいる。

 

 

そして、ラスト1㎞はヴェロドローム(トラック競技場)で繰り広げられる神経戦。

おそらく現存するロードレースにおいて唯一ヴェロドロームでフィニッシュするレースなのか?

その、他にはない独特なシチュエーション・・・バンクの上と下とに分かれ、上からの下りの勢いを利用してスプリントを仕掛けようとする選手とそれを見計らって最短距離で先行しようとする選手とのフィニッシュ直前の攻防は目を離せない。

もちろん、そこであまりにも牽制し過ぎれば後ろから猛烈な勢いで迫りくる追走集団に追いつかれる――世界で最も過酷な石畳レースのラストに繰り広げられるこの完璧に整備されたスムースな路面における純粋スプリント勝負は単純なパワーだけでは推し量れない瞬間を演出してくれるだろう。

Embed from Getty Images

 

今年、そのドラマを勝利で飾り、石畳のトロフィーを手にするのは、誰だ?

 

スポンサーリンク

 

 

*1:記事によっては落車して心肺停止となり、ともある。

スポンサーリンク