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オンループ・ヘットニュースブラッド2020  プレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:ベルギー

Region:オースト=フランデレン州

First edition:1945年

Editions:75回

Date:2/29(土)

 

 

ヨーロッパで開催される最初のワールドツアーレースであり、頂点たるロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベへと向かうおよそ1ヶ月間の「北のクラシック」シーズンの開幕を告げるレース。

翌日開催のクールネ〜ブリュッセル〜クールネと合わせ、「オープニング・ウィークエンド」とも呼ばれる。

 

2年前からコースが大きく変わり、往年のロンド・ファン・フラーンデレン伝統のフィニッシュレイアウトが用意された。

すなわち、ゴール前約16kmに伝説の「カペルミュール」、そして約12km手前に「ボスベルク」が待ち受けるレイアウトだ。

 

もちろん、実際のロンドと比べ、まだまだシーズンの序盤であること、フルメンバーではないこと、距離が短いことなどを理由に、同じような展開ーーすなわち完全な独走のような形ーーになることは少なく、ある程度小集団の中からタイミングで抜け出した選手が勝つ形が続いている。

 

だが、いずれにしても、このオンループは常に白熱のドラマを生んでくれている。

今回は、過去2回の現コースでのレースの振り返りと、今年のコースについて、そして注目チーム・選手を確認していきたいと思う。

 

 

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過去の展開

2018年

往年のロンドレイアウトになってから最初のオンループでは、まさにカペルミュールが一つの鍵となった。

ゴール前16.7km手前に設けられた「カペルミュール」ことミュール・ド・ヘラーツベルヘン(グラモン)。

登坂距離1000m、平均勾配9.2%、最大勾配20%の石畳激坂は最初、北のクラシック巧者セップ・ファンマルクを単独で抜け出させ、のちにゼネク・スティバルを追いつかせてのこの2人でのエスケープを生み出した。

 

ただ、そのまま逃げ切ってしまう現実のロンドとは違い、このときは後からついてきた9名の集団に飲み込まれてしまう。

この11名の中に、3名もの選手を送り込めたのはアスタナ・プロチームが巧みなコンビネーションを見せ、最後はミケル・ヴァルグレンが勝利を掴んだ。

「最強」が常に勝つわけではない。チームの力を結集しての、見事なロードレースらしい展開であった。

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2019年

2019年は前年よりも早い段階で勝負が動いた。

まずは残り43㎞の「モレンベルグ」。ここで17名の選手が抜け出し、その中にドゥクーニンク、ロット、アスタナ、バーレーン、ボーラ、ユンボの6チームが2名の選手を入り込ませた。

さらに残り29㎞地点でこの中のティシュ・ベノートが落車し、これが原因で集団が分裂。

先頭に残ったのはティム・ウェレンス、アレクセイ・ルツェンコ、ディラン・トゥーンス、ダニエル・オスといった「アシスト側」の選手たちと、もともと1人しか生き残っていなかったファンアーフェルマート、そしてスティバルの6名だけだった。

カペルミュールとその後のボスベルグで、アシストのいないファンアーフェルマートが積極的に動くが、その他5名を振り切れない。

最後はウェレンスが残り3㎞でアタックするもファンアーフェルマートがこれを押さえ込む。その隙を突いてスティバルが抜け出した。

まさにウルフパックのウルフパックらしい勝ち方で、チームとしても初のオンループ制覇、スティバルとしても初の北のクラシック制覇を果たしたのである。

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どちらも実に見応えのある展開。

ぜひ、リンク先のより詳細な展開解説も確認していただければと思う。

 

 

コースは昨年・一昨年と変わらず。

以下、オンループに登場する13の石畳についてデータを置いておくので、当日の視聴の参考にしていただければと思う。

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注目チーム

※年齢は2020/12/31時点のものとなります。

 

ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)

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北のクラシック常勝軍団は今年の開幕戦も本気の構えで参戦する。ニキ・テルプストラもフィリップ・ジルベールもいなくなったが、それでもやっぱりこのチームが優勝候補を最も多く抱えている。

まずは昨年の覇者で今年のブエルタ・ア・サンフアンでもありえないような勝ち方をしているゼネク・スティバル(チェコ、35歳)

昨年のパリ〜ルーベ3位でジルベールの後継者として期待されているイヴ・ランパールト(ベルギー、29歳)

昨年のロンド・ファン・フラーンデレン2位のカスパー・アスグリーン(デンマーク、25歳)

昨年のクールネ〜ブリュッセル〜クールネ覇者でオンループとE3のスティバルの勝利において重要な役割を果たしたボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、28歳)

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優勝候補だけでもこれだけいるのに、フロリアン・セネシャル(フランス、27歳)も、昨年のル・サミンを勝ってたりパリ〜ルーベ6位だったりと、「今年の伏兵」に十分なりうる男。

アシストもデクレルクとケイセと隙がなく、他チーム3つ分くらいの強さを誇っている。

 

ただ、意外にも、このチームがオンループを勝ったのは昨年が初めてだったという。

一昨年の展開を見ても判るように、「北のクラシック開幕戦」は単純に強いだけの選手チームが勝つとは限らない。

そんな中、この最強チームがいかにして勝つか。楽しみである。

 

 

トレック・セガフレード(TFS)

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ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、28歳)エドワード・トゥーンス(ベルギー、29歳)は、いつビッグレースを勝ってもおかしくはない才能の持ち主。

昨年のこの時期も期待しながらも、結局はまったくうまくいかない春を過ごしていたが、シーズン後半は強力な「逃げ力」でそれぞれの勝利(ストゥイヴェンはドイツ・ツアー、トゥーンスはプリムス・クラシック)を掴み取っている。

 

今年もこの2人には期待し続けていきたいが、もう1人注目すべきが、エースナンバーを着ける世界王者のマッズ・ピーダスン(デンマーク、25歳)。今年はすでにツアー・ダウンアンダーで見せた最高のアシストぶりで目立っていたが、元々彼は2年前のロンド・ファン・フラーンデレンで2位の経験を持つ。

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今年のトレックはダブルエースではなくトリプルエース。

最強チームではないが、勝てる理由は十分にある。

 

ル・サミン2位など、小さなレースで地味にリザルトを残しているアレックス・キルシュ(ルクセンブルク、28歳)も、伏兵として期待しても良いかもしれない。

 

 

ロット・スーダル(LTS)

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アルデンヌの皇帝、そして2017ロンド、2019ルーベの覇者、フィリップ・ジルベール(ベルギー、38歳)が9年ぶりに古巣に復帰する。

ただ、彼自身は病気に起因するトレーニング不足によって、自らがトップコンディションではないことを告白している。

www.cyclingnews.com

 

ただ、ジルベールに求められるのは、彼自身の勝利だけではない。

彼の存在、彼の走りがクイックステップを「ウルフパック」にしたように、このロット・スーダルでもまた、彼が彼以外の選手たちを勝たせる中心的な存在になれればと思っている。

 

とくに若手の選手として、たとえば現U23ベルギー王者のブレント・ファンムール(ベルギー、22歳)

2018年のU23版オンループ・ヘットニュースブラッドで2位、昨年のU23版パリ〜ルーベで6位などの結果を出している。

 

また、イェーレ・ワライスが直前で欠場となった代わりに急遽参戦することになったジョナサン・ディベン(イギリス、26歳)も、過去にU23版ロンド・ファン・フラーンデレン2位や、トラックレースでのアルカンシェルの実績を持つ。

 

彼らに加えて、昨年のオンループ3位のティム・ウェレンス(ベルギー、29歳)

これらの可能性の粒が、ジルベールという指導者のもとで輝くことを期待している。

 

 

CCCチーム(CCC)

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昨年のオンループ2位、E3ビンクバンク3位。強いのは間違いないがどうしても最後は1人になり、決めきれない男、グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、35歳)

昨年のオンループも結局、彼が1人で立ち回らざるを得なかったがゆえに、最後に足を失い敗北してしまった。

 

今年は、そんな彼に、同様に昨年1人で戦わざるをえなかったマッテオ・トレンティン(イタリア、31歳)が合流。

互いの求めるものを互いに補完し合う完璧な移籍の結果を、果たして今年の北のクラシックで見せつけることができるのか。

少し気になるのは、ファンアーフェルマートもトレンティンも、昨年のこの時期はすでに複数勝利を挙げるほど好調だったにも関わらず、今年はまったく目立っていないこと。

調整の仕方を変えているならいいが、果たして。

 

 

EFプロサイクリング(EF1)

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エースはもちろん、「無冠の帝王」セップ・ファンマルク(ベルギー、32歳)である。

昨年のロンドでチームメートの勝利のための完璧なアシストをしてみせて[リンク]、パリ〜ルーベでは掴みかかった自らの勝利を失う悔しさに泣き、そしてブルターニュ・クラシックでは見事な勝利を手に入れていた。

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もう1人のエースが昨年11位のイェンス・クークレール(ベルギー、32歳)。過去にはパリ〜ルーベ5位の経験もあるいぶし銀ルーラーで、ファンマルクとのダブルエース体制で臨むことになるだろう。

 

そして密かな期待が、ネオプロのヨナス・ルッチ(ドイツ、22歳)

ツアー・ダウンアンダーの最終日ウィランガ・ヒルでも終盤まで逃げ続け果敢なアタックを繰り出し、カデルレースでも最後から2周目の逃げ残りの中からアタック。

ヘラルドサン・ツアーのクイーンステージでも、強力なクライマーたちが迫る中残り3㎞まで逃げ続けていた男だった。

 

身長197cm。ジョナサン・ヴォーターズが「ターミネーターのアーノルド・シュワルツネッガーのようなマシンだ」と表現したこの若き強靭な男は、昨年のU23版ヘント〜ウェヴェルヘムの覇者でもある。

そしてオーストラリアでの走りはすべて、クラシックへの準備であるとも宣言していた。

www.cyclingnews.com

 

この春、このドイツの若き才能が、意外な輝きを放つのかもしれない。

 

 

イスラエル・スタートアップネーション(ISN)

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ドイツの若手期待のルーラーといえばもちろんこの人物も忘れてはいけない。

昨年のパリ〜ルーベ2位。最後までジルベールと競り合った男。そして彼に「いつかルーベを勝つ」と言われた男ニルス・ポリッツ(ドイツ、26歳)

ロンド・ファン・フラーンデレンでも5位で、独自に集計した北のクラシックランキングでも4位とトップクラシックライダーの1人であることは間違いない。

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そして彼以外にも、クリスツ・ネイランズ(ラトビア、26歳)トム・ファンアスブルック(ベルギー、30歳)など実力者も名を連ねており、ポリッツを守る体制も、カチューシャ時代以上には揃えられている印象。

昨年は、苦境に陥るカチューシャの中で孤軍奮闘していたイメージだったが、今年はこの場所で飛躍できるか。

 

 

チーム・ユンボ・ヴィズマ(TJV)

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昨年のツールでの大クラッシュ以降、初めてのロードレースをこのオンループで走ることに決めたワウト・ファンアールト(ベルギー、26歳)

その意味で、いきなりこのレースで勝利を狙うわけではなさそうだ。出場を決めたのも結構ギリギリだったし、エースナンバーは昨年のパリ~ルーベ7位のマイク・テウニッセン(オランダ、28歳)が身に着ける。

 

ただ、直近のニュースでは、スペイン・テネリフェ島でのトレーニングで、クリス・フルームが出していた登坂最速記録を打ち破ったという報告もしている。

 

彼にとってはまだあくまでも助走期間かもしれない今回のオンループ。

だからこそ、伸び伸びとした走りを見せて・・・そのあとの、本格化するクラシックシーズンでの「復活」を見せてほしい。

  

 

アルペシン・フェニックス(AFC)

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この冬、ファンアールトと並ぶ3枚目のシクロクロス・アルカンシェルを手にしたマチュー・ファンデルポール(オランダ、25歳)

今年は東京オリンピックでのMTB金メダルが最大の目標かもしれないが、同時にこのロードレースにおけるクラシックシーズンにも、全力を賭していることがその予定スケジュールからもよく分かる。

マチュー・ファンデルポール2020シーズン出場予定クラシック

  • 2/29 オンループ・ヘットニュースブラッド
  • 3/7   ストラーデ・ビアンケ
  • 3/21 ミラノ~サンレモ
  • 4/1   ドワースドール・フラーンデレン
  • 4/5   ロンド・ファン・フラーンデレン
  • 4/12 パリ~ルーベ
  • 4/15 ブラバンツ・ペイル
  • 4/19 アムステルゴールドレース
  • 4/22 フレーシュ・ワロンヌ

 

ロードレース自体は先日のヴォルタ・アン・アルガルヴェで一足先にシーズンインしている。ただし、ここでは得意のスプリントにも参加する様子は見せず、むしろ集団の先頭を牽くアシストに精を出すなど、全体的にトレーニングモードでの走りを見せていた。

今回のオンループでもどこまで本気で走るか。

まったくもって未知数だ。

 

なお、個人的にちょっと注目しているのがディメンションデータにいたこともあるスコット・スウェイツ(イギリス、30歳)。トップクラシックレースでのシングルフィニッシュの経験はないが、10位台には何度か入っている、隠れた実力者だ。

また、今シーズンここまでエトワール・ド・ベセージュ区間1勝、ヴォルタ・アン・アルガルヴェ山岳賞と好調さを見せているドリース・デボン(ベルギー、29歳)も、過去ハーレ・インホーイヘム2勝、ロンド・ファン・ドレンテ2位など、そこそこのレースでのリザルトも残している。

彼らがいかにこのあとの北のクラシックシーズンでマチューを支える走りをできるかが、彼の栄光の大きな鍵となる。とくに昨年引退したスティン・デヴォルデルの穴を埋める必要にも迫られており、今回のオンループでは、マチューの走りだけでなく、彼らアシスト役の走りにも注目をしておきたい。

 

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