りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

初心者の、初心者による、初心者のためのJプロツアー2020シーズンガイド① 注目チーム編

 

これまで海外レースを中心に観戦してきて、国内レースには正直、興味を持っていなかった。

しかし昨年秋のNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスの誕生と別府史之の移籍、そして2月のツール・ド・ランカウイでの中根英登の勝利やオリンピック選考をかけて健闘する増田成幸の姿に触発され、海外で活躍する日本の選手を生み出す一つの基盤としての国内リーグに対し、俄然興味を持ち始めている。

 

そこで、今年から本格的に国内レースを見ていこう、と思っているのだが、なにぶん自分にはその知識がない。

以下、自分なりに調べた2020年のJプロツアーについてまとめてみた。

自分のためのメモであると同時に、同様にこれからJプロツアーを見ていきたいと思っている人の助けになれば幸いだ。

 

なお、Jプロツアーだけが国内リーグではない。ほかにもJエリートツアーや女子リーグなども存在する。

ただ、まだまだ国内レース初心者の自分がそこまで手を広げるのは難しい。

今回はあくまでも、Jプロツアーに絞って話をしていきたいと思う。

 

前編となる今回は、Jプロツアーに参加する全18チームのうち、個人的に注目している9チームについて、簡単に解説していきたいと思う。 

 

参考(公式HPより)

Jプロツアー2020 参戦チーム - JBCFロード

 

↓後編の「レースプレビュー編」はこちらから↓

www.ringsride.work

 

↓こちらの記事もチェック↓

www.ringsride.work

 

 

スポンサーリンク

 

  

マトリックスパワータグ

創設年:2006年

監督:安原昌弘

Jプロツアー実績:2016年個人総合優勝(ホセビセンテ・トリビオ)、2017年個人総合優勝(ホセビセンテ・トリビオ)、2019年個人総合優勝(オールイス・アウラール)、2017年チーム総合優勝、2019年チーム総合優勝

公式HP:https://team-matrix.jp/

公式Twitter:https://twitter.com/MATRIX_POWERTAG

使用機材:フォーカス

Embed from Getty Images

 

2017年に続き、個人・チームのダブルクラウンを達成した現国内最強チーム。昨年個人総合優勝のオールイス・アウラールや2014年国内王者の佐野淳哉を放出したものの、新たにアウラールの紹介でやってきた若き才能溢れるベネズエラ人レオネル・キンテロと、2017年まで在籍していたベテランスプリンターの吉田隼人の復帰により、戦力は衰えを見せない。

40代半ばにも関わらず圧倒的な力を見せつけるフランシスコ・マンセボや、過去4度のJプロツアー総合優勝記録を持つホセビセンテ・トリビオ、Twitterのユニークさと端正な顔立ちで絶大な人気を誇るアイラン・フェルナンデスなど強力なスペイン人選手たちは健在で、昨年加入した元群馬グリフィン狩野智也が日本人の中での精神的支柱を務める。

個人的に注目しているのは安原監督の息子、安原大貴。彼自身も監督の息子であるというプレッシャーを感じながら走りで見せるしかないという思いは人一倍強いのか、目立ったリザルトはないものの、昨年もスペインのレースなどで積極的に逃げに乗る姿が見られていたように思う。

今年29歳になる彼は、ロードレース選手としては最も脂が乗る時期。どこかで覚醒する姿を見たい。

もちろん、新加入のベネズエラ人キンテロも期待しかない。今年23歳の超若手だが、今年すでに、ナショナルチームで参加したコロンビアのステージレース(2クラス)で1勝している。アンドローニジョカトリのケビン・リベラを抑えての勝利だからホンモノだ。

先日のツアー・コロンビアも、途中リタイアではあるものの参戦しており、他の国内選手と比べてもコンディションの整った状態でJプロツアー開幕戦に臨めるかもしれない。

昨年のアウラールのように大暴れしてくれるのか。楽しみだ。

 

 

チーム・ブリヂストン・サイクリング

創設年:1964年

監督:飯島誠

Jプロツアー実績:2018年個人総合優勝(窪木一茂)

使用機材:ブリヂストン

Embed from Getty Images

 

2018年に窪木一茂がJプロツアー年間総合優勝者に。ほか、2016年に初山翔と西薗良太で国内選手権ロードレースワンツーを取っており、西薗は個人タイムトライアル種目で2012年・2016年・2017年の3度王者に輝いている。

もちろんその2人はすでに引退してしまったが、2015年国内ロード、2018年国内TTの王者である窪木はなお健在で、2019年はJプロツアー1勝、ツアー・オブ・ジャパンでも1勝と、国内選手屈指の実績を誇る。

ほか、昨年広島クリテリウムで優勝し、表彰台にも何度も登った現役国内最強スプリンターの1人、黒枝士輝や、平塚吉光、徳田優、沢田桂太郎などの表彰台常連組など、国内選手の実力だけでいえば国内最強チームと言っても過言ではないだろう。

そんな中、注目したいのが22歳の若手スピードマン、今村駿介。2015年にジュニア世界選手権で日本人としては初となる中距離種目(ポイントレース)でのアルカンシェルを獲得した。トラック種目では今や日本の代表的な選手としてすでに注目を集めている彼ではあるが、2019年シーズンからロードレースにも本格参戦し、宇都宮ロードレースとやいた片岡ロードレースの2レースでいきなりの優勝。しっかりとした登りも含まれたこのレースでの勝利は、彼のロードレース種目での可能性を強く感じさせるものであった。

在籍する中央大学の公式YouTubeでのインタビューでは、今まで分野の違いから考えてもいなかったツール・ド・フランスへの興味について語る場面も。

www.youtube.com

 

世界ではトラックレースからロードレースへのステップアップも珍しくなく、次代の日本のロードレースを背負いうる存在として、期待をかけていきたい。

 

 

宇都宮ブリッツェン

創設年:2009年

監督:清水 裕輔

Jプロツアー実績:2012年個人総合優勝(増田成幸、2012年チーム総合優勝、2014年チーム総合優勝、2018年チーム総合優勝

公式HP:https://www.blitzen.co.jp/

公式Twitter:https://twitter.com/blitzen_PR

使用機材:メリダ

Embed from Getty Images

 

国内初の地域密着型チームとして、宇都宮出身の廣瀬佳正が創設。黎明期には栗村修が監督を務めたことでも有名で、過去には初山翔や辻善光、雨澤毅明なども在籍した。

国内チームとしても屈指の実力を誇るチームとして実績を積み重ねてきており、2019年シーズンも岡篤志が3勝、小野寺玲が1勝している。

岡はNIPPOデルコ・ワンプロヴァンスへの移籍によりチームを去ったが、新たに大久保陣、西村大輝、中村魁斗の3名が加入。2020年は増田成幸のオリンピック出場もかけて海外レースにも積極的に挑んでいく姿勢や、シクロクロスライダーの小坂光のさらなるロードレースでの活躍など期待すべきポイントも多い。

個人的に注目したいのは、昨年のジロで悔しい思いを味わった西村大輝の復活。アジア選手権ジュニアロードレースで優勝するなど若い頃に才能を見出されながらも、腰椎ヘルニアでの長期離脱や今回のジロなど、何度となく挫折を味わってきた男。それでも諦めることなく自ら志願してブリッツェン入りを選んだ彼の、精力的な走りを2020年の宇都宮ブリッツェンで見てみたい。

レース内外問わずファンとの交流にも力を入れており、国内チーム屈指の「チーム人気」を誇るのもこのチームの特徴。何でもかんでも海外を真似すればいいわけではなく、日本の人と文化に調和したスポーツチームのあり方というのは確かにある。

この宇都宮ブリッツェンのようなチームがもっと増え、日本にロードレースが真に根付く環境を心待ちにしている。

 

 

シマノレーシング

創設年:1973年

監督:野寺秀徳

Jプロツアー実績:2008年個人総合優勝(狩野智也)、2009年個人総合優勝(鈴木真理)、2010年個人総合優勝(畑中勇介)、2011年個人総合優勝(畑中勇介)、2006年チーム総合優勝、2008年チーム総合優勝、2009年チーム総合優勝、2010年チーム総合優勝、2011年チーム総合優勝

公式HP:https://www.shimano.com/jp/company/shimano_racing/index.html

公式Twitter:https://twitter.com/SHIMANO_Racing

使用機材:ジャイアント

 

自転車部品メーカー世界最大手のシマノが運営するチーム。Jプロツアー黎明期は国内最強チームとして、阿部良之、鈴木真理、野寺秀徳、土井雪広、畑中勇介、西園良太など全日本王者にも輝くことになる才能たちが数多く在籍していた。

しかしやがてチームの方針が若手育成にシフト。チームのキャプテン的な立場も、まだ決してベテランの域に達してはいなかった入部正太朗が引き受けることになり、苦難の歴史を歩むことになるが、2019年、ついにその入部が感動の全日本制覇を果たした。

今年は入部もワールドツアーチームに送り出し、キャプテンはまだ29歳になる年の木村圭佑が昨年に続き引き受ける。10名の平均年齢が25.1歳(2020/12/31時点での計算)とやはり若手中心だ。

それでも、昨年は第7戦那須塩原クリテリウムで勝利。それも、終盤で形成された6名の逃げに木村と中井の2名を入り込ませ、さらにキャプテンの木村自らアタックすることで最大のライバルたるアウラールの足を削らせ、最後は新加入で若手の中井がきっちりとJプロツアー初勝利を掴み取るという、チームワークを活かした実に見事な勝ち方だった。

今は決して最強チームではない。外国人選手もおらず、飛び抜けたタレントがいるわけではない。それでも着実に勝ちを拾っていく、そんな魅力的なチームとなってくれるはずだ。

ほか、注目選手は、ブリヂストン・サイクリングの黒枝士輝の弟で、昨年の大分アーバンクラシック前哨戦クリテリウムも勝っている黒枝咲哉。湊諒や横山航太も、勝てないながらも昨年表彰台には登っている選手で、このあたりの中堅どころの活躍が今年は鍵になってくることだろう。

 

 

TeamUKYO‬ 

創設年:2012年

監督:片山右京

Jプロツアー実績:2013年個人総合優勝(ホセビセンテ・トリビオ)、2014年個人総合優勝(ホセビセンテ・トリビオ)、2015年個人総合優勝(畑中勇介)、2013年チーム総合優勝、2015年チーム総合優勝、2016年チーム総合優勝

公式HP:http://www.teamukyo.com/

公式Twitter:https://twitter.com/Team_UKYO

使用機材:ファクター

Embed from Getty Images

 

元々宇都宮ブリッツェンのアドバイザーを務めていた元F1レーサー・片山右京が、「2017年までのツール・ド・フランスを実現する」という目標を掲げて発足。

その目標は実現できなかったものの、結成2年目にしてJプロツアー個人・チームダブル総合優勝を実現。その後も国内リーグを圧倒する力を見せつけた。

そして国内で地盤を固めた彼らは、2017年からはJプロツアー参戦を取りやめ、より海外レースに力を入れていくことにした。

その結果、2017年シーズンは狙い通り、日本籍チームとしては初となるUCIアジアツアーを制覇。

また、国内でも畑中勇介による全日本選手権ロード制覇を果たすこととなった。

創成期から2017年シーズンまでの彼らの歩みについては以下の記事にもまとめてある。

www.ringsride.work

 

3年ぶりにJプロツアー復帰を果たした2019シーズンは勝利なし。ただし、UCIレースの方では、サム・クローム、レイモンド・クレーダー、ロビー・ハッカーといった外国勢の活躍により、ツール・ド・栃木、ツール・ド・北海道、ツアー・オブ・ジャパン、そしてツール・ド・コリアとインドネシアでのステージレースなどでステージ優勝もしくは総合優勝を果たしている。

今年は3年ぶりにネイサン・アールも出戻り。国内レースでも、彼ら外国勢の活躍により、日本人選手たちにどんどん刺激を与えて欲しい。

もちろん、過去にも平塚吉光、徳田優など才能溢れる日本人選手たちも輩出している。現役の元日本王者・畑中勇介と内間康平のベテラン勢に加え、2017年の第1回宇都宮ロードレースを勝っている吉岡直哉も今年29歳とチームの中心となるべき年代に差し掛かっており、これまでとは違ったリザルトに期待したい。ほか、小石祐馬、横塚浩平など、日本人選手たちもさらなる成長が待たれる。

2017年目標は逃したが、次の目標は2025年。

「有言実行」するだけのパワーと可能性を、このチームは持っていると信じている。

 

 

‪KINAN Cycling Team‬ ‬

創設年:2015年

GM:加藤康則

監督:石田哲也

Jプロツアー実績:なし

公式HP:https://kinan-cycling.com/

公式Twitter:https://twitter.com/teamKINAN

使用機材:ヨネックス

Embed from Getty Images

 

元はキナンAACAという名称で活動していたらしいが、現在の名称で、UCIコンチネンタルチームとして活動し始めたのはつい最近。Jプロツアーでもまだ目立った実績はないが、その分国内外でのUCIレースでは現在国内最強と言ってもよい活躍を見せている。

たとえば2018年はマルコス・ガルシアによるツアー・オブ・ジャパン総合優勝に、山本元喜による全日本ロードレース制覇、そしてUCIアジアツアーにおいても、前年のチームUKYOの功績を引き継ぐ形でランキング首位となった。

2019年もJプロツアーでは勝利なしだが、国内外のUCIレースで計5勝。とくにフィリピンで初開催となった1クラスのステージレース、ツアー・オブ・ペニンシュラの最初の総合優勝としてキナンの名が刻まれることとなった。

2020シーズンもUCIレースを中心に力を入れていく可能性もあるが、世界に渡り合うガルシア、トマ・ルバ、サルバトーレ・グアルディオラ、元全日本王者の元喜、その優勝を支えた若き才能の新城雄大、さらにはJスポーツ解説でもお馴染みの「ナカジ」こと中島康晴など、実力者たちがJプロツアーにも刺激を与えていってほしい。とくにナカジは、ルバ、ガルシアと混じって年初のヘラルドサン・ツアーでもシングルフィニッシュを記録しており、調子が良さそうだ。チームの日本人エースを担いうるベテランだ。

もちろん、チームの最大の目標であるホームレース、ツール・ド・熊野での総合優勝も楽しみだ。

 

 

愛三工業レーシング

創設年:2006年

監督:別府匠

Jプロツアー実績:なし

公式HP:http://www.aisanracingteam.com/teamblog/index.html

公式Twitter:https://twitter.com/aisanracingteam

使用機材:デローザ

 

キナン同様に国内より海外でのレースを重視する方針でここまでやってきた。その甲斐もあり、過去にはツール・ド・ランカウイやツアー・オブ・ハイナンなどのHCクラス(現UCIプロシリーズ)の勝利も記録している。このときハイナンを勝ったのが現キナンの中島康晴であり、そして今年ツール・ド・ランカウイで勝った中根英登も、過去にこの愛三に所属していた。監督の別府匠は別府史之・始の兄にあたる。

今年はすでに、ツール・ド・ランカウイで大前翔と草場啓吾がシングルフィニッシュを記録しており、2年前には岡本隼がナショナルチームで参戦したツール・ド・台湾で区間勝利を挙げている。いずれも若手で、今後も期待できる逸材たちである。ベテランでは今年NIPPOから移籍してきた伊藤雅和がツール・ド・ランカウイ後に開催されたほぼ同じメンバーによるワンデーレース、「マレーシアン・インターナショナルクラシックレース」で区間6位。

海外勢も含みつつ、むしろ日本人の、とくに若手が元気なこのチームが、今年は久々にJプロツアーに復帰。国内チームに新しい風を吹かせてほしい。

 

 

さいたまディレーブ

創設年:2019年

代表:長沼隆行

Jプロツアー実績:なし

公式HP:https://saitamadreve.com/

公式Twitter:https://twitter.com/SaitamaDReVe

使用機材:ビアンキ

 

今年新発足のチーム。目標はさいたまクリテリウムへの出場。もちろん、地域への文化の浸透、そして若手発掘にも力を入れてほしい。

メンバーは群馬グリフィンから移籍してきたベテランの宇田川陽平や解散した東京ヴェントスからの高木三千成など。

そして、10人目のメンバーとして、かつて宇都宮ブリッツェン、チームUKYOなどで活躍し、ツール・ド・熊野でのステージ優勝などの経験もある辻善光が加入。

不整脈による心臓の手術を受け現役を引退。その後はトレーナーとして活動しつつ、シクロクロスやトライアスロンなどを個人で走っていた彼が、6年ぶりの現役復帰を果たす。

エースとして走っていたときにアシストをしてもらっていたことへの恩返し、そして同じく不整脈で苦しんでいる人に向けて走りたい、と語る辻。

www.cyclowired.jp

 

まずはしっかりと存在感を示せる1年を目指してほしい。

 

 

レバンテフジ静岡

創設年:2019年

代表:二戸康寛

Jプロツアー実績:なし

公式HP:http://www.levantefuji.jp/

公式Twitter:https://twitter.com/levantefuji

使用機材:メリダ

 

こちらも新発足のチーム。そして今回紹介したチームの中では唯一の非UCIコンチネンタルチームてまある。

日本の自転車文化の中心地の1つである伊豆、そして富士山を見上げる静岡東部から生まれた地域密着型チーム。やはりさいたまディレーブ同様、地域と根付いた、日本ならではの文化形成を目指してほしい。

チームキャプテンは元全日本王者で国内レースでも絶大な人気を誇る佐野淳哉。今や国内最強チームとなったマトリックスパワータグをあえて飛び出して、地元静岡で生まれたこの新チームの飛び立ちをサポートする。

また、過去に鈴木真理でJプロツアー初年度と2年目を制し、チームとしても2007年の総合優勝を果たした「チーム・ミヤタ」のミヤタサイクルがサポーターとして参加。あくまでもサポーターでありオーナーではないことを強調し、「このチームのオーナーは静岡県地域の皆さん。このチームをきっかけに、静岡県を自転車大国にしていきたい」と、夢を語る。

www.cyclowired.jp

 

宇都宮ブリッツェンから始まった地域密着型チームというカタチが、こうして確かなものとなって派生し広がっていくことを、今後もより楽しみにしていきたい。

 

 

他にも注目チームは数あれど、すべては紹介しきれないのが残念だ。

次回は2020年のレースカレンダーを確認していく。

 

スポンサーリンク

 

  

スポンサーリンク