りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2018 総括

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初日から総合優勝候補たちが落車に巻き込まれ、それが連日のように続いた。第2週のアルプス3連戦では、多くのトップスプリンターたちが大会を去った。日程の3分の2を終えた時点で、リタイア者の数は、「マイヨ・ジョーヌの呪い」に見舞われた3年前の大会に匹敵するものとなった。

そんな、混乱に満ち、批判の声も多く挙がることとなった今年のツール・ド・フランスだったが、それでも、今年のツールは例年に比べて「面白い」と言えるものとなった。

 

その立役者は間違いなくこの男。これまで、グランツールの表彰台はおろか、総合成績で10番以内にすら入ったことのない男だ。

それは彼に実力がなかったからではない。クリス・フルームという、稀代のグランツール王者の存在があったからだ。そして、幾度となく彼の身に降りかかる不運の数々の所為だった。

しかしそんな、様々な状況・困難を乗り越えて、男は頂点を掴んだ。抑え込み続けてきた感情を爆発させて、彼は勝利の味を強く強く噛み締めた。

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そしてまた、倒すべき敵が鉄壁・完璧のクリス・フルームではないという事実が、ライバルたちの動きも活発化させた。

最終第3週のピレネー決戦における、トム・デュムラン、プリモシュ・ログリッチェらの攻撃的な姿勢は近年のツールにはあまり見られなかったものかもしれない。

そういった要素も含めて今大会のツールは実に「面白かっ」た。もちろん、まだまだ解決しなければならない課題はあるだろう。スプリンター対決がほぼ台無しになってしまった事実は揺るぎない痛手でもある。

それでも、今大会には、観る側にとってのスペクタルは数多くあった。成功だったと結論づけることはできるだろう。

 

今回は、そんなツール・ド・フランス第105回大会を、各チームに対する簡単なプレビュウという形で振り返っていきたいと思う。

なお、掲載順は総合順位順(各チームの中で最も総合順位の高い選手で比較)。★の数は「戦前の期待に対しての結果の満足度」である。あくまでも目安であり、また主観的なものであるため、悪しからず。

 

 

 

チーム・スカイ ★★★

ゲラント・トーマス 総合優勝

クリストファー・フルーム 総合3位

エガンアルリー・ベルナル 総合15位 

ゲラント・トーマス 区間2勝(第11・12ステージ)

イギリス人初のマイヨ・ジョーヌ輩出を目指すチームに、初期メンバーの1人として選ばれた。2008年・2012年のオリンピックで、共にトラック競技での金メダルを獲得した。トラック世界選手権でも計3回、頂点に立った。

ウィギンスやフルームといった、偉大なるツール王者の最も信頼するアシストの1人として、彼らのツール総合優勝を支え続けてきた。2015年には一時総合4位にまで登りつめていたもののの、そのときも終盤の山岳で崩れ落ちていった。チームの最優先はあくまでも、フルームの総合優勝だったのだ。

2016年にはパリ~ニースで総合優勝。2017年には総合エースへの野望を明らかにし、ミケル・ランダとのダブルエース体制でジロ・ディタリアにも挑んだ。しかし、悔しい落車リタイア。続くツールでも初日の個人TTでフルームを打ち倒してのマイヨ・ジョーヌを手に入れるが、同じく落車によって大会を去った。

2017年の彼は間違いなく、彼史上最高のコンディションだった。しかし、運命の女神は2度、彼を絶望に叩き落した・・・それでも、彼は諦めなかった。再びエースとして挑む気持ちをもって戻ってきた。フルーム不在のドーフィネできっちりと結果を出し、そしてツール本戦の難関アルプスで2勝。全世界に、自らが新たなエース候補であることを証明してみせた。

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それでも、最後まで不安は誤魔化せなかったに違いない。何しろ、彼にとっては未知の世界となる、マイヨ・ジョーヌを着てのツール3週目である。ライバルたちもまた、彼がどこかで崩れるに違いないという確信を抱いて、執拗な攻撃を繰り出してきた。

それでも、彼は闘い続けた。冷静に、逸り過ぎず、かつ保守的になり過ぎないように。確実に掴めるチャンスは着実に掴み続けて。その完璧なまでの走りは、11年間チームメートであり続けた王者の存在にも支えられていた。

そうして、不安と重圧と緊張との闘いの果てに、彼は栄光を掴み取った。総合優勝争いの最終日であるタイムトライアルのゴールゲートを潜り抜けた瞬間に、それまで押さえつけていた全ての感情を吐き出した。

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この瞬間まで、彼は自分がいる場所を真実のものとして認識できていなかったかもしれない。しかし、最後まで冷静に積み上げてきたピースがこの瞬間に完成を迎え、彼はようやく、歓喜の中に身をおくことができるようになった。

おめでとう。イギリス人として史上3人目のマイヨ・ジョーヌ。そして、ウェールズ人としては初の。

おめでとう、トーマス。

 

そしてもう1人、今年のツールで大きな飛躍を見せた男がいる。

それが、エガンアルリー・ベルナル。昨年ツール・ド・ラヴニールを総合優勝し、大きな期待をもってスカイ入りを果たした彼は、ツール・ド・ロマンディ総合2位、そしてツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝と、期待以上の成績を叩き出し続けてきた。

そんな中での、まさかのツール・ド・フランス出場。あまりにも早すぎる、ハードなスケジュール過ぎるとの批判もあった。また、フルームにとっての最大のライバルになりうるとか、表彰台の可能性すら囁かれていた。

結果としては、石畳の第9ステージでの、他チームのチームカーとのアクシデントによる大幅なタイムロスもあり、総合優勝争い・新人賞争いからは決定的な脱落を喫した。

そのことが、結果として良かったのかもしれない。初めてのツールで、否応なく期待されてしまう新人賞争いからも逃れられたことで、彼は彼なりのペースで力を発揮することができた。

そして、その結果として、今大会、最も最後まで残ったスカイのアシストとなったのが彼だった。アルプスで、ピレネーで、カストロビエホやクフィアトコフスキが仕事を終えた後に、ダブルエースを背負う重責を担わされ、そしてその任務をきっちりとこなしきった。彼がいなければ、今年のスカイは意外なくらいあっさりと、崩壊していたかもしれない。ベルナルは今年のスカイの勝利の大きな鍵となったのだ。

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彼の実力ははっきりと証明された。次なる活躍に期待しよう。

来年にはどこかのグランツールを、エースで走る彼の姿が見てみたい。

 

 

チーム・サンウェブ ★

トム・デュムラン 総合2位

トム・デュムラン 区間1勝(第20ステージ) 

2015年ブエルタでの覚醒以来、全オランダ人から大きな期待を寄せられ続けてきた。しかし彼は、自らに降りかかる余計なプレッシャーを上手く躱す術に長けていたのかもしれない。翌2016年はオリンピックもあり、ジロとツールに出場はしたものの、いずれも総合優勝は狙わないことを明言した。2017年にはまずジロを制覇。すわツールかと期待された2018年もまた、まずはジロから乗り込んでいった。

そのジロで実力の高さを再度見せつけての総合2位。そして、彼はツールへの挑戦を決めた。総合は狙うけれども、あくまでも未来の挑戦に向けた腕試しのようなもので、エースナンバーもスプリンターのマシューズに譲るよ・・・といった姿勢だった。だからチームも、彼のための万全な体制を整えることはしなかった。

 

しかし、これらもまた、彼なりの、プレッシャーを躱すための方法だったのかもしれない。結果として彼は、ジロからの連戦という同じハンデを背負いながら、万全ではないチームの体制の中で、クリス・フルームという偉大なるグランツールチャンピオンを打ち負かすことができたのだ。しかも、常に積極的な攻撃を仕掛け続けてきた中で。最後は自らの得意分野できっちりと結果を残して。

その意味で、実は今大会最強の男は、この男だったのかもしれない。

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そして、そんな彼を山岳で最も支え続けたのが、シモン・ゲシュケであった。ツール山岳での勝利経験もあるとはいえ、基本的に彼はピュアクライマーというよりも、丘陵などに強いパンチャータイプである。そんな彼が、昨年のジロに続き、献身的にデュムランを支えてくれた。

まだ23歳のセーレンクラーウ・アナスンも、序盤のマイヨ・ブランだけでなく、アルプスでは前待ちからのデュムラン支援、そしてフレンチバスクでの個人TTでの、ユンゲルスすらも破る走りなど・・・これまでのパンチャー/ルーラータイプといった印象から、一気に将来のグランツールライダーとしての可能性を証明して見せた。

 

それでもやはり、チームとしての体制が万全でなかったことが悔やまれる。ここに、ケルデルマンやオーメンが加わった最強の「チーム・デュムラン」が用意できれば、来年こそはツールの頂点を奪い取れるような気がする。マシューズの扱いは難しいところだけれど・・・。

結果としての総合2位は、★5つ分に十分相当するものの、チーム体制の不備とマシューズの早期リタイアから★4に抑えておく。

また、アルントにはもっと、スプリントを頑張ってほしかったところ。最近は後輩の方が良い成績を出している始末である。

 

 

チーム・ロットNLユンボ ★

プリモシュ・ログリッチェ 総合4位

スティーヴン・クラウスヴァイク 総合5位

ディラン・フルーネヴェーヘン 区間2勝(第7・8ステージ) 

プリモシュ・ログリッチェ 区間1勝(第19ステージ)

おそらくは今大会最も「飛躍」したチーム。

まずはフルーネヴェーヘン。昨年もシャンゼリゼで勝利し、トップスプリンターたちの仲間入りを果たした彼だが、今回の2勝により、「世界最強」の一角であることを明確にした。

実際、スプリンターたちが残っていた1週目においては、ライバルの落車やアップダウンなど特殊な状況下で2勝したサガンや、自らの力というよりもアシストの力に支えられた部分も大きいガビリアと比べても、純粋に単独のスプリント力として頭一つ抜けていたのはこのフルーネヴェーヘンだったように思う。

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後半においては勿論、総合4位のログリッチェの活躍が目覚ましいものとなった。彼を支えた「ダブルエース」の一角、総合5位クラウスヴァイクの存在も欠かせない。スカイと並んでダブルエースを見事なまでに機能させていた。

正直、この2人を舐めていた。戦前は、健闘はするものの、どちらかがTOP10に入ればいい方だろう、と考えていた。とくにグランツールでの実績で言えば、ログリッチェはクラウスヴァイクに敵わないだろう、とも。

しかし、ログリッチェは見事にやり遂げた。未知の3週目総合争いを積極的な走りを見せながら乗り切った。もはや、堂々としたグランツールライダーである。ただ、さすがに最後の最後で体力が尽きてしまったか。今まではデュムランに匹敵する高い安定力を見せていた個人TTで、まさかの大崩れ。せっかくの総合表彰台を失ってしまった。

だが、結果以上に魅力的だったのが、その攻撃的な走り。彼のような存在がいることで、レースはずっとぐっと面白くなる。これからも彼のその走りに期待だ。

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AG2Rラモンディアル ★★☆☆

ピエール・ラトゥール 新人賞

ロマン・バルデ 総合6位

ピエール・ラトゥール 総合13位

例年以上に気合を入れた準備を進めてきた。冬からレーススケジュールを変えてまでも重ねてきた石畳対策。ツール直前には、シエラネバダにて、ラトゥール、ヴュイエルモ、ドモンといった重要な山岳アシストを引き連れての合宿をこなした。

なのに、1週目からそのドモンやヴュイエルモが落車で大会を去り、自らも第9ステージでは多くのトラブルに見舞われた。トラブルの割に大きくタイムを失うことがなかったのはもしかしたら対策の成果だったかもしれないが、得意のはずの終盤の山岳ではまったく力を発揮することができずずるずると崩れ落ちていった。

収穫はあった。ラトゥールの新人賞。しかも終盤の山岳では、この新人賞ジャージを着ながらの逃げやバルデのためのアシストなど活躍を続けてきた。

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それだけの献身がありながら、結果を出せなかったバルデ。来年は復活できるか?

 

 

モビスター・チーム ★★☆☆☆

チーム総合優勝

ミケル・ランダ 総合7位

ナイロ・キンタナ 総合10位

アレハンドロ・バルベルデ 総合14位

ナイロ・キンタナ 区間1勝(第17ステージ)

まあ、ある意味では、予想通りの結果だったのだとは思う。

キンタナは、もうダメなのだろうか・・・? 第17ステージでは、久々の強さを見せつけてくれた。直前のツール・ド・スイスでも見せてくれた、ハマったときの他の追随を全く許さない力強いクライム。 勝利を掴み取ったとき、キンタナの表情は安堵そのものであった。

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いや、安堵してる場合ではない。第19ステージでは再び遅れる姿を見せ、結局はもう、3週間を走り切れる力がないのでは? あまりにも早すぎた才能の発露の結果、走り方も30代中盤以降のそれになってしまった感がある。

色々噛み合っていないのは事実だろう。個人的に、彼はスカイにこそ来るべき存在だと思う。エースではないけれど、エースのような走りをできる集団の集まりの中で、アシストや、ときにステージ優勝や、場合によってはエースの代わりに総合優勝を狙える、そんな存在になるべきだし、彼がそういう存在であることを許してくれる場所はもしかしたらスカイのほかにはないのかもしれない。

で、モビスターはもう、ランダとソレルの2枚看板で戦っていくべきだ。

 

 

UAEチーム・エミレーツ ★★★☆☆

ダニエル・マーティン スーパー敢闘賞

ダニエル・マーティン 総合8位

ダニエル・マーティン 区間1勝(第6ステージ)

アレクサンドル・クリストフ 区間1勝(第21ステージ)

マーティンの調子は間違いなく良かったのだと思う。区間勝利だけでなく、山岳でも、常に積極的な姿勢を崩すことがなかった。ここに彼を支えるチームメートがいれば・・・という思いは、まあ彼に常につきまとう問題なので、もはやそこまで気にする必要はないのかもしれない。

クリストフも、数多くのライバルたちが大会を去り、サガンも怪我をして力を発揮できなかった中とはいえ、人生初のシャンゼリゼを獲得するという大きな成果を残せた。キッテルやガビリア、フルーネヴェーヘンなどがいなければ彼が最強なんだということを示してみせた。

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だから、悪くない結果ではあったものの、イマイチ目立つところの多くないチームでもあった。いや、創設2年目でツール区間2勝は十分凄いんだけれど、もっとチームとしてのまとまりのある強さを見せてほしかった。

アタプマも今年も頑張ったけど結果を出せず。そろそろツール山岳で勝つ彼の姿を見たいところ。

 

 

カチューシャ・アルペシン ★☆☆☆☆

イルヌール・ザッカリン 総合9位

最初の頃は前向きなコメントと共にチームメートとの関係性の良さをアピールし続けてきた大人のキッテルも、いよいよ我慢ならなくなってきたのかバスの中で絶叫。そしてアルプスにてタイムアウト。屈辱。チームからも「エゴイスト」なんて言葉が出てきて、近年稀に見る大崩壊である。

キッテルだけが悪いわけではない。彼を助けるべきツァベルもスプリントに全然絡めず、そもそもアシストが彼だけで、さらに言えば今年のチームの勝利もキッテルの2勝がほぼ唯一と、チーム自体が全く機能できていないシーズンと言える。来年はトニー・マルティンの離脱もほぼ決まっており、キッテルはどうするのだろうか。

最後の希望はザッカリンとそれを支えるポリッツやボズウェルが、終盤でようやく機能する働きを見せたこと。そしてザッカリンが個人TTでそれなりの成績を出したこと。今回のツールは★1個分の評価しかできないけれど、ブエルタでのリベンジは期待している。

 

 

クイックステップ・フロアーズ ★

ジュリアン・アラフィリップ 山岳賞

ボブ・ユンゲルス 総合11位

フェルナンド・ガビリア 区間2勝(第1・4ステージ)

ジュリアン・アラフィリップ 区間2勝(第10・16ステージ)

若手最強スプリンターが下馬評通りの活躍を・・・というわけにはいかなかったのが正直なところ。たしかに1週目は最強スプリンターの一角ではあったものの、どんな困難な山も乗り越え、マリア・チクラミーノを手に入れた昨年ほどの強さは見られずにアルプスで沈んだ。

真っ向からサガンに対抗できる存在と期待していたが、少なくとも今年は良い年ではなかったようだ。ティレーノ~アドリアティコでも勝てなかったこともあり。

 

むしろ、アリエルマクシミリアーノ・リチェセの強すぎるスプリントアシスト力に脱帽。他のエーススプリンターを圧倒する先行スプリントで最高の位置からガビリアを発射する力や、集団の中からガビリアを引き上げるテクニックなど、実に理想的なスプリントアシストであってくれた。
それだけに、ガビリアのリタイア後はエースとして期待していたが、そううまくはいかなかった。やっぱりエースとアシストは全然違うのか。

 

後半戦はアラフィリップの爆発。ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝など、その実力は既にお墨付きではあったものの、まさかあんなにも、アルプスやピレネーの山岳で連日逃げに乗れるほどの純粋な登坂力を持っているとは思ってもみなかった。

彼もまた、今大会で大きく飛躍した選手の1人だ。

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残念だったのは、総合で期待されていたユンゲルスの不調。まあ、まだ若い選手だ。あと2年くらいかけて、じっくりと実力を高めていけばいい。

 

 

アスタナ・プロチーム ★★★☆☆

ヤコブ・フルサング 総合12位

タネル・カンゲルト 総合16位

オマール・フライレ 区間1勝(第14ステージ)

マウヌス・コルトニールスン 区間1勝(第15ステージ)

ステージ2勝は十分な成果であると言える一方、フルサングは正直今年、もっといけるものだと思っていた。直前のツール・ド・スイスも総合2位と、悪くはなかったのに。

しかし、ツール本戦はもう全く良いところなくずるずると遅れ続け・・・このままでは来年、ツールのエースの座はロペスに奪われてしまうかもしれない。

逆にカンゲルトの終盤の積極的な動きは注目に値する。とくに、厳しすぎる第17ステージで長い長い単独逃げを見せたのが凄い。昨年のジロでも途中まで総合TOP10以内を維持し、調子の良かった彼だが、中央分離帯のポールに衝突する不運な落車で残りのシーズンを棒に振ってしまった。

来年以降の契約は現時点では不明だが、アルを失ったアスタナにとって、ロペスと並ぶ総合エース候補として重要な存在であるはずだ。フルサングにとってそれが厳しいのであれば、なおさら。

 

 

フォルテュネオ・サムシック ★★☆☆☆

ワレン・バルギル 総合17位

バルギル、頑張ったは頑張ったけれど、完全にアラフィリップにしてやられる。そしてチームも、完全にバルギル頼みだったために何も為すことはできず。

このまま「ツールに全て照準合わせてるんだよ」と言いながらツールで結果を出さなければ、コフィディスにおけるブアニのような存在になりかねない。貰ってる年俸は決して安くはないんだろうし。いや、ブアニならば小さなレースでの勝利をしっかり取ってくるだけまだマシか?

頑張れバルギル。来年は、プロコンチネンタルチームのエースとして、ツール以外の小さいけれど重要なレースでの勝利に期待している。

 

 

バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム ★☆☆☆☆

ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ 総合18位

ニバリは結局、調子が良かったのかどうかわからないうちに退場となった。本来はエースを担ってもよいはずのヨンや、最近調子を上げていたゴルカも、総合争いからも早々に脱落し、かといって逃げに乗って勝てるわけでもなく・・・。コルブレッリが序盤でサガンに喰らいつく走りを見せ、アルプスでも生き残ったために期待していたものの、終盤では一気に目立たなくなってしまった。

チーム自体は1クラスやHCクラスのレースでの勝利はそれなりに重ねており、チームとしての連携も悪くはない。個人的には好きなチームだ。しかし、昨年に続き2年連続、結果と言えるようなものがないツールを過ごしたとなると、先行きが不安になってくるのは致し方ない。

 

 

ボーラ・ハンスグローエ ★★★★☆

ペテル・サガン ポイント賞

ラファウ・マイカ 総合19位

ペテル・サガン 区間3勝(第2・5・13ステージ)

ライバルたちの多くがアルプスでツールを去る中、耐え抜ける実力こそがマイヨ・ヴェールに相応しい。第17ステージでは彼にしては珍しい下りでの落車によって、眠れない日も経験し、第19ステージのピレネー難関山脈ステージではタイムアウトの危機にも瀕する。

しかし、痛みを乗り越えて、彼は最後まで走り切った。昨年は悔しい失格処分を受けて連続獲得記録も途絶えてしまって、もはや彼には、グリーンジャージへの執着はなくなってしまっても不思議ではなかったが・・・やはりツール特別賞ジャージというのは、3年連続世界チャンピオンの彼にとっても、大きな価値をもつ栄誉であるようだ。

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ステージ3勝もついてきて、チームとしてはジロ・ディタリアに次ぐ成功と言ってもいい結果ではある。ただ1つ、マイカが総合争いに全く関われなかったこと以外は。

 

 

BMCレーシングチーム ★★☆☆☆

ダミアーノ・カルーゾ 総合20位

チームTT(第3ステージ) 優勝

リッチー・ポートがリタイアしてしまった時点で、チームとしては為すべきことが一気になくなってしまった感がある。それでも、その第9ステージに続き、アルプスの初日でも果敢に逃げに乗って、マイヨ・ジョーヌ維持に成功したファンアフェルマートの努力は讃えられるべきものである。

しかしポートも去り、おそらくはTJも去り、カルーゾも未だ行き先が未定となると、来年のこのチームは誰をエースにやっていくんだろうか。ファンアフェルマートはチームに残ることを既に宣言している。ある意味で来年は、このファンアフェルマートの為のチームとなるかもしれない。

 

 

ワンティ・グループゴベール ★☆☆☆☆ 

パスクアロンは頑張った。昨年は一度もTOP10に入れなかった彼が、今年はそれに何度か入ることができ、トップシーンでも張り合える実力があることをきっちりと示した。また、チーム全体の、逃げに対する積極的な姿勢は、ツールに選ばれたプロコンチネンタルチームとしては適切な動き方だったとは思う。

しかし、肝心のギョーム・マルタンが昨年に引き続きTOP20に入れなかったのは痛い。このチームがワイルドカードで選ばれ続けたのは、このマルタンの存在ゆえである。多分。そのマルタンがこの結果では、来年以降、同じようにツール出場権を得られるかというと、微妙なところではある。

 

 

ミッチェルトン・スコット ★★☆☆☆

カレブ・ユワンのツール初出場を犠牲にして作り上げたアダム・イェーツのための体制・・・だったはずだが、まさかのアダム惨敗。ステージ優勝に切り替えるも、第11ステージのニエベ、第16ステージのアダムともに、惜しい形での敗北となってしまった。チームTTも、前日にインピーとダーブリッジが落車していなければもしかして、と思うところがなくもない。

どんなに過程があっても結果は結果。収穫のない、悔しい3週間となった。

 

 

トレック・セガフレード ★★★☆☆

ジョン・デゲンコルブ 区間1勝(第9ステージ)

チームとしての目的・・・すなわち、バウケ・モレマによる総合上位、という目的はまったく実現できなかった。コンタドールが引退し、晴れて唯一のエースとなったモレマにとって、今年はチャンスだったのだ。2年前はモン・ヴァントゥーでフルームとポートについていけた唯一の男として、途中まではかなり良い調子で走れていたのだ。昨年のジロも悪くなく、今年こそは・・・というなかで、総合26位。惨敗だった。逃げが2年連続の勝利に結びつくこともなかった。

来年はポートが移籍してくるという話。やはりツールのエースの座は奪われることだろう。彼はもう、ツールのエースとして走る可能性はないのかもしれない。

となれば、今度は逆にアルデンヌ系ワンデーに集中してしまうのが良いだろう。昨日のクラシカ・サンセバスチャンも強かった。山岳アタッカーとして、それこそダニエル・マーティンのような役回りで、常にチャンスを狙って積極的に攻撃をしかける伏兵としての活躍を期待している。

モレマの総合成績という第一の目的は失敗に終わったトレックだったが、その失敗による悔しさを全て吹き飛ばしてくれるくらいの結果となったのが、デゲンコルブによる勝利。ピュアスプリントではやはり一歩足りない。しかし、パリ~ルーベ制覇経験者はやはり違った。史上最もパリ~ルーベらしい石畳ステージで、昨年ルーベ覇者を下しての圧倒的な勝利。スプリントの強さも評判高いファンアフェルマートを、つき切れさせるほどの強さだった。

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3年前のパリ~ルーベ、そしてブエルタでの勝利以来の大きな勝利。今大会、トーマス勝利と並んで、ドラマティックな勝利であった。

 

 

チームEFエデュケーションファースト ★☆☆☆☆

クラドックの感動的な走りは話題になったチームEFだが、意地の悪い見方をすれば、それ以外に話題のなかったチーム。ツアー・オブ・カリフォルニア総合3位のダニエルフェリペ・マルティネスには期待していたが、初のツールは目覚ましい結果とは言えなかった。それでも22歳で総合36位はまあ、悪くはないのだが・・・。

ツールにはよく出るが活躍できる機会の少ないファンマルケにとって、今年の石畳はまたとないチャンスだったわけだが、全く目立つ瞬間もなく終了。

 

 

ディレクトエネルジー ★☆☆☆☆

カルメジャーヌは山岳での相変わらずの強さを見せてくれてはいたのがイマイチ噛み合わず。今年新加入のタラマエもしっかりと実力を示してくれた。だが、このチームに求められているのは単なるプロコンチネンタルチームのそれではない。昨年も勝ってしまっているので、やはり今年も勝利が求められてしまった。少なくともそれに近い何かは。

その意味で、コカールの存在は大きかったのだと思う。ブダにその代役は務まりきらない。来年はワールドツアークラスへの昇格を目指しているという報道もあったが、現時点の戦力でそれは正直、厳しいのでは? スプリンターの補強が求められる。

 

 

グルパマFDJ ★★☆☆☆

ルノー・デマール 区間1勝(第18ステージ)

昨年と違ってチームのメンバーがしっかりと残ってくれた。デマール自体も山岳を執念で乗り切った。おかげでステージ1勝という成果は残せた。もとよりピノはいないし、当初の目的は達成されたと言っても、言い過ぎではない、だろう。

が、本当にそれでいいのか? 現状、デマールはトップスプリンターたちの中では良く見ても5~6番手という位置。正直、もっと上にいてもらいたい選手である。そんな期待も込めて、★は2つで。

 

 

コフィディス・ソリュシオンクレディ ★☆☆☆☆

ナセル・ブアニは毎年のツールで話題を呼んでくれる。たとえ、出場しないという形であっても。

今回、ブアニに代わるエースとして出場したラポートは、初日で5位、第18ステージでは2位と健闘はしてくれた。が、結局勝てない、という点ではブアニの代わりを見事に勤め上げてくれたといえる。

調子の良かったはずのナバーロも、ヘスス・エラダと共に仲良く勝てない山岳エスケープを敢行する。

すなわち、いつものコフィディスだったというわけである。

 

 

ディメンションデータ ★☆☆☆☆

カヴェンディッシュが勝てないのはまあ、仕方ない。今年は特に調子が良くなかったのだし。しかし彼以外にも結構良いアタッカーの面子は揃っていた中で、1勝もできなかったのは正直、残念。ヴェルモト的にも「俺なんでここにいるの・・・?」という思いは隠し切れなかっただろう。

来年はヴァルグレン獲得と沸き立っている。が、彼もまたアタッカー的な役回りなので、結局は今年とあまり変わらないと思う。カヴェンディッシュの代わりとなる強力なスプリンターを用意するか、あるいは総合エースを育てるか獲得するか。その意味で、クドゥスの急成長には期待したい。

 

 

ロット・スーダル ★☆☆☆☆

存在感0。いや、一瞬だけグライペルがステージ上位に入った瞬間もあったけれど、本当それだけだった。

せめて、ドーフィネで成功したチームTT用のジェルが使えていればもしかして、というのはあったかもしれない。しかし使用が禁止された今回のTTTの結果を鑑みるに、あのジェルは本当、効果があったんだなと感じ入る。