りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2018 コースプレビュー2週目

近年の傾向とは逆行するように平坦中心だった第1週目。

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休息日を挟んで突入する2週目は、いきなりのアルプス3連戦。しかも、いずれも今大会随一の難関ステージばかり。

休息日明けの体調を崩しやすいこのタイミングでの3連戦で、総合優勝争いは大きな動きが巻き起こることだろう。昨年のような接戦には、今年はなりそうにない。

 

激動の第2週をプレビュウ。

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第10ステージ アヌシール・グラン・ボルナン 158.5km(山岳)

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ついにアルプス3連戦が始まる。3年前の2015年大会のように、第1週は平坦基調が中心となり、休息日明けに一気に激しい山岳バトルが始まる展開。休息日明けには「魔」が潜むことが多いため、思いがけぬ脱落者が出るかもしれない・・・

 

今大会最初の超級山岳として現れるのは、ツール初登場の「プラトー・デ・グリエール(グリエール高原)」。6kmの登坂の平均勾配は11.2%。プロトンは確実に引き裂かれることだろう。この山に差し掛かるのはスタートから2時間後。日本時間で言えば夜10時を過ぎた頃になるはずだ。

 

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この山岳は今大会の目玉の1つでもある。

それは単に厳しい登りというだけではない。その先に待ち構えている、1800mの「グラベルセクション」すなわち未舗装路である。今年のジロのフィネストーレ峠でも登場し、フルームの衝撃的なアタックを生み出した未舗装路が、ツールにもおよそ30年ぶりに登場する。

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このグリエール高原がフィニッシュに設定された5年前のツール・ド・ラヴニールでは、ジュリアン・アラフィリップが集団を抜け出して優勝を飾っている。モホリッチが2位、アダム・イェーツが3位であった。 

 

とはいえ、このグリエールの頂上からゴールまでは残り90kmもある。もちろんフルームはジロで残り80kmから飛び出したわけだが、あのときと違ってこの日はまだ第10ステージであり、アルプス3連戦の入り口でしかない。崩れ落ちる選手はいても、抜け出そうと画策する選手はいないだろう。

 

それにこの日の最終盤にはロム峠とコロンビエール峠の連続登坂が待ち構えている。こちらも悪名高いル・コロンビエール。そこから14kmの下りを経てゴールとなり、この日、フルームやバルデのダウンヒルアタックなんかも見られるかもしれない・・・。

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プラトー・デ・グリエールの高台に設置された、第2次世界大戦中のレジスタンス運動のモニュメント。74年前、この地で命を落とした121人の愛国者たちへの慰霊と敬意を表現する。

 

 

 

第11ステージ アルベールヴィル~ラ・ロジエール 108.5km(山岳)

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アルプス3連戦の2日目。そして今大会最初の「短距離山岳ステージ」。

スタート直後から超級2連続。その後も平坦のない、ひたすら登るか下るかを繰り返す厳しいレイアウト。今大会、60kmの超・超短距離山岳ステージがあるので目立たない気もするが、過去にドラマを生み出したジロやブエルタの短距離山岳ステージは、このステージより長かったのだ。この日、何かが起きないはずはない。

 

前日のグリエール峠に続き、この日のラ・ロジエールも、過去のツール・ド・ラヴニールでフィニッシュ地点として使用されている。しかも、2年連続で。

2014年はミゲルアンヘル・ロペスが、2015年はグレゴール・ミュールベルガーが・・・直前でコースミスをして、ギョーム・マルタンが勝利を飾った。

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ラ・ロジエールはひたすら長い登り坂。しかしその半分は緩斜面であり、最も重要になるのは残り10km台から残り4km台までの約6km。

2つある9%勾配区間で動きがあるか。それともそれまでの短くも厳しい道程で、既に動きが起きているか・・・。

 

 

 

第12ステージ ブール・サン・モリス~ラルプ・デュエズ 175.5km(山岳)

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怒涛のアルプス3連戦最終日。ついに現れる、伝説の山ラルプ・デュエズ

しかも、厳しいのはラルプ・デュエズだけではない。2015年のツール第20ステージで一緒になってキンタナたちの攻撃を生んだ「クロワ・ドゥ・フェール(鉄の十字架)峠」と、さらにもう1つの超級山岳マドレーヌ峠が待ち構えている。

累計獲得標高5000m超。今大会のクイーンステージと目される。

しかも、地味にこちらも3年前に初登場し、バルデに勝利をもたらした「ラセ・ド・モンヴェルニエ」も再登場。本当に今年は「3年ぶり」が多い。

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「崖に梯子をかけたような(辻啓氏)」美しき「モンヴェルニエのつづら折り」。今年は勝負所にはならないだろうが、この空撮は楽しみだ。

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2015年ツール第20ステージ。大観衆のラルプ・デュエズで、逃げ集団から降りてきたアナコナがキンタナを先導する。 

 

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ラルプ・デュエズは実力がはっきりと示される難峠。

この日、今大会の方向性が決定付けられることになるのか。

そして、2011年から3大会連続で続く「ラルプ・デュエズのフランス人勝利」は、今年も実現されるのか。

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2015年大会はティボー・ピノが制した。この年、あまりにも苦しいツールを過ごしていた彼が、最後の最後で掴み取った歓喜の勝利。このときのガッツポーズは自分の中でも上位にくる。

 

 

 

第13ステージ ブール・ドワザン~ヴァランス 169.5km(平坦)

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アルプスから中央山塊へと至る移動ステージ。

1週目とは打って変わって、スプリンターにチャンスがほとんどもたらされなくなる第2週・3週。今日は第2週唯一のスプリントチャンスステージとなる。

とはいえ、純粋な平坦というわけではない。ゴール前50kmを切ってから、カテゴリのないアップダウンが続く。逃げ切りを狙う選手たちにとっても、数少ないチャンスを狙おうと本気を出してくるはずだ。

キッテルやカヴェンディッシュのようなピュアスプリンターよりは、マシューズやクリストフ、サガンといったようなパンチャー的な素質を持つスプリンターたちが勝利を手に入れられそうだ。ガビリアももちろん、その中の一人と言えるだろう。

 

 

 

第14ステージ サン・ポール・トロワ・シャトー~マンド 188km(丘陵)

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マンドもまた「3年ぶり」の登場だ。3年前は、バルデとピノの牽制合戦を尻目にカミングスが勝利を掴み取った衝撃的な日だ。

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ラストのマンドの峠は3km・10%と、パンチャーとクライマーが鎬を削るにはちょうどいい勾配。パンチャー勢が頂上まで辿り着ければ最後のゴールは圧倒的優位だが、そこに至るまでの厳しい勾配でクライマー勢がこれを引き千切ることができるか・・・。

割と今年、サガンが活躍できるステージが少なかったので、この辺りで期待したいところ。

 

 

 

第15ステージ ミヨー~カルカッソンヌ 181.5km(丘陵)

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激動の第2週は比較的大人しい終結を迎える。

もちろん、1級山岳の長い登坂を超える必要はあるが、ダウンヒルの先に20km近い平坦も残っており、この下りで攻撃を仕掛けても旨味は少ないだろう。

むしろ、大逃げからの逃げ切り勝利が(今大会少ないチャンスをつかんで)見られるかもしれない。

そのときには1級程度の登りをこなせる足と、そのあとのダウンヒルで後続を突き放せる足とを持っている選手に女神は微笑むだろう。たとえばカルメジャーヌや、ボアッソンハーゲン、パンタノなど・・・あるいは、総合優勝争いから脱落している場合、アラフィリップやユンゲルスにも期待したいところ。