いよいよ始まる、「フランドルの1週間(Flemish Cycling Week)」。その名の通り、ベルギーの北西部、フランドル地方を舞台に全部で5つのクラシックレースが立て続けに開催される1週間である。
その端緒となるのが昨日開催された「デパンヌ~コクサイデ3日間」。
そして、第2幕となるのが、明日、3/23(金)に開催される「レコードバンク・E3(エードリ)ハレルベーケ」である。
ウエスト=フラーンデレン州のハレルベーケを発着する206km。
途中、15の急坂が登場し、「パテルベルグ(Paterberg)」や「オウデクワレモント(Oude Kwaremont)」など、ロンド・ファン・フラーンデレンでもお馴染みの石畳急坂も含まれる。
「ミニ・ロンド」の異名を持つ、この時期最注目のレースである。
15の石畳のプロフィール。パテルベルグは本家ロンドでも度々勝負を決定付ける重要なポイントとなっている。全長は700mと短めだが、平均勾配12%、最大勾配20%と非常に強烈。
レイアウトは昨年と同じ。
昨年はラスト72.7kmの「タイエンベルグ」でトム・ボーネンがペースアップを図り、集団が絞られる。
その後の平坦区間でフィリップ・ジルベールがアタックを繰り返し、ついに集団から抜け出す。これについていけたのはグレッグ・ファンアフェルマートとオリヴァー・ナーゼン、ルーカス・ペストルベルガーのみ。
優勝候補のペテル・サガンは後方に取り残され、その後は集団落車に巻き込まれるなどして戦線から離脱した。
先行していた逃げ集団を吸収したジルベールらのグループは、ラスト41.6kmのパテルベルグとオウデクワレモントを経てジルベール、ファンアフェルマート、ナーゼンの3名のみが残る形に。
当時のベルギーチャンピオンと、現ベルギーチャンピオンと、そしてオリンピック金メダリストという超強力な3名によるスプリント争いの結果、31歳の東フランドル人が初の勝利を掴んだ。
今年もパテルベルグ辺りからの攻防戦に注目。
以下、今大会の注目チームをプレビュウしていく。
注目チーム
※年齢はすべて数え年表記。スタートリストは暫定のものであり、直前の変更の可能性があります。
※3/23に最新のスタートリストをもとに追記しております。
1~.BMCレーシングチーム(BMC)
昨年優勝者ファンアフェルマート。ただし、今年はここまでのクラシックで存在感を示せていない。果たしてこのE3から挽回ができるか?
むしろその他の選手が今年、調子がいいところを見せている。ルーランツはバレンシアで1勝しているほか、ミラノ~サンレモでも5位。ドラッカーもクールネ~ブリュッセル~クールネで6位、ミラノ~サンレモでもポッジョ・ディ・サンレモで強力なアタックを見せていた。かき回し役として期待。
もちろん、クラシックにおいて最も重要なのは、最終局面までエースを連れていき、トラブル対応を可能とするルーラーの存在。ミヒャエル・シャーと、そして現在最も成長中のTTスペシャリスト、クーンが縁の下の力持ちとして活躍できるか。
ベッティオールも昨年10位で優勝候補の1人ではある。
11~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
昨年は早々と戦線離脱せざるを得なかったサガンだが、2014年に優勝しているほか、2度の2位を経験している。
一昨年のロンドでも見せた「パテルベルグ」での強烈なアタックが決まれば最大の優勝候補ではある。だが今年はここまで2位が多く、今回も不安・・・。
(3/23追記)カデルレースやミラノ~サンレモでも重要な役割を果たしていたダニエル・オスが参戦決定。やはり今年のボーラのクラシックでは、彼がいなければ・・・!
21~.AG2Rラモンディアル(ALM)
昨年は勝負所でしっかりと喰らいつき、しかし最後は逸り過ぎてしまいベテラン2人に置いていかれてしまったベルギーチャンピオン。実力はあるがなかなか勝てない。今年のここまでのクラシックもイマイチ。
チームとして期待したいのはグジャールの逃げ。ブエルタ優勝経験もあるこの逃げスペシャリストは昨年のE3でもしっかりと逃げている。
ほか、ル・サミンの終盤戦に残り8位となったデンツの走りにも注目。この先のパリ~ルーベなどでも楽しみなドイツ人ルーラーだ。
31~.クイックステップ・フロアーズ(QST)
今期(も)絶好調のクイックステップ。3月のクラシックはル・サミン、ドワースドール・ウェストフラーンデレン、ノケレ・コールス、ハンザーメ・クラシック、デパンヌ3日間と次々勝利。今期すでに17勝。主力が抜けて弱体化したという話は何だったのか。
クイックステップの強みは、良い意味での複数エースの存在だ。昨年ロンド覇者、E3でも2位のジルベールはもちろん、今年ル・サミンで勝利しているテルプストラ、昨年ドワースドール・フラーンデレン勝者ランパールト、そしてチェコチャンピオンジャージを着たクラシックスペシャリストのスティバールなど、誰が勝ってもおかしくない面子が、その強みを活かして次々にアタック。常に先頭に複数名を入れてきてその他のチームを圧倒する走りを得意としている。
今回もうまくその状態を作れれば勝利は固いだろう。逆にうまくいかないときは徹底してうまくいかないので、最後まで不安がつきまとうチームである。
(3/23追記)ドワースドール・ウェストフラーンデレンでレミ・カヴァニャと共にワンツーをとったセネシャルが参戦決定。今後に向けた経験を重ねるうえで重要。
41~.ロット・スーダル(LTS)
ロンド5位の経験をもち、今年のストラーデビアンケで優勝したベノートがエース。彼自身はステージレースでの総合上位も狙えるタイプであり、クラシック「スペシャリスト」のつもりはないようだが、とはいえやはりベルギー人として、この「フレミッシュ・サイクリング・ウィーク」の活躍も捨てがたい。
チームとしては他にも元オリカのクラシックスペシャリスト、ケウケレールも優勝候補となりうる。今年はここまでイマイチだが、昨年まではヘント~ウェヴェルヘム2位やドワースドール・フラーンデレン5位など。
(3/23追記)ケウケレールは残念ながら不参加。代わりにホフランドやジーベルクなどスプリンター寄りの選手が・・・それは適切なのか?
なお、ローレンス・ナーゼンはAG2Rのオリバー・ナーゼンの弟である。プロコンチネンタルチーム所属の昨年から昇格。今年はノケレ・コールスでチーム最上位でゴールしている。
51~.アスタナ・プロチーム(AST)
エースナンバーを着けるデフリーズ自体は優勝候補として名前が挙がるタイプの選手ではないものの、先日のオンループ・ヘット・ニウスブラットでの活躍から期待したいチームではある。実際、そのとき最終局面で活躍した3名(ヴァルグレン、ガット、ルツェンコ)全員が出場している。
そしてそのときの勝者ヴァルグレンは昨年のE3でも6位。ロンドでも11位。
これは・・・今期2つ目のビッグレース勝利も期待できる??
81~.ミッチェルトン・スコット(MTS)
一昨年のパリ~ルーベ覇者ヘイマンがエースナンバーを着るが、最大の優勝候補は昨年4位のルーク・ダーブリッジ。あるいはミラノ~サンレモでも終盤に積極的なアタックを見せたトレンティン辺りか。
111~.チームEFエデュケーションファースト・ドラパック(EFD)
永遠のシルバーコレクター、ファンマルケ。今年こそ・・・。
ブレシェルやランゲフェルトなど、クラシック巧者は揃ってはいるのだが、なぜかうまくチーム力を活かせない印象がこのチームにはある。
逆にアスタナやバーレーンのようにこのあたりのチーム力がうまく発揮できれば、ファンマルケに勝機は出てくるだろう。ドッカーやフィニーなどの独走力の高いルーラーたちの活躍にも期待。
141~.チーム・スカイ(SKY)
クラシック巧者スタナードにはもちろん注目だが、今年に関して言うと、先日のオンループで終盤で先頭にブリッジをかけ、最後は飛び出して2位に入り込んだヴィシオウスキや、クラシック要員としてスカイに新加入したファンバールレなどにも注目をしていきたいところ。
(3/23追記)スタナードが不参加となり、代わりに、先日のハンザーメ・クラシック2位のハルヴォーシュンが参戦。やはり優勝候補としてはファンバールレやヴィシオウスキとなりそう。
そして、どんな走りを見せるのかまったく予想のつかないモズコンにも、密かな期待を寄せてしまうところである・・・。最近はパンチャー的な走りが多いが、昨年のパリ~ルーベは5位など、石畳適性も非常に高い。
161~.トレック・セガフレード(TFS)
デゲンコルブはどちらかというと週末のヘント~ウェヴェルヘム向き。今大会のエースとなるのは、2年前のE3で5位。今年のオンループでも4位のスタイフェンであろう。
ラスト、ペダースンなどのクラシックスペシャリストや、独走力のひたすら高いミューレンなど、何気にアシストたちのバランスが良いのもこのチームの特徴だ。
(3/23追記)やっぱりスタイフェンがエースに。そりゃそうだよね。
その他にもバーレーンのコルブレッリや、FDJのデマール、ディメンションデータのスウェイツやボアッソンハーゲン、UAEのクリストフなど・・・
プロコンチネンタルチームでもワンティのヴァンケイスブルクやフランダースウィレムスクレランのデヴォルデル、ディレクトエネルジーのシャヴァネルなど注目選手が多数出場。
とにかく、今大会の勝利だけでなく、「1週間後のロンドの優勝を狙える選手は?」という観点で注目していきたい。
それがこのE3の見所であると言えるだろう。