パンタノ、エナオ、ダニエル・マーティン・・・昨年の激戦を演出したクライマーたちが、今年も一堂に集結する。
いよいよ今夜から開幕する2018年シーズン「パリ~ニース」。
今回は直前になってしまったが、全22チーム184名の選手全てのスタートリストと各チームの簡単なプレビューを掲載する。
ツール・ド・フランスやジロ・ディタリアを見越した調整に挑む選手たちばかりであり、この1週間での戦いはシーズン全体を通しての活躍を占うものといっても過言ではない。
どんな選手が出て、どんな目標を持っているのかを確認していこう。
↓コースプレビューはこちら↓
- 1~.チーム・スカイ(SKY)
- 11~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)
- 21~.バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM)
- 31~.クイックステップ・フロアーズ(QST)
- 41~.チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)
- 51~.ミッチェルトン・スコット(MTS)
- 61~.AG2Rラモンディアル(ALM)
- 71~.BMCレーシングチーム(BMC)
- 81~.トレック・セガフレード(TFS)
- 91~.アスタナ・プロチーム(AST)
- 101~.ロット・スーダル(LTS)
- 111~.グルパマ・FDJ(FDJ)
- 121~.モビスター・チーム(MOV)
- 131~.チーム・フォルテュネオ・サムシック(FST)
- 141~.チーム・ロットNLユンボ(TLJ)
- 151~.チーム・サンウェブ(SUN)
- 161~.コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)
- 171~.チームEFエデュケーションファースト・ドラパックp/bキャノンデール(EFD)
- 181~.ディメンションデータ(DDD)
- 191~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
- 201~.ディレクトエネルジー(TDE)
- 211~.デルコマルセイユ・プロヴァンスKTM(DMP)
- 注目選手たち
1~.チーム・スカイ(SKY)
チーム・スカイは2015年以来、3年連続でパリ~ニースを制してきている。しかも、それぞれ違う選手で。
今年は昨年総合優勝者のセルヒオ・エナオと、昨年ブエルタ総合6位のワウト・プールスのダブルエース体制。セルヒオ・エナオは直近のコロンビア・オロ・イ・パで総合4位&コロンビア選手権ロード優勝、プールスは直近のブエルタ・ア・アンダルシアで区間1勝&総合2位と、それぞれ調子は悪くない。
さらに彼らを支えるアシスト陣も相変わらず豪華。昨年パリ~ニース最終日に勝利し、今年スカイ入りを果たしたデラクルスを筆頭に、グランツールでも活躍する山岳アシスト・平坦アシストが揃っている。ファンバールレは今年新加入のクラシックスペシャリストだが、ブエルタ・ア・アンダルシアで独走力の高さも見せつけたため、スタナードと並んで貴重な平坦牽引役として活躍することだろう。
昨年度総合優勝のセルヒオ・エナオ。今年もコロンビアチャンピオンジャージを着用しての参戦となる。
11~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)
昨年総合3位のダニエル・マーティンがエースナンバーを着ける。今期のレースは昨年総合6位だったヴォルタ・アン・アルガルヴェのみ。しかも、第2ステージの山頂フィニッシュこそ4位と悪くない結果だったが、最終日の山頂フィニッシュでは優勝したクフャトコフスキに2分近く引き離される結果に。調子はあまり良いとは言えないだろう。
もう1人のエース、ルイ・コスタは昨年ほどの良いスタートダッシュは切れていないが、成績としてはそこそこ(ツアー・オブ・オマーン総合10位、アブダビツアー総合8位)。状況によっては彼が総合エースを務めることになるだろう。
チームとしてはもちろん、もう1人の移籍組、アレクサンデル・クリストフによるスプリント勝利も狙っていく。一筋縄ではいかないスプリントステージが並ぶ今大会、登りも悪路もこなせるクリストフなら他のチームのエーススプリンターより優位に立てる場面も多いはずだ。
直近ではアブダビツアーの登りスプリントで勝利。今大会の第2ステージも似たレイアウトとなる。
ヨーロッパチャンピオンジャージを着て見事な勝利を見せたクリストフ。今大会も暴れ回ることができるか。
ひとつ気になるのは、チームメート、ベン・スウィフトとのコンビネーション。今期、2人が揃うのは今大会が初。昨年はマルコ・ハラーやリック・ツァペルなどのアシストの力を大いに借りていたクリストフだけに、新チームでのアシストとの相性は非常に気になるところ。
21~.バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM)
昨年は個人TTなどでも健闘し、最終的にも総合4位と活躍したゴルカ・イサギーレがエースナンバーを着ける。昨年はその後もジロで1勝するなど躍進し、一足先に評価されていた弟に追い付くどころか、今年もツアー・オブ・オマーン総合3位など、調子の良さが継続している。一方のヨンは、ニバリに並ぶ総合エースとして期待されていた割には結果を出せず、今年に入ってからも調子の上がり切らない様子を見せている。
それでも、今大会の個人TTの優勝候補でもあり、うまくスイッチが入れば圧倒的な強さを見せるのがヨンという男だ。表向きのエースを兄に任せつつ、タイミングを突いた動きで総合表彰台を狙って行こう。
もう1つの注目株が、アントニオ・ニバリとガルシアコルティナの若手コンビ。アントニオは昨年のカタルーニャ1周で積極的な逃げを見せたり、ジロ・デッレミリアで強力な牽引を見せるなど、地味に活躍し始めている。
またガルシアコルティナも、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの終盤の山岳ステージで逃げに乗るなど、ネオプロとは思えない走りを見せていた。今大会でもこの2人が、逃げや山岳アシストでどんな活躍を見せるのか・・・しっかりと見届けていきたいところ。
31~.クイックステップ・フロアーズ(QST)
昨年は個人TTを制して総合5位。ポイント賞と新人賞も獲得したアラフィリップがエースナンバーを着ける。今シーズンもコロンビア・オロ・イ・パの山頂フィニッシュで勝利し、アブダビツアーのジェベルハフィートも区間3位となるなど、状態の良さを見せつけている。
ライバルとも言うべき同年代のボブ・ユンゲルスやイェーツ兄弟が、着実にグランツール総合上位に入る実績を見せているのに対し、彼はまだアルデンヌ・クラシックの勝利やステージ勝利、もしくは短いステージレースでの総合上位に留まっている。しかしダニエル・マーティンもチームを去った今、アラフィリップにはいよいよ本格的にグランツール総合上位を狙う走りが求められているはず。今大会での彼の走りにはその意味で注目したい。
もちろんチームの目的のもう1つは、今期絶好調のヴィヴィアーニによるスプリント勝利。サバティーニを中心とした最強トレインも用意されていて準備万端だが、今大会はピュアスプリントステージが少なくキッテルも逃げ出すほどなので、果たしてここまでのように絶好調でこなせるかどうか。
コロンビア人の最強クライマーたちが集うコロンビア・オロ・イ・パにて、フランス人の彼が山頂フィニッシュで勝利を掴んだインパクトは大きい。幸先の良いシーズン入りだ。
41~.チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)
元々はキッテルの出場も予定されていたが、今大会がピュアスプリントステージが少ないということもあって急遽ティレーノ~アドリアティコの方に行くことに。そうなると一応このチームでスプリントに臨むのは、ハラーになるか、それともラメルティンクになるか・・・。
とりあえずキッテルがいない以上、このチームが目指す第一目標は、昨年総合6位のイルヌール・ザッカリンによる総合上位争いとなる。ザッカリンは着実に力を伸ばしつつあり、昨年はブエルタ・ア・エスパーニャでついに総合表彰台に登った。今年はジロをパスしてツールに挑む予定。ツールの総合表彰台に登ることは簡単ではないが、年齢的にも最も脂の乗る時期であり、今年は本気で狙って行きたいところだ。
また、これまではツアー・オブ・カリフォルニアでの総合上位争いくらいでしかエースとしての活躍は見られなかったボズウェルが、新チームに移って、どれだけの潜在力を発揮してくれるかが楽しみ。
51~.ミッチェルトン・スコット(MTS)
昨年パリ~ニース総合9位、ツール・ド・フランス新人賞のサイモン・イェーツがエースナンバーを着ける。今期はバレンシアナとアブダビに出場するも結果はイマイチ。バレンシアナではアダムの方が良い走りを見せていたほどだった。
一方、チャベスの方はオーストラリアで行われたヘラルド・サンツアーの山岳ステージで優勝し、そのまま総合優勝。小さな大会とはいえ、勢いに乗っているのはこちらの方、と見ることもできる。クロイツィゲルもバレンシアナ総合8位で、今期だけ見ればサイモンよりも良い仕上がりでいる。
サイモンもチャベスもジロ出場組。「どっちをエースで行くのか」も含め、スペインのステージレースも合わせたここからの時期の走りには注目したい。
スプリントではユワンがティレーノ~アドリアティコに出場するため、こちらでは昨年ブエルタ4勝のトレンティンがエース。確かに、一筋縄ではいかないスプリントステージの多いパリ~ニースの方では、トレンティンの方が向いていると言えるだろう。
61~.AG2Rラモンディアル(ALM)
チームの絶対エース、ロマン・バルデがティレーノ~アドリアティコ出場を決め、パリ~ニースにおける総合エースは、新たに加入したギャロパンが担うこととなった。またベルギーチャンピオンのナーゼン、激坂ハンターのヴュイエルモが、ステージ勝利を狙っていく。
6年間をベルギーのチームで過ごしたギャロパンは、新たにフランスのチームのエースとなって参戦したエトワール・ドゥ・ベセージュで、個人TTでの勝利をもとに総合優勝を果たした。また、彼はパリ~ニースとの相性も良く、過去4年間で常に総合TOP10に入り込んでいる。
そしてチームとしても、昨年から総合エースを守る体制がきっちりとできつつあるのを感じている。ドモンとゴチエは昨年ツールでバルデを支える強力な山岳トレインを形成したメンバーであり、今大会でも活躍が期待できる。ヴュイエルモもそういった役回りを果たせる存在だ。
一方、かつてのような山岳ステージでの我武者羅な走りは鳴りを潜めつつある。個人的には、ドモンの山岳逃げからの逃げ切り勝利を是非、見てみたいものなのだが・・・。
71~.BMCレーシングチーム(BMC)
今年はジロに出場せず、ツールでポートのアシストに専念することを宣言しているヴァンガーデレン。ただ、それまでの間に、どこかのステージレースで勝利を掴み取ることを、チームからも期待されている。
その意味で、先日のアルガルヴェでの総合3位は彼にとって大きな自信となったようだ。彼の武器は個人TT。今大会の第4ステージも、彼の得意とするタイプのTTだ。そこで広げたリードを、最後の3つの山岳ステージで守り切ること。ロッシュ、デマルキといった山岳アシストたちが、そのサポートを担うことになるだろう。
スプリンターは過去ブエルタで勝利しているドラッカーか、新加入ながら先日のバレンシアナで勝利しているルーランツか、どっちがエースを担いうるか。
また、第1ステージの激坂は、Dトゥーンスが華々しく活躍するチャンスである。
81~.トレック・セガフレード(TFS)
エースは昨年ジロ総合7位のモレマ。アルガルヴェでも総合4位と調子は悪くない。コンタドールを失ったトレックにとって、このモレマの躍進こそがチームの成績に直結するだけに、今年は失敗は許されない。
パンタノは昨年のパリ~ニースでもブエルタでもコンタドールを力強くアシストしてくれた。今年はモレマとのコンビネーションで同じように力を発揮してくれるかどうか。
チームのもう1つの目標であるデゲンコルブのスプリント勝利。事故の影響がまだまだ残っていたようだった昨年と比べ、今年はより調子の良い形でシーズン入りを果たせている印象だ。右腕たるデコルトもおり、今大会は本気で勝利を狙えそうだ。
年初のチャレンジ・マヨルカで早速2勝を果たしたデゲンコルブ。アルガルヴェでも3位に入っており、仕上がりは上々。
91~.アスタナ・プロチーム(AST)
今、最も勢いに乗っているチーム。昨年は4月まで勝利がなく、その後も多くの不幸に見舞われてきたが、今年はツアー・オブ・オマーンでアレクセイ・ルツェンコ&ミゲルアンヘル・ロペスのコンビが大活躍し、オムロープ・ヘット・ニウスブラットでもチーム力を活かしてヴァルグレンが勝利を掴んだ。
そして今大会に出場するフールサン&サンチェスコンビも、総合優勝こそないものの、ここまでのステージレースで常に勝負に絡む活躍を見せている。
特に注目に値するのは、この2人が、単純に総合を狙える選手が2人いる、という状態でなく、真の意味での「ダブルエース」と呼べる動きをしていることだ。バレンシアナでは最初にフールサンがアタックし、バルベルデを連れて逃げに乗ったのち、サンチェスが後から合流するという動きを見せた。その後のゴールまでの平坦路でもフールサンは積極的なアタックを見せ、それが失敗すると今度はサンチェスのスプリント勝利のための全力の牽引を行った。
結果的に相手がバルベルデという怪物だったことで勝利は掴めなかったが、どのチームよりもコンビネーションに優れた走りを見せているのがこのアスタナというチームだ。
スプリンターのコルトニールスンも、ドバイで強烈なスプリントを見せ、オマーンで勝利も掴んだ。元よりスプリント力の低かったアスタナにとって、彼の存在は非常に大きい。今回は彼のアシストは十分ではなさそうだが、独力で十分に強いところもあるので、活躍に期待したい。
チーム移籍を果たし、どことなくよりアグレッシブな走りを見せるようになった感のあるコルトニールスン。混戦が予想される今大会だからこそ、チャンスを掴める予感がする。
101~.ロット・スーダル(LTS)
昨年のツアー・オブ・グアンジー総合優勝に続き、先日のブエルタ・ア・アンダルシアでも総合優勝を果たしたウェレンスがエース。とはいえ、チーム全体で彼を守るといった様子はなく、むしろあくまでもグライペルでのスプリント勝利を第一に考えられた布陣。ウェレンスはデヘントと共に、いつもどおり山岳逃げ勝利を目指すのが基本となるか。第6・第8ステージなんかは彼ら逃げスペシャリスト向きである。
グライペルも、今大会のようなトリッキーなスプリントが求められるレイアウトでは強い。4年ぶりに出場したダウンアンダーでも早速2勝するなど調子の良さは見せているので、期待したいところ。
昨年に続きマヨルカの山岳逃げステージで勝利を掴んだウェレンス。パリ~ニースでは2016年に逃げ切り勝利を果たしている。
111~.グルパマ・FDJ(FDJ)
以前からの報道の通り、3月1日付で共済保険会社グルパマがメインスポンサーとなり、チーム名称とジャージが変更された。
今大会はひたすらデマールの勝利を狙う。パリ~ニースでは昨年・一昨年と連続で勝利を掴んでおり、とくに昨年は、パンチャー向きの登りの先のゴールで、ジュリアン・アラフィリップに喰らいついたうえにこれを差し切った。今年も初日ステージはパンチャー向き。もう1度輝くことができるか。
決してスプリンター向きとは言い難かったステージで強さを見せつけた昨年のデマール。ツールでは悔しい結果に終わったが、今のFDJのメンバーとのコンビネーションは抜群で、今期こそ大活躍間違いなし。
ところでフランスチャンピオンとオランダチャンピオンを常に同じレースに出場させるのは嫌がらせかなんかだろうか。いや、発射台として優秀なので必然なのはわかるのだけれど・・・。
121~.モビスター・チーム(MOV)
比較的平均年齢の高いチームが多い今大会で、若手を揃えてきたのがモビスター。エースもスプリンターのバルベロで、総合上位は考えていない? いや、マルク・ソレルは昨年のカタルーニャ1周に続き、先日のアンダルシア1周で総合3位。ステージ優勝こそなかったものの安定した走りを見せていて、今期のさらなる躍進を予感させてくれた。
キンタナ弟ことダイェル・キンタナも先日のコロンビア・オロ・イ・パでステージ勝利。同年のニバリ弟と共に、今大会、実力を示せるか。目指すは2015年以来のグランツール出場。
131~.チーム・フォルテュネオ・サムシック(FST)
ブルターニュのチームに凱旋した昨年ツール山岳賞バルギルが、いよいよ本格始動。元BMC山岳アシストのモワナールも引き連れて、まずは総合TOP10入りが目標。また、今期のツールでチームに初の勝利をもたらすために、今から山岳での足を確かめておきたい。
もちろん、実力派フランス籍プロコンチネンタルチームとして、デュラプラスやペリションといった逃げ名手たちの動きにも注目していきたい。
141~.チーム・ロットNLユンボ(TLJ)
今季すでに4勝目の絶好調フルーネヴェーヘンがエーススプリンター。さらにドバイツアーで巧みな動きによって彼を勝利に導いた名牽引役ローセンと、昨年シャンゼリゼの立役者レーザー、若き発射台ヤンセンも引き連れての必勝態勢。不安点としては、今回のパリ~ニースのスプリントステージのレイアウトが、どちらかというとピュアなスプリンターであるフルーネヴェーヘンに合っているのかどうか。
そんなチーム構成もあり、ヘーシンクのお供は正直、いない。単身での総合上位争いというのも難しそうで、狙うならステージ?
151~.チーム・サンウェブ(SUN)
モビスターと並ぶ若手揃いのチーム。その筆頭たるオーメンは、昨年ブエルタの第9ステージで、総合エースたちに喰らいつく強い走りを見せた。結局は途中リタイアとなったものの、先日のアルガルヴェでは新人賞を獲得するなど、着実に実績を伸ばしつつある。今年はジロ出場が決まっており、まずは3週間の完走を目指したい。
そしてもう1人の若手の期待の星がバウハウス。昨年ドーフィネでの勝利でも十分凄かったが、先日のアブダビで再びワールドツアーレースの勝利を手に入れた。今大会でもEトゥーンスなど強いスプリンターはいるものの、エースを任せられる可能性は十分あるだろう。
161~.コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)
チクリッシモにブアニの現状が書かれていて結構ショッキングだった。Cyclingnewsでも似たようなことが書かれており、背水の陣で挑まなくてはならない。スープがいない中で最高の発射台役となってくれるのはラポルト。今期すでに3勝と、ブアニ先輩を凌ぐ勢いで実績を出している。
個人的にはモビスターからやってきたエラーダ兄弟に期待大。ヘススはバレンシアナ総合5位、オマーン総合4位。今大会も総合TOP10は狙えそう。
171~.チームEFエデュケーションファースト・ドラパックp/bキャノンデール(EFD)
総合エースはローランだが、専用の山岳アシストが揃っているわけでもなく、総合上位を狙うよりはむしろ序盤でタイムを落とし、第7ステージで逃げに乗って勝利を狙うみたいなパターンの方が良いかもしれない。
スプリントはマクレーをエースにしてブレシェルやドッカーでアシストする形となるだろうが、実は昨年のパリ~ニースの実績で言えばブレシェルの方が区間6位を獲っていたりと良かったりする。まあ、あのときは大雨コンディションのイレギュラーなスプリントだったけれど・・・。
181~.ディメンションデータ(DDD)
2014年に区間2勝しているスラフテルがエースナンバーを着ける。今回も第1ステージなんかは得意なレイアウトである。ただし総合上位を狙う走りは難しいだろう。
基本的には山岳で逃げて勝利するか、ギボンズによるスプリントを狙うか。逃げならベルハネ、キング、パウエルスあたりが強いが、実際に勝つのは難しそう。
191~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
サム・ベネットは昨年、サガンと並んでチームの勝利数に貢献した。パリ~ニースでもキッテル、クリストフ、デゲンコルブといった超一級品のスプリンターたちを押しのけて、自身初のワールドツアー勝利を手に入れた。
錚々たるスプリンターを相手取り力で勝利したベネット。サガンの加入が寧ろ彼の勢いを増す結果となったのかもしれない。
ちなみに発射台役となるであろうバシュカも、今年、デゲンコルブが勝ったトロフェオ・パルマで2位に入っている。状況によっては、彼が勝利を狙う場面もあるだろう。
ベネットがエースであり、実際に総合上位を狙える選手は多くないが、それでもコンラッド、ポリャンスキなど実力派クライマーもしっかり連れてきている。その中で個人的に注目しているのが、昨年までCCCに所属していたオーストリア人グロスシャルトナー。ツアー・オブ・クロアチアでは2年連続の総合4位、今年のアルガルヴェでは総合9位と、実力は示してきている。
201~.ディレクトエネルジー(TDE)
2016年ブエルタに続き、昨年のツールでも区間勝利を挙げて注目を集めているカルメジャーヌ。昨年のパリ~ニースでも山岳賞を獲っており、「1クラスなどのステージレースでは積極的に区間と総合での勝利を狙い、ワールドツアーではきっちりと区間や山岳賞に焦点を絞る」という、堅実な戦い方でチームに貢献している。今大会はどうするのだろう。やはり総合は狙わない?それとも・・・?
あとは、いつ引退を宣言してもおかしくないシャヴァネルが、花道となるような勝利を飾れるかどうか・・・。
211~.デルコマルセイユ・プロヴァンスKTM(DMP)
ディグレゴリオはエトワール・ドゥ・ベセージュで山岳賞、ツール・ラ・プロヴァンスで1勝、ジョーンズは1月のラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴで区間2勝&ポイント賞と結果を出しているが、いずれもワールドツアーでの対応は難しいだろう。
あとはいかに積極的に逃げるか。シシュケヴィチュスは2年前のパリ~ニースで逃げに乗って山岳賞を獲ったり、昨年のドーフィネでボウマンが勝ったステージで区間2位を獲ったりと、フランスのワールドツアーでの積極的な逃げが光る選手だ。
注目選手たち
波乱が予想されるスプリンター勝負
今期ここまでの状況を見て、最も調子の良いスプリンターと言えば、エリア・ヴィヴィアーニとディラン・フルーネヴェーヘンの2名を挙げることができるだろう。平坦ピュアスプリントであれば、この2人は今期最強と言っても過言ではない。
ただし、今年のパリ~ニースは純粋なピュアスプリントを狙えるステージが少ない。第1ステージは完全に無理だろうし、第2ステージは最もピュアではあるがラストは少しだけ登っている。第3ステージはラスト22kmに3級山岳が控えており、ゴール前1kmにも登坂区間がある。第5ステージもスプリンターたちが終盤に戻ってくることは十分に可能だろうが、ゴール前13kmに平均勾配6%越えの3級山岳と、カテゴリのついていない小さなアップダウンが控えており、簡単に集団スプリントで決まるとは限らない。
そんな、波乱が予想されるスプリントステージの状況だけに、上記2名以外の優勝候補であるアレクサンデル・クリストフ、ジョン・デゲンコルブ、アンドレ・グライペル、アルノー・デマール、マッテオ・トレンティンなどの起伏や悪路でも対応できるスプリンターたちが、最大の優勝候補と言えるかもしれない。
それに対抗するのは、マウヌス・コルトニールスンやフィル・バウハウス、サム・ベネットといった「挑戦者たち」。昨年もベネットやコルブレッリが勝つなど波乱もあり、バウハウスやコルトニールスンも最近の上級カテゴリレースで強さを見せつけているため、勝利予想はなかなかに困難である。
そして、もう後がなくなりつつあるナセル・ブアニ。2年ぶりの勝利を手土産に、ツールへと必勝態勢で臨めるか、注目だ。
総合優勝争いを制するのは?
総合上位争いも混沌とするのがパリ~ニースである。当然、昨年総合優勝のセルヒオ・エナオとチームメートのワウト・プールスは最大の優勝候補であるが、昨年総合3位のダニエル・マーティンは今期調子があまりよくない。
また、今大会は第7ステージの頂上ゴールのほかは、第4ステージの18km個人TTが総合争いに大きな影響を及ぼす可能性が高い。よって、個人TTに強いプールスのほか、ジュリアン・アラフィリップ、ティージェイ・ヴァンガーデレン、ヨン・イサギレ、バウケ・モレマ、ルイスレオン・サンチェスなどが総合表彰台を取り合うことになるだろう。
イルヌール・ザッカリン、トニー・ギャロパン、ヤコブ・フールサンも比較的TTも登りもバランスよく高い能力を誇るため、TOP10には入ってきそうだ。逆にTTでタイムを落としがちなダニエル・マーティン、サイモン・イェーツ、エステバン・チャベスが第7ステージでどれだけライバルを圧倒できる走りができるか。
ワレン・バルギルやヘスス・エラーダといったプロコンチネンタルチームで挑む実力者たちの順位も気になるところである。
パンチャーに活躍の機会あり
今回のコースを見ていると、今大会はアルデンヌにも強いパンチャーに勝機のあるステージが複数ある。
その最たるものは第1ステージで、全長1.9km、平均勾配5.4%の3級山岳はスプリンターにはやや厳しいレイアウト。さらに最後の500mには石畳が敷かれており、先だってアンダルシアの第4ステージを制したティム・ウェレンスなんかには最適なステージと言えるだろう。
この日勝つことのできたパンチャーにはマイヨ・ジョーヌが与えられる。なかなかパンチャーがマイヨ・ジョーヌを得ることのできる機会は少ないので、総合争いのできないパンチャー/クライマーの積極的な走りが楽しみだ。
第2ステージはさすがにスプリンターの独壇場だろうが、第3ステージや第5ステージは、スプリンターを振り切ったアタッカーたちにチャンスが生まれ得る。
そして第6ステージも、終盤にかけて山岳ポイントが連続し、ゴール10km手前には平均勾配10%の激坂が。そのあとも厳しい登りが控えているため、アルデンヌ系クラシックに強いパンチャー/アタッカーたちが活躍するチャンスとなる。
先に挙げたウェレンスのほかは、ジュリアン・アラフィリップ、アレクシー・ヴュイエルモ、ディラン・トゥーンス、トムイェルト・スラフテルなどがこういったレイアウトを得意とする。山岳逃げという観点で言えばトーマス・デヘントやオマール・フライレなどにも期待したいところで、総合優勝・スプリント以外にも楽しみが多くあるのが今大会の特長ということができるだろう。
なお、冒頭でも挙げたが、以下のコースプレビューで各ステージの詳細なレイアウトなどを解説している。参考にして頂ければ幸い。