レース、個人ときて最後はチームランキング。ただし、UCIランキングではなく、勝利数ランキング。
なぜ勝利数にするかというと理由は2つある。
- シーズン序盤から、勝利数というのはチームの力を測る指標としてよくファンの間で話題に上るから。
- クラシックとステージレースの総合順位に評価が偏っているUCIランキングでは、ステージレースの区間勝利を積み重ねていくタイプの選手/チームが正当に評価されないから。
ただもちろん、UCIランキングもそれなりに意味はある。何しろ、UCIチームランキングで最下位になろうものなら、来期のワールドツアークラス存続の危機すら囁かれるのだから。
だから、今回のランキングでは、ベースを勝利数にしつつ、UCIワールドツアーランキングも併記することにした。
それで、勝利数とUCIランキングの差異というのも感じ取っていただければ幸い。
また、今回はあえて「1位」から順番に紹介していく。
1位があのチームだというのは誰もが想像できるだろう。
むしろ、「最下位」がどこのチームなのか、気になる人の方が多いのではないか。
- 第1位 クイックステップ・フロアーズ(56勝)
- 第2位 BMCレーシングチーム(48勝)
- 第3位 チーム・スカイ(36勝)
- 第4位 ボーラ・ハンスグローエ(33勝)
- 第5位 モビスター・チーム(31勝)
- 第6位 オリカ・スコット(29勝)
- 第7位 FDJ(27勝)
- 第8位 チーム・ロットNLユンボ(26勝)
後編はこちら
第1位 クイックステップ・フロアーズ(56勝)
UCIワールドツアーチームランキング:2位
フェルナンド・ガヴィリア 14勝
マルセル・キッテル 14勝(移籍)
マッテオ・トレンティン 7勝(移籍)
フィリップ・ジルベール 5勝
イヴ・ランパールト 3勝
ダビ・デラクルス 2勝
ジュリアン・アラフィリップ 2勝
ボブ・ユンゲルス 2勝
マキシミリアーノ・リケーゼ 2勝
イーリョ・ケイセ 1勝
ゼネック・スティバール 1勝
ダニエル・マーティン 1勝(移籍)
トム・ボーネン 1勝(引退)
ジャック・バウアー 1勝(移籍)
56勝のうち半分を、ガヴィリアとキッテルで稼ぎだしている。とくにガヴィリアは昨年の7勝から2倍。プロ入り後の勝利数25のうちの半分以上を今年だけで稼いだことになる。まさに、急成長。
だから、移籍・引退する選手の合計勝利数が半分近い26勝分あるとしても、それが即、クイックステップ弱体化につながる、とは言い切れないだろう。今年9勝しているヴィヴィアーニの加入もあり、毎年コンスタントに勝利数を稼いでいるジルベールも残り、何より、今年は正直振るわなかったユンゲルスやアラフィリップが、来年大暴れしてさえくれれば、勝利数だけでなくUCIランキング首位の座も望めるだろう。
若手を中心に強さを見せつける、新生クイックステップが楽しみだ。
第2位 BMCレーシングチーム(48勝)
UCIワールドツアーチームランキング:3位
ディラン・トゥーンス 8勝
フレッヒ・ファンアフェルマート 7勝
リッチー・ポート 6勝
ローハン・デニス 6勝
TTT 4勝
シュテファン・キューン 3勝
ジャンピエール・ドラッカー 3勝
シルヴァン・ディリエ 3勝(移籍)
ベン・ヘルマンス 3勝(移籍)
マヌエル・センニ 1勝(移籍)
ブレント・ブックウォルター 1勝
ジョセフ・ロスコフ 1勝
ティージェイ・ヴァンガーデレン 1勝
マイルス・スコットソン 1勝
最注目はやはりDトゥーンス。フレッシュ・ワロンヌで頭角を現したと思いきや、あれよあれよという間に勝利数を稼いでしまった! これが今年だけの爆発にならぬよう・・・BMCの育成力も重要だ。
実にこのチームらしいのがTTTの勝利数。しかも4勝中3勝がワールドツアークラスのレースなのだから、さすがというほかない。
そんなBMCのTTスペシャリスト陣の成長株が、今年24歳のシュテファン・キューン。今年のスイスITTチャンピオンになっただけでなく、ツール・ド・フランス初日ITTでまさかの2位。マイヨ・ブランも着用した。カンチェラーラの後継者になりうるか。
移籍組ではディリエとヘルマンスが、共に今年飛躍を果たした。いずれも、超強力な選手たちが集うBMCよりも、それぞれの新天地(AG2R、イスラエル)の方が活躍できそうな気がするので頑張ってほしい。とくにヘルマンスは、今年のジロでリタイア直前は総合11位と健闘していた。おそらく、イスラエルサイクリングアカデミーは来年のジロ出場を内定されているはずなので、ぜひともその総合エースとして、帰ってきてほしい。
第3位 チーム・スカイ(36勝)
UCIワールドツアーチームランキング:1位
エリア・ヴィヴィアーニ 9勝(移籍)
クリス・フルーム 4勝
ミケル・ランダ 4勝(移籍)
ミハウ・クフャトコフスキ 4勝
ゲラント・トーマス 4勝
ダニー・ファンポッペル 2勝(移籍)
セルヒオルイス・エナオ 2勝
ワウト・プールス 1勝
ジャンニ・モズコン 1勝
ピーター・ケノー 1勝(移籍)
TTT 1勝
ホナタン・ディベン 1勝
イアン・スタナード 1勝
ルーク・ロウ 1勝
ヴィヴィアーニは序盤の不調からの、ジロ出場できない事件をバネにしたのか、移籍を決めたのちのシーズン後半で大爆発を決めた。結果、キャリア最大の勝利数を稼いだ年となり、UCI個人ランキングでもおそらく自身最上位を記録したのではないか。
ほかに飛躍という意味で目立つのはクフャトコフスキか。勝利数で言えばクイックステップ、BMCには一段劣るのだが、フルームやクフャトコフスキのように、勝利1つ1つの価値が高く、結果的にUCIランキングでは1位となった。また、ステージレースだけでなく、各種クラシックでの勝利が多くバランスの取れたチーム編成であることもポイントが高くなる要因だろう。クフャトコフスキはその意味でもチームに貢献している。
今期、最も飛躍した選手の1人で、かつ最も悔しい思いをした選手でもあるのが、ゲラント・トーマス。来年も同じ良いコンディションを保てるかは不安はあるが、応援し続けていきたい。
移籍組ではランダ4勝。彼がエースを務めるレースがもっと増えれば、もっと大きな結果を残せていたかもしれない。来年はその点、移籍先・・・もあまりエースを担わせてくれなさそうだ。ありゃ。
第4位 ボーラ・ハンスグローエ(33勝)
UCIワールドツアーチームランキング:8位
ペテル・サガン 12勝
サム・ベネット 10勝
ラファウ・マイカ 4勝
グレゴール・ミュールベルガー 2勝
マチェイ・ボドナール 1勝
ユライ・サガン 1勝
ヤン・バルタ 1勝
アレクセイ・サラモティン 1勝
ルーカス・ポストルベルガー 1勝
ボーラがこの順位と知って、あれ?そんな勝ってたっけ? という思いを抱くのも無理もない。サガンとベネットだけで、3分の2の勝利数を稼ぎだしているのだ。まさにチーム・サガン。マイカとケーニッヒが振るわなかったせいで、想像していた以上にチーム・サガンだった。ボドナールからサラモティンまでの合計4勝は国内選手権の優勝だし。
それでも、サガンに頼りきるだけのチームではなく、レースのクラスはサガンと比べ一段劣りはするものの、勝利数だけならば喰らいついたのがベネット。とくに終盤のツアー・オブ・ターキー4勝はインパクトがでかい。アイルランドの期待の星なので、今後の活躍にも期待したい。サガンに負けないくらいイケメンだしね。
ちなみに最後に付け加えておくと、UCIワールドツアーチームランキングのポイントは6516ポイントで、そのうちの2544ポイントをサガンが稼いでいる。マイカは1117ポイントで、それ以外の選手は全員600ポイント未満である。あー、やっぱりチーム・サガン。
第5位 モビスター・チーム(31勝)
UCIワールドツアーチームランキング:6位
アレハンドロ・バルベルデ 11勝
ナイロ・キンタナ 6勝
カルロス・バルベロ 5勝
ホナタン・カストロビエホ 2勝(移籍)
ゴルカ・イサギーレ 2勝(移籍)
ヘスス・エラダ 1勝(移籍)
TTT 1勝
ヤッシャ・ズッターリン 1勝
アレックス・ドゥーセット 1勝(移籍)
ローリー・サザーランド 1勝(移籍)
バルベルデがあんたスプリンターですか?ってなくらい勝利した。だからなんとかこの順位ではあるが、正直、今年のモビスターはジロとバルベルデ以外はダメダメだった印象しかない。もともとクラシックは苦手なグランツール特化型チーム。スカイがクラシックへの強化を進める中で、このチームは取り残されている感がある。
そしてクイックステップにも匹敵するベテラン中堅勢の流出。代わりに、カハルラルから上がってきたバルベロが1クラスとHCクラスで勝利を稼いでくれたのは嬉しい。勝利こそ1つしかないが、今年25歳の若手ズッターリンが、TTを中心に頭角を現しつつあることも、今後のモビスターを考えるうえで期待が持てる。
あとはスペインの若手がどれくらい育ってくれるか・・・マルク・ソレルはいい動きは終始していたのだけれど、結局勝利に繋がってないのは痛いなぁ。
第6位 オリカ・スコット(29勝)
UCIワールドツアーチームランキング:7位
カレブ・ユワン 10勝
ルカ・メスゲッツ 3勝
サイモン・イェーツ 3勝
ミヒャエル・アルバジーニ 3勝
ダリル・インピー 2勝
マグヌスコルト・ニールセン 2勝(移籍)
ロマン・クロイツィゲル 1勝
ジャック・ヘイグ 1勝
スヴェン・タフト 1勝
ルーク・ダーブリッジ 1勝
アダム・イェーツ 1勝
ダミアン・ハウスン 1勝
完全にガヴィリアに置いていかれた感があるかなユワン・・・と思っていたらツアー・オブ・ブリテンでしっかり3勝(まあそのあとガヴィリアもグアンジーで4勝しているんだけど)。とりあえずユワンがダウンアンダーだけの人にならなくて良かった。
ちなみに今年のユワンは本当に強かったなって思っていて、その象徴がアブダビツアーでの勝利だと思っている。直前の第2ステージで、ガッツポーズをしようとしたせいでキッテルに差されてしまったユワン。それをきっちりリベンジするなんて、実力がなければできない芸当だ。
ちなみにこのときユワンを支えていたロジャー・クルーゲとのコンビが個人的には気に入っている。ジロでは連れていかれずメスゲッツとコンビを組んで(´・ω・`)としていたのだが、ブリテンで復活して歓喜。身長30㎝差の大人と子供コンビの楽しさよ。
第7位 FDJ(27勝)
UCIワールドツアーチームランキング:17位
アルノー・デマール 10勝
ティボー・ピノ 4勝
ヨハン・ルボン 3勝(移籍)
イグナタス・コノヴァロヴァス 3勝
アルトゥール・ヴィショ 2勝
ダヴィド・ゴデュ 1勝
マルク・サロー 1勝
トビアス・ルドヴィクソン 1勝
オドクリスティアン・エイキング 1勝(移籍)
ダヴィデ・チモライ 1勝
27勝もしているのに、UCIのランキングでは下から2番目。それもそのはず。勝利はデマールがほぼ稼ぎきったのだし、そのデマールもクラシックでは結果を残せていないのだから。まあこのチームに関しては、先日のUCI個人ランキングのときにも書いたように、チモライ・グアルニエーリ・コノヴァロヴァスのトリオがデマールを支える最強スプリンターチームを形成しつつあり、来年も結果が期待できそうなので気長に待ちたいとは思う。
でもさすがにクラシック対策しないと・・・AG2Rは少しずつ変革しつつあるので、FDJもそれに乗り遅れないようにしないとね。可能性あったエイキングも移籍してしまうし。
第8位 チーム・ロットNLユンボ(26勝)
UCIワールドツアーチームランキング:16位
ディラン・フルーネヴェーヘン 8勝
プリモシュ・ログリッチェ 6勝
ラルス・ボーム 3勝
ティモ・ルーゼン 2勝
ヴィクトール・カンペナールツ 2勝(移籍)
ヨス・ファンエムデン 2勝
フアンホセ・ロバト 1勝
クーン・ボウマン 1勝
ジョージ・ベネット 1勝
シャンゼリゼを制した男、フルーネヴェーヘン。グアンジーではガヴィリアのスプリントステージ全勝を止めたりと、派手さはないけれどもトップスプリンターたちに負けない力量を誇る選手だ。
ほかにもデュムランを破った男ファンエムデンなど、とにかく地味な実力者の多いチーム。そのせいで勝利数は決して多くなく、UCIランキングも後ろから3番目と、決して結果には残らないのだが、それでも確かな存在感を放っている選手である。個人的には大好き。ビアンキだからというのもあるけれど。
来年はダニー・ファンポッペルも仲間入りを果たし、もう少し勝利数を伸ばすことができるかも。若手の注目株ネイルソン・パウェルスの加入も決まり、ヘーシンク、クライスヴァイク、そしてベネットといった総合勢の活躍にも期待。彼らが頑張らないと、UCIランキングも上がらないので・・・。
以上で「前編」は終了。次回は「後編」だ。
果たして勝利数ランキング最下位はどのチームか・・・シーズン序盤で苦戦していたあのチームは意外とあの順位に・・・?
UCIランキング最下位は割と簡単に予想がつくだろうが、その勝利数ランキングでの位置は意外なことに・・・?
後編へ続く。
後編はこちら