ブエルタ最終決戦の舞台となるのは「魔の山」アングリル。深い霧に覆われることの多いこのステージで、今年も総合優勝者が決まる。このブエルタで引退を決めているコンタドールが、ブエルタで最初の総合優勝を確定させた山でもあり――彼のプロ生活最後に登る山となる。
- 第16ステージ シルクイト・デ・ナバラ~ログローニョ 42km(個人TT)
- 第17ステージ ビリャディエゴ〜ロス・マチュコス 180km
- 第18ステージ スアンセス~サント・トリビオ・デ・リエバーナ 168.5km
- 第19ステージ カソ.パルケ・ナトゥラル・デ・レデス~ヒホン 153km
- 第20ステージ コルベラ・デ・アストゥリアス〜アルト・デ・アングリル 119.2km
- 第21ステージ アロヨモリノス~マドリード 117.6km
↓第1週・第2週のコースプレビューはこちら↓
第16ステージ シルクイト・デ・ナバラ~ログローニョ 42km(個人TT)
スタート地点は「ナバラ・サーキット」。ゴールのログローニョはピエドラ橋などで有名な、歴史ある町だ。
今大会唯一の個人タイムトライアル。ただし距離は42kmとかなり長い。TTが得意な選手と苦手な選手との間に平気で2分以上のタイム差がつきかねない。その点でやはりフルームが有利。チャベスやバルデがどこまでタイムを落とさずにいられるかが鍵だ。
ステージ勝利でいえばデュムランやトニー・マルティンが今回は出場しなさそうなので、ローハン・デニスが最有力か。ただしデニスは長距離TTはまだ未知数なところがあり、TTというのは意外なスターが生まれやすい種目でもある。
第17ステージ ビリャディエゴ〜ロス・マチュコス 180km
カンタブリア山脈に突入。早速の超級山岳ロス・マチュコス山頂フィニッシュ。
第3週はアングリルに注目が集まっているが、この日のフィニッシュもかなり強烈。ブエルタ初登場? ちなみに「パシエガ」はアルタミラ洞窟壁画のある洞窟の1つと同じ名前だが、実際に同じところなのだろうか。
超級山岳ロス・マチュコスの断面図。登り始めに異様な勾配が連続で登場する。
果たしてどんな展開が待ち構えているのか。
第18ステージ スアンセス~サント・トリビオ・デ・リエバーナ 168.5km
(ブエルタとしては)小さ目な山岳が終盤に連続で登場する。難易度自体は(ブエルタとしては)低い方だろう。
ただしラストが2kmで200m登る3級山岳の山頂フィニッシュ。クライマーが勝つか、それともパンチャーが粘って勝利するか。様々な可能性が考えられそうなステージだ。
期待はこの夏以降、大ブレイクを果たしているディラン・トゥーンス。あるいは、そのディランが勝つステージで上位に入ることの多い、FDJのオドクリスティアン・エイキングだ。
第19ステージ カソ.パルケ・ナトゥラル・デ・レデス~ヒホン 153km
スタート地点は「レデス自然公園」の意味。
この日も見た目的には厳しくなさそう。序盤の1級山岳は7kmの登りの中に8~9%の勾配区間が連続しているが、序盤なので大逃げを生み出す以外の効果は持たないだろう。
むしろ怖いのは終盤の3級山岳。平均勾配10%弱はありそうな登りなので、それなりにセレクションがかかりそうだ。今大会最後の逃げ切りチャンスにもなりそうなので、大量の逃げ集団が生まれるのは必至だろう。
登坂力が高くなくてもチャンスがありそうなのもポイントだ。
第20ステージ コルベラ・デ・アストゥリアス〜アルト・デ・アングリル 119.2km
ついに現れたアングリル。ただしアングリルだけでなく、その前の2つの山岳との絡みで非常に厳しいステージである。
まずは1級コベルトリア。2010年ブエルタ第16ステージで、最後から2番目の山岳として使用され、エウスカルテル時代のミケル・ニエベが逃げ切り勝利。彼にとってのプロ初勝利となった。
中盤の18%激坂区間を越えたあとも9%~10%の厳しい勾配が続く。ここで遅れ始めると、2~3分差で首位を走っている選手だったとしても表彰台を失う可能性すらある。
次の1級山岳はコルダル峠。2008年のブエルタ第13ステージでもアングリルと一緒に登場。ブエルタ初出場となったコンタドールが前日から連勝を果たし、前年のツール、同年のジロに続き、グランツール完全制覇を決めるきっかけとなったステージだ。
そして、コンタドールにとって最後のブエルタ勝利となる2014年のブエルタにも登場。このときはアングリルではなかったものの、同じようにコンタドールが勝利し、同じように「ピストル」を見せてくれた。
そして最終決戦アングリル。残り4km~2kmにかけて、勾配15%未満の区間がほぼ存在しないという、名実ともに最強の山である。
ブエルタ初登場は1999年と意外と歴史は浅い。以来、ブエルタ登場は全6回。直近3回の優勝はコンタドール(2008)、コーボ(2011)、エリッソンド(2013)と実力者揃い。
もちろん、ファンとしてはコンタドールの雄姿を見たいところだが、一方でエリッソンドのように新たな才能の輝きを見たくもある。
2013年はホーナーとニバリの激しい総合争いの舞台となった。結果、ニバリはホーナーから逆にタイムを失う結果となり、ホーナーの総合優勝が確定した。
ただ、今年のアングリルはコベルトリアとコルダルとセットになることで、過去のアングリル以上に厳しい戦いになるかもしれない。
正真正銘、最終決戦の舞台。表彰台が一気に入れ替わる可能性すらある。
ブエルタらしい熱い戦いが繰り広げられることを期待している。
そしてコンタドール。たとえ、先頭でゴールできなかったとしても――その美しい登りの姿を、最後に見せてほしい。
彼にとって、最後で最高の舞台となることを願っている。
第21ステージ アロヨモリノス~マドリード 117.6km
もちろん最後はマドリードでの周回バトル。だが、ブエルタが他のグランツールと違うのは、最終日までポイント賞の行方がわからなくなることが多いということ。2年前はなかなかに衝撃的だった・・・。
また、なかなかピュアスプリンターが勝利を稼げないブエルタで、最後の栄冠を掴むチャンスでもある。キッテルやサガンなどツール最強のスプリンターも軒並み出場しないようなので、なかなか彼らには勝てないスプリンターたちにチャンスが回ってくる。
個人的な予想をしておくと、ジロでは全然活躍できなかったサッシャ・モドロに期待したい。ツール・ド・ポローニュで久々のWT勝利を決めている彼は、このブエルタで結果を出す可能性が十分にある。まあまだ出場は確定していないけれど。
第2週・第3週と、厳しい山岳ステージが長いスパンで散りばめられている今年のブエルタ。
シーズン終盤ということもあり、コンディションの好不調が決定的な展開を生む可能性が十分にあるコース設定ともなっており、期待は否応にも高まってしまう。
来週のブエルタ開幕日の日中に、全チームスタートリストとプレビューを掲載予定。
そこで勝者が誰になりうるか・・・予想してみたいと思う。