りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2017 第6ステージ

キッテル強い!!

 

 

その勝利のポイントは、放送中に宮澤さんが解説していた通り。

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まず、残り272mの段階で、メインのスプリンターたちよりも後方で待機するキッテル。

これだけ見れば、彼は勝負に絡めない位置に取り残された、と判されてしまいそうだ。

 

だが、戦後のインタビューでの彼の言葉によると、このとき彼は冷静に、目の前の状況を見て、右側から進むことが決して楽な道ではない、という判断を下した。

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だから彼は進路を左に転換。そのまま、誰もいない道を突っ切る。

 

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残り100mの段階でグライペル、デマールと並ぶが、このときの時速はグライペル54km/h、デマール65km/hに対してキッテルは70km/h。

 

あとは完全な力の勝負。後続から一気に追い上げたそのスピードとパワーで、真正面からライバルたちを圧倒した。

もちろんこの勝ち方は、自分の走りに相当の自信がなければなしえない。何しろ、誰もいない道を進むということは、空気抵抗をすべて自分で引き受けなければならないのだから。

それでも、自ら後方に待機することで周りに警戒されることもなく、冷静に進むべき道を判断できたのは、非常にクレバーである。ただ力強いだけではない。

 

 

宮澤さんも言っていたように、第2ステージも似たような勝ち方だった。

サバティーニなどの最強の発射台役が最高のポジションまで運び、最速で一点突破する、という方法ではない勝ち方だ。

もしかしたら、今までのやり方では簡単にマークされてしまう、という思いから、この戦略に切り替えたのかもしれない。

サガンとかも参考にしたらいいのではないか(笑) まあサガンも後ろから突っ込むことはあるけれど、たいていギリギリで間に合わないんだよね・・・そこを間に合ってしまうキッテルの強さと勝負勘はさすがとしか言いようがない。

 

 

 

 

そしてこの日は、デマールの動きに対しての非難がまた高まった日でもある。

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さきほどと同じ場面だが、ゴール前191mの段階で、コース右端の狭いところを抜けている。カチューシャの選手(おそらくツァペルか?)の脇を直前ですりぬけたことで、この選手が抗議の手を挙げてもいる。

 

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直後の場面では、今度はスウィフトの右横をすり抜けている。

正面からの映像だとわかるが、このときやや、肩でスウィフトを押す仕草もしている。

 

 

 

 

非難轟々である。

 

まず第一に、デマールの動き自体は、スプリントバトルでは決して珍しくない動きである。それこそ、ジロのガヴィリアも近い動きはしていた(そのときよりも、確かにデマールの狙った隙間は厳しかったような気はするが・・・)。

 

だが一方で、彼の動きは落車を誘発しうる動きであったことは確かで、第4ステージでのサガンのレース除外の理由が(実際にカヴやデゲンコルブらの落車に繋がったから、という結果ではなく)行為そのものにあるのだとしたら、今回のデマールの動きもまた、レース除外となっても仕方ないものだったとは思う。

 

公平を期すなら、サガンとデマールは同等の行為をしたのであり、それに対するUCI側の裁定も同等であるべきだ、という意見には同意する。

 

 

一方で、デマールの動きは、勝利を目指すスプリンターとしては自然な動きだったと思う。もちろん、その意味でカヴェンディッシュの動きも。

少なくとも、進路妨害の意図をもって行う「斜行」とは、少し性質を異にするものだと思う。

 

確かに、こういう動きを行わない方が危険が減るのも確かだと思うし、そういうものが禁止される/なくなっていく方向が、より良いのかもしれない。

だが本当にそうなのだろうか?という思いは抱かなくもない。危険を承知の上で、白熱したスプリントを見たいという無責任な欲望もまた自分の中にはある。

結論はまだ、出せていない。

 

 

しかし、そういったアクロバティックな走りを見せたデマールに対し、キッテルはその力を見せつけて叩き伏せた。

これにはもう、文句のつけようがない。今日のレースはひたすら、キッテルがヒーローであった。

 

 

ちなみに、今日のレースの終盤における各選手の最高速度を比べると、実はキッテルよりもデマールの方が速かった、というデータが出ているようだ。

 残り500mというと、デマールが前の方にポジションを上げようとしたときである。

 

逆に言うとこのとき、彼はそのポテンシャルを使い切ってしまったようだ。そして、自ら隘路へと突っ込んでいってしまった。

キッテルはそこを冷静に、力を貯めた状態で後ろから突っ込んでいったのだ。

 

やはりクレバーな勝ちかただった。

 

と同時に、デマールも、やりようによってはキッテルを圧倒できるかもしれないんだから頑張れ、とは思う。

 

 

なんとかFDJのアシストが、ここまでデマールを引っ張っていければよかったのだが・・・ドーフィネ第2ステージの勝利は、まさにグアルニエーリの牽引が活きた形だった(そのときはグアルニエーリがボアッソンハーゲンとの押し合いを経てラインを作った)。

 

アシストの力という意味では、今日はカチューシャが最も強かったな、と思う。

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