りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2017 第5ステージ

今年最初の本格的な山岳コース。

とはいえ、昨年ツールの第5ステージや今年ジロの第4ステージのように、序盤の難関山岳ステージというのは、結局はそこまで総合勢の争いは起きない——そんな風に思っていた。が、この第5ステージは違った。はっきりとした差が生まれてしまった。

 

さすが、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ。5年前ツールでウィギンスにマイヨ・ジョーヌをもたらし、3年前ツールで総合優勝者ニバリに勝利を与えたステージである。

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レースは、8人の逃げが形成されたところから始まった。トマ・ヴォクレールフィリップ・ジルベールトーマス・デヘントなどを含んだ逃げ。しかし、今日のようなステージで逃げ切りを決めるのは難しい。最終盤はジルベールとヤン・バークランツが飛び出して粘るも、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユの登り2kmの地点で吸収された。ジルベールはこの日、誕生日。敢闘賞も獲得し、今年の絶好調ぶりを見せつけた。

ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ山頂で、元チームメートのダミアーノ・カルーゾに健闘を讃えられるジルベール

 

ここまで連日逃げてきたワンティが今日、逃げに乗せられなかったのは残念。代わってフォルテュネオ・オスカロが、ワンティと同じ3回目となる逃げを輩出。それも、第3ステージでも逃げたピエールリュック・ペリコンである。

 

 

メイン集団ではBMCレーシングが強烈に牽引。初日TT2位、スイスTTチャンピオンのステファン・クーン、同じくスイス人で強力なルーラーであるミヒャエル・シャーなどを擁するBMCは、平坦力が非常に強いチーム。だが、この時点でこれだけ頑張って、本当に山では大丈夫なのか、という意見も多く聞かれた。実際、その不安は的中する。

彼らの頑張りによって、タイム差を2~3分差を保つことができたのは間違いない。だが結果として、マイヨ・ジョーヌを保持するチーム・スカイをサポートする形になってしまったのも確かな気がする・・・。 

 

 

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 さて、残り6km地点から始まる、最後の1級山岳ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ。平均勾配8.5%。序盤からいきなり13%の激坂区間が始まる。

 

山の麓に辿り着いたプロトンは、チーム・スカイがヴァシル・キリエンカを先頭にしてアクセルを踏む。平坦をBMCが担当してくれていたおかげで、スカイは平坦役も含めて体力が十分に残っている。逆にBMCは、このあたりからバラバラと離れていく。

 

キリエンカは1kmほど仕事をして、本格的な登りに到達した段階で、先頭はクフャトコフスキに交代する。その結果、まずは山岳賞ジャージを着ていたネイサン・ブラウン、さらにはロベルト・ヘーシンク、ワレン・バルギルなどが遅れていく。残り5kmの段階で、ティボー・ピノも遅れ始めた。

このあたりの選手は、今年はステージ優勝を目指す形になるか。

 

残り3.5kmの地点で、トニー・ギャロパン、ピエール・ローラン、ギョーム・マルタンが遅れ始める。クロイツィゲル、マティアス・フランクもここで脱落。

 

 

残り3.1km。ここでクフャトコフスキ脱落。およそ2.5kmにわたって牽引し続け、多くのエース級、トップアシストたちを引き千切った走りを見せつけた。

昨年は不調に苦しみ、ツールでフルームを支えるという役割を果たせなかった彼は、今年こそはフルームを支えたいと常々語っていた。その思いを、しっかりとした働きとして見せることのできた日だったと言える。

先頭はミケル・ニエベにバトンタッチ。直後、バウケ・モレマとジョージ・ベネットが遅れる。

 

残り2.5km。マイヨ・ブランを着るピエール・ラトゥールが遅れていく。

その直後、集団からファビオ・アルがアタック。集団先頭のニエベも追走を仕掛けるが、追い付かない。

残り1.9kmでサイモン・イェーツが飛び出し、これに合わせてスカイはゲラント・トーマスを先頭において追走を仕掛ける。

 

そして残り1.7km。

プロトンで最初に決定的な攻撃を仕掛けたのはクリス・フルーム。イェーツ、フールサン、コンタドール、キンタナはこれに喰らいつけない。

 

だが、フルームの攻撃は破壊力こそあったものの、持続力はかつての彼ほどのものではない。フルーム自身も、ポートらのカウンターを警戒し、牽制を入れた部分はあるものの、かつての彼は牽制など入れずとも自らの力で牽き倒していたことを考えると、いまだその力は完全には戻っていない印象を受ける。

 

 

牽制の結果、アルの勝ちが確定。

5年前、27歳のフルームが、エースのウィギンスを突き放してツール初勝利を遂げた峠で、同じく27歳のアルが、一応のエースであったフールサンが脱落するのを尻目に、ツール初勝利を遂げる。

さらに言えば、かつての先輩である、ニバリが3年前に勝利をした峠でもある。苦しい1年を経て、イタリアチャンピオンジャージを引き継いだアルが、最高の勝利を天に捧げた。

 

昨年は結局イタリア人の勝利がなかったため、その意味でも偉大な勝利であったと言える。

 

 

メイン集団はどうだろうか。

牽制の結果、コンタドールたちも一度はフルームたちに追い付いた。

だが、終盤でポート、そしてマーティンがアタックしたのに合わせて活性化し、再び集団はバラバラになってしまった。

 

以下、リザルトである。総合エースを担いうる選手は黄色、アシストになるであろう選手は青、新人賞争いで重要な選手は白で表した。

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キンタナが大きく遅れる結果に。マイカもやはり厳しいか。マルタンは、この調子ならば、総合20位以内は狙っていけそうだ。

ロットNLユンボの真のエースとして予想していたログリッチェは3分以上遅れて総合争いから早くも脱落。ベネットの方が調子がいいという状態に。しかしベネットも3週間はもたないと思うんだけどなぁ・・・。

新人賞争いはイェーツが一歩リード。メインチェスも悪くないし、マイカもやはり総合上位は厳しそうなので、ブッフマンにも狙い続けてほしいところ。

 

さて、注目すべきはアシストである。まず、チーム・スカイのアシストが上位にひしめき合っているのが印象的。ニエベ、エナオ、ランダはクフャトコフスキと比べるとかなり早い段階で千切れた印象だが、そこまで遅れていないところを見るに、今日は体力を温存した、という見方もできるかもしれない。

 

より驚いたのは、ロッシュが意外と上位にいること。今日はBMC、平坦をひたすら牽いて登りでは存在感を失っていたように見えたが、ロッシュもカルーゾも、スカイと同様に温存作戦に出たのであれば、見方も変わってくる。そのうえでステージ優勝を狙うのであれば、むしろ平坦でしっかり存在感を示すことで、アリバイ作りを狙ったのだろうか?

 

ロッシュは大丈夫だろうかと不安に思っていたが、少なくとも今日の結果からは、悪くないかもしれない、と判断を変えることができそうだ。

逆にコンタドールのアシストが不安である。モレマは早々に遅れ2分差。本日まったくその姿を現さなかったパンタノは4分30秒遅れの54位である。これも、温存であればいいのだが、スイスでの状況を見るに、悲観的な想像をしてしまう。

 

それを言えばモビスターも、である。キンタナの次に上位に来ているのがベタンクールで、2分50秒遅れの42位。

バルベルデがリタイアしたことで、山岳アシスト1番手になるはずのアマドールは、10分50秒遅れの104位となった。

 

 

チーム全体の状況で言えば、フルーム、ポート、バルデ、そこにアスタナの2人が喰らいつく、そんな構造が見えてきた第5ステージである。

 

とはいえ、さすがに致命的なほどのタイム差がついたわけではないステージなので、第9ステージの状況次第で、また大きく形勢は逆転しそうである。

 

 

とりあえずアル、おめでとう!

今年こそ、大躍進の年にしてもらいたい。

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