ProCyclingStatsの計算式が改訂され、以下の記事は陳腐化されました。今の計算式ではなかなかうまく自動判定ルールが作れない・・・
当ブログでは先日のツール・ド・フランス2017 全チームスタートリスト&プレビュー - りんぐすらいどから、独自の基準で脚質を判定している。
その基準を公開する。
まず、判定に使用するのが、ProCyclingStats。
各選手のデータの中の「体重」と「GC」「Time trial」「Sprint」の4つの項目の数字を使用する。
「GC」はステージレースにおける成績を表したものだが、高得点を得られるステージレースは厳しい山岳があるのが通例なので、ほぼ「登坂力」と相似の関係にあると思ってよい。
この「GC」ポイントに対する「Time trial(以下、TT)」ポイントの割合、同じく「GC」ポイントに対する「Sprint(以下、Spt)」ポイントの割合を算出し、TTやスプリントの得意度合いを判定することにした。
以下、各脚質の代表的な選手たちのデータである。これをベースにして、各脚質の判定基準を作成した。(数値はすべてツール直前の値)
ここから、次のようなルールを定めた。
1.Spt÷GCの値が200%以上 ⇒ スプリンター
3.TT÷GCの値が20%以上100%未満 ⇒ オールラウンダー*1
4.上記以外で体重が70kg以上 ⇒ ルーラー
5.70㎏未満でSpt÷GCの値が50%以上200%未満 ⇒ パンチャー
6.上記以外の70㎏未満 ⇒ クライマー
これである程度の妥当性が確保できたと共に、上記表の中で「代表的な人物」と思われていたものの脚質を修正した選手が何名かいる。
たとえばデュムランとユンゲルスは、GCの値が高まってきたので、もはや「オールラウンダー」として良いと判断。ジロでの活躍を見るに、この判断は間違っていないだろう。
オールラウンダーと思われていたギャロパンは、GC÷Sptの値が他のオールラウンダーと比べ著しく高いため、体重はやや重いものの、パンチャーとして判定した。ここは議論が分かれるところ。
ブランビッラはクライマーだと思っていたが、GC÷Sptの値が50%を超えているため、これもパンチャーとして判定した。これもまあ、妥当か?
また意外な結果も出てくる。
たとえばバルベルデは完全にオールラウンダーのイメージだったが、GC÷TTの値が意外と低い。この基準に厳密に従えばクライマーである。パンチャー寄りのクライマー。
ただこれは、PCSのデータが、デビュー当時からのデータの蓄積であるがゆえに、昔の彼の特性を大きく反映してしまっていることが原因だろう。最近はTTも強くなってきているので、オールラウンダーという定義は外さないでおく。
またヴァンアーヴェルマートは他のパンチャーと比べると重いことがよくわかるが、彼はそもそも北のクラシックも非常に強いルーラータイプでもあるため、逆に納得できる数字であると言えるだろう。
このデータから新たに発見できるものもある。
たとえば、代表的なルーラーはスプリント力も非常に高いということ。代表的なルーラーというのはすなわち北のクラシックで活躍するメンバーであるが、最後がスプリント勝負になることも多いので、平坦独走力だけでなく勝負のスプリント力も重要になるのだろう。
また、クライマーの中でも、スプリントの強い選手、というのもわかってくる。ヴュイエルモはパンチャータイプでもあるため納得。マイカ、バルデ、マーティンも、確かにスプリント強い。意外だったのはセルヒオエナオとヘーシンク。これらのメンバーは、クライマー向けワンデーレース(LBLやロンバルディア)にも強い選手と言えるかもしれない。
そしてキンタナが意外とTT強いこと。実際ジロ最終日は良かったしね。
体重が各脚質でこれだけきれいに分かれてくるのも意外だった。ただスプリンターでは、ちょくちょく軽い選手がいる。そして、「登れるスプリンター」の基準が、この表からだけでは算出できなかったのが残念。
問題点としては、たとえばユライ・サガンのように、まだまだ実績の多くない選手は、どうしても上記の判定を使用しづらいという部分である。
まあ若い選手は、とりあえずルーラー的な役割を任せられることも多いので、それで大体間違わないかな・・・。
また、個人的にルーラーとは北のクラシックで活躍し、パンチャーとはアルデンヌ・クラシックで活躍する選手、というイメージがあるので、データ上パンチャーと判定された選手でも、北のクラシックでばかり活躍している選手などいたらルーラーにしていたりする。
ただ上記の基準でパンチャーと判断された場合、実際にアルデンヌ中心に活躍していることが多いので、ある程度は妥当性あるかなと思っている。
とりあえず上記のルールを用いることで、PCSサイトのデータを見ただけである程度すぐ脚質を判断できるようになった。
ほかにこういう観点はどうでしょう?という意見があれば、ぜひコメントなどでいただけると幸いです。
*1:当ブログでは、オールラウンダーの定義を「TT能力の高いクライマー」としています。