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ツール・ド・フランス2017 全チームスタートリスト&プレビュー

いよいよ開幕が目前に迫ったツール・ド・フランス2017年大会。

今回は、その出場する全チームのスタートリストと、簡単なプレビューを書いていく。

※表中の年齢はすべて数え年表記。脚質については独自の基準で定めております。

 

↓コースプレビューはこちら↓

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

 

1~ チーム・スカイ(SKY)

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2013・2015・2016年ツールの覇者にして、今大会最大の優勝候補クリス・フルーム。だが、今年は前哨戦ドーフィネで調子が上がり切らない様子を見せて総合4位。4勝目に向けて危機的な状況に立たされている。

とはいえ、ドーフィネの不調を過度に注目する必要はないだろう。たしかに登りでは不調が続いたが、代わりにモン・デュ・シャの下りではポートを圧倒するダウンヒルを見せてくれた。さらに、最終日の遅れも、彼自身の問題というよりかは、最終局面で彼が1人で集団の先頭を牽かなければならなかった、という状況にあった。つまり、あのとき1人でもチームメートがいれば、また違っていたのかもしれないのだ。

その点、スカイの最強メンバーを揃えることができるツール・ド・フランス本戦では、同じ状況を繰り返さないための布陣を用意することができる。まず、ドーフィネでも最終局面までフルームを支えた元世界チャンピオン、ミハウ・クフャトコフスキ。パリ~ニース総合優勝者でコロンビア王者セルヒオルイス・エナオモントーヤも当然、最強クラスの山岳アシストだ。そこに、昨年ジロ山岳賞のミケル・ニエベと、今年ジロ山岳賞のミケル・ランダが脇を固める。山岳においては右に出るもののいない布陣と言えるだろう。

一方、平坦では、ロウと並んでスカイの最強ルーラーとされてきたイアン・スタナードが、3年ぶりの欠場となった。これは驚きをもって迎えられたが、クネースやキリエンカといった、平坦だけでなく山岳もこなせる牽引役が優先されたところを見るに、ドーフィネでの山岳アシスト不在の事態を、チームとしても重く見ていたのかもしれない。過去2回のフルーム総合優勝を支えたオランダ人ワウト・プールスの怪我による欠場も、今回の山岳シフトのメンバー構成に影響を与えたのかもしれない。

最後に、ジロで悔しい思いと共にリタイアすることになった、名実ともにチームNO.2ライダー、ゲラント・トーマス。最強を揃えたこのチームが目指すのはただ一点、エースの総合優勝のみ。

また今年も、「最強」が最強の走りを見せてくれるのだろうか。

  

 

11~ AG2R・ラモンディアル(ALM)

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昨年総合2位のロマン・バルデが、今年も総合優勝を目指す。だが、昨年と比べて低調なシーズンを過ごしている今年。昨年同じく総合2位だったドーフィネも、総合6位という、イマイチな結果で終わっている。

バルデは、安定感のある走りを見せる選手である。先頭集団には常に残っていられる。大崩れしない。だが、一撃の破壊力は十分でなく、積極的なアタックを見せても、誰かを引き千切ることはなかなかできない。そんな彼が昨年、ツールで大きな結果を出すことができたのは、適切なタイミングでのアタックが功を奏したから。そういった一撃を繰り出すためには、チームメートの力が欠かせない。

その点、今年のメンバーは、例年にも増して強力な選手が揃っている。昨年解散したIAMからは、15年ツール総合8位のマティアス・フランクと、ベルギーチャンピオンになったばかりのオリヴァー・ナーセンが加わり、それぞれ山岳と平坦でバルデを強力にサポートしてくれる。さらには昨年ブエルタで1勝し、今年はロマンディ新人賞と、まさかのフランス選手権ITT覇者となったピエール・ラトゥールが、バルデの側近としてツールに初挑戦する。

このラトゥールには、是非とも新人賞も目指した走りを見せてほしいところ。今から3年前、バルデが今のラトゥールと同じ年齢だった頃、彼はエースのジャンクリストフ・ペローの総合2位を支えつつ、自らも総合6位と新人賞をモノにした。もちろん、すでにより多くの実績を出していた当時のバルデと、ツール初出場に過ぎないラトゥールを同一視するのは酷かもしれない。しかし、増えつつある同国のライバルたちから頭一つ抜け出るために彼がやるべきことは、この初めてのツールで度肝を抜く結果を出すことだ。

個人的な話をすると、山岳逃げ職人アクセル・ドモンの、初のグランツール勝利にも期待したい。いつもいいところまで行くのだが・・・なかなか勝てない。今年こそは。

 

 

21~ モビスター・チーム(MOV)

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ナイロ・キンタナは20歳でツール・ド・ラブニールを総合優勝し、23歳でツールに初挑戦し、いきなりの総合2位を獲得し、翌年にはジロで総合優勝した。ジロ史上、彼を含めて2人しかいない、総合優勝と新人賞のダブル受賞達成選手となった。もちろん、コロンビア選手としては初である。

昨年もブエルタで総合優勝をするなど、その勢いは衰えてはいない。にも関わらず、ツールだけは、王座に届いていない。2年前は、あと一歩というところまで迫った。昨年は、終盤の体調不良で3位に沈んだ。十分に凄い成績だと思うが、それでも周りの目は厳しい。

今年は、奇策を捻り出した。ジロとツールの2連戦。その緒戦は、総合2位に沈んだ。だが、目一杯の休息と、十分な下見を終えた彼は、2戦目のツールに、再びフレッシュな状態で挑むことができるはずだ。昨年は、少なくとも2週目までは、宿敵フルームの背後にしっかりと貼りつき、チャンスを窺う戦略的な走りを見せた。消極的と非難もあったようだが、今年はアレハンドロ・バルベルデが、例年に増して絶好調な様子でツールに乗り込んでくる。2015年に見せてくれたような、キンタナとバルベルデのコンビネーションアタックがうまく決まれば、やはりこのチームが最も、フルームにとっては怖い存在となるのは間違いない。

さらに今年は、盟友アナコナがいない代わりに、同じくらい強力なアマドールが、ジロからの連戦でキンタナを支えてくれる。チームの弱点であった平坦・横風対策には、新加入のダニエーレ・ベンナーティが力を発揮してくれるはずだ。若き実力派ルーラー、ヤッシャ・ズッターリンは、国内選手権ITT部門で、2年連続マルティンに次ぐ2位。しかも今年はわずか15秒差! 3度目のスペインTTチャンピオンに輝いたカストロビエホと共に、最強の平坦牽引を見せてくれるだろう。

 

 

31~ トレック・セガフレード(TFS)

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過去3回ブエルタを制し、2回ジロを制し、2回ツールを制した男、アルベルト・コンタドール。ここ数年は振るわない結果だったが、今年もまた、あくまでも総合優勝を狙う。直前のドーフィネでは、最後の山岳で力尽き、ポートに追い抜かれて落ちていく姿が映し出された。それでも、その闘志は消えていないようだ。

今年は、3月のパリ~ニースでコンタドールを支えたパンタノ、昨年ツールで第2週までフルームに喰らいついていたモレマなどがアシストとして参戦。これまでのコンタドールと比べても、チームメートに恵まれたツールとなるかもしれない。不安要素としては、パンタノが直前のスイスでイマイチな結果であったこと。そしてモレマがジロからの連戦であること。

スプリントとの両面政策で行く、という点では昨年までと変わらない。エーススプリンターはもちろんデゲンコルブ。怪我以前の状態に完全に戻った、とは言い難いようだが、直前のスイスでもフェリーネのアシストを受けて、勝利目前に迫る走りは見せてくれている。デコルトも加えたトリオで、登りスプリントなどで1勝は欲しいところ。

あとは、開催直前の、あってはならないアクシデントで、急遽出場が決まったスペルディア。グランツール出場が今回で29回目という大ベテランは、しかし未だに勝利がない。引退までの期間も決して長くはないだろう。今回こそは、とつい応援したくなる。

 

 

41~ BMCレーシングチーム(BMC)

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リッチー・ポートは、昨年のツールにおいて、フルームに匹敵する走りを見せることのできたほぼ唯一の選手である。序盤のメカトラブルさえなければ、総合2位に入ってもおかしくはない実力だった。

そんな彼がリベンジを誓う今年は、昨年にも増して絶好調。まず年初のツアー・ダウンアンダーで悲願の総合優勝。そして4月のツール・ド・ロマンディでも総合優勝を果たした。直前のドーフィネでは最後の最後でフールサンにもっていかれたが、それでも総合2位。しかも、個人TTで、フルームやマルティンを抑えて優勝するほどの力を見せつけて。

そんな彼がネックとして持つのは、チーム力である。昨年のメカトラブルも、チームの助けがあれば、また違った形になっていたかもしれない。

その部分を補うべく、今年新加入を果たしたのが元チームメートのニコラ・ロッシュ。だがこのロッシュも、春のパリ~ニース、直前のドーフィネでともに、イマイチ頼りになりきれていない。

一方、もう1つの前哨戦、ツール・ド・スイスで総合2位に入る走りを見せたのがダミアーノ・カルーゾ。彼がポートにとって、重要な存在となってくれるかもしれない。

また、パリ~ニースでは山岳中心にメンバーを揃えたがゆえに、序盤の落車に対応できず大きくタイムを落とす失敗があった。それもあってか、今回は平坦アシストが多めの布陣。平坦牽引力であれば、TTT世界チャンピオンのBMCの右に出るものはいない。

あとは、ドーフィネでフルームに差をつけられたダウンヒル、「空白の一日」の存在、さらには何度となく彼に襲い掛かる「不運」さえなければ、もしかしたら最も総合優勝に近い男と言えるかもしれない。

もちろん、リオ・オリンピック金メダリストのヴァンアーヴェルマートの走りにも注目。今年は、2年前サガンを破ったロデズの登りゴールも待っている。

 

 

51~ アスタナ・プロチーム(AST)

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アルの負傷、カンゲルトの落車、スカルポーニの死・・・度重なる不幸と、そしてなかなか勝利を掴めずにいたアスタナは、それでもドーフィネから少しずつ復活しつつある。ヤコブ・フールサンのステージ2勝と総合優勝。さらにはアルのイタリア選手権優勝! 今回のツールは、そのキャリアの中でも最も良い状態で乗り込めそうなフールサンと、イタリア最強の男になったばかりのアルの2枚看板で乗り込むことができそうだ。理想は、チームの力が最大限に発揮された2015年の姿。アルとランダのダブルエース体制で、ジロとブエルタの表彰台を確保した。

メンバーとしても、その2015年ジロ・ブエルタでエースを支えたカタルドとゼイツが入り込んでいる。とくにゼイツは、2015年ブエルタ第20ステージで、アル総合優勝の立役者となった人物。翌年の、ニバリを総合優勝させたジロでも重要な役割を演じた男だ。

 

 

61~ UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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昨年総合8位のメインチェスが今年も総合上位を狙う。目指すは新人賞。アフリカ籍として初めてとなる、パリでの特別賞ジャージ獲得を狙いたい。

昨年新人賞のアダムは不在。その兄弟サイモンも、直前のドーフィネでは不調に苦しんだ。ドーフィネではブッフマンに新人賞を奪われたものの、3週間の安定感ではメインチェスに軍配が上がるだろう。

それ以外のメンバーもかなり豪華だ。通算6勝を果たしているジロへの出場を蹴って、ツールでの勝利を求めてやってきた勝負師ウリッシ。毎年惜しいところまでいきながらも、なかなかグランツール勝利に届かないでいるアタプマも、今年こそはという思いを抱いているはずだ。そして、スプリンターでありながら山での逃げ切りも狙えベン・スウィフト。その他、屈指のアタッカーたちが、他チームに比べても自由度の高いこのチームで、積極的な逃げを狙ってくるはずだ。

そして、チーム解散の危機を救ってくれたスポンサーに恩返しをしなければならない。昨年までと違って、ジロで結果を出せばいい、ではなくなっているのだから。

(ちなみに略称のUADは、元々のチーム名 UAE Abu Dhabi からきている)

 

 

71~ FDJ(FDJ)

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チームプレゼンテーションでは中々ひどい扱いを受けた(笑)フランスの代表的チーム。

それはともかく、フランスチャンピオンのアルノー・デマールが、今年はついに、グランツール勝利を掴めそうだ。直前のドーフィネも、新加入のグアルニエーリが大活躍。チモライも、春先のミラノ~サンレモからデマールを支え続けている。デマール本人も、ツールのインタビューで「クリストフやキッテルよりも良いチームを用意できている」*1と答えている。登りゴールにも対応できる力をもった彼が、今年は大暴れする可能性は大だ。

なお、ジロで総合3位を獲ったばかりのピノは、今年は山岳賞あたりを狙ってくる様子。昨年もピレネーまではそんな感じでいい走りをしていたが結局リタイア。今年は調子のいい走りを見せてほしいところ。

 

 

81~ オリカ・スコット(ORS)

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昨年ジロ総合2位、ブエルタ総合3位と躍進しているチャベスが、ついにツール初出場——と意気込んでいたのだが、今年2月の怪我が原因で長期離脱。復帰戦となった直前のドーフィネでも思うような走りを見せられず、今回のツールではそこまで強く総合を狙うことはない、らしい。

代わって総合、ないしは新人賞を狙うのが、昨年ブエルタ総合6位のサイモン・イェーツ。だが彼もまた、ドーフィネ総合13位、新人賞4位と、ライバルたちに差をつけられてしまう結果となった。

今年は長くコンタドールを支えたクロイツィゲルを加えるなど、チャベス総合上位を狙うための態勢を整えていただけに残念。積極的な走りで、総合にこだわらない活躍を見せてほしい。

アルバジーニとインピーという、今年すでに勝利を挙げているスプリンターたちも参戦。さすがに第一線級のピュアスプリンターたちを力でねじ伏せる姿は想像しづらいが、登りスプリントや混戦の中であれば勝機を掴むことは可能そうだ。ちなみに、6年連続で出場し続けてきた、彼らのボスとも言うべきサイモン・ゲランスの姿がないようだけど・・・? 2年連続で落車リタイアしたのがさすがにこたえた、か?

 

 

91~ ディメンションデータ(DDD)

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昨年4勝、ツール通算ステージ勝利30勝の「最強の男」カヴェンディッシュ。しかし今年は感染症により、3か月の間レースから離れてしまった。ツールに間に合ったのは良かったものの、昨年のような活躍ができるかは怪しい。

一方のボアッソンハーゲンは、地元ノルウェーでステージ5勝、総合優勝2回と絶好調。もちろんノルウェーチャンピオンジャージも、TT部門の方では確保した。ライバルであるクリストフが絶不調に苦しむ中、ベルゲンでの世界選手権に向けて、いい流れを今大会でも作っていきたいはず。状況によっては彼で勝負を仕掛ける可能性も?

もちろん、ここ2年連続でステージ勝利を獲得中の、イギリスRR&TT両チャンピオンのカミングスの走りにも期待したい。パウエルス、スウェイツなど、いい選手が本当に揃っているチームだ。

 

 

101~ クイックステップ・フロアーズ(QST)

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総合は昨年9位のダニエル・マーティンが狙うことになるが、チームとして彼を山で支えるつもりは一切ないようだ。最強スプリンター、マルセル・キッテルを支える最強発射台のサバティーニとトレンティン。奇襲攻撃で勝利を狙うスティバール、ジルベール、ブランビッラ。かろうじて、ヴェルモトとバウアーが、平坦では力強くサポートをしてくれるくらいか。彼らにしても、逃げによる勝利狙いという可能性は十分にある。

とはいえ、そんな、全員が鉄砲玉、といったようなチームだからこそ、年間50勝を達成するだけの結果を出すことができる。今年も、最も勝利数を稼げるチーム候補として期待を集める。マーティンも、総合は狙いつつも、どこかでステージ勝利も狙いたいところ。なにせこれまでのツールは、いつもタイミングをわずかに外して、2位に甘んじることが多かったから・・・。

一つ懸念があるとすれば、今まではトニー・マルティンがその役を担っていた、ゴール10km手前からの強力な牽引役がいないということ。ユンゲルスも不在である。バウアーはニュージランドTT王者だし、ある程度は引き受けてくれるだろうが、逃げ切りを狙う選手たちをギリギリのところで捕まえきれない、あるいはトレインが崩壊してしまう、というようなことがないようにしなければならない。キッテルは、崩れたトレインで安定して勝利できる、というタイプでもないように思うので。

 

 

111~ ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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世界王者ペテル・サガンが、スプリント勝利と、6年連続となるポイント賞獲得を目指す。そして、元ポーランド王者ラファウ・マイカが、いよいよツールにおける初のエースとして、総合上位を狙うことになる。サガンは直前のツール・ド・スイスで2勝しており絶好調。マイカも、カリフォルニア総合2位およびスロベニア総合優勝と悪くない。

メンバーも非常に強力。まずはペテルの盟友マチェイ・ボドナールと、元BMCのドイツチャンピオン、マルクス・ブルグハート。そして、実の兄ユライ。ユライは先日のスロバキア選手権で優勝(チェコと合同開催で、合同としても3位)し、2年連続となるナショナルジャージを着用することに。今シーズンは春先のクラシックから常に弟と行動を共にし、集団の先頭を牽引するなどしっかりと活躍して見せた。そんな彼が、今年ついにツール初出場。驚きとともに、感動を覚える。

ペテルのスプリントアシストには、昨年のダウンアンダーでも活躍していたマッカーシーと、今年のジロ・ディタリアでサム・ベネットの発射台を務めつつ、自身も区間2位を獲るなど活躍を見せたゼーリッヒが加わる。普段あまりアシストを必要としない感のあるサガンだが、今大会は彼らとのどんなコンビネーションを見せてくれるのか楽しみだ。

マイカのアシストも強力だ。カリフォルニアでも活躍した盟友ポリャンスキに加え、直前のドーフィネで新人賞を獲得したばかりの若き才能ブッフマンがいる。ブッフマンは昨年も総合21位で、終盤まで積極的に逃げに乗るなどタフな走りを見せていた。

総じて、強力なメンバーが揃ったボーラだが、ペテルはともかく、マイカがどこまでの結果を出せるか。期待されているだけに、不安も付きまとう。

 

 

121~ カチューシャ・アルペシン(KAT)

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ドイツ開催だけあって、エースナンバーを着けるのは、ドイツTTチャンピオンにして世界チャンピオン、そして初日のタイムトライアル最大の優勝候補であるトニー・マルティン。今年、通常のレースにおけるTT勝利が未だになく、国内選手権でも思った以上にタイム差をつけられなかったことを悔しがるようなコメントもしていた。初日のTTの距離は14kmと、彼が得意とは言い切れない距離ではあるものの、不安をすべて押しのけて、勝利を掴むことを期待している。

また、今年唯一の勝利が、山岳での逃げ切り勝利。そもそも過去ツールでも、逃げ切り勝利が2回。独走力を活かした、そういった形での勝利も期待されていることだろう。

一方、もう一人のエースとも言うべきアレクサンダー・クリストフは、不調に苦しんでいる。春先までのHC以下のレースでは勝利を重ねてはいるし、今年からワールドツアーに昇格したエシュボルン・フランクフルトでも勝利を果たしているが、直前のカリフォルニア、そしてドーフィネでは散々であった。

逆にこの2レースで感じたのは、そのアシスト陣の強さ。とくに今年新加入のリック・ツァペルのリードアウトは、エシュボルン・フランクフルトにおいては後続を切り離すほどの勢いを見せつけ、圧倒的であった。カリフォルニア、ドーフィネでも、カチューシャのトレインは他のチームのトレインより頭一つ抜けた走りを見せることが多かったように思う。それだけにエースの不調が勿体ない。

移籍の可能性もちらつかせるクリストフ。果たして挽回のチャンスは訪れるか?

ジロで活躍したキセロフスキー、総合でも地味にいい成績を残しているマシャドらの、山岳での活躍にも期待だ。

あとは個人的にイチオシのマウリッツ・ラメルティンクのツール初出場が喜ばしい。彼は今後さらなる成長が期待できる選手だと思うので、ぜひ今回も活躍を見せてほしい。最近だとベルギーツアーで1勝している。

 

 

131~ ロット・スーダル(LTS)

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ここも豊富なタレントを揃えているチームである。もちろん主軸となるのはアンドレ・グライペルルーランツ、ジーベルク、そしてバクといった最強トレイン。1勝は確実に手に入れられるだろう。

さらに、昨年のモン・ヴァントゥーを制し、直前のドーフィネでもマイヨ・ジョーヌを着続けた男トーマス・デヘントの走りには否が応にも期待ができる。今年アルガルヴェ新人賞のベノート、昨年ジロでも1勝しているウェレンス、3年前ツールでマイヨ・ジョーヌも着用し1勝も果たしたギャロパンなど、豊富なアタッカーで勝利数を重ねる可能性が十分にあるチームだ。

 

 

141~ チーム・サンウェブ(SUN)

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最も期待を集めるのは、オリカから移籍してきた90年世代のオージースプリンター、マイケル・マシューズ。直前のツール・ド・スイスでも、登りスプリントでサガンとデゲンコルブを下して勝利を掴んでいる。

そしてその勝利を支えたのが、昨年ジロ1勝、今年カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで優勝したドイツ人スプリンター、ニキアス・アルント。彼自身も十分に勝利を狙える素質を持つだけに、この2人の組み合わせがどんな化学反応を引き起こすか、楽しみでならない。

ちなみに栗村さんはマシューズのポイント賞獲得を予想しており、それはそれで楽しみだが、昨年も彼はポイント賞に興味を示していなかったようなので、今年はどうなるか・・・。

ほか、2012年ラブニール覇者ワレン・バルギルは、今年は総合ではなく区間優勝を狙う予定。ジロでも活躍したゲシュケやテンダムといった登れる選手も揃っているので、総合を狙えなくもない・・・か?

 

 

151~ コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)

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ロードレース界きっての武闘派ナセル・ブアニ。今回のチームプレゼンテーションでは眼鏡をつけ、少し大人しくなったことをアピール? 本当に? とりあえず今年はちゃんと出場できてよかった。

ただ最終発射台スープが欠場、メンバー構成も、山で逃げる要因が増えているなど、ブアニ一本に絞り過ぎない意図が込められているように感じる。ブアニも、そろそろ結果出さないと、将来が不安かも? 今年なんだかんだでまだ4勝だしね。

 

 

161~ チーム・ロットNLユンボ(TLJ)

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エースナンバーを着けるヘーシンクは、過去何度もグランツール総合TOP10入りを果たしているベテランだが、昨年ブエルタで自身初のグランツール勝利を飾った。また、ベネットは先日のツアー・オブ・カリフォルニアで驚きの総合優勝を果たした。

しかし、真の総合エースは昨年ジロでトム・デュムランと互角の戦いを繰り広げた元スキージャンパー、プリモシュ・ログリッチェではないか、とも噂されている。

彼はただのTTスペシャリストではない。そもそもそれ以前では登れる選手として密かに注目を浴びていた。今年に入ってすでに、ヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合優勝、ティレーノ~アドリアティコ総合4位、ブエルタ・アル・パイス・バスコ総合5位、そしてツール・ド・ロマンディ総合3位と、各種ステージレースでの総合上位をコンスタントに獲得している。

安定したTT能力と、山でも遅れないペース走行(と、積極的な攻撃)がその鍵を握っている。ここ近年(でもないか?)トレンドとなっている、TTスペシャリスト型オールラウンダーの系譜に連なる、新たな総合ライダーとして注目を集めつつあるのだ。

まずは3週間、どれだけの走りを見せられるのか。同じく若き才能ベネットと共に見守りたい。

さらに、スプリンターとして頭角を現しつつある元オランダチャンピオン、フルーネヴェーヘンが、今年はツールでの勝利を目指す。純粋なスプリンターとしてはワーグナーがそのアシストを務めるが、レーゼルやローゼンもスプリント力があるため、発射台としての役割を果たしてくれることだろう。

兼ねてよりロットNLユンボといえば、稀代の逃げ屋の集団というイメージがあったが、ここ近年の総合系ライダーの成長とフルーネヴェーヘンの活躍により、今年はとても力強い印象を感じる。2勝、3勝と重ねることも十分可能なように思われるので、ぜひ期待以上の活躍を見せてほしいものだ。

 

 

171~ ディレクトエネルジー(DEN)

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ヴォクレール、最後のツール。今から13年前に、アームストロングから奪ったマイヨ・ジョーヌを、10日間着用し続けた。2011年にも、第18ステージまでマイヨ・ジョーヌをキープし、フランス人悲願の総合優勝まであと一歩というところまで迫った。今年はその思い出のコースも巡る。フランスの英雄の1人が、果たしてどんな走りを見せてくれるか。

若い才能も育っている。昨年ブエルタで衝撃の勝利を獲得したカルメジャーヌは、今年に入って既に区間3勝、総合優勝が3回、パリ~ニースでは山岳賞も獲得し、昨年の勝利がフロックではなかったことを証明した。初出場となる今回のツールも、山岳逃げなどで積極的な姿を見たい。舌ベロベロといい、ヴォクレールの正統な後継者たりえるのだから(笑)

残念なのはコカールの欠場。2年前のシャンゼリゼや昨年も、勝利まであとわずかのところまで迫ることができていただけに。代わりのエーススプリンターは、プティが務めることになりそうかな?

 

 

181~ キャノンデール・ドラパック(CDT)

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フランス人ということもありローランがエースナンバーを着ける。が、総合も山岳賞も狙わないことを明言。ステージ優勝に焦点を合わせるようだ。実際、ジロでは1勝し、先日のルート・ドゥ・スッドでもピレネーのステージで勝利を果たした。調子は上々。期待したい。

総合ではタランスキーが上位を狙うはず。かつてドーフィネ総合優勝もし、期待されながらも落車。以後は振るわないシーズンが続いていたが、昨年のブエルタで総合5位、今年のカリフォルニアでも総合3位と復活の兆しを見せつつある。今年、表彰台とは言わないまでも、総合TOP5を目指してほしいところ。

個人的に注目しているのはパトリック・ベヴィン。昨年はニュージーランドTTチャンピオンに輝き、パリ~ニースの個人TTも強い姿を見せたものの、その後はイマイチ。出場したブエルタも途中棄権で終わった。だが今年、ツール・ド・スイスのスプリントで繰り返し上位に走る姿を見せるなど、また新たな可能性が出てきた選手だ。

チームとしても、スポンサーが外れる危機を迎えており、なんとか勝利を稼がなければならない。昨年も10勝しかできておらず、今年もまだ7勝だ。

 

 

191~ バーレーンメリダ(TBM)

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昨年ツールで驚異的なダウンヒルを見せ、第20ステージでスペインに勝利をもたらしたヨン・イサギレがエース。もちろん、3週間の戦いで総合エースを務めたことはまだない。しかしバスク1周では総合3位、直前のスイスでも総合6位と悪くはないので、総合ベスト10を狙っていける可能性はある。

アシストとしてはハビ・モレーノと5年前のツールで総合9位となったヤネス・ブライコビッチ、そしてチーム内随一のツール経験と山岳でのタフネスな走りを見せられる新城幸也がいる。

このチームの目的はまた、コルブレッリのスプリント勝利にもあるだろう。ッボオッチ、ボーレ、そして新城幸也のトレインの力強さは、直前のドーフィネでも十分に証明している。大雨が降り、カオスな展開になれば、コルブレッリの勝利もありうるかも?

 

 

201~ ワンティ・グループゴベール(WGG)

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昨年はデモアティエの不幸から、アムステルでのガスパロットの感動的な勝利で注目を浴びた当チーム。今年は驚きのワイルドカード選出。ガスパロットはすでにいないが、直前のドーフィネでも連日積極的な逃げを見せ、公式プログラムに掲載されているインタビューでも、「毎日逃げたい」とコメントするなど意気込みを見せている。かつて某チームの某GMから「結果出せないならワンティにでも行ってろ」的なことを言われるくらいの扱いだったが、そんなことねーよ!というところを見せられるか。同じ公式プログラムには「9人全員でパリに行きたい」とも書いてあったが、プロコンチネンタルチームとしては意外とこれも重要。ほぼ全員リタイアしてボロボロになるプロコンとかも多いからね・・・。

エースは期待のフランス人クライマー、ギョーム・マルタン。直前のドーフィネでも総合18位と決して悪くない。まだ24歳と若いので、まずはツール本戦でも同じくらいの順位を保つことを目標にしたい。オフレドは元FDJ。ヴァンケイスブルクは元クイックステップで、今年ル・サミンで優勝している。

 

 

211~ フォルテュネオ・オスカロ(TFO)

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ツールからスポンサーが変わりチーム名も変更したらしい。

エースナンバーを着けるのは、昨年最高で区間3位まで獲得したダニエル・マクレー。今年1月のマヨルカチャレンジでは、ブアニやグライペルを抑えて勝利を掴んでもいる。

その他、フェイユ、ペリコン、セエプルヴェダなど、過去のツールでも逃げの常連として活躍選手たちばかり。今年は地元のブルターニュ地方は走らないけれども、ブルターニュ開幕の来年、確実に出場権を得るためにも、しっかりと目立っておきたいところ。

ちなみにジェスベールは今大会最年少。ツール開幕日の7月1日が誕生日で、この日のTTの第1出走者でもある。ぜひ応援しよう!

↓各ステージ優勝者や総合TOP10&各賞ジャージを予想しました↓

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