りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2017 コースプレビュー(3週目)

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第17ステージで、2年ぶりの登場するクロワ・ドゥ・フェール(鉄の十字架)峠には、標高1700m地点にある湖「グラン・メゾン湖」がプロトンを待ち構えている。

 

いよいよ2017年ツールも、最終週「美しきアルプス」を舞台にした戦いが幕を開ける。

とはいえ、近年のように山岳ステージを何連戦もする「ひたすらに厳しい」スケジュールではなさそうだ。シャンゼリゼ含め平坦が3ステージ、上級山岳が2ステージ、個人TTが1ステージ・・・その分、総合で逆転を狙う選手たち(とくにTTがそこまで強くない選手たち)は、数少ないチャンスをものにすべく、2つの上級山岳ステージ、すなわちガリビエとイゾアールで積極的な攻撃を仕掛けてくるはずだ。

あるいは、チームメートにも疲れが溜まってきている中で、スプリント勝利を狙いたい選手が逃げ切りを狙いたい選手をどう追い詰めることができるのか――そんな、手に汗握る駆け引きも、平坦ステージで見ることができるかもしれない。

 

どうコースを用意すれば面白い展開を生み出すことができるのか。主催者側の試行錯誤が垣間見えるこの第3週。

果たして期待通りの展開になるのか、それとも・・・。

 

↓第1週のプレビューはこちら↓

suzutamaki.hatenablog.com

↓第2週のプレビューはこちら↓

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

 

第16ステージ ル・ピュイ・アン・ヴレ~ロマン・シュル・イゼール 165km(平坦)

3週目の幕開けとなるこのステージは、中央山塊の山岳地帯を越えたのちに長いダウンヒルを経て、ドーフィネ地方のロマン・シュル・イゼールまで向かう、短い距離の移動ステージ。カテゴリも平坦に分類されており、スプリンターたちによる勝負が予想されるが、序盤アタックがかけやすいレイアウトということもあり、ある程度規模の大きい逃げ集団が作られてそのまま逃げ切り、ということも十分起こりうる。

また、ゴールは若干の登り基調。

ちなみにゴール地点のロマン・シュル・イゼールは、あのピエール・ラトゥールの故郷でもあるようだ。どうだろう、ラトゥール。今年は山岳賞を狙って2週目あたりでしっかりと獲得し、凱旋するというのは。あるいは、このステージでしっかり逃げに乗って、逃げ切りでのステージ優勝を狙うというのは。もちろん新人賞というのもアリだな。

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第17ステージ ラ・ミュール~セール・シュヴァリエ 183km(上級山岳)

いよいよアルプスに突入! アルプス2連戦の1日目は、「鉄の十字架」を意味する超級ラ・クロワ・ドゥ・フェール峠と、「ツールで最も高い峠」ガリビエの、実に6年ぶりの登場が待っている。前回登場予定だった2015年は落石により中止。その前が2011年で、この年はアンディ・シュレクが優勝している。

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ガリビエに関しては、直前の1級山岳テレグラフからのほぼ連続登坂となるため、その間の5kmのダウンヒルを除いても、合計登坂距離30kmとして考えることができる。

その間の平均勾配は7%と、決して甘くはない。さらにガリビエは登りの最後の6kmが最も厳しいという——6kmという距離は、フルームの「射程距離」であり、また、そのあとのダウンヒルからのゴールは、近年の彼にとって最も得意とするパターンと言えそうだ。たとえポートが登りでフルームに喰らいつけたとしても、下りではまったく相手にならなかったことを、ドーフィネでは証明されている。

 

総合を巡る激しいバトルと、ラストの手に汗握る追走劇が見られることは必至。

こういうステージでは、アシストの少ないエースは危機に立たされやすいだろう(たとえばダン・マーティンとか・・・ポートも危険だ)。

2011年のガリヴィエ山頂ゴールステージで、自らのタイムアドバンテージをしっかりと守り抜き10日目のマイヨ・ジョーヌを確定させたヴォクレール。 ある意味で勝者アンディ以上のガッツポーズを見せてくれた。人生最後のツールで、彼はどんな走りを見せてくれるのか。

 

 

第18ステージ ブリアンソン~イゾアール 179.5km(上級山岳)

ツールでは定番となるイゾアール峠が、今年初めて、フィニッシュラインに置かれた。イゾアールを制するものはそのままツール総合優勝も飾っていることが多いというが、今年は、果たして。今年は山頂ゴールの数が少な目であるため、山岳賞を巡る争いにおいても重要となるだろう。

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厳しさは言うまでもない。あえて言うとすれば、第1週や第2週の山に見られたような、極端に勾配が厳しい区間があるわけではなく、厳しい傾斜が一定で続く、という特徴がある。そのため、キンタナのようなインターバルで攻めるタイプよりも、フルームのようなペースで登るタイプの方が向いている、というところか?

ラスト7kmからの真剣勝負。もちろん、それまでの地点で、「最強チーム」によって足を削られることが最も危険なパターンなので、注意していかねばならない。

イゾアール峠が前回登場したのは2014年第14ステージ。マイヨ・ジョーヌを着たニバリを護るアスタナのトレインが印象的なステージだった。

 

 

第19ステージ アンブラン~サロン・ド・プロヴァンス

新たな伝統となりつつあった「シャンゼリゼ前日の山頂ゴール」は今年は鳴りを潜め、まるで2014年ツールの再来かのように、平坦→個人TTでツール2017総合争いは幕を閉じる。近年の、「フルーム一強」に対する主催者なりのカウンターなのだろうか。

いずれにしても、厳しいアルプス2連戦で傷ついた総合エースたちは、この日しっかりと休息を取ったうえで翌日のタイムトライアルに備えることだろう。余計なトラブルを生まないように、平坦アシストたちもしっかりと彼らを守護するはずだ。

そしてスプリンターたちにとっては、シャンゼリゼ前の最後のチャンス——とはいえ、それはアタッカーたちにとっても同様だ。スプリンターチームの疲弊具合などによっては、彼らアタッカーたちが付け入る隙は十分にあるレイアウトだ。あるいは、総合エースのお守りを課せられてきたアシストたちの中にも、最後のチャンスに向けて勝負する許可を得られるかもしれない。

とくに、クイックステップの豊富なアタッカー陣が黙ってそうにない。

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第20ステージ マルセイユマルセイユ 22.5km(個人TT)

シャンゼリゼ前日個人TTが、3年ぶりに帰ってきた。2011年にはアンディ・シュレクを泣かせ、2014年には総合2位と3位の入れ替えを生んだ、個人TT決戦。

とはいえ、先2つと比べても、今年の特徴はまず、距離が短いこと。総合勢同士のタイム差が、1分以内に収まることすら考えられるだろう。

そしてもう一つの特徴が、丘の上に立つ「ノートルダム・ドゥ・ラ・ガルド」への平均勾配10%の登坂を含むこと。

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これまでにない独特な個人TTコースで、どんな波乱が待ち構えているかはわからない。少なくとも言えるのは、その基本的な力では頭一つ抜けているはずのトニー・マルティンが、このステージで勝利できる確信がまったくないこと。

ジロ最終ステージで見られたような、意外な伏兵による勝利を見ることができるかもしれない。

もちろん、総合勢にとっても重要な1日。ドーフィネでフルームもマルティンも下したリッチー・ポートが、この日まで好調を維持し続けることができていれば、念願のマイヨ・ジョーヌを着てシャンゼリゼに向かうことができるかもしれない。

 

 

第21ステージ モンジュロン~パリ・シャンゼリゼ 103km(平坦)

スプリンターの聖地、シャンゼリゼ。ジロは今年、最終ステージを個人TTで終えたが、ツールが最終日からシャンゼリゼを外すというのは、考えられないことだろう。

2009年~2012年はカヴェンディッシュが4連勝。2013・2014はキッテルが連勝。そして2015・2016はグライペルが連勝。時の最強スプリンターに常に栄誉を授けてきたこのシャンゼリゼで、今年勝つのは誰だ?

個人的には、ブライアン・コカールにそろそろ勝利してほしいように思う。とくにこのシャンゼリゼで。2015年は本当に惜しかった。

フランス人がシャンゼリゼで勝つ。これが実現されれば、実に14年ぶりの出来事となる。

ただし、コカールが出られれば、の話ではあるが・・・。

 

 

刻々と迫るツール・ド・フランスに向け、少しでもイメージの助けになれば幸い。  

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