ロンバルディアからドロミテへ。その「移動」ステージとなる219kmの道のりは、激動の第16ステージを終えた総合勢にとっては休息の日、そしてまだ勝ちを得られていないアタッカーたちにとっては残された数少ないチャンスとなった。
それゆえに逃げも、今大会きっての大規模な集団となった。先頭の逃げが3名。追走集団が39名。メイン集団はサンウェブが牽引するが、無駄にアシストの足を削るつもりのないサンウェブはペースを落とし、先頭とのタイム差が最大14分まで開いた。
UAEチーム・エミレーツのマチェイ・モホリッチが一度独走状態に入るシーンもあったが、最後の3級山岳を越えたところで追走が合流。最終的には25名に近い逃げ集団が形成される。
サンウェブはなおもスローペースを保ったものの、逃げ集団の中には、ユンゲルスと7分38秒遅れの新人賞4位ヤン・ポランチェが含まれている。そのため、次第にクイックステップ・フロアーズの面々が前方に出てきて牽引する場面が増えていく。その中には、マリア・チクラミーノを着るフェルナンド・ガヴィリアの姿も。
逃げ集団の方もUAEチーム・エミレーツのメンバーが4人(マチェイ・モホリッチ、ヤン・ポランチェ、ルイ・コスタ、ヴァレリオ・コンティ)も含まれており、彼らがポランチェの総合ジャンプアップを目指して積極的に牽引する姿が見られた。
一度、悔しい落車でステージ優勝を逃しているコンティが積極的なアタックを仕掛けるが、決まらない。モホリッチもずっと一人で逃げていたために体力を使い果たしており、コスタも前に出られないため、せっかくの数の優位が活かせずにいるUAE。
デヴェニエンス(ロット・スーダル)、マッテオ・ブザート(ウィリエール・トリエスティーナ)なども次々とアタックを仕掛けるが、残り8km地点で最後に決定的な攻撃を行ったのが、ピエール・ローランだった。
ローランは、2011年にラルプ・デュエズを制した男であり、グランツールでも総合ベスト10に何度か入るほどのクライマーである。
今までも多くの山で勝負を仕掛けてきたものの、先日のエトナ山など、飛び出すはいいが決まり切らない、という場面も多々あった。
登りの力は確かにあるが、それが他を圧倒するほどのものではなかったがゆえに、山での勝利を決めきれずにいた彼が、今回、山を越えた先とはいえ、ほぼ平坦となるゴールで、逃げ切りを狙ったのである。
この戦い方に、少し、彼の大先輩である、トマ・ヴォクレールの姿を思い出した。
ヴォクレールばりの「舌出し」で逃げながら(それは先日の第15ステージでも見せた姿だった)、彼は最後の直線に入った。
追走集団の姿はまだ見えない。
ローランは何度も振り返り、勝利を確信すると、何度もガッツポーズをし、胸元のスポンサーをアピールして、そして、歓喜のガッツポーズを見せた。
グランツールでは、2012年のツール以来の勝利。
古巣を抜け出して、アメリカの新チームに移籍してからは初の勝利だった。
ゴール後のインタビューでも、表彰台でも、興奮を抑えきれない様子だった。
おめでとう、ローラン。
ジロでもツールでもステージ勝利を狙うと宣言している彼が、今年中にもう一度勝利を掴むことも望んでいる。
なお、最初の逃げにも乗っていたローランは、最初の2つの山岳ポイントもちゃっかり取っている。首位のランダとのポイント差は大きいが、そこも諦めずに狙っている可能性はある。