後半に激しいアップダウン。ラストも平均10%、最大12%の登り。翌日はブロックハウスの山頂ゴールと、あらゆる条件が重なって逃げ切り濃厚となったステージ。
結果として、集団も随分近くまで迫ってはきたものの、なんとか逃げ切りは果たされた。
激しい展開が連続したアルデンヌ風クラシカルステージ。総合順位の変動はなし。
逃げ切りの可能性の高いステージとあって、あらゆるチームが逃げに選手を乗せようと頑張った結果、最初の60km近く、ひたすらアタック合戦が繰り返された。
結果的にできた逃げは、「第一段階」では13名。
さらに追走で以下の3名が合流。
ボーラが3名。バルディアーニのCCCが2名ずつ。
これは・・・ついにバルタ先輩の逃げ切りがありうるか!?とちょっとだけ期待しました。
メイン集団では、逃げに1人も送ることができなかったプロコン2チーム、すなわちウィリエール・トリエスティーナとガスプロム・ルスヴェロの2チームが、全選手を使って全力のローテーション。
これ、いわゆる「お仕置き牽き」ってヤツですネ。
昨年、山本元喜選手がブログで言ってたヤツだ。
そして、残り100kmを切って、いよいよ2級山岳「モンテ・サンタンジェロ」に。
昨日のアルベロベッロも世界遺産へのゴールだったが、この日のこの山も実は世界遺産である。
「聖天使の山」を意味するこの地には、5世紀末から8世紀にかけて大天使ミカエルがたびたび出現したという。その地に時の支配者ロンゴバルト族が建てた建築物群が世界遺産の対象となっている。美しい建物ばかりなのでぜひ見てみてほしい。
さて、この山の中腹から動きが生まれた。
まず、飛び出したのがベテランのルイスレオン・サンチェス。CCCの選手が1人(パテルスキーかな?)これに喰らいつこうとするも、やがてサンチェスの独走態勢に入る。残り100km。さすがに彼1人で行くのは厳しい。だが後続の逃げ集団は次々と脱落してしまう。モンテ・サンタンジェロのヘアピンカーブの連続の登りはそれだけ厳しかったのだ!
脱落していく逃げ集団に代わって、プロトンからは新たな逃げが生まれる。
サンチェスは単独のまま山頂を越えてダウンヒルに移るが、その背後から迫る、新たに形成された12人の逃げ。
あ、バルタさん脱落している・・・
ガスプロムもウィリエールもしっかりと乗れたようで安心。頑張った甲斐があったね。
実力者も結構含まれているため、サンチェスも下りながらペースを落とし、合流する道を選んだ。
さすがに独りでこのあとも逃げ続けるのは現実的ではないからねぇ(2015年のブエルタでルーベン・プラサがそんな感じのことをやりきったけれど・・・あれはほぼ最終日だったしね。みんなもヘトヘトだったからこそできた芸当だろう)。
プロトンはどうだったかというと、先頭をカチューシャ・アルペシンが牽引していた。アスナタの選手が「おいクイックステップに牽かせろよ何やってんだ」と文句を言うも、逃げに選手を乗せられなかったカチューシャとしては追うしかない、という状況。
(以上、解説の別府始さんのコメントより。別府さんはナビゲータのときはそこまで好きではなかったが、解説では凄い的確なコメントもしてくれるように感じて好きになりました)
しかしカチューシャが牽いているのにまったく逃げとのタイム差が削られない。むしろ開いている? カチューシャは前を牽くフリをして実は逃がそうとしていたんじゃないか疑惑。仕方ないのでクイックステップが先頭に出てペースを上げる。最大で4分以上あったタイム差が2分半にまで迫っていく。残り34km。
プロトンが迫ってきたのを感じて、逃げの大集団から5名のエスケープが生まれる。
すなわち、これが最後の「逃げ」だ。そして、逃げ切り濃厚のこのステージにおける、「優勝候補」たちだ。
2013年ジロで2勝しているヴィスコンティ。スカルポーニに捧げる勝利が欲しいLLサンチェス。ジロ初出場にして2勝目なるか、ポストルベルガー。今年ダウンアンダー、パリ~ニースと好調なゴルカ・イサギレ。そして昨年ブエルタでも勝利しているコンティ。
とくにイタリア人の2人にしてみると、連日のように報道される「まだイタリア人は勝てないのか!」というメディアたちを黙らせる勝利が欲しいところ。
気持ちはわかるけれど、自国人が勝てないことをそんな、1週目も終わってないのにちくちく言わなくてもいいのに、ねぇ。ツール・ド・フランスなんてそんなの日常茶飯事じゃん。そもそも自国の総合優勝者全然出せてないあの国の方がよっぽど悲惨な気が。
昨年のニバリも随分メディアにこき下ろされ続けて・・・そこからのあの逆転勝利だから本当に彼は英雄だね。
ちなみにコンティは2分10秒遅れの総合24位。
うまくいけばマリア・ローザも獲得できるチャンスということで、自ら前を牽く場面も多くなってきた。そのせいか一度遅れかけるが、なんとか追いつく。
しかし残り15kmを切って、プロトンとのタイム差が2分を切り、マリア・ローザ獲得は現実的でなくなっていく。
残り10km。ここでヴィスコンティがアタック。ここでポストルベルガー脱落。
ヴィスコンティはやがて、残り3名に追い付かれるが、このとき後続のプロトンでも動きが起きる。
すなわち、ミケル・ランダのアタック。動きとしては、トーマスのためのアシストとしても捉えることのできる動きではあったが、後に彼の語ったところによると、チームからの指示はまったくなく、彼独自の判断だったという。ただまあ、2015年のジロやブエルタもそうだけど、こういうある意味彼の自由な走りというのが、結果としてエース(当時はアル)を助ける動きになっていたし、今回も、あまりエースとかにこだわらずランダの好きなようにさせた方がいいのかもしれない。
とにかくランダの飛び出しはかなり勢いよく、そしてプロトンからは誰も追走が仕掛けられなかった。何しろ、優勝候補のバーレーンもモビスターも、すでにチームメートが逃げに乗っているため、積極的に追う必要性がないのだ。焦るのはボブ・ユンゲルス。マリア・ローザを奪われる可能性が高くなる。しかしクイックステップはもうアシストがいない。
結局、動いたのはFDJだった。彼らが一気にペースを上げたことでランダが吸収。そしてこの一連の動きによって、逃げの4人とのタイム差も一気に縮まった。
残り3km。タイム差は1分。逃げの4人も次々とアタックを繰り出すも、そのたびに吸収。いよいよラスト1.5km。平均勾配10%の登りフィニッシュに向かっていく。
しかし、残り1kmを超えたところで、コンティ、悲劇の落車。
この瞬間、放送を見ていたイタリア人のほとんどが、深いため息をついたことだろう。
私にとっては、2015年第17ステージの下り坂でピノが落車した瞬間を思い出す。
あのあとピノはリベンジの勝利も挙げたことだし、コンティもきっと・・・がんばれ。
ちなみにこのとき、すぐ後ろを走っていたヴィスコンティもブレーキしてしまった。そのあと追い付きはしたものの、一度止まりかけてから坂を登ることで失う体力は無視できない。結果としてコンティのこの落車が、2人のイタリア人の勝利を奪ってしまった。本当に切ない。
さあ、最後のフィニッシュだ。プロトンも随分迫っていたが、結局、追い付きそうにない。
最後の400mは12%の激坂区間。
ルイスレオン・サンチェスは早々に諦め、追い付いてきたヴィスコンティとゴルカ・イサギーレの一騎打ちとなった。
しかし先述したヴィスコンティの足の削れと、そしてこのパンチャーというよりはむしろクライマー寄りの激坂を前にして、より純粋なクライマーの足を持つ、(そしてダウンアンダーで一度はチャベスを破り、パリ~ニースでコンタドールに僅差にまで迫ったその足を持つ、)ゴルカ・イサギーレが軽快な走りで坂を登り切り、
そして、勝利を掴んだ。
プロトンは12秒後にやってきた。まさにギリギリの勝利。
しかし最後には、今シーズンここまで好調できているゴルカが、翌日の「親分」の勝利に先駆けるチーム1勝目を手に入れたのだ。
そしてまたイタリア人は勝てなかったのである。
Giro d'Italia: Stage 8 - Highlights
明日はいよいよブロックハウス。
正真正銘の、「頂上決戦」。
大本命はキンタナ。これにどれだけ喰らいつけるか。
勝てなくとも、トーマスやデュムランといったTTが強いライダーたちは、2分以上キンタナに離されないようにしないといけない。
いや、のちのより厳しいステージのことを思えば、このステージで失っても許されるタイムは1分以内だろう。
今大会最初の「山場」がやってくる。