ついにイタリア本土上陸。
イタリア半島の「つま先」にあたるレッジョ・カラブリアからテルメ・ルイジャーネまで。「足の甲」を征くステージだ。
当然、警戒されたのは横風。実際、その区間に入るとさっそくクイックステップ・フロアーズが動き出した。
しかし、各チーム、同じ手は二度と喰らわない。モビスターも大将のキンタナを「横風職人」ベンナーティががっちりと保護し、スカイも積極的に前に出てくる。ゴールまで30km以上を残しながら、総合勢が集団前方を固める超警戒態勢へと移行した。
それでも、結局動きは起きなかった。
原因として、「どのみちこのステージでは逃げ切りが発生してしまうので、ボーナスタイムも得られず、多少のリードを奪う旨味がない」という考えがあったようだ。
実際、逃げの5人は残り20kmを切ってなおも3分以上のタイム差を開いていた。しかも、これが縮まらない。
メイン集団はメイン集団で、総合勢が前に陣取りはするが、ステージ優勝を積極的に狙おうとする立場も生まれず、安全重視で追走を仕掛けていた。
なにしろ今日のフィニッシュレイアウトは、ピュアスプリンターにはどうしたって勝てるわけのないものだった。
マリア・チクラミーノのガヴィリアも今日は大人しく、アンドレ・グライペルに至ってはチームのためのボトル運びに精を出すほどであった。
前半から中盤にかけてはステージ優勝を狙っていそうなキャノンデール・ドラパックが集団を牽引する場面も見られたが、それも終盤ではすっかり鳴りを潜めてしまった。
逃げは5人。
アンドレッタの逃げは第2ステージに続き2回目。
それ以外のメンバーは、かなり豪華なそれである。
とくにトレックは2人も逃げに送り込み、やる気満々。ラストが登りスプリントになっているなど、勝てなかった昨年のツール・ド・フランス第2ステージへのリベンジを果たすには最適のステージだった。
事実、ペーダーセンがオールアウトになるまで全力で牽引したこともあり、集団とのタイム差は縮まらず。逃げ切りが濃厚になった。
だが、BMCのディリエも積極的な走りを見せた。
途中、チームカーと相談する場面があったが、そこで腹をくくったのだろう。
逃げから確実に逃れるために、トレックが2人いるからといって非協力的な態度を取ることもなく、むしろ積極的に先頭牽引を行った。
そしてラストのスプリント。
最初に仕掛けたのはディリエだった。
純粋なスプリントではストゥイヴェンの方が上手のようにも感じられるが、10%区間を含む厳しい登りフィニッシュ。
「北のクラシック」巧者のストゥイヴェンを振り切り、今年27歳になるスイス人は、グランツール初勝利を遂げた。
仲間の献身に応えることができず、ストゥイヴェンは悔しそうにハンドルを叩いた。
シルヴァン・ディリエはトラックとの兼用選手でもあり、2015年の国内選手権ITTチャンピオンでもあり、カンチェラーラの後継者とも目されている。
スプリント力もそれなりにあり、ドバイ・ツアーやツール・ド・スイスのスプリントで上位に入ったこともある。過去の勝利も、今日のような丘陵地帯を経たうえでのスプリント勝利である。サガンに勝ったこともある。
クラシック適性は北寄り。
ストゥイヴェンも同じく「北のクラシック」巧者で過去ブエルタでのスプリント勝利経験もあり。こちらも同じトレックということで、カンチェラーラ後継者候補とされたこともあった。その意味で、2人は似ている部分の多い選手だったのかもしれない。
最後に勝敗を分けた要因を無理やり見つけるとすれば・・・ディリエの持久力の高さゆえの体力の残り具合、だったのかもしれない。あるいは、登り適性がディリエの方が高かった、か。
昨年のクールネやツール第2ステージのように飛び出しての逃げ切り勝利を決められればよかったし、実際それを狙ったようなアタックもあったが、そのときに捉えられてしまったのが残念だった。あそこで足を使ってしまったとも言えるだろう。
いずにせよストゥイヴェンも気を落としすぎる必要はない。
集団スプリント争いになりそうなこの第7ステージで、リベンジを果たせれば問題ない。
集団スプリントが予想されるものの、若干のアップダウンがゴール前に見られる。
ラストが登りというわけでもないので気にしすぎる必要はないだろうが、スプリントのトップ3(グライペル、ユワン、ガヴィリア)の中ではややグライペル有利か。
それ以外から考えるとしたらそれこそストゥイヴェン、あるいはバウハウスにも期待したいところである。