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ツアー・オブ・ジ・アルプス2017 プレビュー

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昨年まで「ジロ・デル・トレンティーノ」と呼ばれていたレースが、ステージ数・開催地域ともに拡大し、生まれ変わった。

www.cyclingnews.com

全4ステージで構成されていた昨年までと違い、今年は全5ステージ。

恒例の初日チームタイムトライアルもなくなり、頂上フィニッシュが3つ、下りフィニッシュが2つと、よりバランスのよいステージ構成となった。

「ジロ・ディタリア前哨戦」としてより相応しいレースになった、というべきだろうか。

 

また、舞台となるのも北イタリアの地だけでなく、4年ぶりにオーストリアでのスタートとなり、全5ステージ中3ステージがオーストリアだ。

「アルプス1周」の名に違わない、国際的なレースへと進化したことを窺わせる。

 

開催日程は4月17日(月)~21日(金)の5日間。

ジロで活躍が見込まれる有力選手たちも多数出場しており、見逃せない戦いだ。

 

 

各ステージ詳細


Tour of the Alps - The route

第1ステージ クーフシュタイン~インスブルック 142.3km

西オーストリアのチロル州を東から西へ突き進むステージ。フィニッシュは州都インスブルック郊外の「フンガーブルク」の町。

距離も短く全体的に厳しい山岳があるわけではないが、ラスト2.3kmで300m弱を登る急勾配フィニッシュとなるため、確実にタイム差がつく結果となろう。

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ちなみにこのインスブルックの街の中心部からフンガーブルクまでは「フンガーブルクバーン」という名のケーブルカーがあり、一般人でも楽々登れるようである。

フンガーブルクからの眺めは美しく、一度は行ってみたい場所である。

第1ステージのレースレポートは以下を参照。

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

第2ステージ インスブルック~インナーヴィルグラーテン 181.3km

インスブルックから今度は南東に進路を変え、インナーヴィルグラーテンの街へ向かう。ここもフィニッシュは一応頂上ゴールだが、第1ステージと比べると随分緩やか。

むしろポイントとなるのはゴール前22.3km地点に位置する「聖ユスティナ」の名がついた山岳ポイント。6kmで400m弱を登るこの山岳で、セレクションをかけられてしまう選手もいるかもしれない。

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第3ステージ ニーデルドルフ~ヴィルヌース 143.1km

いよいよ舞台は北イタリア、トレンティーノ・南チロル州へ。

ニーデルドルフもヴィルヌースもそれぞれドイツ語読みで、イタリア語読みに直すとそれぞれヴィッラバッサ、フューネスと読む。国としてはイタリアではあるものの、この地域に住む人々の9割以上がドイツ語話者なので、ここでもドイツ語読みをメインで扱う。

この事実だけでも、この地域が非常に複雑な歴史を歩んできたことがよくわかる。だからこそ、国境を越えた今回のようなステージ―レースへの進化は、単なるスポーツとしての盛り上がり以上に重要なのかもしれない。

 

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 コースの特徴としては、第1・第2に続く頂上ゴールとなり、ラスト10kmで600mちょっとを登る。

だがそれ以上に、2つの大きな山岳、とくに後半の「アルペ・ロデンゴ・ズミス」は10kmで800m以上登るレイアウトの(しかも途中の下り部分を含んでそれ、である)ため、もしかしたらここで、激しいアタックが仕掛けられるかもしれない。そのあとの長い下りも勝負ポイントとなるだろう。

近年、下りで勝負が動くことの多いロードレースにおいて、このステージは実にゴール前50kmから見逃せないステージとなるはずだ。

 

 

第4ステージ ボルツァーノ~クレス 165.3km

南チロルを南下し、いよいよイタリア語話者が4分の3以上を占める地域にやってきた。なのでここではイタリア語読みのボルツァーノで表記しよう。

ここも厳しい山岳が2つ、プロトンを待ち構えている。逆に登りに自信があるライダーたちはスタート直後から激しいアタック合戦を繰り広げ、場合によっては大規模な逃げが生まれるかもしれない。

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そして最後の山岳「フォルチェッラ・ディ・ブレズ」からゴールのクレスまでのルートは、昨年の最終ステージとまったく同じレイアウトだ。

昨年の同ステージでは、この最終山岳でランダ、フールサン、ポッツォヴィーヴォ、バルデ、そしてカンゲルトなどを含む13名が残り、最後はスプリント争いでカンゲルトが勝利。3位につけたランダもギリギリで総合優勝を果たしたステージだった。

よって、このステージを制するには、単純な登りの力だけでなく、最終的にはクライマーたちの中で突き抜けられるだけのスプリント力が必要になる、ということだ。

この点で、私はこのステージでティボー・ピノを推したい。

ルタ・デル・ソルでコンタドールを突き放した頂上ゴールでのスプリント力に期待だ。

・・・もちろん、そこまでの山をしっかりと登り切れれば、の話だが。

 

 

第5ステージ ズマラーノ~トレント 192.5km

「ジ・アルプス」第1回のフィナーレを飾るステージは、20kmで1200mを登らせる山岳「ヴァソン・モンテ・ボンドーネ」で締めくくられる?

いや、カテゴリはついていないが、ゴール前2.5km地点にある短い急坂にも注意が必要だ。何しろ2kmで200m近くを登らせる、すなわち平均勾配10%の登りなのだから!

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このラストの急坂で、わずかなタイム差を逆転されて総合優勝者が大きく変動する可能性もある。最後の山岳で飛び出した逃げ切り狙いの選手がここで失速する可能性もある。

最後の最後までどうなるかわからない、手に汗握る展開を招きそうなコースレイアウトである。

 

 

以上5つのコース全体像を踏まえ、今大会の有力選手・注目選手をピックアップしてみよう。今回は、チーム毎のピックアップだ。

 

 

注目チーム・選手たち

チーム・スカイ(SKY)

前年覇者ミケル・ランダがエースナンバーをつける。もちろん、彼もジロ本戦含め総合優勝を狙ってくるだろう。

だが、もちろんこのチームのもう1人の総合優勝候補はゲラント・トーマスである。ティレーノ~アドリアティコ総合5位のその実力が、今大会でも発揮されるか否か。ジロ本戦におけるエース争いという意味でも注目に値する。

その他、注目はディエゴ・ローザの存在。2015年にはランダの総合2位を支える重要な役割を担った。今年のジロでも重要なアシストとしての活躍が期待できるだけに、今大会での動きには注目をしておきたい。

ティレーノ~アドリアティコでは第2ステージの逃げ切り勝利も決めたゲラント・トーマス。突然の飛び出しからの勝利も十分にありうるだろう。カタルーニャが大人しかったのが唯一気になる点だ。

 

 

AG2R・ラモンディアル(ALM)

「ジロ・デル・トレンティーノ」にこれまで12回出場し、ステージ3勝と総合優勝&山岳賞を1度掴んだドメニコ・ポッツォヴィーヴォ。今回ももちろん、ステージあるいは総合を狙っていくだろうが、かつてのような実力は出し切れないシーズンを過ごし続けている。

一時はバルデが出るかも?と噂されていたジロも、結局は不出場となり、ポッツォヴィーヴォのエースの座はなんとか守れそうではある。しかし、そろそろ結果を出さないと・・・何しろ昨年は、バルデとラトゥール以外、HCクラス以上のレースでの勝利がなかったのだ(2015年は11勝)。それでチームは方針転換を余儀なくされた。ポッツォヴィーヴォも責任は感じているかもしれない。

それはポッツォヴィーヴォ以外のメンバーにも言える。とにかく逃げて、逃げて、逃げまくれ! そして逃げ切り勝利を狙うのだ。。カンタン・ジョレギシリル・ゴチエあたりに注目だ。

ともかく、やらねばならない。ポッツォヴィーヴォ、34歳。まだまだ隠居するには早すぎる。

 

 

アスタナ・プロチーム(AST)

ファビオ・アル、まさかのジロ出場断念!

この緊急事態に、それに代わるエースとして抜擢されたのが、ミケーレ・スカルポーニ。確かに、昨年ジロにおけるアシストぶりは完璧だった。彼がいなければニバリの総合優勝はなかったと言っても過言ではないと思う。しかし、彼はもう37歳である。グランツールの総合リーダーを演じるには、さすがに厳しいのではないか・・・(バルベルデは除く。あの人は規格外なので・・・)。

そもそもチームとしても危機的な状況である。何しろ、シーズン開幕から4か月。いまだに1クラスですら勝利がないのだ。昨年2勝しているタネル・カンゲルトに対する期待は果てしなく大きいことだろう。

昨年ジロでニバリを献身的にアシストしたスカルポーニ。彼がジロを総合優勝したのは今から6年前。ちなみにその年は、トレンティーノも総合優勝している・・・。

 

 

BMCレーシングチーム(BMC)

最も期待したい選手はローハン・デニスである。ティレーノ~アドリアティコでは総合2位。ティージェイ・ヴァンガーデレンと並び、BMCにおけるジロのエースを担うが、ヴァンガーデレンが今年もあまり期待できそうにないので、必然、デニスへの注目が高まる。

もちろん、彼の大きな武器はITTであり、ティレーノでもその武器が存分に発揮された。今年のジロもITTの距離は長いのでその点では例年以上に有利ではあるのだが、やはりITTだけに頼ってはグランツールでは勝利できない。本当に山岳をいくつも越えられるのか? その意味で、今回の「ジ・アルプス」は彼の実力を図ることのできる重要なレースとなるだろう。ITTのない本レースで、どこまでの結果を出せるか。

グランツールでも総合上位に入ることの多いダミアーノ・カルーゾ、また期待の新人マイルス・スコットソンの活躍にも注目。

オールラウンダーとしての実力を確実につけつつあるローハン・デニス。本人は「3年以内に」とまだまだ焦る様子は見せないが、今回のアルプスでの走りには期待しておきたい。

 

 

ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

実はパトリック・コンラッドが昨年総合5位、エマヌエル・ブッフマンが昨年総合8位となかなかに活躍している。しかし今年はコンラッドが出ない! なぜ!? パイスバスコも総合7位と結構活躍してたのに! 今年は彼の地元オーストリアでの開催なのに!

ということで、エマヌエル・ブッフマンと、2015年総合6位のホセ・メンデスに期待、か? 総合優勝は、難しいだろうなぁ。。。

 

 

キャノンデールドラパック・プロサイクリングチーム(CDT)

ジョー・ドンブロウスキーピエール・ローラン。実力はあるのに、なかなか結果を出せずにいる2人にとっても、今年のジロは「勝負」である。いや、総合は狙わなくてもいい。だがせめて、勝利だけでも。とくに今年のキャノデは、アスタナと並んで勝利が得られない危機的状況にあるのだ。

ローランは山岳賞を狙っていく、というのも手だ。カタルーニャでは積極的な逃げを見せて、中間スプリントポイントの取得数で得られる「スプリント賞」を獲得している。

いずれにしてもこの2人がどれだけジロで暴れられるか、その可能性をチェックできるレースとなるだろう。

 

 

FDJ(FDJ)

ピノ! ピノ! ピノ!

期待すればするほど反動が怖くはあるのだけれど、それでもやっぱり期待せずにはいられない。今年はルタ・デル・ソルとティレーノ~アドリアティコでそれぞれ総合3位と悪くない。ITTがなければティレーノでは総合2位だったのだ。

それにこの「ジ・アルプス」ではライバルが少ない。総合優勝も十分狙えるでしょう? ジロはまあ、難しい、とは思うけれど・・・。

 ジェレミー・メゾンヴァンサン・レオなどの若手の成長にも期待。

ティレーノ第5ステージでは、飛び出したサガンに続いて、集団内トップでゴールした。その勝負強さはルタ・デル・ソルでも活かされており、今回の「ジ・アルプス」でも、総合だけでなくステージ勝利にも期待したいところだ。

 

 

アンドローニ・ジョカットリ(AND)

とにかく、昨年デビューしたばかりの新鋭コロンビア人、イーガンアルリー・ベルナルの動きに大注目である。昨年はコッピ・エ・バルタリとトレンティーノで新人賞、今年もサン・フアンとコッピ・エ・バルタリで新人賞獲得のほか、ティレーノ~アドリアティコでもボブ・ユンゲルスから27秒差で新人賞2位である。ジロ・デッラ・アペンニーノでも2位と調子は十分。今年も新人賞はもちろん、総合ベスト10も狙っていきたい! あるいはステージ優勝を!

今、大注目の20歳である。来年にはどこかのワールドツアーチームに在籍しているかも?

 

 

ニッポ・ヴィーニファンティーニ(NIP)

昨年のジロのダミアーノ・クネゴの走りは盛り上がった。最後には山岳賞ジャージを奪われてしまったが、まだまだ走れるんだ、という姿を見せてくれた。今回もジロ本戦は出られないものの、この「ジ・アルプス」でその雄姿を見せてほしい。ところでツアー・オブ・ジャパンには来るのだろうか?

しかしクネゴ以外に勝てそうな選手があまりいないように見える・・・。こういうときこそジュリアン・アレドンドの出番だと思うのだが、彼は調子が悪いのか? ここ最近まともにレース出場ができていない。

王子クネゴの復活なるか⁉ 全日本人が期待・・・してるはず。もちろん伊藤雅和選手の活躍にもね!

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