ヘント~ウェヴェルヘムとロンド・ファン・フラーンデレンに挟まれる形で行われるフランドル地方のステージレース。
第1日はクラシック風味のコースで、今年は久しくロンドから姿を消していた「カペル・ミュール(ミュール・ド・ヘラールツベルヘン)」が残り16km地点で登場。
2日目・3日目午前はスプリンター向きのステージとなっており、昨年は1勝と2位につけていたマルセル・キッテルの勝利が期待されている。ドバイ・ツアーでは区間3勝と総合優勝と好調ぶりを発揮した彼が、パリ~ニースでは悪天候などもあり不調に終わってしまった。そのリベンジがなるか。
3日目の午後には14.2kmの個人TTが用意されており、3日間、計4ステージの身にステージレースが展開された。
- 第1ステージ デパンヌ~ゾッテヘム 206.2km
- 第2ステージ ゾッテヘム~コクサイデ 192.9km
- 第3ステージa デパンヌ~デパンヌ 118.5km
- 第3ステージb デパンヌ~デパンヌ 14.2km(個人TT)
- 総括
第1ステージ デパンヌ~ゾッテヘム 206.2km
海沿いのデパンヌからフランドルの内陸に向かうクラシカルステージ。
カペルミュールを含む11の急坂が用意されている。
残り80kmを切った地点にある「テンボッシュ」およびカペルミュールの登りでフィリップ・ジルベール(クイックステップ・フロアーズ)を含む16名の小集団が出来上がる。
2015年覇者であり、昨年も総合2位につけたアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ・アルペシン)は後方に取り残される。
そして残り16km地点。最後の「カペルミュール」でジルベールが飛び出す。
直近のドワルスドール・フラーンデレンとE3でも好走を見せたルーク・ダーブリッジ(オリカ・スコット)がすかさず飛び乗り、しばらくは後ろに付き続けるも、やがて本気で踏み出したジルベールによって突き放されてしまった。
そのまま残りの距離を独走し、勝利したジルベール。
ダーブリッジは17秒遅れでゴールし、敗北したものの、状態が良いことを証明してみせた。
クリストフは58秒遅れの7位。
Driedaagse De Panne-Koksijde 2017 HD - Stage 1 - Final Kilometers
第2ステージ ゾッテヘム~コクサイデ 192.9km
前日のゴール地点ゾッテヘムから再び海沿いに向かって戻り、コクサイデの街に向かう。
途中、お馴染みのケンメルベルグなどの激坂地帯はあるものの、残り70km地点からはほぼほぼ平坦であり、例年集団スプリントが展開されるスプリンター向けのコースである。
しかし、今年は横風による大分断が発生。
総合2位のダーブリッジや4位のヤスペル・デブイスト(ロット・ソウダル)が後方に取り残されてしまう。
後続集団はロット・ソウダルが中心になって復帰を試みるも、それ以外のチームがほとんど協力をしないためにタイム差が開き続ける。
一方の先頭集団にはクリストフのほかマルセル・キッテル(クイックステップ・フロアーズ)、エドワード・トインズ(トレック・セガフレード)、パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)、アドリアン・プティ(ディレクトエネルジー)などのスプリンターたちがしっかりと入り込んでおり、こちらはこちらで激しいスプリントバトルが展開されることが予想された。
なお、クイックステップは合計で4名もの選手が入り込ませているほか、カチューシャにはバプティスト・プランカートル、トレックにはボーイ・ファンポッペルといったアシストも集団に含まれていた。
マキシリミアーノ・リケーゼとファビオ・サバティーニというアシスト2枚を引き連れたキッテルは有利なように思えた。だが、ゴール直前に、総合2位の地位が確約されたマティアス・ブランドル(トレック・セガフレード)が逆転を狙って飛び出したことで、ジルベールもこれに対応して飛び出さざるをえなかった。
これらも含め、コース全体の厳しさによってキッテルはいささか疲れすぎていたのかもしれない。
最後のスプリントの伸びもイマイチで、アレクサンドル・クリストフが最後差し切って、昨日の借りを返す勝利を果たした。
2位にはトインズがつける。キッテルは3位。
クリストフはこれで、キッテルと並ぶ今期5勝目を飾った。
Driedaagse De Panne-Koksijde 2017 HD - Stage 2 - Final Kilometers
第3ステージa デパンヌ~デパンヌ 118.5km
3日目の午前中はデパンヌを発着するショートステージ。
残り15km地点での集団落車に巻き込まれてしまったキッテルだったが、その後ギリギリで集団復帰。
クリストフとの一騎打ちを制し、前日のリベンジを果たす勝利を決めた。
これでデパンヌでは3勝目。3日目午前ステージとしては昨年に続く2連勝となった。
Driedaagse De Panne-Koksijde 2017 HD - Stage 3a - Final Kilometers
第3ステージb デパンヌ~デパンヌ 14.2km(個人TT)
3日目の午後は単距離個人タイムトライアル。
カチューシャ・アルペシンに所属する23歳のドイツ人ニルス・ポリッツ、あるいはオリカ・スコットに所属するこれまた23歳のオーストラリア人アレクサンダー・エドモンドソンなどが良いタイムを叩き出すが、これらを更新したのが驚きのマルセル・キッテル。
まあ、元TTチャンピオンであり、昨年ジロの初日単距離ITTも良いタイムを出していただけに、まったく意外というわけではないのだが・・・もしかしたら、午前中に引き続く、まさかの連勝、という可能性すら出てきた。
しかしさすがにこれに負けるわけにはいかない、と意地を見せたのが、元オーストラリアTTチャンピオンのルーク・ダーブリッジ。第1ステージでここ最近のクラシック好調ぶりを発揮した彼は、第2ステージで横風に敗れ総合争いから脱落。何かしらの勝利を持って帰らねば、の思いから、素晴らしい結果を叩き出した。
このダーブリッジの出したタイムに、元フランスTTチャンピオンのシルヴァン・シャヴァネルが迫るも、0秒7足りずに暫定2位。
総合上位を狙うマティアス・ブランドルやアレクサンダー・クリストフも好タイムを記録するも、ダーブリッジに届くことはなく、最終走者のフィリップ・ジルベールがゴールラインを越えた瞬間、ダーブリッジの優勝が決まった。
ここ数年、勝利に恵まれずにいた25歳のオーストラリア人が、今期初勝利を遂げた。
週末のフランドルでの走りにも期待したい。
Three Days of De Panne 2017 | Stage 3b (ITT)
総括
初日のクラシカルステージで大逃げを決めたフィリップ・ジルベールが、そのまま最終日まで堅実にジャージを守り、初のデパンヌ総合優勝を決めた。
昨年のベルギー選手権以来の勝利。ステージレースとしては2014年のツアー・オブ・北京以来の総合優勝となった。
最終日の個人タイムトライアルもステージ7位につける好走。総合2位・3位のブランドル、クリストフには敗れたものの、彼らとのタイム差をほとんど縮ませることもせず、危なげのない勝利となった。
石畳(とくにカペルミュールの!)への適性、そして独走力ともに十分な状態であることを証明し、フランドルに向けて、彼が本気で勝利を狙うことができる状態である、ということを全てのクラシックライダーたちに示してみせた。
そして、この「勝てるかもしれない」と思わせることが、クイックステップというチーム全体にとっての大きな武器となる。
ジルベールがいくのか、ボーネンがいくのか、はたまたテルプストラがいくのか・・・あらゆる選択肢が用意でき、他のチームの選手にとっては誰をマークしたらいいのかわからない状態にできること。これはサガンなどにはない強みである。
ジルベールの加入、そして好調により、例年以上に大きな可能性をもったクイックステップが、ボーネン引退への花道を作ることができるか。
非常に楽しみな週末となりそうだ。