2017シーズンJプロツアー第2戦となる「宇都宮ロードレース」が、3月19日(日)栃木県宇都宮市森林公園(鶴カントリークラブ)で行われた。
今年初開催となる本レースは、ジャパンカップのコースを一部使用したレイアウトとなっている。1周6.4kmの周回コースを、Jプロツアーのメンバーは12周する。パレード走行の6kmと合わせて82kmの行程だ。
とくにフィニッシュ直前の登り坂は通称「鶴の壁」とも呼ばれている最大勾配16%の激坂。
登坂距離は1km程度ではあるが、前日の「宇都宮クリテリウム」とはまた違った脚質が求められ、異なるタイプの優勝者が現れることが予想された。
さて、レースは小刻みなアタックがかけられるものの、確定した逃げが一度たりとも許されず、常に集団の形で周回を重ねていった。
その中で全体的にレースを支配したのが、昨年チーム2位の宇都宮ブリッツェン及び昨日のクリテリウムで優勝したマトリックスパワータグ*1である。
宇都宮ブリッツェンは鈴木譲(31歳)や増田成幸(33歳)といったベテランに加えて、昨年エリートツアー*2で総合優勝を果たし、今年ブリッツェンに移籍してきたばかりの岡篤志(21歳)やU23アジアチャンピオンに輝いたばかりの小野寺玲(21歳)といった若手も加わり最も多い人数で先頭を牽引していった。
そしてマトリックスパワータグは欧州ワールドツアーチーム在籍の経験もあるベテラン土井雪広(33歳)と前日クリテリウムで優勝した吉田隼人(27歳)あたりが積極的に前方に陣取っていた。
そしてラスト1周となったタイミングでブリッツェンが一気にペースを上げ集団が分裂。先頭集団に複数名残しているのはブリッツェンとマトリックスだけとなり、その他チームは単独で集団の中に入り込んでいるだけ。
このまま勝利はこの2チームの中から出てくるか、と思う状態であった。
しかし、最後の「鶴の壁」を乗り越えて現れた、先頭の選手は――なんと、ブリッツェンでもマトリックスでもない、那須ブラーゼンの選手!
そのまま後続と差をつけて山頂に位置するゴールラインを右手を突き上げながら越えた。その選手の名は、チームのエースとも言える吉岡直哉(25歳)。
チーム発足6年目にして、初のJプロツアー優勝をチームにもたらしてくれたという。
勝利後、取材陣に囲まれる中、右手を突き上げる吉岡選手。その背後で、清水監督は嬉し泣きをしていた。
那須ブラーゼンは平均年齢22歳と驚異的な若さを持つチーム。
宇都宮ブリッツェン同様に地域密着型チームを目指して発足され、多くの地元民に愛されるチームに育ちつつある。
その中で、見事送り届けることのできた勝利。昨年の宇都宮ブリッツェンのクリテリウム勝利のように、ホーム地域での勝利を地元のファンたちと喜び合える環境が整いつつある、というのは、この栃木県の持つ大きな魅力であると思う。
レース後、地元のファンたちと共に記念写真をとるメンバーたち。手作りののぼりなども用意され、地域一体となって彼らを応援している様子が伝わってきた。
なお、2着に入ったのはマトリックスパワータグの吉田隼人選手。
昨日のクリテリウムでも優勝した選手であり、スプリンターだと思われていた中でのこの登りでの勝利は本人も驚いていたようだが、「今日も調子が良かったので、今日も自分で行かせてくれ」と自らチームにお願いしていたと表彰式で語っていた。
3着はブリッツェンの増田成幸選手。
昨日・今日と、昨年に続く地元勝利を成し遂げられなかったことに、悔しさを滲ませていた。
しかし、展開も結果も十分にハイレベルで見ごたえのあるレースであった。
表彰式で栗村氏も語っていたように、日本国内のレースとしてはほとんど初にあたるようなレイアウトでのゴール設定が絶妙に機能したのだろう。
もちろん、吉岡選手の粘りと執念も。
今年はあと20戦控えているというJプロツアー。
昨年チーム総合優勝のチームUKYOが今年は参戦しない中、ブリッツェンとマトリックスの2強を打ち破るような勝利を見せてくれた今日のようなレースが、たくさん生まれることを願っている。
とくに最終戦は地元・南魚沼での開催ということで、俄然期待は高まってくる。
シャンパンファイトを終えた選手たち。左から順に2位の吉田隼人、優勝の吉岡直哉、3位の増田成幸である。
昨日の優勝に続き今日のステージも2位に入った吉田隼人(右)が総合首位を示す「ルビーレッドジャージ」を守った。また、本日4位につけた岡篤志(左)が、23歳以下の選手で最も成績の良い選手に与えられる「ピュアホワイトジャージ」を身に着けることに。