りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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パリ~ニース2017 第3ステージ

昨年は5勝。HCクラスでの勝利もあり、十分に実力のあるスプリンターであった。

それでも、ペーター・サガンという絶対的エースの合流によって、エーススプリンターとしてのその立場は危うくなる、かとも思われた。

 

しかし、彼の実力はサガンも認めるものであり、年初のダウンアンダーでも、サガンが自ら彼のためにアシストを買って出たほどであった。

その後、同じオーストラリアの地で行われた、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースの前哨戦クリテリウムでも優勝。

非公式とはいえ、ワールドツアーレースの前哨戦での勝利は彼にとって十分大きなものであった。

 

それでも、まさかこれほどの結果を出すとは。

彼にとって初めてとなるワールドツアーカテゴリでの勝利。

しかも、相手はあのキッテル、クリストフ、デゲンコルブである。

彼らが一直線でゴールに突っ込んでいく、その一歩前で、

この男、サム・ベネットは堂々と右手を天に突き出した。

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並み居る強豪スプリンターをものともせず、力でねじ伏せたサム・ベネット。正真正銘のワールドツアーランクスプリンターの一員となった瞬間だ。

 

 

昨日・一昨日と続いた悪天候も少しは落ち着き、相変わらずの曇り空と寒風吹きすさぶ一日となったとはいえ、プロトンは幾分落ち着いた様子で、フランス・ボジョレー地方の丘陵地帯を駆け巡った。

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曇り空の下の狭い農道を走るプロトン。この風景を見ると、本格的なロードレースシーズンの始まりが感じられてくる。

 

 この日、逃げに乗ったのは3人。デルコ・マルセイユプロヴァンスのロマン・コンボー(フランス、25歳)、ディメンション・データのベンジャミン・キング(アメリカ、27歳)、そしてAG2R・ラモンディアルのピエール・ラトゥール(フランス、23歳)の3人。

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 途中でキングが脱落し、コンボーとラトゥールの2人だけになった逃げだったが、残り10kmを切ってからもなかなかタイム差が縮まらず、逃げ切りの可能性すら生まれ始めていた。

 しかし、何としてもスプリント勝利がほしいカチューシャ・アルペシン。今期新たに獲得した最強の機関車役トニー・マルティンの鬼牽きにより、みるみるうちにタイム差が消滅。

 残り1km、フラム・ルージュに辿り着くより前に、ラトゥールとコンボーの逃避行は終焉を迎えた。

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残り1.4km。プロトンが追い付いてきたことをラトゥールに知らせるコンボー。ラトゥールはその後も諦めずペダルを回し続けるが、やがて集団に吸収された。jsportsより。

 

 

なんとかもくろみ通り集団スプリントに持ち込むことに成功したカチューシャ・アルペシン。

そしてそのエーススプリンター、アレクサンダー・クリストフは、マルセル・キッテルの早過ぎた飛び出しにも問題なく対応し、ベストなタイミングでスプリントを開始した。

勝利は目前だった。

 

しかし、このとき、クリストフの背後にその男は張り付いていた。

そして、黒いジャージに身を包んだアイルランドの弾丸は、クリストフを、キッテルを、デゲンコルブを尻目に、ただ1人、まっすぐゴールに突き進んでいった。

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ゴールの瞬間を上空から捉えた映像。ベネットの背後には、最強のスプリンターたちが横一線に並んでいる。しかしベネットは、そこから丸丸一車体分、飛び出ていた。間違いなく、この日最強のスプリンターであった。jsportsより。

 

公式戦では今季初勝利。チームとしても、クールネ~ブリュッセル~クールネのサガンの勝利以来、今期2勝目となった。

今後も、サガンに次ぐ2枚目のエーススプリンターとして、勝利を稼いでいってくれるに違いない。

また、ツール・ド・フランスでは、ジェイ・マッカーシーと共にサガンの最高のアシストとして活躍してくれることも、期待していきたい。

 


Summary - Stage 3 (Chablis / Chalon-sur-Saône) - Paris-Nice 2017

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