いよいよスタートした2017シーズン。
確定した各チームの選手状況と、その中での(個人的な観点からの)注目選手を紹介していく。
今年は選手名鑑が出ないという噂も? もしよければ参考にしてほしい。
なお、注目選手の選定は完全に自身の趣味に偏っているため悪しからず。
(ワールドツアーチームは6チームごとに3回に分けて紹介します)
目次
- アージェードゥーゼル・ラ・モンディアル(ALM、フランス)
- アスタナ・プロチーム(AST、カザフスタン)
- バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM、バーレーン)
- BMCレーシングチーム(BMC、アメリカ)
- ボーラ・ハンスグローエ(BOH、ドイツ)
- キャノンデールドラパック・プロサイクリング(CDT、アメリカ)
アージェードゥーゼル・ラ・モンディアル(ALM、フランス)
昨年はついにバルデが覚醒。ツール総合2位という結果を出した。
だからといってチーム全体でエースを守る、という感じのチームではない。むしろ、個々に実力ある選手たちが次々と飛び出して、ステージ優勝や逃げに乗る、といった印象が強い。だからこそ魅力的に映り、生き生きとした印象の良いチームである。
グランツールではバルデとポッツォヴィーヴォをエースに、将来のエース候補としてラトゥールを育てていく。逃げやステージ優勝狙いにはマティアス・フランク、アレクサンドル・ジェニエ、アレクシー・グジャール、そしてアクセル・ドモンに期待。また、アルデンヌクラシックでは今年こそヴュイエルモの活躍が楽しみだ。
ロマン・バルデ(フランス、26歳)
昨年・一昨年と総合ベスト10に入り続け、その実力は折り紙付きだった中で、昨年はついに総合2位と表彰台の高みに登った。そしてまだ若い。十分に総合優勝を狙える逸材とあって、全フランス人の期待を一身に受ける。しかし本人には、そこまでプレッシャーを背負ってほしくはない。まずはじっくりと、独走力の強化、そして他を圧倒する爆発的な登坂力を身につけていかなければならないだろう。
イル・ロンバルディアやリエージュ~バストーニュ~リエージュなど、クライマー向けのワンデー・レースでも結構上位につけている。元より逃げからのステージ優勝も得意な選手。ステージレースでの総合争いもいいが、こういったレースでの活躍ももっと見てみたい。
アレクシー・ヴュイエルモ(フランス、28歳)
2015年シーズンにツール・ド・フランスで「ユイの壁」ステージを3位、そして「ブルターニュの壁」ステージで優勝。一気に激坂ハンターの仲間入りを果たした。そうして期待された昨シーズンでは、しかし、アムステルゴールドレースでまさかの落車リタイア。そのあとの本命フレッシュ・ワロンヌを棒に振った。
今シーズンこそリベンジを果たせるか。そして今年こそ「ヴュイエルモ」を定着させられるか!
ピエール・ラトゥール(フランス、23歳)
栗村氏の大注目選手にして、見事、ブエルタ第20ステージで勝利を手にしたフランスの新鋭。イル・ロンバルディアでも10位に入るなど、しっかりとその実力を見せつけている。今年はいよいよツール出場を予定しているらしい? バルデのアシストを務めつつ、隙を見てステージ優勝を、あるいは、総合上位――ひいてはマイヨ・ブラン獲得を目指せるか。今後、さらなるブレイクが最も期待される選手の1人だ。
その他注目選手
マティアス・フランク(スイス、30歳)
2年前にツール・ド・フランス総合ベスト10に入ったこの男は、昨年のブエルタでグランツール初勝利を決めた。そんな彼がチーム解散に伴って新たな舞台として選んだのはフランスの強豪チーム。グランツールではバルデやポッツォヴィーヴォのエースを務めつつ、二度目の区間勝利を目指してほしい。
アクセル・ドモン(フランス、26歳)
チームきっての逃げ屋の1人。昨年はブエルタの山岳ステージで2位と惜しいところまでいった。今年もぜひ積極的に逃げに出て、今度こそ勝利を掴んでほしい。
アレクシー・グジャール(フランス、23歳)
一昨年にブエルタでまさかの逃げ切り勝利。一気に逃げ名手の名を手にすることに。昨年も逃げに逃げたが思うほどの結果は得られず。そんな中、オムループ・ヘット・ニウスブラッドでは5位を獲得。E3では途中リタイアしてしまったが、今年はそういった北のクラシックでの活躍も期待できるかもしれない。
その他登録選手
ゲディミナス・バグドナス(リトアニア、31歳)
ヤン・バークランツ(ベルギー、30歳)
ルディ・バルビエ(フランス、24歳) 元ルーベ・リール・メトロポール(CT)
ジュリアン・ベラール(フランス、29歳)
フランソワ・ビダール(フランス、24歳)
ミカエル・シェレル(フランス、30歳)
クレモン・シュヴリエ(フランス、24歳) 元IAM
ブノワ・コスネフロワ(フランス、21歳)
ニコ・デンツ(ドイツ、22歳)
サミュエル・ドゥムラン(フランス、36歳)
ユベール・デュポン(フランス、36歳)
ジュリアン・デュヴァル(フランス、26歳) 元フランス陸軍チーム(CT)
ソンドレ・ホルストエンゲル(ノルウェー、23歳) 元IAM
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、29歳)
シリル・ゴチエ(フランス、29歳)
アレクサンドル・ジェニエ(フランス、28歳)
ユーゴ・ウル(カナダ、26歳)
カンタン・ジョレギ(フランス、22歳)
マッテオ・モンタグーティ(イタリア、33歳)
オリヴァー・ナーセン(ベルギー、26歳) 元IAM
ナン・ピーター(フランス、22歳)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、34歳)
クリストフ・リブロン(フランス、36歳)
スティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー、32歳) 元クイックステップ
アスタナ・プロチーム(AST、カザフスタン)
中央アジアの国家の首都の名が冠されたこのチームは、石油産業による利益を贅沢に投資することで、多くの強豪選手を抱え存在感を発揮し続けてきた。一方でそのマネーゲーム的なイメージや、一部選手の不祥事・トラブル・仲の悪さ、あるいは「ヴィロクロフ大佐の手紙」的なイメージにより、どことなくダーティなイメージを持ってしまうところもある。
だが、2015年シーズンにアルを総合優勝に、2016年シーズンでニバリを総合優勝に導いた「前待ち作戦」の成功など、やはりサイクルロードレースにおける「勝ち方」を最もよく知っているチームの1つでもある。グランツール覇者ニバリや、若手の代表格だったランダ、ローザなどは移籍してしまったものの、まだまだ輝かしい勝利を量産してくれることが期待できるチームでもある。
また、カザフスタン人の活躍が見られるほぼ唯一のワールドツアーチームであり、同じアジア人として、彼らの姿が注目されることを期待している。ゼイツとか、ルツェンコとか、コジャタイエフとか、昨年までもアシストとして地味にいい働きをしているのだ!
ファビオ・アル(イタリア、26歳)
2015年シーズンはジロ・ディタリア総合2位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝という快挙を遂げ、一気に「ファンタスティックフォー」の仲間入りを果たした・・・が、ジロを総合優勝したニーバリとは逆に、肝心のツールでベスト10にすら入れない結果に。
だが、決して悲観的にはなっていない。何しろ今年のジロは、100回記念大会であり、アルの故郷であるサルデーニャ島からスタートする大会なのだ。ある意味で、ツール以上に気合が入っているかもしれないこの大会で、昨年度のリベンジを果たすことができるのか。
――だが、その前に立ちはだかるのはかつての盟友ミケル・ランダ。あるいは先輩でありディフェンディングチャンピオンのヴィンツェンツォ・ニバリ。決して簡単な戦いではないだろう。
モレノ・モゼール(イタリア、26歳)
昨年のジロ・ディタリアで惜しいところまでいったものの、ブランビッラとトレンティンのコンビの前に打ち倒された悲しい人。今年はキャノンデールから移籍し、ジロ出場のほか、春のクラシックシーズンでも多数の出場を計画している様子。逃げや、アスタナ得意の前待ちなどで、その姿を幾度か見ることもできるかも。そして今度こそ、グランツールでの逃げ切り勝利を成し遂げてほしい!
また独走力もそれなりにあるようで、ヨーロッパ選手権ITT部門ではオリヴェイラやロッシュを下して3位につけている。こちらの方でも、どこかで勝利を得られるかもしれないので期待しておこう。
ミゲル・アンヘル・ロペス(コロンビア、22歳)
ツール・ド・スイスで総合優勝を果たし一気に注目されたコロンビアの新鋭。顔はチャベス系コロンビアン。つまりかわいい。しかし準エース格としての出場と言われたブエルタ・ア・エスパーニャで、序盤落車の影響で途中リタイア。その後もミラノ~トリノでは優勝するものの、イル・ロンバルディアを含むいくつかのレースをリタイアで終えている。いまいち結果を出し切れなかったシーズン後半であった。
しかし彼はまだまだ若い。そしてその爆発は決して去年だけのものではなかった。今年こそ、また大きな成果を出してくれるのは間違いない。まずは1週間程度のステージレースでの勝利を量産していきながら、少しずつグランツールに慣らしていこう。たとえばパリ~ニースとか、ツール・ド・ロマンディとか、そういったところで、アルがエースを務めなさそうなレースでまずはしっかりと良い成績を出していけばいい。
その他注目選手
ヤコブ・フグルサング(デンマーク、31歳)
アスタナを古くから支えるオールラウンダー。フールサンとも。グランツールでエースを支える重要なアシスト役であるとともに、昨年のオリンピックでは2位を獲るなど起伏多めのワンデーレースでも活躍できる。よって今年は、アルデンヌクラシックでの活躍に期待。ベスト10には入れる実力者なので・・・。
オスカル・ガット(イタリア、32歳)
ガットと言えば、ティンコフ時代、あるいはその前のキャノンデール時代は、サガンの名アシスト役、というイメージが強かった。しかしアスタナに移籍した後は、ほかに目立ったスプリンターがいない気がするので、ガットがエーススプリンターとして戦える機会も増えるかもしれない。昨年はブエルタ・アンダルシアでステージ勝利を挙げたほか、北極圏レースで総合3位。スプリンター向けの1ランク・HCランクの短めなステージレースなどでの活躍に期待だ。
タネル・カンゲルト(エストニア、29歳)
昨年はジロ・デル・トレンティーノ区間2勝+総合2位から始まって、各種グランツールやワンデーレースでも活躍。オリンピックロードレースでも9位に入り、最後にはアブダビツアーで総合優勝を果たした。今、少しずつその存在感を高めつつあるエストニア人である。昨年はタラマエがグランツールでの区間勝利を成し遂げた。今度はカンゲルトが、ぜひ!
その他登録選手
ぺロー・ビルバオ(スペイン、26歳) 元カハルラル
ザンドス・ビジギトフ(カザフスタン、25歳)
マッティ・ブレシェル(デンマーク、32歳) 元キャノンデール
ダリオ・カタルド(イタリア、31歳)
セルゲイ・チェルネトスキー(ロシア、26歳)
ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、28歳)
ダニイル・フォミニフ(カザフスタン、25歳)
アンドレイ・グリヴコ(ウクライナ、33歳)
ドミトリー・グルズジェフ(カザフスタン、30歳)
ジャスパー・ハンセン(デンマーク、26歳) 元ティンコフ
アーマン・カミシェフ(カザフスタン、25歳) ★カザフスタンロードチャンピオン
トゥルルス・エンゲン・コルセス(ノルウェー、23歳) 元チーム・ジョーカー(CT)
バフティヤール・コジャタイエフ(カザフスタン、24歳)
アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、24歳)
ミナリ・リカルド(イタリア、21歳)
ルイス・レオン・サンチェス(スペイン、33歳)
ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、37歳)
ニキータ・スタルノフ(カザフスタン、25歳) 元アスタナシティ(CT)
パオロ・ティラロンゴン(イタリア、39歳)
ルスラン・トゥルバイエフ(カザフスタン、29歳)
ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、24歳)
アルチョーム・ザハロフ(カザフスタン、25歳)
アンドレイ・ゼイツ(カザフスタン、30歳)
バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM、バーレーン)
ヴィンツェンツォ・ニバリの移籍先としてずっと有名だったチームだが、ほかにもガスパロットやヨン・イサギレやヴィスコンティなどの移籍が決まり、一気に実力も高まった。スプリンターはボニファツィオを先頭において、クラシックはガスパロットで狙っていくか。ニバリの総合優勝争いでどれだけアシストできる人材が揃っているかが勝負。まずはジロ、100回記念大会が腕の見せ所だ。
スロヴェニア人が妙に多いのが気になる。何かあるのか?
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、32歳)
ツール総合優勝を成し遂げるも、フルームもキンタナもコンタドールもいなかったからでしょ、と言われてしまうし、翌年のツールでは総合表彰台を逃すわ、ブエルタでは魔法の絨毯で失格にされるわで散々なシーズンを経験した。しかし昨年はツール落選の憂き目に遭うも、そこからの挽回のジロ総合優勝。しかも劇的な逆転劇の結果・・・一気に名誉挽回できた感がある。あとはオリンピックで優勝できれば言うことなしだったが、あとわずかというところで悔しい落車リタイア。本当に悔しかった。
今年もまずはしっかりとジロで連覇を狙いたい。何しろ今年は100回記念大会であり、故郷のシチリア島を走るレースなのだから・・・問題はキンタナの存在。いつまでも2番手でいるわけにはいかないニーバリが、意地を見せるか!
ヨン・イサギレ(スペイン、27歳)
ツール・ド・フランス第20ステージで勝利し、スペイン人からの勝利0という危機を救った英雄。そこで見せた、ニバリやパンタノを引き千切るダウンヒルは実況陣も驚いていたが、その直前のツール・ド・スイスで見せた、カンチェラーラも呆れるほどの超高速ダウンヒルがあったため、私からは何も驚きではなかった。そう、この選手はもはや屈指のダウンヒラーであり、下りが重要視される昨今のグランツールでは十分に存在感を発揮できる選手なのである。このチームにおいては、ニバリに次ぐ準エースとしての活躍も期待できるのではないだろうか。
まずは、ニバリがティレーノに出る代わりにエースを務めることになるであろうパリ~ニースでの総合争いを、そしてロマンディやスイス、エネコ・ツアーなどでの総合優勝を目指していこう。
ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、23歳)
本チームのエーススプリンターを務めることになるだろう。年初のダウンアンダーではいいところまでつけていたが残念だった。昨年はポローニュで1勝。パリ~ニースやロマンディ、ドーフィネでもいいところまでつけていたので、今年は新城のアシストなどを使ってワールドツアーレースでの区間勝利を増やしていきたい。また、ミラノ~サンレモでの活躍にも期待だ。ニバリやコルブレッリも出るのかな? 誰がエースになるだろう。
その他注目選手
新城幸也(日本、32歳)
基本はボニファツィオやエースのアシストとして働き、隙を見て逃げに乗ることになるだろう。日本人としては爆発力のある選手で、まだまだステージ勝利を獲るには十分に若い。むしろ本格的に脂が乗ってきたと言えなくもないし、スプリントでは厳しくてもしっかりと逃げからの勝利を手にしてほしい。そのためには山岳をガンガン乗り越える力が必要か? スプリントステージでの逃げ切りは厳しいものがありそうだからな・・・
エンリコ・ガスパロット(イタリア、34歳)
元はニバリのチームメート。昨年まではプロコンチネンタルチームで燻っていたが、そこからのアムステル勝利で一躍ブレイク。凄いのはその直後のフレッシュやリエージュでもしっかりと上位に食い込んできていることで、今年もアルデンヌでの活躍が期待されるところだ。
ソンニ・コルブレッリ(イタリア、26歳)
元バルディアーニ所属。プロコンチネンタルチーム所属選手の中では唯一のUCIランキングベスト20入りを果たした。あ、嘘、コカールがいたが、あそこは半分ワールドツアーみたいなところがあるからなぁ。スプリントではボニファツィオが中心になるだろうが、その発射台役か、もしくはボニファツィオがいないレースでのエーススプリンターを務めることになるだろう。
その他登録選手
ヴァレリオ・アグノーリ(イタリア、32歳) 元アスタナ
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、29歳) 元ティンコフ
グレガ・ボーレ(スロヴェニア、31歳) 元ニッポヴィーニファンティーニ
ボルト・ボジッチ(スロヴェニア、36歳) 元コフィディス
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロヴェニア、33歳) 元ユナイテッドヘルスケア
オンドレイ・ツィンク(チェコ、26歳)
チュン・カイ・フェン(台湾、28歳) 元ランプレ
イヴァン・ガルシア・コルティーナ(スペイン、21歳) 元クイックステップ(トレーニー)
ツカブ・グルメイ(エチオピア、25歳) 元ランプレ
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、32歳) 元IAM
ヨン・アンデル・インサウスティ(スペイン、24歳) 元エウスカディ・バスク(CT)
ハビエル・モレーノ(スペイン、32歳) 元モヴィスター
ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、28歳) 元キャノンデール
アントニオ・ニバリ(イタリア、24歳) 元ニッポヴィーニファンティーニ
ドメン・ノヴァク(スロヴェニア、21歳) 元アドリア・モバイル(CT)
フランコ・ペリゾッティ(イタリア、39歳) 元アンドローニ・ジョカットリ
ダヴィド・ペル(スロヴェニア、21歳) 元アドリア・モバイル(CT)
ルカ・ピデルニク(スロヴェニア、23歳) 元ランプレ
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、34歳) 元ディメンション・データ
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、34歳) 元モヴィスター
ワン・メイイン(中国、28歳) 元ウィズダム・ハンシャン(CT)
BMCレーシングチーム(BMC、アメリカ)
昨年はポートの移籍で話題を呼び、ヴァンガーデレンとの間のエース争いが白熱化するかと思っていたが、ヴァンガーデレンがまさかの絶不調により、ポートだけが大きく活躍する結果となった。それ以外にもヴァンアヴェルマートのマイヨ・ジョーヌとオリンピック金メダル獲得など、十分に成功した1年だったように思われる。
BMCは今期限りでの撤退の噂があるが、代わるスポンサーとしてすでにタグホイヤーが名乗りを挙げている。その関係で今年のユニフォームの肩口でしっかりとアピール。ありがとうタグホイヤー! だから我々は感謝をすべきで、決して肩口ダサいとか言ってはならない。
今年はニコラ・ロッシュの移籍もあり、総合力が少しは高まるか?
リッチー・ポート(オーストラリア、31歳)
昨年ツール総合5位。落車さえなければ2位につけてもおかしくない走りだった。正直、あのツールで唯一フルームについていけた選手だったと思われる。正直、ポートの移籍に不安を抱き、ヴァンガーデレンとの間のエース争いが泥沼化するものだと思っていただけに、ヴァンガーデレンの不調も相まって、あれだけすんなりとBMCのエースに押しあがったのにはびっくりした。
シーズン後半はオリンピックの落車により棒に振ったが、年明け早々、ダウンアンダーでの総合優勝という成果を見せる。今年こそは、目指すはツール・ド・フランスでの総合表彰台。ブエルタ出場もありそうだが、そうすれば総合優勝も目指せそう。
フレッヒ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、31歳)
押しも押されぬオリンピック金メダリスト。ただ単にワンデーレースに強い、というだけではない。クライマー/オールラウンダーに向いていると言われたオリンピックを制するために必要な登坂力を、しっかりとツール・ド・フランスから見せつけていた。
だがやはり、狙っていきたいのは北のクラシック。すなわちフランドル、もしくはパリ~ルーベ。あともう少し、あともう少しなのだ。まだまだ31歳。絶対に北のクラシックでの勝利を成し遂げて、その自転車人生に大輪の華を咲かせたい。
マイルス・スコットソン(オーストラリア、23歳)
強いことはわかっていたが、まさかのオーストラリアロード優勝。そして直後のダウンアンダーでは、総合上位やステージ勝利はなかったものの、チームを全力で牽引する姿が非常に目立った。これからに最も期待できるオージーライダーだ。
独走力も高い。オーストラリア選手権では5位を獲ったほか、昨年はU23世界選手権ITT部門で3位だ。むしろ現状の実績ではタイムトライアルスペシャリストといった方が適切だ。
なので今後、山岳での力をしっかりとつけていくことができれば、グランツールでも戦えるオールラウンダーに成長することが可能となる。それだけの環境がBMCには整っているし、早い時期からグランツールにも出場し、成長していってほしい。
その他注目選手
ニコラ・ロッシュ(アイルランド、32歳)
今年スカイから移籍してきたアイルランドチャンピオン。オールラウンダーとしての実力は十分。グランツールにおける、ポートやヴァンガーデレンの貴重なアシストとなってくれるだろう。あるいはブエルタとの相性もいいため、そこでのステージ優勝も期待したいところ。昨年は従兄弟のダニエル・マーティンの方が目立ってしまっていたので、しっかりと今年は挽回したいところだ!
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、28歳)
2年前のツールで実力を見せつけ総合2位まで上り詰めたところであえなくリタイア。期待をもって迎えた昨シーズンも不調の連続でシーズン後半は誰も言及しなくなる始末。だが、まだ若い。これくらいのスランプはいくらでも乗り越えられるだろう。まずは春のジロ・ディタリアで、復活の狼煙を挙げるのだ!
ローハン・デニス(オーストラリア、26歳)
2015年ダウンアンダー総合優勝とツール・ド・フランス初日TTでの優勝で一気に名を挙げた。昨年から2年連続の国内選手権ITT部門優勝もあり、タイムトライアルスペシャリストとして、オールラウンダーとして、その実力を高め続けている。ツアー・オブ・カリフォルニアでは2014年・2016年と総合2位続きだが、今年はその出場を蹴ってジロ・ディタリアに初挑戦。ヴァンガーデレンも出るらしいが、状況によっては彼がエースとして戦うことになるだろう。世界選手権ITT部門での優勝も狙っていきたい。
その他登録選手
トム・ボーリ(スイス、23歳)
ブレント・ブックウォルター(アメリカ、32歳)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、29歳)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、30歳)
シルヴァン・ディリエ(スイス、26歳)
ジャン・ピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、30歳)
マルティン・エルミガー(スイス、38歳) 元IAM
キリアン・フランキニー(スイス、22歳)
フローリス・ヘルツ(オランダ、24歳)
ベン・ヘルマンス(ベルギー、30歳)
ステファン・クーン(スイス、23歳)
アマエル・モワナール(フランス、34歳)
ダニエル・オス(イタリア、30歳)
マヌエル・クィンツァート(イタリア、37歳)
ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、27歳)
サミュエル・サンチェス(スペイン、38歳)
ミヒャエル・シャール(スイス、30歳)
マヌエル・センニ(イタリア、24歳)
ディラン・トゥーンス(ベルギー、24歳)
フランシスコ・ベントソ(スペイン、34歳) 元モヴィスター
ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、23歳)
ダニーロ・ヴィス(スイス、31歳)
ボーラ・ハンスグローエ(BOH、ドイツ)
昨年まではボーラ・アルゴン18。プロコンチネンタルチームだったが、今年、サガンやマイカといった名選手を迎え、ワールドツアー入りを果たした。もちろん狙うはサガンのスプリントおよびクラシック勝利。さらにマイカの山岳ステージ勝利と、ケーニッヒの総合表彰台である。さらには逃げにバルタ、スプリントにマッカーシーやサム・ベネットなど、非常にバランスの取れた構成のチームである。平均年齢も若く、オーストリアやドイツなど、これから成長が見込まれる勢力の底上げを図るチームとなってもらいたい。
ペテル・サガン(スロヴァキア、26歳)
ロンド・ファン・フラーンデレンの優勝から始まって、ツール・ド・フランス3勝と5年連続となるポイント賞、初の開催となったヨーロッパ選手権優勝に加えて、世界選手権を連覇するといった、ロードレース史に残る結果を叩き出してきた2016年度のサガン。だが彼の快進撃はまだまだ止まらない。ポイント賞受賞数記録はもっと伸ばしていくつもりだろうし、パリ~ルーベやミラノ~サンレモなど、まだまだ獲りたいモニュメントは沢山ある。はたまた、総合系選手への変化をまだ目指してもいるのだろうか? 何をしでかすかわからないところがサガンの魅力。きっと、想像では追い付かない成果を出してくれることだろう。
レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、29歳)
元々ネットアップ・エンデューラという、ボーラの前身となるチーム出身であった。そこからツール総合上位を獲得してスカイに移籍したわけだが、今年はそこからの出戻りとなった。
結果を出せなかったから、ではないだろう。むしろ昨年のブエルタでは、ステージ優勝こそあとわずかで届かなかったものの、途中までは総合上位に食い込む活躍を見せつけていた。今年はこのチームで、再びエースとして走れることが保証されている。だからこそ、今度こそグランツールでの総合表彰台を目指して、暴れ回ることができるに違いない。もしそれが実現できたならば・・・チェコ人としては初?
ラファウ・マイカ(ポーランド、27歳)
2014年・2016年にツール山岳賞を獲得。山岳逃げ屋としての実力は随一である。2015年のブエルタでは総合3位にも入り、総合エースとしての活躍も、ケーニッヒと並んで期待されることだろう。そのためには独走力の強化も必要となるだろうが・・・。
2014年ツールでの、独走中のウインクが印象的だった。どこかお茶目なところがあり、その意味でサガンと相性抜群? 昨年末に配信された、マイカにいたずらするサガンの映像は見てて微笑ましくなった。
今年はツール・ブエルタでの出場予定とのことで、3度目の山岳賞と、そしてブエルタ総合優勝を目指して頑張ってほしい。イル・ロンバルディアとかとも相性良さそうなんだけどなぁ。
その他注目選手
ヤン・バルタ(チェコ、32歳)
ツール・ド・フランスではお馴染みの逃げ巧者。独走力も高く、TTでもよく上位に来ている。個人的に好きな選手の1人だ。ステージ勝利する姿はあまり想像できないけれど、今年もまた、逃げに乗る彼の姿を見るのが楽しみだ。あるいは、(昨年では果たせなかった)初日逃げからの山岳賞ジャージなども・・・期待したい。
ボーラきってのスプリンター。そこにサガンが入ってきたことで、彼のアシストに専念することになるのかな・・・と思っていたら、ダウンアンダーでは彼のアシストを逆に受けて勝負に出る瞬間も。そのときはカレブ・ユアンに敗れ去ったが、カデルエヴァンス・グレートオーシャンズレースの前哨戦となるクリテリウムでは、(直接対決ではないものの)ユアンに勝利する。今後、サガンの出ないレースでのスプリント勝利に期待していきたい。
ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、24歳)
昨年のダウンアンダーで大暴れしたオーストラリア人。今年も、勝利こそなかったものの、スプリントはもちろん山岳でもしっかり残っての総合3位を獲得した。登りスプリントに強く、ある程度山もこなせるという意味でサガンに近い脚質を持つ若手。近いうちに、さらなるブレイクもありうるかも?
その他登録選手
パスカル・アッカーマン(ドイツ、23歳) 元ラッドネット・ローズ(CT)
シェイン・アーチボルド(ニュージーランド、27歳)
エリック・バシュカ(スロヴァキア、23歳) 元ティンコフ
チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、29歳)
マチェイ・ボドナール(ポーランド、31歳) 元ティンコフ
エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、24歳)
マルクス・ブルグハート(ドイツ、33歳) 元BMC
シルヴィオ・ヘルクロッツ(ドイツ、22歳)
ミカエル・コラー(スロヴァキア、24歳) 元ティンコフ
パトリック・コンラッド(オーストリア、25歳)
ホセ・メンデス(ポルトガル、31歳) ★ポルトガルRRチャンピオン
グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、22歳)
マッテオ・ペルッキ(イタリア、28歳) 元IAM
クリストフ・フィングステン(ドイツ、29歳)
パウエル・ポランスキー(ポーランド、26歳) 元ティンコフ
ルーカス・ポストルベルガー(オーストリア、25歳)
ユライ・サガン(スロヴァキア、28歳) 元ティンコフ
アレクセイ・サラモンティン(ラトヴィア、34歳) 元IAM
アンドレアス・シリンガー(ドイツ、33歳)
ミカエル・シュヴァルツマン(ドイツ、26歳)
ルディゲル・ゼーリッヒ(ドイツ、27歳)
キャノンデールドラパック・プロサイクリング(CDT、アメリカ)
リゴベルト・ウラン、アンドリュー・タランスキー、ピエール・ローラン・・・総合系の実力ある選手は多いが、どれもイマイチ結果を出し切れていない。今年はジャック・バウアーやベンジャミン・キングといった渋めの選手の放出も目立ち、どんどん華がなくなっていくような・・・
そんな中、新加入で期待できるのがセプ・ヴァンマルク。今年こそ北のクラシックでの勝利が見てみたい。そのために、チームがどれだけ彼をサポートできるのか・・・見ものである。
リゴベルト・ウラン(コロンビア、29歳)
2年連続で総合2位につけたジロ・ディタリアにこだわってきたが、今年は出場をキャンセル。代わって予定しているのが、アルデンヌクラシックへの初挑戦! 確かに昨年はイル・ロンバルディアで3位。起伏多めのクラシックへの適正を見せつけた。ステージレースでの総合争いよりも、もしかしたら可能性があるのかもしれない。ニュー・ウランの活躍に、今年は期待だ!
セプ・ヴァンマルク(ベルギー、28歳)
現役ライダーで五本の指に入る石畳ハンター。そんな彼が、あえてロットNLからの離脱を決めた。石畳には縁のなさそうなこのアメリカのチームで、果たして念願のフランドル or ルーベ勝利を手にすることができるのか!?
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド、25歳)
昨年パリ~ニース初日のTTで、デュムランからわずか1秒差という驚きの結果を出した、元ニュージーランドTTチャンピオン。しかも彼の強さはTTだけじゃなく、HCクラスのレースでのスプリントでも上位に食い込んでくることがしばしばあるのだ。
昨年はブエルタに出場したものの途中リタイア。今年こそはジロかブエルタあたりで出場し、スプリント勝負で上位に入り込んでいきたい。やがてグランツールでの勝利を目指して。
その他注目選手
ピエール・ローラン(フランス、30歳)
TT改善は本当にされたのだろうか。昨シーズン後半はもはや誰も触れなくなった。今年はタランスキーもウランもいないジロで、おそらくはエース待遇での出場。ただ、無理して総合上位を狙うよりも、山岳賞やステージ優勝を狙っていった方が目立てる気がする。
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、28歳)
昨年はブエルタ総合5位。同じアメリカ人オールラウンダーのヴァンガーデレンは不調に苦しんでおり、ここはタランスキーがしっかりと結果を出したいところ。まずはカリフォルニアでの勝利だ!
ジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、25歳)
通称ドンちゃん。カリフォルニア総合5位まで上り詰めており、タランスキーに次ぐアメリカ期待の総合エース。まだまだ総合表彰台に手をかけるところまでは想像できないが、ジロでローランをしっかりサポートしつつ、貪欲に逃げを狙っていこう。
その他登録選手
アルベルト・ベッティオール(イタリア、23歳)
ネイサン・ブラウン(アメリカ、25歳)
ブレンダン・キャンティ(オーストラリア、25歳) 元ドラパック
ヒュー・カーシー(イギリス、22歳) 元カハルラル
ウィリアム・クラーク(オーストラリア、31歳)
サイモン・クラーク(オーストラリア、30歳)
ローソン・クラドック(アメリカ、24歳)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、24歳)
アレックス・ハウズ(アメリカ、29歳)
クリスティアン・コレン(スロヴェニア、30歳)
セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、32歳)
ライアン・マレン(アイルランド、22歳)
タイラー・フィニー(アメリカ、26歳)
トーマス・スカリー(ニュージーランド、27歳) 元ドラパック
トームス・スクインシュ(ラトヴィア、25歳)
トムイェルト・スラフテル(オランダ、27歳)
ディラン・ファンヴァーレ(オランダ、24歳)
トム・ヴァンアスブロック(ベルギー、26歳) 元ロットNL
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、25歳)
ワウテル・ウィッパード(オランダ、26歳)
マイケル・ウッズ(カナダ、30歳)
次回はD~Qのチームをレビューします。