りんぐすらいど

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ジロ・ディタリア2016 第17ステージ

 全長196km。トリノを除けば今ジロ最後のピュアスプリントステージ。

 当然、このステージを最も高いモチベーションで臨んでいたのは、トレック・セガフレードのジャコモ・ニッツォーロである。

 昨年大会でポイント賞を獲得したニッツォーロは、今年もまた、ポイント賞連覇を狙える位置にまで来ている。

 しかしそれは、2勝しているキッテルや3勝しているグライペル、さらにはアルノー・デマールやヴィヴィアーニといった強力なライバルたちがすでにジロを去っているがゆえ、という部分もあるかもしれない。

 そして何よりも、今年も昨年と同じくステージ勝利なしのポイント賞となってしまう。これは何としてでも避けねば、という思いが、彼の強いモチベーションとなっていたことは間違いないだろう。

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第2スプリントを集団先頭で通過するニッツォーロ。jsportsより。

 

 ポイント賞獲得に向けても、しっかりとスプリントポイントの回収をこなしていた。逃げの3人に含まれていたBMCのダニエル・オスが、2度のスプリントポイントを先頭通過したことでポイント賞ランキングの3位に浮上してきたが、その後の4位争いでニッツォーロはきっちり2度とも先頭で通過。ポイント賞ランキング2位のディエゴ・ウリッシとの差を確実に引き離していく。

 

 だが、この後に事態が大きく動く。

 順調に逃げとのタイム差を縮めていたメイン集団。しかし、それが吸収しきる前に、集団から3人の新たな逃げがアタックを決めた。

 ベテランで逃げのスペシャリスト、ラルスイティング・バクを含んだ新たなこの逃げは、先行して逃げていた3人と合流し、さらに加速していく。すでに長距離を逃げていたはずの3人も、積極的に先頭交代を繰り返し、追走するメイン集団とのタイム差をむしろ開いていく。

 このままでは逃げ切りすらありうる――もちろんメイン集団も全力で追走を仕掛けた。だがそのせいで、本来はゴール直前でスプリンターを安全に運ぶはずのアシストたちを完全に使い切ってしまったのだ。

 そして最後の一手を仕掛けたのが、IAMサイクリングのロジャー・クルーゲ。元トラック選手の30歳ドイツ人が、解散が決まったばかりのチームに、グランツール初勝利というビッグなサプライズを提供した。

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両手で頭を抱え、信じられないという表情でゴールするクルーゲ。jsportsより。

 

 そしてニッツォーロ、またしても2位である。

 もちろん、ポイント賞を確定させるという意味では重要な着順ではある。これでライバルたちとはかなりの差をつけられたはずである。

 しかし、また勝てなかった。

 ゴール後のインタビューでも、かなり意気消沈した様子ではあった。

 

 だがまだトリノがある。

 純粋なスプリント勝負であれば今のジロに敵がいないことは、この日のスプリントポイントやゴールで証明している。

 チームの最高のアシストを得て、その日こそ勝利を掴むことが、きっとできるはずだ。(昨年のような大逃げが決まらなければ・・・)

 

 またこの日は、我らが日本の山本元喜選手も大活躍したステージであった。なんと、残り30km台という終盤で、逃げのメンバーを追走するための牽引という重要な役割を与えられていた。

 残念ながら国際映像で、その牽引しているまさにその場面が映されることはなかったけれど、元喜選手がただ集団の後ろについているだけの、完走だけを目指している選手ではなく、プロとしてしっかりと仕事をこなしつつ、それでもハードなステージを乗り越えて最終ステージまで着実に歩みを進めている選手なのだ、ということを証明してくれる働きで、応援している我々にとっても嬉しいステージとなった。

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国際映像に映し出される山本選手。できれば前を牽いている映像もほしかった。jsportsより。

 

 昨日のステージでは優勝大本命の一角であったニバリがまさかの失速を見せ、大きくタイムを落とす事態に。熱烈に応援していただけにテンションも下がり、純粋な心でクライスヴァイクを応援することもできず何か満たされない思いを抱いていた。

 そんな中で展開された今日の平坦ステージは、何かそういった意味で「癒し」のようなものがあり、しかも後半の手に汗握る展開と相まって、むしろ非常に「面白い」ステージだったように感じる。

 とはいえ残るステージはいずれも厳しいステージばかり。

 今後は総合争いの行方を徹底的に追う以外になく、そしてその総合優勝が誰のものになるのかも――正直まだまだ、はっきりとしたことはまったく言えない状態である。

 ジロ・ディタリア2016の激闘はまだまだ終わらない。

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