りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ジロ・ディタリア2016 第10ステージ

 今日もまた、劇的な勝利が演じられた。年齢は21歳。昨年まではコンチネンタルチームに所属していた。今年がプロデビュー初年度であり、もちろん初のグランツール出場である。そしてこの勝利がプロ初勝利というのだから驚きだ。すべては、逃げに3人も送り込んだバルディアーニの作戦勝ちであり、また、最終版まで共に逃げてくれた先輩ピラッツィの助けあってのことだった。

 ジュリオ・チッコーネ。今後の活躍が期待される選手だ。

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勝利を喜び天を指差すチッコーネ。その表情は歓喜ゆえか泣き顔のように見える。jsportsより。

 

 休養日明け。予想された通り、激しい動きが繰り返されたステージであった。しかし、この日を最後に今年のジロを去る選手たちも何名かいた。キッテルとカンチェラーラの未出走は、予想の範囲内である。しかし、まさかのランダ、リタイア。体調不良によるものということだが、一昨日のTTを無難に乗り越えたばかりだけに、悔やまれるところである。

 また、デュムランもまた、第7ステージあたりから続く股擦れを原因に総合争いができる状態ではないとのことで、今後はステージ優勝にシフトすると宣言した。実際にこの日、1級山岳への登りで、チームメートと共に後方へと沈んでいく姿が映し出された。

 もはや総合争いはニバリとバルベルデの2強。そこにいくつかの選手たちが表彰台を巡って絡んでくる展開、というのが予想された。

 しかし、この日もまた、ピンクジャージを巡る、意外な争いが展開されていった。

 

 切っ掛けを作ったのは、1級山岳からの下りでアタックを仕掛けたアンドレイ・アマドール。既に総合3位につけている彼は、総合1位のブランビッラから32秒差。十分にマリア・ローザを狙える位置におり、かつマリア・ローザを保持するエティックス・クイックステップにとっては決して逃がしてはいけない選手であった。

 これを全力で追走したのが、そのマリア・ローザを着る、ジャンルーカ・ブランビッラ本人であった。1級山岳の登りで一度脱落しかけながらも下りでなんとか追いついてきていた彼は、そのまま集団の先頭をたった一人で牽引し続ける。他のチームは当然、様子見である。そしてチームメートも、あくまでも新人賞ジャージを保持するボブ・ユンゲルスを優先。ブランビッラ自身もそれがわかっているからこそ、たった一人で前を牽き続けた。明日、ガールフレンドと自分の子どもが沿道で待ってくれている、そこでピンクのジャージを着ている姿を見せてあげたい、と出走前のインタビューで答えていた彼である。彼はその夢のために、たった一人で走り続けた。

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メイン集団の先頭を牽くマリア・ローザ。jsportsより。

 

 結果として、ブランビッラは力尽き、ゴールを目にすることなく集団から脱落していった。最終的にはメイン集団からも1分15秒近い遅れを喫することとなった。

 しかし彼の牽引が無駄になったわけではない。マリア・ローザ着用確実か、と思われていたアマドールのゴールの直後、ほとんど間をおかずにユンゲルスを含むメイン集団がゴールに突入してきたのである。

 自らの夢を犠牲にしてでも集団を牽引し続けたブランビッラの尽力によって、チームメートのユンゲルスのマリア・ローザ着用が実現した。ユンゲルスもゴール後のインタビューでブランビッラに力強い感謝の言葉を告げた。エティックス・クイックステップの快進撃は続く。

 

 そして日本人のファンにとっては、そのスポンサーチームでもあるニッポ・ヴィーニファンティーニ、とくにそのリーダーであるダミアーノ・クネゴの活躍が光るステージであった。積極的に逃げに入ったクネゴは、その後、逃げ集団から次々と繰り出されるアタックにしっかりとついていき、最終的には先頭で1級山岳を通過することができた。

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1級山岳山頂を1位通過するダミアーノ・クネゴ。jsportsより。

 山岳賞ジャージを取り戻し、そしてしばらくは着られることがほぼ確定したクネゴ。このまま最後まで着続けてほしいものである。そのためにも、山本選手にもぜひ頑張っていただきたい。

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