りんぐすらいど

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ジロ・ディタリア2016 第7ステージ

 最後の山岳で遅れた後もなんとか下りで集団に追い付いたキッテルも、残り5km地点にパンクに見舞われて、完全に勝利を諦めてしまった。やはりイタリアでの勝利は今回も難しいのか。

 そしてキッテルなき集団において間違いなく最強だったのはこの男、アンドレ・グライペル。集団の後ろに沈んでいたように思われた彼が、バイクを巧みにコントロールし一気に先頭に飛び出て、絶好のタイミングで飛び出していたカレイブ・ユワンも軽々と追い抜いて、誰も追い付かせないままに先頭でゴールした。

 多少の登りにも悪路にも対応し、単独で集団の中に沈んでいても自力で前に飛び出してくるテクニックとパワーを兼ね揃えたこの男こそが、ある意味で最強のスプリンターなのかもしれない。マリア・ロッサ(ポイント賞ジャージ)もキッテルから奪い取り、今ジロにおける現時点で最も強いスプリンターであるとの証明が果たされた。

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jsportsより。

 

 グライペルの強さは、その加速力だけではない。集団の中に埋もれながら、バイクを巧みにコントロールし、前方まで浮かび上がってくるそのテクニックにもある。たとえばそれは、シャンゼリゼ含めステージ4勝を叩き出した去年のツールでも魅せてくれている。

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 カレイブ・ユワン、フェルナンド・ガヴィリアなど、スプリンターの世界では若い才能の台頭が目覚ましい。現役トップスプリンターでも、キッテルやクリストフは28歳、デゲンコルブは27歳、サガンは26歳とかなり若い。やはり瞬発力や恐怖への無抵抗さに関しては、若いほうが長けている部分があるのかもしれない。

 しかしグライペルは33歳。この年齢でこれだけの成績を出せるスプリンターというのは近年ではそう多くないのではないか(フースホフトもそのころでは少し成績を下降気味にしていたように思えるし、ペタッキも31くらいであれば全盛期だったがその後は少し停滞していた)。だがその勝利の背景には、瞬発力だけでなく、経験と勘からくる巧みなコース取りやタイミングの測り方などが、隠れていたのではないかと感じられる。そしてそれは、年齢を重ねているからこその力なのかもしれない。

 

 昨年のツールでの爆発を踏まえ、今年のツールはキッテルvsグライペルの激突が非常に楽しみとなっている。その前哨戦と言えるこのジロにおいては現状、グライペルが一歩リードといったところである。だがキッテルとジロ(というかイタリア?)との相性の悪さはある意味予想通りである。この後、夏のツールでどのような激戦を繰り広げてくれるのか。今から楽しみである。

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