石畳+登りゴールを前にして、最強ピュアスプリンターのマルセル・キッテルは早々に勝利を諦めた。代わりに圧倒的な強さを見せつけたのが、ロット・ソウダルのアンドレ・グライペルであった。
シーズン序盤は体調不良に悩まされながらも、ロンド・ファン・フラーンデレンなどでも積極的に逃げる姿を見せるなど、ピュアスプリントだけじゃない力を発揮していたグライペル。今日の勝利はそのすべてを出し切った成果であった。
両手を挙げてゴールするグライペル。jsportsより。
非常に平和なステージであった。最初の3級山岳は、ニッポ・ヴィーニファンティーニのチームぐるみの積極的な牽引によって、狙い通りクネゴが先頭通過山岳賞に向けて確実にポイントを重ねていく。このときの健闘ぶりは、山本元喜選手のブログでも克明に記されている。
残り90kmで5分差だったタイム差も、50kmを切ると3分差、残り20kmで50秒、残り10kmで20秒と、計算され尽くしたペースで縮めていく。その集団を中盤、全力で牽引していたのがロット・ソウダルであった。ここまでのステージではそこまで存在感を見せていなかった彼らがここで姿を現すのは、それだけこのステージにおけるグライペルの勝利の可能性が高いことを表してもいた。
そしてこのチームメートたちの健闘に、グライペルは全力で応えた。それは第4ステージのコンティの健闘に応えたウリッシもそうだし、ステージ2勝しているキッテルも、ユンゲルスやサバティーニといったチームメートたちが最後の瞬間まで牽引してくれたからこそ、最後の10秒を全力でスプリントすることができたのである。
もちろん、これらの努力が報われないこともある。しかし、決してリザルトには残らないアシストの尽力に、チームのエースがしっかりと応えていくという構図は、自転車ロードレースの醍醐味の1つであることは間違いないだろう。
そしてレースの展開が緩やかであった分、この日も多くの美しい風景を楽しむことができた。この日の見どころは、残り90km地点にある標高の高い巨大な橋。観る側としては美しいだけだが、走る側にとっては恐怖すら覚えてしまう所かもしれない。
凄い橋…だけど下だけは絶対見られない。jsportsより。
第2ステージで走った、一面緑色の平原の上を走る高架線とはまた対極的な風景。こういった、その国・地域ごとの魅力的な風景を楽しむことができるのも、ロードレースの魅力の1つだろう。
第2ステージ、オランダの高速道路と橋。jsportsより。
フランスではのどかな田園風景、スペインは乾いた大地のごつごつした姿など、今年もまた、それぞれのグランツールでの美しいヴィジュアルを楽しんでいきたい。