9/14に開催された「アイオワ」に続き、9/22には同じ北米を舞台にして2019-2020UCIワールドカップ第2戦「ウォータールー」が開催された。
昨年のワールドカップ開幕北米2連戦では、マチュー・ファンデルポール不在の中、世界王者ワウト・ファンアールトが圧勝するかと思いきや、伏兵トーン・アールツが見事2連勝を果たした。その勢いのままアールツは昨年のワールドカップ覇者に。
今年はファンアールトがツール・ド・フランスでの怪我により戦線離脱し、ファンデルポールがロード世界選手権に出場するために不在の中、ベルギー王者にもなったアールツが圧勝して終わるか、と思いきや・・・
今年の北米2連戦も波乱の幕開けであった。
第1戦「アイオワ」は、U23世界王者であり今年からエリートに殴り込みをかけるエリ・イゼールビットが鮮やかに勝利。
雨によりシクロクロスらしい泥地獄と化した第2戦ウォータールーは、果たしてこの「超新星」と昨年王者とどちらに軍配が上がるのか。
↓シクロクロスの基礎知識についてまとめた昨年の記事はこちら↓
↓レース映像はフルで以下の公式Youtubeから見られます↓
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直前まで降り注いだ雨によって、路面は泥の地獄と化した。まっすぐ走っていてもタイヤがぬかるみに取られ、まともに走ることができない。
実力がはっきりと出るこの難コンディションで、11分以上もかけて消化された第1周が終了した時点で、先頭はエリ・イゼールビット(パウェルス・サウゼン)とトーン・アールツ(テレネット・バロワーズ)の2人だけに。10秒遅れてダーン・ソエテ(パウェルス・サウゼン)とジャンニ・フェルメールシュ(クレアフィン・フリスタッズ)が続いた。
最初に大きな動きが巻き起こったのは第2周の終盤。時間でいうと20分45秒ほどのところの緩やかな下り区間。
まずは右カーブの内側でフェンスのテープにバイクを引っかけてしまったイゼールビット。それに焦ったのか、続く左カーブではアウト側で転倒してしまった。
それ以前から、下り区間に入るたびにやや遅れを見せるシーンが目立ったイゼールビット。安定感ある走りで難なく下りをクリアしていくトーン・アールツは、第2周をイゼールビットから16秒のリードを奪って攻略する。
3位は38秒遅れでマイケル・ファントーレンハウト(パウェルス・サウゼン)。ジャンニ・フェルメールシュ、ダーン・ソエテがこれに続いた。
16秒は決して小さくないタイム差。この直後にアールツは2回ほど立て続けに軽い転倒をするものの、それがあってもタイム差は縮まらず。
今回のコンディションにおける実力は、アールツがはっきりと若き才能のそれを上回っているように思えた。
しかし、30分を超え、1時間の戦いも折り返しに至る頃、シクロクロスはより厳しい時間帯へと入っていく。
全力で1時間を走り続けるシクロクロス競技は、純粋に体力との勝負という面がある。マチュー・ファンデルポールが怪物であり続ける要因の1つが、この体力の底知れなさだ。
そして、エリ・イゼールビットという男は、やはりこの体力という面において、怪物としての素質を持ち合わせているように思えた。
第3周のフィニッシュラインにおいて12秒にまで迫ったイゼールビット。第4周開始直後のブリッジ区間(35分00秒)で、アールツのすぐ背後にまで現れた。
その後の下り区間(35分20秒)で、アールツの動きには明らかに疲労が見えていた。バランスを崩し、早めに足をついてしまうアールツに対し、イゼールビットはバイクに跨ったままするっとアールツをオーバーテイクし、先頭に返り咲いた。
先ほどまでは差をつけられていた下り区間で、逆に差をつける走りを見せたのである。
決定的だったのは、36分20秒付近の、バイクを担いで登る必要のある急勾配区間。ここで、若きイゼールビットが楽々とバイクを担いで軽やかに登っていくのに対し、アールツはやっとのことでこれを追いかけ、コース横のロープに思わず手をかけるほどであった。
この頂上で2.6秒差をつけられたアールツは、その後、2度とイゼールビットに追い付くことができずに終わった。
テクニックでもミスの有無でもない。今回のこのウォータールーは、体力の圧倒的な差によって、世代交代が行われたのである。
最終的にはアールツに1分以上のタイム差をつけてイゼールビットが圧勝。そして2連勝。
新たな時代の寵児が現れた瞬間であった。
次回は1ヶ月後の10月22日。スイス「ベルン」にて開催される。
今度はマチュー・ファンデルポールが復帰する可能性あり。果たしてイゼールビットは、この怪物を相手取ってどれだけの走りを見せてくれるのか
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