グランツールの定番と比べると1日長く、そして今年の3週間の中では最も厳しい山岳ステージの連続となっている、今年のブエルタ第2週。
総合争いにおいても、ここで大きな動きが起こることが十分に予想されていた。
実際、今年のブエルタの主役たちの活躍が、この第2週で巻き起こる。
ロス・マチュコス、そしてアストゥリアスで最も強い走りをした選手たちは誰だ。
各ステージの展開、そして勝利の理由を分析していく。
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- 第10ステージ ジュランソン〜ポー 36.2㎞(個人TT)
- 第11ステージ サン=パレ〜ウルダクス 180㎞(丘陵)
- 第12ステージ ナバラ・サーキット~ビルバオ 171.4 km(丘陵)
- 第13ステージ ビルバオ~ロス・マチュコス 166.4km(山岳)
- 第14ステージ サン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラ~オビエド 188km(平坦)
- 第15ステージ ティネオ~サントゥアリオ・デル・アセボ 154.4km(山岳)
- 第16ステージ プラビア~アルト・デラ・クビーリャ 144.4km(山岳)
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第10ステージ ジュランソン〜ポー 36.2㎞(個人TT)
今大会唯一の、しかし36㎞と長距離の個人タイムトライアル。
激しいアップダウンとテクニカルなコーナーの下りとで高い難易度を誇るこのステージで、ライバルたちに大きなタイム差をつけて優勝したのは下馬評通り、プリモシュ・ログリッチェであった。
[参考]ログリッチェとライバルたちとのタイム差
- 11位:タデイ・ポガチャル(+1分29秒)
- 13位:アレハンドロ・バルベルデ(+1分38秒)
- 14位:ミゲルアンヘル・ロペス(+2分00秒)
- 19位:ラファル・マイカ(+2分26秒)
- 22位:ウィルコ・ケルデルマン(+2分38秒)
- 27位:ナイロ・キンタナ(+3分06秒)
これにより、キンタナは総合2位から3ランクダウン。
バルベルデが2位に浮上した。総合4位キンタナと総合5位ポガチャルとのタイム差もわずか5秒に迫り、「4強」から「5強」へと変わりつつある様相だ。
その中でもログリッチェは総合2位バルベルデに1分52秒差と圧倒的な差ができ、状況は一気にログリッチェ有利となった。
このまま逃げ切ることができるか。それともこの先のより険しい山岳ステージで崩れるか。
ステージ優勝争いにおいては、元世界王者トニー・マルティンが、ツール同様にチームのために力をセーブした結果7分50秒遅れの151位。
チームメートのニールソン・パウレスも本来はTT能力の高い選手だが6分54秒遅れと、こちらも同様のミッションを与えられたようだ。
チームの総合優勝争いの可能性が消え、自由に走れるのではないかと期待されていたこちらも元世界王者ヴァシル・キリエンカも、チーム内TOPとはいえ3分12秒遅れの30位と振るわず。
春に見つかった心臓の病気からの復調が十分ではないのか。
その他の優勝候補ネルソン・オリヴェイラ、ローソン・クラドック、パトリック・ベヴィンなどは好成績を叩き出すも、その全てを圧倒的な差で叩き潰したログリッチェの実力の高さが明らかとなった。
まるで、クリス・フルームの後継者である。デュムランもデニスも不安定の中、今年の世界選手権個人TTにおける筆頭優勝候補と言えそうだ。
また、このようなTTスペシャリストたちの中で驚きの結果を見せたのがステージ3位のカヴァニャ。「優勝は狙っていなかった。自分のタイムトライアルを走り、満足している」という自然体の彼は、今年ツアー・オブ・カリフォルニアでステージ優勝するなど、着実にその実力を高めつつある。
しかし現時点で来期の契約は不明。これほどの逸材、そしてまだ高騰する前と思われる彼を、育て上手のドゥクーニンクが手放すとは思えないのだが・・・。
第11ステージ サン=パレ〜ウルダクス 180㎞(丘陵)
フレンチバスクからスペインバスクへ。移動ステージと位置付けられた難易度の低いステージで14名の逃げ切りが決まり、総合勢は穏やかなサイクリングの1日を楽しんだ。
14名の内訳は以下の通り。
- フランソワ・ビダール(AG2Rラモンディアル)
- ゴルカ・イサギレ(アスタナ)
- レミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- ローソン・クラドック(EFエデュケーションファースト)
- バンジャマン・トマ(グルパマFDJ)
- ダミアン・ホーゾン(ミッチェルトン・スコット)
- ホルヘ・アルカス(モビスター・チーム)
- アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(ディメンションデータ)
- ベン・オコーナー(ディメンションデータ)
- マッテオ・ファブロ(カチューシャ・アルペシン)
- アンヘル・マドラソ(ブルゴスBH)
- アレックス・アランブル(カハルラル・セグロスRGA)
- ヨナタン・ラストラ(カハルラル・セグロスRGA)
- ミケル・イツリア(エウスカディ・ムリアス)
残り60㎞を切ったあたりから逃げ集団の中で動きが起こり始める。
まずは2級エスペグイの山頂付近でゴルカ・イサギレとアランブルが抜け出す。追走する集団のペースが上がり、山岳賞ジャージを着るマドラソが早くも脱落。
下り切ったところでクラドックが先頭2名に合流。直後の3級山岳の登りで、ゲブレイグザブハイアー、ホーゾン、ビダール、ファブロも追い付いて先頭は7名に。
イツリアは後続の集団に取り残されていた。
しかし3級山岳を終え、平坦区間に入ったところで先頭集団もぺースダウン。残り25kmで置いていかれた後ろの4名が逃げていた7名に追い付いた。
その瞬間、まさにこの瞬間を狙っていたかのように、後方にいたイツリアが一気にカウンターアタック。
この動きに集団の誰も反応することができなかった。
残り25km。プロコンチネンタルチームの選手が1人で逃げ切れる距離ではなかった。
そう誰もが感じたことで、彼は大きなチャンスを手に入れたのだ。
そして、1vs10。普通に考えれば10名が圧倒的有利というのが自転車ロードレースのセオリーに感じるが、こういった局面では、一心不乱に集中して走り続けられる1人に対して、互いにけん制し合ってしまう10名の方が速度が遅くなることもまた、自転車ロードレースのセオリーである。
あとは、地元バスク人としての意地。
集団から抜け出したクラドックら5名が一時は10秒を切るところにまで迫ったが、そのあとは11~13秒差を維持したまま25kmを逃げ切った。
この瞬間、彼はどのワールドツアーの選手たちよりもずっとずっと強かった。
総合勢は最終的には18分半ものタイム差をつけてゆっくりとゴール。
同郷のポガチャルとログリッチェは楽しそうに談笑しながらのリラックスモード。この先に待ち受ける、激しい山岳決戦を前にした、つかの間の休息であった。
第12ステージ ナバラ・サーキット~ビルバオ 171.4 km(丘陵)
バスク州の事実上の州都ビルバオ近郊の激坂を利用した終盤戦を特徴とする。
総合争いが巻き起こるステージでもないため、激坂に自信のあるパンチャーたちによる逃げ狙いのアタックが頻発し、アクチュアルスタートから2時間以上経過してようやく19名の逃げが生まれた。
逃げ19名の内訳
- ホセ・ロハス(モビスター・チーム)
- マヌエーレ・ボアーロ(アスタナ・プロチーム)
- ハインリッヒ・ハウッスラー(バーレーン・メリダ)
- フェリックス・グロスチャートナー(ボーラ・ハンスグローエ)
- フランシスコホセ・ベントソ(CCCチーム)
- ティム・デクレルク(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- フィリップ・ジルベール(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- トッシュ・ファンデルサンド(ロット・スーダル)
- スガブ・グルマイ(ミッチェルトン・スコット)
- ウィリー・スミット(カチューシャ・アルペシン)
- ニキアス・アルント(チーム・サンウェブ)
- ジョン・デゲンコルプ(トレック・セガフレード)
- ジャコポ・モスカ(トレック・セガフレード)
- ヴァレリオ・コンティ(UAEチームエミレーツ)
- マルコ・マルカート(UAEチームエミレーツ)
- アレックス・アランブル(カハルラル・セグロスRGA)
- ヨナタン・ラストラ(カハルラル・セグロスRGA)
- シリル・バルト(エウスカディ・ムリアス)
- フェルナンド・バルセロ(エウスカディ・ムリアス)
残り40㎞弱から始まる「激坂3連戦」の1つ目、3級ウルズティメンディ(登坂距離2.5km、平均勾配9.2%、最大勾配20%)を越えたところでグロスチャートナーとグルマイの2人の逃げが生まれる。
この2人旅がしばらく続くものの、集団ではコンティを勝たせたいマルカートと、ジルベールを勝たせたいデクレルクによる協力な牽引が行われ、3連戦の最後、残り10㎞から始まる3級アライズ(登坂距離2.2km、平均勾配12.2%、最大勾配20%)のふもとで集団は再び1つになった。
この最後の激坂で先頭を牽くのはコンティ。そこにバスク人の若き激坂ハンター、アランブルが食らいつき、その後ろからジルベールが余裕そうな表情でついていく。
山頂まで残り1.7㎞。8人ほどに絞り込まれた先頭集団からジルベールが飛び出す。ここについていけたのはアランブルと、エウスカディ・ムリアスのバルセロのみ。
アランブルも残り1.6㎞で千切られ、その200m後にジルベールの再度のペースアップによってバルセロも脱落した。
結局、山頂を越えた時点でジルベールと後続2名とのタイム差は20秒にまで開き、そのまま「アルデンヌの皇帝」が得意のレイアウトできっちりとグランツール通算10勝目を掴み取った。
勝てはしなかったがアランブルと、アラゴン出身の23歳バルセロは、ともにプロコンチネンタルチームながらワールドツアー顔負けの走りをしてみせた。
今後、彼らがワールドツアーで活躍する日も遠くはないだろう。
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第13ステージ ビルバオ~ロス・マチュコス 166.4km(山岳)
3級山岳が4つ、2級山岳が2つ、そして最後は超級「痛みの山」ロス・マチュコス。
山岳賞ポイントの大量収集が期待できるステージだけに、山岳賞首位のアンヘル・マドラソ(ブルゴスBH)や第9ステージでの大量収集により2位に浮上したジェフリー・ブシャール(AG2Rラモンディアル)らを含む29名もの大規模逃げ集団が生まれる。
しかしすでに山岳を先頭通過するほどの足が残っていないマドラソはまったくポイントを取れぬまま脱落。ブシャールもなんとか2位や3位を重ねて9ポイントを積み上げ、マドラソまで2ポイントにまで迫ったもののジャージ奪取には至らないまま集団に引き戻された。
しかしブシャールの仕事はまだ終わっていなかった。
彼は逃げ集団に残っていたチームのエース、ピエール・ラトゥールのためにこれを牽引。単独で抜け出して独走を開始していたエクトル・サエス(エウスカディ・ムリアス)、そしてロス・マチュコスの麓でこれを追い抜いて新たに単独逃げとなったブルーノ・アルミライル(グルパマFDJ)を捕まえるためにペースを上げていった。
ブシャール脱落後もラトゥールはほぼ自分だけで追走集団を猛烈に牽引し、やがてゴールまで残り4.7㎞でアルミライルを追い抜いた。
2016年ブエルタの第20ステージ、やはり激坂の山頂フィニッシュでラトゥールは勝利を挙げている。以後、国内選手権個人TTでの優勝や、ツール・ド・フランス新人賞獲得など、AG2Rのバルデに次ぐセカンドエースとしての立場を確立していったように思う。
そして今回のブエルタ。
バルデが早めのシーズン終了を伴う中、ラトゥールは初の単独エースとしてグランツールに臨むことに。
とはいえ、彼自身も決して万全のコンディションではなかった今シーズン。チームとしても彼のためだけの体制は用意せず、なんとか独力でもがきつつも、結局総合争いからは遠く離れた位置に追いやられることとなった。
だからこそ、ステージ勝利だけでも持ち帰りたい。そして今回は、その最大のチャンスであった。
が、そう簡単にはいかなかった。最大で8分近いタイム差がつけられたメイン集団だったが、後半にアスタナ・プロチームが猛牽引を見せたことでそのギャップが一気に埋まっていく。
そして残り4.5㎞でキンタナがアタックするとさらにプロトンのペースが高まり、脱落者も次々と出ていった。
残り3.5㎞でキンタナも捕まり、メイン集団はポガチャル、ログリッチェ、バルベルデ、キンタナ、ロペス、マイカ、ソレルの7名に絞り込まれる。
そしてここからこの集団の先頭に立ってペースを上げたのは、わずか20歳のネオプロ、ポガチャルだった。彼のペースアップにより、残り2.6㎞でログリッチェとバルベルデ以外は引き千切られ、その100m後にはバルベルデも脱落する。そのあとは100m進むごとに先頭のラトゥールとのタイム差が10秒縮まるようなペースでポガチャルは爆走。
残り2㎞からはログリッチェも前に出てライバルたちとのタイム差を開くために牽引し、このスロベニアンデュオが、残り1.5㎞で無情にもラトゥールを追い抜いた。
あとは2人とも、ペースを落とすことなく山頂のフィニッシュラインへと突き進んだ。最後は踏み切ったポガチャルが先輩に前を譲ることなくゴールし、初出場のグランツールでの2勝目を飾った。
これにより、総合3位、新人賞まで手に入れたポガチャル。ログリッチェを倒してマイヨ・ロホを手に入れる可能性はないと断言しつつ、新人賞や表彰台は狙いたいと宣言する20歳の若者。やはりこの男も、ベルナルやエヴェネプールに匹敵する才能の持ち主だったというわけだ。
総合優勝がログリッチェの手に渡る可能性はぐっと高まってきたものの、総合表彰台を巡る争いはまだまだ予断を許さない状況だ。
第14ステージ サン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラ~オビエド 188km(平坦)
スペイン北岸を西に向かう移動ステージにして、第2週に唯一用意された平坦ステージ。
久々の集団スプリントの気配に各スプリンターズチームは浮き足立つも、断面図に隠されたラストの登り勾配と落車によって、結局集団スプリントはこの日も夢で終わってしまった。
逃げは6名。
- シルヴァン・ディリエ(AG2Rラモンディアル)
- ルカ・ピベルニク(バーレーン・メリダ)
- ハーム・ファンフック(ロット・スーダル)
- サルヴァトーレ・プッチョ(チーム・イネオス)
- ディエゴ・ルビオ(ブルゴスBH)
- ステファヌ・ロセット(コフィディス・ソルシオンクレディ)
逃げの面子までもがここ数日の山岳系ステージと比べて「平坦ステージ向き」の面子となっている。
しかし、やはり集団スプリントを狙いたいボーラ・ハンスグローエとドゥクーニンク・クイックステップの牽引は力強く、逃げ切りはとてもじゃないが許されない雰囲気のまたゴールに飛び込んでいった。
最初の波乱は大落車であった。
残り900mで発生したそれは道幅いっぱいに広がり、アレハンドロ・バルベルデらを直接地面に叩きつけたほか、プリモシュ・ログリッチェなどは巻き込まれはしなかったものの足止めされた。
この日の優勝候補であったルカ・メスゲッツは右臀部の腸骨稜の骨折を負い、即時リタイアとなってしまった。
カオスを越えて先頭に残ったのは12名ちょっと。
その先頭を牽引したのはゼネク・スティバルとマキシミリアーノ・リケーゼ、そしてファビオ・ヤコブセンという、ドゥクーニンクの必勝トレインが丸々残っていた。
これならば、彼らが勝つ以外の可能性はない。
この日がただの平坦スプリントであれば。
実際は、この日のラストは登り勾配だった。500mで勾配6%? 地図上ではもしかしたらもっとあったかもしれない。
とにかく、そんな登り勾配でドゥクーニンクトレインの他を寄せ付けないハイスピードリードアウトは勢いを削がれ、その隙に飛び出したのがトッシュ・ファンデルサンドだった。
彼は、7月のツール・ド・ワロニーで、やはり同じように登り勾配となった最終日のスプリントで後続に秒差をつける圧倒的な勝利を成し遂げた。
今回も、同じようなパターンに持ち込んだベルギーの伊達男の鋭いアタックに、ドゥクーニンクが選んだのはリケーゼによる単独追走であった。
ヤコブセンはチームメートのホッジに比べればクラシカルなステージや登りへの適性はあるものの、今日のような純粋登りスプリントへの適性はまだまだだった。
その点、ツアー・オブ・カリフォルニアのアップダウンステージでも生き残ってスプリントに持ち込めるリケーゼは、このファンデルサンドについていける数少ないスプリンターだった。
ただし、もう1人いた。ツアー・オブ・ターキーの同じような登りスプリントで、幾度となく「後続を突き放しての勝利」を演出し続けてきたサム・ベネット。
彼がこの日も、ファンデルサンド、そしてリケーゼに追いすがり、ゴールラインの目の前にまでやってきた。
ここについてこられた時点で、2人に勝ち目はなかった。今大会最強のスプリンターが、落車と登り急勾配を乗り越えて大会2勝目。数少ないスプリント勝利のチャンスを見事に掴み取った。
結果だけ見てみれば、普通に集団スプリントが行われたように見えなくもないリザルト。
だが、その経緯は決して純粋なスプリンターズステージのそれではなかった。
第15ステージ ティネオ~サントゥアリオ・デル・アセボ 154.4km(山岳)
いよいよ今年のブエルタもクライマックス。アストゥリアス山脈で繰り広げられる山頂フィニッシュ2連戦は今大会のハイライトとなるだろう。
そのうちの1日目となるこの日は、全部で4つの1級山岳を登る激しい山岳ステージ。総獲得標高は3,600mに達する。
最初の1級山岳アセボ峠を経て、逃げ集団は17名に。
- マルク・ソレル(モビスター・チーム)
- ゴルカ・イサギレ(アスタナ・プロチーム)
- カンタン・ジョレギ(AG2Rラモンディアル)
- マーク・パデュン(バーレーン・メリダ)
- パウェル・ポリャンスキー(ボーラ・ハンスグローエ)
- ローソン・クラドック(EFエデュケーション・ファースト)
- サンデル・アルメ(ロット・スーダル)
- スガブ・グルマイ(ミッチェルトン・スコット)
- ベン・オコーナー(ディメンションデータ)
- タオ・ゲオゲガンハート(チーム・イネオス)
- ヴァシル・キリエンカ(チーム・イネオス)
- セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)
- ルーベン・ゲレイロ(カチューシャ・アルペシン)
- ダニエル・ナバーロ(カチューシャ・アルペシン)
- ホセ・エラダ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- オスカル・ロドリゲス(エウスカディ・ムリアス)
- セルジオ・サミティエル(エウスカディ・ムリアス)
連日の積極的な逃げを見せるクラドックやアルメ、グルマイなどに加えて、総合優勝候補たちの「前待ち」役としてソレル、イサギレそしてクスも含まれた。
この中から抜け出したサミティエルが、先頭で最後の1級山岳サントゥアリオ・デル・アセボ(登坂距離8km、平均勾配10%)に到達する。登り始めの18%勾配区間でペースを上げ、追いすがっていたキリエンカも突き放して独走を開始する。
しかし、追走集団にいたクスが残り7kmで抜け出すと、あっという間にサミティエルを追い抜いて、独走を開始。のちに追走集団からゲレイロ、ゲオゲガンハートが抜け出して懸命に追いかけるものの、クスとのタイム差は広がっていくばかりだった。
最後は、沿道の観客たちとハイタッチするほどの余裕を見せ、昨年ツアー・オブ・ユタで大ブレイクした次代を担うアメリカ人クライマーがグランツール初勝利を記録した。昨年は第1週でやや力を使い果たした感のあったこの男が、今年さらなる進化を見せつけた。
4分30秒遅れで1級山岳の麓に到達したメイン集団は、激坂&極狭の登り口でアスタナとモビスターが一気にペースアップ。
タイム差も加速度的に縮まり、合わせて人数も絞り込まれていった。
そして残り7kmのバナーを通過した直後、20名ほどに絞り込まれた集団の中からバルベルデがアタック。
これについていけたのはマイヨ・ロホを着るログリッチェただ1人。ロペスもポガチャルもこれにはついていくことができなかった。
最終的にはログリッチェ自身もバルベルデの前を牽きながら爆走し、最後はスプリントで彼を差した。前待ち役として入れていたはずのクスに彼自身の勝利を許しながら、自分だけでこれだけのことをしてしまうログリッチェの調子の良さが際立つステージとなった。
第16ステージ プラビア~アルト・デラ・クビーリャ 144.4km(山岳)
「長い第2週」のトリを飾るのが、超級山岳アルト・デ・ラ・クビーリャに登るアストゥリアス決戦。前日に続き、今大会のハイライトを飾る。
最後の超級以外にも1級山岳を2つ越えるレイアウトで、逃げ切りも十分に狙えるステージだけに21名もの逃げ集団が形成された。
その中には山岳賞1位のアンヘル・マドラソ(ブルゴスBH)と2位ジェフリー・ブシャール(AG2Rラモンディアル)も含まれ、この2人による山岳賞争いが白熱した。
2つの1級山岳は共にブシャールが先頭通過。マドラソも両方で2位通過するも、ブシャールが合計20点、マドラソが合計12点を獲得し、山岳賞ランキングでは両者が逆転した(ブシャール50点、マドラソ44点)。
昨年までアマチュアチームで走り続けていた苦労人の27歳が、初のグランツールで見事な成績を残すこととなった。
最後の超級山岳に突入した時点でメイン集団と逃げ集団とのタイム差は9分を超えており、逃げ切りは確定。
登りの中腹に位置する残り9km近くで、まずはアスタナのルイスレオン・サンチェスが攻撃を仕掛けた。
サンチェスのアタックに、すぐさまドゥクーニンクのジェームス・ノックスが反応。次いでタオ・ゲオゲガンハートとジャンルーカ・ブランビッラが喰らいつくが、そこにさらにヤコブ・フルサングも喰らいついた。
アスタナ2名を含んだ5名の逃げ集団。サンチェスもフルサングのために全力牽き。元々は逃げに4名も乗せていたドゥクーニンクは、先頭にノックスを入れることができたものの、後続にはもはやジルベール一人。一気に不利な立場に置かれてしまった。
そして残り7.3km。
サンチェスの牽引が終わったと同時に、フルサングがアタック。ブランビッラはついていけたものの、ノックスは完全に引き千切られてしまった。
最初、スプリント力のあるブランビッラの存在を警戒してなかなかペースを上げられていなかったフルサングだが、残り4kmで再度踏み始め、ついにブランビッラを引き千切った。
今年、アルデンヌ・クラシックを中心にキャリア最大の成績を残し続けているフルサング。ドーフィネも2度目の総合優勝を果たし、期待と共に挑んだツールだったが、第3週の初日で落車リタイア。
今回のブエルタも、ロペスをエースに据えつつも、チャンスを窺ってもいたであろう中で、結局はふるわず。悔しい思いを秘めていたフルサングだったが、この日、なんとかそれを挽回するかのような力強い勝利を手に入れた。
メイン集団でもアスタナの攻撃が目立った。フライレ、カタルド、そしてヨン・イサギレ。強力なクライマー陣によるペースアップの果てに、残り5kmでミゲルアンヘル・ロペスがアタックを仕掛けた。
最初の一撃には、有力勢は軒並みついていくことができた。しかし残り3kmのロペス2度目のアタックで、総合2位のバルベルデが引き離されてしまった。
バルベルデはこの日、23秒を失う。またキンタナはもっと早い段階で遅れており、バルベルデからも2分11秒も失ってしまっている。
第2週終了時点での総合順位
キンタナはマイカに抜かれ、総合6位に転落。
そしてログリッチェは2位バルベルデに、2分50秒近いタイム差をつけることとなった。
個人TTだけでなく、山岳ステージでも連日強さを見せつけるログリッチェ。
今年のマイヨ・ロホをほぼ確定させるような結果となる一方、新星ポガチャルもまた、初出場のグランツールで新人賞と表彰台を共に手に入れようとしていた。
今年のブエルタをほぼ決定付けるようなこの第2週が終わり、いよいよ結末が見えてきたが、それでも第3週もまた、ブエルタらしい波乱が待ち受けていることはほぼ確実であった。
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